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【ナレッジコラム】
成長する企業に求められる中長期の人事組織戦略の重要性、作り方、活かし方vol.004
経営幹部の採用とオンボーディング

公開日:2023.10.24

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【ナレッジコラム】 成長する企業に求められる中長期の人事組織戦略の重要性、作り方、活かし方vol.004 経営幹部の採用とオンボーディング

株式会社RECOMO 代表取締役CEO
橋本 祐造 氏

さまざまなHRエキスパートによるナレッジをお伝えするコンテンツ『ナレッジコラム』。
株式会社RECOMO 代表取締役CEOの橋本 祐造氏による「人事組織戦略」についてのメッセージを6回連載でお届けします。

経営幹部の採用とオンボーディング

会社を飛躍的に成長させたい経営者にとって、特に難しい課題となるのは「優秀な経営幹部の採用」になるでしょう。創業した経営者は、これまで経験が不足していたり、周りから「それをやるのは不可能だ」と言われても、多くの人に「使いたい、お金を払いたい」と思ってもらえるような製品やサービスを生み出し、何度も改善を繰り返しながら提供し続けていきます。

事業の成長に合わせて人の採用も行い、それなりに組織は作られていくかもしれません。ただある時点で、「急に」さまざまなことがうまくいかなくなり、違和感を覚えることが増えていくことがあります。「急に」社内コミュニケーションがうまくいかなくなり、ぎくしゃくした雰囲気になる。部署やチームごとに「縄張り意識」が強くなり、連携が悪くなる。経営者は日々のタスクに追われてしまい重要事項に対処できず、一息ついて優先順位を見直す時間すら取れなくなる。採用活動もおろそかになり、対応や連絡が遅れ、「急に」辞退者が増える。営業の進捗は経営者と一部の社員だけが役割を持っていて、ある日「急に」顧客からのクレームが頻発する。やる気が満ち溢れているからと未経験の社員に担当させても、失敗を続けて物事が何も進まない状態になるなど、このような状況になって初めて、経営者は「優秀な経営幹部の採用」が必要になると痛感します。

ここでよく起こる勘違いがあります。事業は伸びていて、会社は成長している。対応するメンバーやマネージャーの採用はうまくいっているので、この流れと同じように経営幹部の採用も実現できると思い込む経営者は意外と多いです。初めての経営幹部の採用は、想像よりも難しいことです。経験豊富で自社に合う経営幹部と出会えたら、その存在に心から感謝するでしょう。あらゆることが次々と解決されていく。採用が進み、契約はまとまり、社内の仕組みも整う。これまでこうした経営幹部を雇わなかったことを悔やみたくなるかもしれません。

一方で、想定通りに物事が進まないこともあります。採用した経営幹部が企業文化に合わなかったり、得意とするマネジメント手法と任せるチームの規模が噛み合わず、空回りしてしまうこともよく起きがちです。時間だけが漫然と過ぎ、進捗が遅れ、最悪の場合には、辞められては困る優秀な人材が、噛み合わない経営幹部人材が要因となり辞めてしまうしまうことすらあります。

優秀な経営幹部の採用は企業の成否を決める大きな要素です。採用を成功させるのは難しいことですが、取り組む価値は十分にあります。経営幹部の採用を成功させるための重要なポイントを5つご紹介します。

1. 自分自身が候補者だとして、自社で働きたい、全力を発揮したいと思える環境か?

仮に自分自身が就業先を探す候補者だとします。あなたはこれまでに数多くの実績と幅広い経験を積んできた「優秀な経営幹部候補」の人材です。そんなあなたが、就業先、参画先として自社を見た時に、ここで働きたい、全力を尽くしたいと思える環境ですか?

これまでにたくさんの経営者から「優秀な経営幹部を採用したい」という相談を受けてきました。求める経験、スキルが高いのはもちろん、人柄の魅力、行動力、決断力も優れた人材に入って欲しい、という要望をよく伺います。相当な実力の持ち主で、会社、事業、組織、文化との相性が良ければ、かなりの成果を期待できるでしょう。

ただ、ここで経営者の方に冒頭の質問をします。「もしあなたが該当する人材だとして、今の自社を就業先として選びますか?」と聞くと、ほとんどの場合が「選ばない」と答えます。そのような回答になってしまうのが問題ではなく、経営者として「選ばれる環境を作る」意思決定ができる立場なのに、変える、変わる覚悟を持てず、決断できないのが問題なのだと思います。

優秀な人材が採用市場に出ると、数多くの会社から引く手あまたの状態になります。それらの会社の中から「選ばれる会社」にはどのようなものがあるか考えてみましょう。おそらく報酬の高さ、そこで得られる経験だけではないはずです。会社が大事にしている理念(自分たちは何者か、どこに向かっているのか、どうありたいのか)や、会社・経営者が事業、組織を通して成し遂げたい夢や野望を聞いて、共感、共鳴し「自分の力、経験、スキルをここで使い倒して、共に成し遂げたい」と心から思えるから、その会社を「選ぶ」ことが多いのが実態です。

まずはすべての戦略の基本軸になる理念を作り、夢や野望を描き、一つずつ積み重ねる環境を作ること。優秀な人材から「選ばれる会社」に変える、変わる覚悟を経営者が持つことが重要です。

2. 経営幹部の採用こそ、オンボーディングをより重視する

経営幹部には、他社で素晴らしい実績を残してきた人を採用するので、「即戦力」と見なして、入社初日から価値を発揮してもらうことを想像する経営者は数多くいます。そう思っている経営者に、このような質問をします。

「あなたがあらたに入社した経営幹部だとして、自分の力を最大に発揮するためにして欲しいことは何ですか?」

こう聞くと、社内やお客様との人間関係、事業への深い理解、社内文化の早めのキャッチアップなどが必ず出ます。どんなに力がある人でも、その力が発揮できる環境があるからこそ、持てる力をフルに出して、素晴らしい成果を出すことができます。

自分が同じ立場だったらして欲しい、フォロー次第で力を最大に発揮できると思うのなら、一日でも早くそうした環境を作るためのオンボーディングに力を入れるべきです。他社で素晴らしい成果を出して、高い実力を持つ経営幹部が入社したのに、入社のお知らせの後に話を聞かないようになるケースは、ほぼ入社後のフォローがなく、立ち上がりまでに余計な時間がかかっている、もしくは、キャッチアップできないことで気持ちが入らず勢いが止まることがほとんどです。

3. 徹底して信頼する。ただしすべてを託すのではなく、最初こそ共に歩む。

会社の理念を作り、「選ばれる」環境づくりをするために変える、変わる覚悟を持ち、決断することで、無事に優秀な経営幹部を採用できたとします。適切なオンボーディングを経た後は、経営者はその幹部を徹底して信頼する、という態度で向き合った方がよいです。どんなに実力があって、強いメンタリティを持つ人でも、共に戦う経営幹部の仲間から信頼されていなければ、ここで全力を尽くす気持ちが削られていってしまうでしょう。

また、他の経営陣から信頼されていない場合、その心理状態、関係性はすぐに社内に伝播し、ますます力を発揮しづらい状況になっていきます。特にまだ目に見える成果が出ていない時、大きな課題に立ち向かうために多くの時間を費やす必要がある時は、他の誰よりも経営者が経営幹部を徹底して信頼することが重要になります。

ただし、すべてを託すというのは誤った状況を生み出しやすくなります。最終的な責任を持つのは経営者であり、経営幹部はチームで経営を担うために存在します。入社当初は特に企業文化やスピード感、理念から経営判断する際にニュアンスなどが合わないことが多くあります。なので、最初から担う役割のすべてを託すのではなく、最初の半年や一年ぐらいは、経営者が共に課題に向き合い、考えた上でありたい姿、戦略策定などの意思決定をした方が、早くに経営チームの一員として持てる力を発揮し、素晴らしい成果を出してくれる人材になるでしょう。

Profile

RECOMO 橋本 祐造 氏

株式会社RECOMO 代表取締役CEO
橋本 祐造 氏

1978年生まれ。2002年に早稲田大学卒業後、NHKに入局。営業職として約3年間従事。その後、人事コンサルティング会社を経て、GMOインターネット株式会社でグループ人事部にて採用担当・フォロー担当を行う。以来、複数の会社で人材採用の戦略・方針・実行および人材育成プログラムの策定に携わる。2019年4月に株式会社RECOMOを創業。理念・パーパスは「人の可能性・価値が最大に広がる社会を創ること」。経営者と二人三脚になって、未来のありたい姿を実現するための人事・組織戦略を構築、実行体制の整備を行う。

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