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RPAとは?注目されている背景やメリットをご紹介

公開日:2023.05.15

企業の課題

社員の生産性向上や作業効率のアップは、経営を考える上で重要な課題です。近年特に注目されているのが、RPAです。RPAとはどのような仕組みなのか、種類、導入の流れ、導入を検討するにあたり事前に理解しておきたいメリットと留意点、価格相場についてご紹介します。

RPAとは

RPAとは、Robotic Process Automationの略称で、パソコンを使用したデスクワークの自動化を行うソフトウェアロボットです。例えば、外部からメール等で共有された資料の中から、必要な情報を自社の管理帳票等に入力する業務を、人間の代わりに実施します。

なお、広義のRPAは「RPAの導入がもたらす変革」を指すのに対して、狭義のRPAは「RPAそのもの」を示すことが多いため、「RPA」が何を指しているのか場合に応じて判断する必要があります。

RPAとは

RPAによってできること

RPAは、定型業務を得意としています。そのため、業務フローや具体的な作業手順が明確な業務に導入すると効果的です。

RPAは、以下の業務で導入可能です。

  • 定期的な他社の価格調査
  • SNSに投稿される口コミの抽出
  • ECサイト等の日次レポート作成
  • 社員の勤怠管理
  • 製品の在庫管理
  • 顧客情報の入力
  • 売上伝票データにもとづく請求書発行
  • 取引先の請求情報と入金実績の照合、入金消込

AI、Excelマクロ、RDAとの違い

RPA(Robotic Process Automation)に近いものに、AI、Excelマクロ、RDAがあります。それぞれ特徴と得意としている内容は異なりますので、混同しないように注意する必要があります。

AI(Artificial Intelligence)は人工知能、つまり人間のような知能を持つソフトウェアで、機械学習を経ることにより主体的な判断が可能となるのが特徴です。AIは自ら考え判断するのに対し、RPAはあくまでも事前に指定されたルールに則って作業を実行するものです。ただしRPAにも種類があり、高度なものだとAIが搭載されているため自律的に判断できるものもあります。

ExcelマクロはRPAと同様に定型業務を自動化できますが、自動化可能な作業範囲はExcel上、VBA使用時でもマイクロソフト社のoffice製品上に限定されます。またExcelマクロ上で高度な処理をしたい場合プログラミングスキルが必要になりますが、RPAはプログラミングの知識がなくても使用可能です。

RPAとRDA(Robotic Desktop Automation)は、搭載されているモジュール(対象業務の機能単位)が異なります。RPAはサーバー型ツールで、サーバーと各デスクトップ上に配備済のファイルを管理ツールでまとめていて、サーバー側のファイルを呼び出し使用します。RDAはデスクトップ型ツールで、特定のパソコンにインストールした状態で使用します。

AI(Artificial Intelligence) 機械学習を経ることによる主体的な判断が可能
Excelマクロ 定型業務を自動化できるが、高度な処理をしたい場合プログラミングスキルが必要
RDA(Robotic Desktop Automation) 個人の業務に合わせて微調整でき、契約台数を増やせるが、管理工数と費用も比例

RPAが注目されている背景

RPAは、労働人口が減少したことと、働き方改革が普及したことによる影響を受けて世間から注目されるようになりました。

労働人口の減少

日本では少子高齢化が進行しています。総務省が発表する「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」を見ると、労働力人口は2022年平均で6,902万人です。労働力人口とは15歳以上人口のうち就業者と完全失業者の合算数で、今回の調査結果は前年から約5万人の減少を記録する結果となりました。特に、15〜64歳における労働力人口は2022年時点で5,975万人ですが、こちらも前年比約6万人の減少です。

減少する労働人口を補填ほてんしようと、女性の社会進出や外国人労働者の受け入れなどの施策も進められていますが、まだ追いついていないのが現状です。またITエンジニアが不足している近年、プログラミングの知識がなくても操作できる点も、RPAが注目を集めている理由の一つです。

働き方改革の普及

労働人口の減少以外に、働き方改革が多くの企業に普及してきたことも関係しています。働き方改革は、社員が個々の事情を抱えた状態でも多様なはたらき方を選択できる社会の実現に向けた活動です。働き方改革が進んでいく中で、経営陣は従来よりも短い労働時間で効率的にはたらいてもらう方法の模索を求められるようになりました。

また近年では、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークが浸透したこともあり、一連の流れが働き方改革の推進とRPA導入検討の追い風になっているとも考えられます。

RPAの仕組みとは

RPAは、シナリオ、開発者が使用する開発ツール、利用者が使用するシナリオ実行ツール、管理者が使用する管理者ツールで構成されています。

シナリオファイル

RPAの行動について記載しているファイルです。「ワークフローファイル」と呼ばれることもあります。

開発ツール

シナリオファイル作成ツールです。マウス操作で指示できる開発ツールなどもあり、製品ごとに特徴があります。

シナリオ実行ツール

開発ツールで作成したシナリオファイルを実行するためのツールです。シナリオ実行ツールは、RPAで業務を自動化する現場担当者が使用します。

管理ツール

作られたシナリオを管理するために使用します。ほかにも、シナリオの実行状態確認、利用者設定などの機能も実装されています。

RPA活用による3つのメリット

RPAを導入して定型業務を自動化するメリットは多くあり、特に以下がよく知られています。

生産性の向上

RPAでは設定されたシナリオに基づいて、今まで人間が手作業で対応していた業務を実施します。そのため、作業に時間を取られることがなくなるでしょう。PDF形式のデータを受注管理システムへ入力する作業も、RPAを使えば自動処理可能です。

作業の時間を削減することで捻出できた時間は、企画業務の検討、業務改善など別の業務に費やせるようになります。

作業の効率化

人間による対応では、注意を払っていても作業ミスをゼロにすることは難しいことです。RPAを導入すると、入力欄相違、大文字と小文字が混在するなどのヒューマンエラーを防止することができます。

品質の向上

RPAはシナリオで指定されたとおりに動きます。そのため、単純なミスが生じることはありません。万が一何らかのミスが生じても、「RPAは指定されたシナリオのとおりに動く」ことを考慮すると、最初から間違えている部分の特定と修正対応がしやすくなります。

RPA活用時の留意点

ここまで、RPAの特徴、注目を集める理由、RPAを導入するメリットについて解説しました。定型業務を自動化でき、社員の生産性向上も期待できるRPAですが、留意点もあります。

導入コストがかかる

RPAを導入するには各種コストがかかります。どのようなコストがかかるのか見ていきます。

  • 初期費用
    RPAの利用開始時にかかる費用です。初期費用のない場合もありますが、RPAは開発時にコストがかかっていることから、導入時に初期費用が発生するのが一般的です。
  • 月額費用
    ツールの使用料がかかります。月額請求以外に年額契約プランを用意しているケースもあります。
  • サポート・保守費用
    実際にRPAを運用するにあたり、トラブルや質問があるときなどに対応するためのものです。月額費用に含まれているケースもあります。
  • 導入支援費用
    コンサルティングや研修などのプログラムがセットで用意されている場合、特に確認が必要です。

RPAスキルのある人材が少ない

RPAを導入すると、保守作業などの管理は現場任せになるケースがあります。そうなると、PRAの使い方やメンテナンス方法を知っている社員に管理が一任されがちです。あるいは、社外のベンダーに管理を依頼することも想定されるため、PRAの導入に際して人材育成にも着手するようにしましょう。

RPA開発の必要がある

RPAに対し大規模な業務や高度な業務を任せたい場合、自社向けRPAを検討する必要があることも想定しましょう。

RPAの開発方法には簡易型と開発型があります。簡易型は、担当者が作業した内容と動作をRPAが記録し自動化します。簡易型は記録済の動作内容に応じたカスタマイズも可能ですが、より高水準を求める場合は開発型を選択するのが一般的です。さらに開発型にも、自社開発型と外部エンジニアを招聘しょうへいし対応する外部委託開発型があります。自社開発型と外部委託開発型は、それぞれメリットと留意点を持ち合わせていますので、自社の実情とRPA導入の目的を考慮しながら比較検討しましょう。

開発やシナリオの修正が必要な場合もある

RPAは社内のあらゆるシステムと連携しています。連携先になにかしらの変更が生じると、RPAに向けて出されている指示内容とシステムとの間に不一致が生じ、RPAの稼働停止やエラーなどのトラブルを招く原因になります。
RPAはAIのように自動学習する機能は実装されていません。そのため、RPAを導入する際は、日ごろから部門間での情報共有と連携が必要です。定期的な動作確認、システム更新時には更新情報の収集と影響が見込まれる分野の洗い出し、動作確認の実施が求められます。

RPAの適応業務と3つのクラス

RPAは、総務省が定める3段階のクラスがあります。RPAに搭載されている機能と対応可能な自動化のレベルに応じて、クラス1(RPA)、クラス2(EPA)、クラス3(CA)に分類されています。クラスが上がるほど、より高度な対応が可能です。

RPA(Robotic Process Automation)

RPAはクラス1に該当する、定型業務の自動化に対応しています。具体的には、情報収集、入力作業、検証作業などに対応可能です。

EPA(Enhanced Process Automation)

EPAはクラス2に該当します。一部非定型業務の自動化に対応可能です。

EPAの特徴は、RPAにAIを取り入れることで非定型業務にも対応でき、自然言語解析、画像解析、音声解析、マシーンラーニング技術などの作業が実施可能です。ほかにも非構造データと呼ばれる、たとえばメールや企画書のように構造化されていないデータ群の読み取りと活用にも対応できます。

CA(Cognitive Automation)

CAは、EPAよりもさらに高度なクラス3のRPAです。CAは高度な自律化に対応しています。そのため、プロセスの分析、改善、意思決定の自動化を一貫して実施可能です。また、ディープラーニングや自然言語処理に用いられることもあります。

RPAの種類

RPAには、対象業務と運用方法から3種類に分類できます。特徴、メリットと留意点がそれぞれ異なるため、RPAの導入検討時は各タイプの特色を把握し、求める業務に適した種類のものを導入します。

デスクトップ型

個人のデスクトップ内で作業するタイプのRPAです。パソコン1台から導入可能なため、個人、部門、小規模の企業でも導入できます。管理も担当者ごとに実施でき、自動化対象の業務を複数連携させることも可能です。

サーバー型

サーバー内に構築し、複数のデスクトップと連携するタイプのRPAです。複数のシステムと業務で横断的にデータを管理できることから、企業などで大規模導入が必要なケースに適しています。

クラウド型

Web経由で、クラウドサーバー上で作業するタイプのRPAです。クラウド型RPAのメリットは、自社サーバー設置が不要なことから初期費用を縮小できることと、Webに接続可能な環境があればスタートできることです。

RPA導入の流れ

RPAを導入して業務効率化を成功させるポイントは、事前の準備と導入です。ここでは、RPAの導入前に実施する業務から導入に至るまでを解説します。

業務の整理

現在自社で実施している業務内容を洗い出し、業務プロセスと業務量を見直します。業務整理をすると自社業務の全体像を把握できるため、「業務の見える化」にもつながります。

業務の全体像を把握できたら、各業務が抱えている課題を探し、RPA導入候補を選出します。担当者の作業内容と作業時間を測定して記録に残し、実際の業務量とかかった時間も測定します。

RPAを導入する業務を選定

明らかになった課題のうち、RPAを導入したい業務を選びます。RPA導入業務の選定に際して、RPA化によって期待できる定量的および定性的効果の算出と、RPA開発にかかる費用の計算も実施します。

RPAツールを選定

ここまでのプロセスで明らかになった課題、導入後の定量的および定性的効果、費用などの各種要素を考慮しながら、導入するRPAを選びます。

テスト導入

RPAによっては、トライアル期間を設けていることもあります。RPAの操作方法を把握できると同時にRPA導入による効果を体験できる期間なので、簡単な業務からチャレンジしましょう。

本格導入

RPA導入による変化と導入結果を参照しながら、本格的に導入を検討します。特に費用対効果の優れている業務からRPAを導入するとよいでしょう。

なおRPA導入の前に、修正担当者、アクセス権限、エラー発生時のリカバリールールを決めておくと、修正対応発生時にスムーズに対応できるでしょう。

RPAの導入費用相場

RPAの導入費用相場は、外部企業から受けるサポート内容によって異なります。

RPAの開発、導入後の運用、関連するスキルの習得を全て自社で賄う場合や外部企業のサポートを受けながら自社でRPAを開発し運用まで行う場合、RPAの開発から導入に至るまでの全行程を外部企業に委託する場合などがあります。

パーソルグループでは「パーソルのRPA」を提供していますので、ご参考までにご覧ください。

RPAの活用事例

社内の課題解決に向けて、RPAを導入したパーソルテンプスタッフの活用事例をご紹介します。

プログラム開発経験のないメンバーのRPAの活用事例

パーソルテンプスタッフは事務作業の負担軽減を目的にRPA導入に踏み切りましたが、RPAに対する現場の理解不足や、プログラミング知識を必要とする高度なRPAソフトを採用してしまったために開発が難航してしまう、など導入当初は数々の障壁がありました。

そこで、RPA推進部署をあらたに立ち上げ、RPAの推進活動や理解促進、運用整備・ルール作成を行い、RPA導入の社内基盤を作り上げました。同時に、プログラミング知識を必要としないRPAソフトを社内標準とし、プログラミング知識のないメンバーでも開発に携わることを可能としました。詳しくはこちらをご確認ください。

RPA推進における施策例

RPA推進に際して大切にしたのは、「現場担当者自らが主体者となりRPAの運用・保守を行うこと」です。前述のとおり、RPAは社内システムとの連携が必要不可欠であるため、社内システムの仕様や改修情報などを、各システム部門から現場部門へスムーズに連携できるよう調整を行いました。また、導入後は現場で運用・保守を行えるよう、RPAのワークフローを可視化した仕様書、RPAのマニュアル作成などをRPA推進部署が担っています。詳しくはこちらをご確認ください。

RPAがはたらく人材に与えた影響の事例

RPAは、生産性の向上や業務効率化以外にも、社員に気付きをもたらしました。業務可視化のため、業務の実態を棚卸していくと、単純だと思っていた業務が実は担当社員の複雑な判断の上で成り立ち、顧客に価値を提供していることがわかったのです。RPAの推進が、逆に「人の持つ能力の素晴らしさ」に改めて気付かされることとなりました。詳しくはこちらをご確認ください。

RPAを活用して業務効率化を図る

本記事では、RPAの概要、メリットと留意点、導入の流れ、活用事例などを解説しました。

RPAは定型業務を得意としていますが、RPAには3つのクラスがあり、クラスが上がるほど複雑な業務に対応できます。また、RPAには複数の種類があることから、導入するには事前準備が重要になるでしょう。

労働人口減少や働き方改革による影響を受けて、社員の負担を減らそうと考え、多くの企業がRPA導入を検討しています。

パーソルテンプスタッフでは、現場で抱える業務課題をデジタルツールを使って解決するスペシャリストを派遣するサービス「RPAアソシエイツ」を提供しています。RPAアソシエイツは業務の可視化・課題発見・解決策の提案・実行/実装(RPA・Excel他)・横展開を一気通貫に行います。RPA導入のノウハウがない、デジタル化を推進してくれる人材がいないといったご不安がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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