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【ナレッジコラム】
成長する企業に求められる中長期の人事組織戦略の重要性、作り方、活かし方 vol.002
“理念”から丁寧に組織づくりする重要性

公開日:2023.07.19

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【ナレッジコラム】 成長する企業に求められる中長期の人事組織戦略の重要性、作り方、活かし方 vol.002 “理念”から丁寧に組織づくりする重要性

株式会社RECOMO 代表取締役CEO
橋本 祐造 氏

さまざまなHRエキスパートによるナレッジをお伝えするコンテンツ『ナレッジコラム』。
株式会社RECOMO 代表取締役CEOの橋本 祐造氏による「人事組織戦略」についてのメッセージを6回連載でお届けします。

“理念”から丁寧に組織づくりする重要性

1. 理念は企業のどのタイミングで必要になるのか?

日頃から経営者の方と組織づくりについて話をする中で、よくこんなことを聞きます。

「会社の理念は重要だと頭では分かっています。きっと今の自分たちの会社に必要だということも。ただ、今は事業を立ち上げることが優先で、その後で理念を考えたらよいと思っています。」

基本的には私も同じ意見です。会社を存続させて社会で価値を発揮するためには、理念を作ることよりも事業を優先してお金を稼ぐ必要があることは当然だと思っています。
ただし、理念を作ることよりも事業を優先することについてのメリット、デメリットは考える必要があります。

メリットとしては「経営者が事業に集中することで、事業立ち上げのスピードと成功確率が上がる」ということが挙げられるでしょう。 一方で「経営者が考える夢・ビジョンに共感する人のみでメンバーが構成される状態になりやすい」ということが挙げられます。会社の創業から事業の立ち上げ期は、事業や組織、仕組みは確立されておらずお金もない、さらにお客さまもいない状態がほとんどで、つながりを増やすきっかけとなるのは、経営者の人柄、夢、ビジョンくらいです。

そこから事業が立ち上がり、徐々に人が増えていくと、経営者の人柄や腕力で30人相当の組織になっていきます。その時に経営者が「ここまで何とかやってこられた。このままの勢いで行けるはず!」という思いで、今までと同じ考えや方法で会社を経営しようとすると、必ず大きな壁にぶつかります。 経営者の時間は当然有限で、かかわる人が増えることで一人ひとりと対話する時間が確実に減っていきます。すると、人柄や腕力の影響の輪を越えた状況になり、

「最近、社長が何を考えているのか分からない」
「会社は成長したけれど、社長は人が変わってしまったよね」

という言葉が社内から出るようになります。この状況に至るまでに理念を作り、組織全体に浸透するような仕組みと意思決定の積み重ねがないと、組織は簡単に崩壊していきます。 会社経営で理念が必要な時は、「経営が必要だと実感する少し前」が適切なタイミングなのだと考えています。

2. 「“理念”が存在しない」会社で起きる状態

それでも「理念は必要ない」として、全体の意識を整えることにあまり力を入れず、事業の推進のみに集中する経営者の方もいます。そのような会社がその後どんな状況が起きるのかを見てみましょう。

社長の「代わり」は存在しないので、いつまでも多忙な状態が続く

会社の理念とは、経営者の会社経営における哲学を反映したものになります。すなわち「自分たちは何者か?」「自分たちはどこに向かっているのか?」「自分たちはどうありたいのか?」の考え方を言葉にしたものになります。

理念が存在しない場合、経営者の考え方を組織の中で誰も分からない状態となり、会社で起きるすべての意思決定の最終判断が経営者になります。当然、会社の成長スピードは遅くなり、経営者はいつまでも同じレベルで多忙な状態が続いていくのです。

離職は増えるけれど、採用はうまくいかない

経営者が事業の推進にのみ集中する会社は、一見すると勢いがあり雰囲気も良さそうに見えるものです。しかし、メンバーの一人ひとりは常に会社・経営が何を考えているのか、どこに向かっているのか分からないため、仕事で苦しい状況になった時、心が折れて離職につながりやすくなってしまいます。

また、人をあらたに採用する時でも、会社の方向性や大事にしたい価値観が不明瞭なので、人の判断はこれまでの経験やスキルのみになりがちです。当然、会社の中に存在するカルチャーと相違する人でも採用される確率が高くなっていきます。

社長の不在時に、組織は一気に崩壊する

例えば、社長が突然体調不良になるなど、予期せぬ形で会社の最前線からの長期間の離脱があったとします。そんな時に理念が存在せず、社内に浸透させる取り組みをしてこなかった会社は、誰も社長の考え方や判断基準が分からないため、組織はいとも簡単に崩壊する可能性が高くなるでしょう。

ここで挙げた例は極端に思えるかもしれませんが、いずれも私たちが今までさまざまな経営者の方から話を聞く中で、実際に起きた出来事になります。

3. “理念”でお金は稼げるのか?

ここまでの話を読んでいただいた方は、組織づくりをする上で理念の存在がいかに重要であるか認識できたのではないかと思っています。 しかし、それでも経営者からこのような話を聞きます。

「理念でお金は稼げるのか?」

頭の中では理念が重要であると理解できたとしても、経営者として、それでもお金を稼ぐこと=売上を上げることの優先順位が勝る方も多いです。

結論からお伝えすると、「理念だけでお金を稼ぐことはできない」と考えています。ただし、人や組織は、事業を通して売上を上げるためだけに会社に存在するわけではありません。もちろんさまざまな目的がありますが、少なくとも売上を上げることは手段であって、目的ではないはずです。

「自分たちは何者か?」「自分たちはどこに向かっているのか?」「自分たちはどうありたいのか?」といった理念を構成する要素に対する考え方が先にあって、そこに共感する人が集まりチームや組織ができ、事業が立ち上がります。理念とお金を稼ぐことは「ニワトリと卵の関係」と同じだと思っています。理念があるから組織や事業ができて、方向性を一つにすることで売上が上がり、お金を稼ぐことができるようになっていきます。

4. 人とのすべての接点に“理念”を落とし込む

理念から丁寧に組織づくりしていくために、具体的に何から着手したらよいのか、とよく相談を受けます。 短期的な効果が見込める、かつ継続することで相当な成果を出す方法としてオススメするのは「人とのすべての接点に理念を落とし込む」ことです。

「人との接点」というのは社内外の会社にかかわるすべての人とやり取りをする場を指しています。 社内なら全社会議、経営会議、事業部会議、1on1などの会議体、また評価面談や打ち合せ、ちょっとした相談の時などです。社外であれば面接や面談、商談や打ち合せ、電話の対応、メール、チャットのやり取りなどのタイミングです。 人との対話をする場で、その時々でスタンスや価値観を気分次第で変えずに、常に理念から判断して行動することが大切です。

いかに理念が素晴らしい言葉でまとめられていても、理念の言葉を暗記していたとしても、具体的にコツコツと理念を体現する意思決定と行動を積み重ねていかないことには、理念から丁寧に組織づくりをすることは実現しません。 仮に経営者や経営陣が、日頃から理念を体現する意思決定と行動をしていなければ、目標やルールに落とし込んだとしても、誰も本気になってやろうとはしないでしょう。

今この瞬間からでも、まずは自分から意識して理念を体現した意思決定と行動をし始めることに挑戦してみるのはいかがでしょうか。

Profile

RECOMO 橋本 祐造 氏

株式会社RECOMO 代表取締役CEO
橋本 祐造 氏

1978年生まれ。2002年に早稲田大学卒業後、NHKに入局。営業職として約3年間従事。その後、人事コンサルティング会社を経て、GMOインターネット株式会社でグループ人事部にて採用担当・フォロー担当を行う。以来、複数の会社で人材採用の戦略・方針・実行および人材育成プログラムの策定に携わる。2019年4月に株式会社RECOMOを創業。理念・パーパスは「人の可能性・価値が最大に広がる社会を創ること」。経営者と二人三脚になって、未来のありたい姿を実現するための人事・組織戦略を構築、実行体制の整備を行う。

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