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デジタル人材の不足を解決する方法|採用・育成以外の選択肢も解説

公開日:2023.12.25

更新日:2024.01.29

企業の課題

近年、テクノロジーの進化やはたらき方の多様化など、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした状況はビジネスにおいても例外ではありません。2018年には経済産業省から、デジタル技術を活用した企業風土の変革や競争上の優位性を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に関するレポートが発表されています。

DX化に向けた取り組みが求められる中、多くの企業ではデジタル人材不足が課題です。そこで今回は、デジタル人材が不足する原因を解説すると共に、対策方法や採用・育成以外の選択肢についてご紹介します。

日本は深刻なDX/デジタル人材不足に陥っている

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「DX白書2023」によると、2021年度調査においてDXに取り組んでいる日本企業の割合は55.8%でした。2022年度調査では69.3%に増加しているものの、部署ごとに取り組んでいる企業が多く、全社戦略に基づいて取り組んでいる企業の割合は54.2%に留まっています。一方、アメリカでは68.1%の企業が全社戦略に基づいて取り組んでおり、その差に開きがあることが分かります。

DXに関連する情報や重要性を各メディアが取り上げる中、日本企業における取り組みが進まない理由として、デジタル人材やDX人材の不足が挙げられます。同白書における、DXを推進する人材の「量」の確保に関する2022年度調査によると、「DXを推進する人材が充足している」と回答した割合は日本が10.9%だったのに対してアメリカは73.4%でした。なお、デジタル人材も企業のDX化において重要な存在であり、同調査の「DXを推進する人材」の中に含まれていることが考えられます。

そもそもデジタル人材とは?DX人材との違い

デジタル人材とDX人材は、立場や役割に違いがあります。一般的にデジタル人材はデジタル技術に関する知識と理解があり、これらを活用して業務を改善することを担います。

一方でDX人材はデジタル技術がビジネスに与える影響を予測し、イノベーションやデジタル戦略を策定するブレインの役割があります。そのため、デジタル技術の知識や理解に加えて、要件を設計するアーキテクトやプランニングのスキルが必要です。

DX化は、デジタルに関する知識やスキルだけではスムーズに進められません。プロジェクトを企画して全体の流れを統括するDX人材と、実際に取り組むデジタル人材の連携が重要です。現状を踏まえて緻密に設計した要件をもとに、デジタル人材が実行することでDXの成功につながります。

デジタル人材の必要性

DX推進においてデジタル人材が必要とされている理由の一つに、「2025年の崖」があります。これは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」に記載された課題です。

既存のITシステムは老朽化、複雑化、ブラックボックス化が問題視されており、2025年までに刷新しなかった場合、国内のDX化が実現しないだけでなく年間最大12兆円もの損失が発生するといわれています。こうした状況を脱するためには、既存のシステムや仕事の進め方を見直して早急にデジタル化を進めることが肝要です。その上で、各企業でデジタル人材の確保が必要とされています。

デジタル人材が不足している原因

デジタル人材が不足している主な原因は以下の4点です。それぞれの原因について解説します。

IT市場拡大により人材ニーズが増加している

デジタル人材不足の原因の一つは、急速に拡大するIT市場による人材ニーズの増加です。インターネットが広く普及したことやはたらき方の変化、AIの発展など、近年のIT市場における成長は目を見張るものがあります。こうしたIT市場拡大は今後も続くことが予想されますが、年々増加する人材ニーズに対して適した人材が見つからないのが現状です。

IPAが発表した「DX白書2023」でも、DXを推進する人材が大幅に不足していると回答した企業が多いことから、いまだ不足状態であることは変わらず、適した人材の育成・確保に向けた早急な取り組みが求められます。

DX・IT化へ取り組む企業が増えている

近年、IT企業にかかわらず農業や林業、漁業などの一次産業をはじめとするさまざまな分野でも、DXやIT化を進める企業が増えています。新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの企業で浸透したリモートワークやオンライン会議なども取り組みの一つです。その他、農業ではIT技術を活用した「スマート農業」が推奨されており、これまでITとは関連が薄いと思われていた産業でもデジタル技術は浸透しています。

しかし、デジタル技術を活用するには知識やスキルを持つ人材の確保が欠かせません。特にITと関連が薄い分野では、デジタル人材の採用や育成に戸惑う企業も多いでしょう。この先もデジタル技術のさらなる進化が見込まれており、ますます人材不足が進むことが懸念されています。

日本の生産年齢人口が減少している

経済産業省が2022年に発表した「未来人材ビジョン(中間とりまとめ案)」によると、2020年の段階で約7,400万人だった生産年齢人口が、2025年には約5,300万人にまで減少するという数値が出ています。この背景にあるのが日本の深刻な課題である少子高齢化です。

デジタル技術は目まぐるしく進化しており、事業や社内体制に取り入れる上で、常に新しい情報を得てスキルや知識を深めなければなりません。最先端技術に対して柔軟な対応ができる人材を確保する必要があるものの、生産年齢人口が減少する中、新規採用の難易度は上がっています。

さらにDX化を推進する上で、既存システムを理解している人材の役割も重要です。しかし、既存システムを理解している人材が退職してしまえば、既存システムから移行する際に支障が出ることも考えられます。

デジタル人材の育成が難しい

デジタル人材の育成が難しい点も、人材が不足する原因として挙げられます。プログラミングの知識があったとしても、すぐに技術者として即戦力になるとは限りません。また、IT業界は変化が激しく、より現場に適したスキルを得るためには常にアンテナを張って、新しい情報をキャッチすることが求められます。

こうした鮮度の高いデジタル技術を持った人材を育成するには、手間と時間が必要です。しかし、日々の業務に追われる中で、デジタル人材の育成にリソースを割けないという企業も多いでしょう。また、社内にデジタル技術に長けた人材がいない場合はそもそも育成環境を整えられず、デジタル人材の育成が進まない可能性も考えられます。

デジタル人材不足への対策方法

デジタル人材不足への対策方法

デジタル人材不足を解消するためにはどのような対策方法があるのかを把握し、自社の状況に見合った手段を選ぶことが大切です。続いては、社内リソースで行う方法と社外リソースで行う方法をそれぞれ解説します。

社内リソースで行う方法

社内リソースで行うメリットとして、すでに業務内容や社風、お客さまのニーズを把握した状態でデジタル人材不足の対策を進められる点が挙げられます。また、新しい技術や知識を得ることにより、社員のモチベーション向上も期待できるでしょう。

社内リソースを活用してデジタル人材不足を解消する方法として、以下の3つが挙げられます。

デジタル人材を採用した上で定着させる

あらたにデジタル人材を確保する方法として、技術を学んだ新卒者の採用や即戦力になる人材の中途採用があります。ただし、デジタル人材の雇用はどのようなケースでも競争率が高く、簡単に見つけられるとは限りません。また、スキルの高い人材が入社したとしても職場環境が悪ければ、より魅力的な企業に転職する可能性があります。

経験や実績が豊富なデジタル人材を採用したら定着させることが大切です。そのためには、はたらきやすい職場づくりや環境の整備が求められるでしょう。例えば、リモートワークやフレックスタイム制などを取り入れ、ワークライフバランスが整っていることをアピールするのも一つの方法です。その他、IT市場の動向を踏まえて、自社に必要な人材のスキルに見合った待遇・制度を設けることも大切です。

社内の人材を育成する

DX推進を目的としたリスキリング(学び直し)を実施する企業が増えています。リスキリングとは技術革新やあらたなビジネスモデルに適応するために、必要とされる技術や知識を学ぶことです。経済産業省でもリスキリングの重要性をうたっており、DX化が加速する中で注目を集めています。

特にデジタル人材の新規採用に難しさを感じている企業にとって、社内の人材を育成することは目下の課題です。企業の状況をよく理解した人材をデジタル人材へと育成できれば、よりスムーズにDX・IT化を進められるでしょう。外部からの採用だけでなく社内の人材にも目を向けて、中長期的に育成することが大切です。

育成方法としては社内研修や外部講師を招いての講座、eラーニングなどが挙げられます。また、資格取得に必要な費用をサポートすれば、社員による自発的な取り組みを促せるでしょう。

学び直しで大切なことは、何かに挑戦し自身で振り返ることやフィードバックを受けることです。ただ知識を持つだけでなく、現場で活かすことを目的に社内全体で取り組むことが求められます。

ツールやAIを活用する

デジタル人材不足への対策方法として、ツールやAIの活用も役立ちます。例えば、AIチャットボットやFAQなどを使うと、これまで人的リソースで行っていた顧客サポート業務を自動化できます。また、パソコンで行っている事務処理などを自動化するRPA(Robotic Process Automation)ツールを取り入れると、バックオフィス業務の効率化が可能です。

RPAについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
>>RPAとは?注目されている背景やメリットをご紹介

このようにツールやAIをうまく活用すると社員の負担が軽減され、根本的な人材不足をカバーできます。また、業務効率化によって各社員が注力したい業務にリソースを割けるようになる点もメリットです。

ただし、ツールやAIを活用するには一定の知識やスキルが求められる他、コストが発生します。現状の課題を洗い出した上で適切なサービスを選定し、業務に取り入れることが大切です。

社内リソースを使ってデジタル人材不足を解消することは可能ですが、そもそも人材育成に割くリソースがなかったりツールをうまく使いこなせなかったりと、根本的な悩みをお持ちの企業は多いでしょう。その場合は無理に社内で解決しようとするのではなく、社外リソースの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

社外リソースで行う方法

社外リソースを活用してデジタル人材不足を解消するメリットは、人材育成やツールの活用・運営にかかるコストを抑えられる点です。また、デジタル技術に長けた人材に依頼できるため、育成にかかる労力を考慮することなく、速やかにDX化やIT化を進められます。

アウトソーシングを活用する

あらたな人材の採用や社員の育成が円滑に進めばよいですが、そもそも人材が少ない中で社内リソースを活用した対策は現実的ではありません。また、コストや時間がかかる点も踏まえると、速やかな対策が可能なアウトソーシングを活用した方が賢明です。

外部の視点を入れることで自社だけでは気づけなかった課題に対応しやすくなる他、DX・IT化に長けた企業に依頼すれば、より適した対策を提示してもらえる点もアウトソーシングのメリットです。

なお、アウトソーシングの方法は最適なフロー構築とデジタル化から運用まで一連の流れをすべて任せられるケースや、DX・IT化など一部を任せるケースなど多岐にわたります。自社の現状を踏まえて、より適した形態でアウトソーシングを活用することが大切です。

デジタル人材不足にお悩みの際はパーソルテンプスタッフへご相談ください

DXが推進される中、IT業界に限らずどの業界においてもデジタル人材が必要とされています。デジタル技術に長けた人材の需要が高まる一方で、少子高齢化による生産年齢人口の減少は、デジタル人材不足にも大きく影響しています。また、デジタル技術は常に進化し続けるため、知識やスキルの習得・更新に労力がかかる点もデジタル人材不足の原因といえるでしょう。

こうした状況を打破するために新規採用や中途採用を計画しても、経験や実績が豊富な人材がなかなか見つからないというケースも少なくありません。社内の人材を育成しようにも手間やコストがかかる上に、必要なスキルを得るまでに時間がかかります。

そこでデジタル人材不足の対策に役立つ手段がアウトソーシングの活用です。コストや時間をかけることなく、即戦力となる人材に業務を任せられます。自社だけでは課題が洗い出せなかった場合も、DX・IT化に長けた企業に依頼することで、より適した対策を発見できるでしょう。その結果、効率的にデジタル人材不足を解消できます。

パーソルテンプスタッフでは、アウトソーシングにおいて、最適なフローの構築とデジタル化で効率を図る支援を行っています。多数のプロジェクトでITを活用した業務運用経験があり、状況に合わせたサポートが可能です。また、国民健康保険や介護保険などの事務手続きに関する運用ノウハウもあるため、一般企業だけでなく官庁や地方公共団体からもご活用いただいています。

デジタル人材不足の解決や業務効率化に向けてアウトソーシングの活用をご検討中の方は、ぜひパーソルテンプスタッフへご相談ください。

DX推進に関連する事例もございます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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