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SES契約と準委任契約の違い|締結時の注意点とメリットを解説

公開日:2025.05.14

人事ナレッジ

企業のIT化やDXを進める企業の増加とともに、システムエンジニアの需要が急増しています。

そこで今注目されているのが、SES契約です。SES契約とは、システムエンジニアなどの技術者を企業に提供する契約形態です。必要に応じてシステムエンジニアを活用できるため、SES契約を選択する企業が増えています。

今回は、SES契約の概要と準委任契約との違いをはじめ、企業にとってのメリットや注意点を解説します。

SES契約とは

SES契約は、IT業界特有の契約形態です。SESは「システムエンジニアリングサービス」の略称で、エンジニアの労働力を契約の対象とし、クライアント企業の開発現場に技術を提供する契約を交わします。

エンジニアの雇用主はSES企業ですが、実際にはたらく場所はクライアント企業です。エンジニアはSES企業の従業員として雇われたのちに、クライアント企業に派遣されます。

SES契約と準委任契約の違いとは

SES契約は準委任契約の一つです。SES契約の契約内容は、基本的に準委任契約の内容に準じます。

準委任契約とは「特定の業務を委託、または受託する契約」を指し、SES契約では「システムエンジニアが受け持つ業務」を委託します。そのため、クライアント企業と実際にはたらくシステムエンジニアとの間には「雇用関係」が存在しません。

準委任契約については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひお役立てください。
>>準委任契約とは?請負・委任・派遣契約との違いと締結時の注意点を解説

準委任契約とは

準委任契約とは、法律行為となる事務処理以外の業務の遂行を目的に、対価が支払われる契約です。SES契約も準委任契約に含まれます。準委任契約には、善管注意義務が発生する点に注意が必要です。

プログラムの作成を外部に依頼する場合は、準委任契約となります。一方、作られたプログラムの特許権を申請するため弁理士に依頼する場合は、法律行為にあたるため、委任契約となります。

準委任契約には、履行割合型と成果完成型があります。それぞれの違いは以下の通りです。

契約形態 履行割合型 成果完成型
業務の完了義務 なし なし
報酬の対象 労働力や労働時間 成果物の納品

履行割合型は「労働力や労働時間を提供して、業務をしっかり行うこと」が報酬の対象となります。成果完成型は「成果物を納品すること」で報酬が発生します。

SES契約を締結する際の注意点

SES契約は派遣契約ではないため、クライアント企業にシステムエンジニアへの指揮命令権はありません。クライアント企業は、依頼したシステム開発に対する要望は伝えられますが、業務の進め方や作業場所に関する命令はできません。

クライアント企業がシステムエンジニアのはたらき方についての命令などを行った場合には、「偽装請負」となる可能性があるので、注意が必要です。

偽装請負については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひお役立てください。
>>偽装請負とは?問題点と判断基準、回避するためのポイントを解説

SES契約のメリットと留意点

エンジニアとSES契約を交わすメリットと留意点を解説します。

SES契約を締結するメリット

企業がSES契約を結ぶメリットは、システムエンジニアの採用や教育コストの抑制につながることです。また、SES契約を結ぶベンダー企業は、クライアントが要望する業務にマッチするスキルや経験が豊富なシステムエンジニアを保有しており、クライアント企業の適材適所に優秀な人材をマッチングできます。

SES契約を締結する留意点

システムエンジニアとの契約期間が終了するまでに、希望する成果が得られない可能性があります。工数や進捗管理が甘かったり、想定よりも作業に時間がかかったりすると、依頼した業務が未完成の状態で契約期間が終了する可能性があります。また、業務を外注することで、スキルや経験などのノウハウを自社に蓄積できない点にも注意すべきです。

SES契約とその他の契約形態の違い

その他の契約形態である業務委託契約、雇用契約とSES契約との違いについて、解説します。

業務委託契約

業務委託契約は、請負契約・委任契約・準委任契約などの総称です。企業が外部の第三者に対し、何らかの業務を委託する契約形態のことを指します。業務を外部に委託することは、コスト削減と人手不足の解消につながることが多いです。また、専門性の高い人材を特定の分野で採用できるのもメリットでしょう。

請負契約

請負契約とは、成果物の納品によって業務が完了する業務委託契約です。受託者は、契約内容の通りの仕様と品質の成果物を、期日までに納品する義務を負います。そのため、請負契約を結ぶ際は、成果物の内容について契約前に明確にしておくことが重要です。システムエンジニアの業務内容は、システムの保守や修正などがあるため、一般的に請負契約を結ぶことは少ないです。

請負契約では、契約不適合責任が発生する点に注意が必要です。契約不適合責任とは、請負人が引き渡した成果物が契約の内容に合致していない場合、請負人が注文者に負う責任です。

雇用契約

労働者が雇用主のもとではたらき、そのはたらきに対して賃金が支払われる契約形態です。正規雇用はもちろん、パートやアルバイトなどの非正規雇用も雇用契約に含まれます。企業と雇用契約を結ぶ場合は労働者となるため、労働者が企業の命令や指示に従ってはたらく主従関係が生まれます。

労働者派遣契約

労働者派遣契約の場合、システムエンジニアは派遣会社と雇用関係にありますが、業務の遂行に関する指揮命令権はクライアント企業にあります。IT業界では、プロジェクトごとに必要なスキルが異なるため、局所的に人材を活用できる派遣契約が活用されるケースが多いです。

以下の記事では、IT・エンジニア系職種の人材派遣サービスを活用するメリット、自社に適切な人材派遣会社の選び方や注意点について、詳しく解説しています。ぜひお役立てください。
>>IT・エンジニア人材の派遣活用でプロジェクト成功へ!メリット・留意点を徹底解説!

準委任契約の一つ・SES契約の特徴を知りプロジェクトに最適な契約方法を選択しよう

SES契約は準委任契約の一つです。プロジェクトに必要なスキルや経験を持つエンジニアをアサインできるのがメリットですが、指揮命令権がありません。また、契約が終了するまでに成果が得られない可能性があることにも注意しましょう。

準委任契約の他、業務委託契約には請負契約もあります。また、労働者派遣契約や直接契約を結ぶ雇用契約もあります。

それぞれの違いをしっかり理解し、プロジェクトに最適な人材を、最適な契約方法でアサインしましょう。

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