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【企業向け】労働安全衛生法とは?2025年改正を分かりやすく解説

公開日:2025.06.12

法律

労働安全衛生法とは、安全で快適な職場環境を実現するための法律です。その労働安全衛生法が2025年4月1日に、一部改正となりました。重大な違反や悪質なケースでは、罰則が適用される場合もあります。

そこで本記事では、法改正の概要や、法を守るために企業が留意すべきポイントについて解説します。

2025年の人事・労務に関わる重要法改正については、以下の記事でもまとめていますので、あわせてお読みください。
>>人事・労務に関わる2025年(令和7年)施行の重要法改正まとめ

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法とは、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成するための法律です。

安全で快適な職場環境を実現するために、「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」「責任体制の明確化」「自主的活動の促進の措置」など、総合的・計画的な安全衛生対策を推進しなければならないとされています。

※参考:労働安全法

労働安全衛生規則との違い

労働安全衛生規則は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成するために厚生労働省が定めた省令です。国会が定める労働安全衛生法と目的は同じですが、労働安全衛生規則は法令遵守のために、より詳細な内容が規定されている点が異なるといえます。

2025年4月1日の労働安全衛生法改正の概要

2025年4月1日に、労働安全衛生法の一部が改正されて施行されました。どのように変わったのかについてポイントを解説します。

改正の理由と変更点

近年、建設現場などで一人親方や労働者以外の作業者が事故に巻き込まれるケースが増えています。この事態を受け、より多くの人を危険から守るために法律が正されました。そこで、建設業を中心に保護対象者を拡大し、安全管理体制の構築が求められることとなりました。

ここからは、2025年4月1日の労働安全衛生法改正に伴う主な変更点を紹介します。

保護対象の拡大

安全措置の対象範囲が「労働者」から「作業に従事する者」に拡大されました。対象には、以下が含まれます。

  • 他社の労働者
  • 個人事業者(一人親方)
  • 家族従業者
  • 資材搬入業者
  • 現場監督者

ここで言う「他社の労働者」については、「 雇用契約関係の有無」は問われず、作業場で作業を行っている人すべてが対象とされています。

安全措置の強化

以下の安全措置が、拡大された対象者全てに対して適用されます。

  • 危険箇所への立入禁止
  • 特定の場所での喫煙・火気使用禁止
  • 事故発生時の作業場所からの退避
  • 悪天候時の作業禁止

一人親方などへの周知義務

事業者が一人親方などの個人事業者や下請業者に危険を伴う作業を依頼する場合、保護具使用の必要性を周知することが義務付けられました。危険・有害な業務を依頼する場合には、一人親方等の個人事業主にも特別教育の修了が求められます。

法改正が企業に与える影響

今回の改正は、多重請負構造下でも安全責任の所在を明確化し、作業現場における実効性向上を図った点が特徴だといえます。

よって、事業者は契約形態にかかわらず、現場の危険管理システムの再点検が求められます。特に多重請負構造の場合、自社の契約位置(元方/一次下請など)を正確に把握し、対応すべき義務範囲を明確に区分することが重要です。

元方事業者(数段階の請負関係がある場合には、その最も先次の注文者を指す)は、関係する請負人の法令遵守状況を確認し、違反時には即時の是正指示が必要です。また、一人親方などが家族を従事させる場合、その家族にも同等の保護措置を適用することが求められます。そして、喫煙・火気使用禁止区域では、現場作業に従事する人以外に、現場への資材搬入者なども規制の対象となる点に留意しましょう。

罰則について

重大な違反や悪質なケースでは罰則が適用され、会社の代表者や安全管理者など責任のある人が罰せられることがあります。具体的には、業務停止命令や安全衛生改善命令が行政から出されたり、違反の内容によっては会社の名前が公表されるケースも考えられるでしょう。さらに、公共事業への入札への指名停止処分を受けることも想定されます。社名を公表されて報じられると企業の評判や信頼に悪影響をもたらす可能性もあるでしょう。

労働安全衛生法を守るために企業が留意すべきポイント

ここからは、企業の法的義務に加えて、すべてのはたらく人にとって安心・安全な労働環境を整えるための重要なポイントについて解説します。必要に応じて、協力会社などとの綿密な連携と情報共有も安全な労働環境構築のカギとなります。

安全衛生管理体制の整備

統一された安全衛生管理体制を構築し、作業に関わる人すべてに安全衛生管理体制を適用できるようにしましょう。協力会社などから労働者を受け入れている場合は協業先と協力して、安全衛生に関する事項を共有するとよいでしょう。

安全衛生教育の実施

作業に関わる人すべてに向けて、作業開始前の安全衛生教育(いわゆる「雇入れ時教育」)や作業内容変更時の教育を実施しましょう。特に、労働者が危険有害業務に従事する場合には、特別教育や技能講習が必要なケースも考えられます。

作業環境の整備・指示

作業に関わる人すべてに対して、職場のルールや安全手順を明確に指示しましょう。実際の作業場所の管理者としての責任を持ち、作業に関わるすべての人に対して指揮命令を行うことが重要です。

健康診断と就業上の配慮

協力会社や人材派遣会社から労働者を受け入れている場合、その労働者の健康診断は原則として雇用関係を結んでいる企業が行います。しかし、健康診断の結果に基づいた就業上の措置(配置転換・労働時間の配慮など)は、実際の作業場所の管理をしている企業が行う必要があります。

労災発生時の対応

労働災害が発生し、労働者が災害に遭った場合には、協力会社や人材派遣会社などと連携し、速やかな対応と報告義務を果たす必要があります。作業に関わるすべての人に対して労働災害防止の体制づくりが重要です。

衛生委員会への参加

社外から受け入れている労働者を含め、はたらく人の人数が常時50人以上になる場合には、衛生委員会などにはたらく人の意見を反映させるよう配慮しましょう。衛生委員会とは、はたらく人の健康を守り労働災害を防止するための施策を検討する委員会です。

法改正のポイントを理解して適切な労働環境を実現しよう

本記事では、2025年4月1日に施行された改正労働安全衛生法のポイントについて解説しました。

今回の法改正のポイントは、自社との雇用契約の有無を問わず、作業場に出入りするすべての人に対して安全衛生対策を適用し、安心・安全な労働環境を整える必要がある点です。
法改正のポイントを理解した上で、適切な労働環境の実現につなげましょう。

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