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人材派遣のクーリング期間とは?知っておきたいルールと注意点を解説
公開日:2023.02.24
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人材派遣を受け入れる際、事業所単位・個人単位の期間制限の適用を受けます。その期間制限にはクーリング期間の考え方が設けられています。いつから再び派遣スタッフを受け入れることができるのか?気をつけておくべきことはあるか?すべての場合にクーリング期間が必要なのか?など、本記事ではクーリング期間について詳しく解説します。
目次
人材派遣のクーリング期間とは
派遣法では、派遣先の同一の事業所において、継続して派遣スタッフを受け入れることができる期間(派遣可能期間)は原則3年までです。平成27年の労働者派遣法改正により、この期間制限が設けられました。
期間制限がリセットとなる一定の空白期間を「クーリング期間」と呼びます。クーリング期間として必要な日数は、「3ヶ月超」(3ヶ月と1日以上)です。
また、継続して派遣スタッフを受け入れることができる期間(3年)を過ぎた最初の日(派遣可能期間が満了した次の日)を「抵触日」と呼び、「法律で禁止されていることに抵触してしまう日」を指します。2023年1月1日から受け入れた場合、抵触日は2026年1月1日となります。
人材派遣のクーリング期間の種類
人材派遣においては、事業所単位、個人単位の期間制限の両方に、いわゆるクーリング期間の考え方が設けられています。この章ではそれぞれについて解説します。
事業所単位のクーリング期間
派遣先の同一の事業所で、継続して派遣スタッフを受け入れることができる期間は、原則として3年までです。たとえ受け入れる派遣スタッフが別の派遣会社のスタッフであったとしても、この事業所単位の期間制限により、3年を超えて派遣スタッフを受け入れることはできなくなります。
3年を超えて派遣スタッフを受け入れたい場合は、抵触日の1ヶ月前までに、派遣先の事業所の過半数労働組合などから意見聴取を行う必要があります。
あるいは、3ヶ月と1日以上のクーリング期間を設けた場合、再度同一の事業所で派遣スタッフを受け入れられるようになります。ただし、派遣先が、派遣可能期間の延長手続きを回避することを目的として、クーリング期間を空けて派遣スタッフの受け入れを再開するような行為は、法の趣旨に反するとされています。
※参照:厚生労働省|パンフレット(派遣先の皆さまへ)
個人単位のクーリング期間
派遣先の事業所における同一の組織単位で、派遣スタッフが期間制限の抵触日を迎えた場合は、3ヶ月と1日以上のクーリング期間を設ける必要があります。例えば、同じ派遣先の同じ課で、すでに3年間務めた派遣スタッフがいた場合、3ヶ月と1日以上のクーリング期間があれば、あらたな派遣スタッフによる勤務開始が可能になります。
ただし、本人が希望しないにもかかわらず、クーリング期間を空けることによって、派遣元が同じ組織単位の業務に同じ派遣スタッフを派遣することは、派遣スタッフのキャリアアップの観点から望ましくないとされています。
※参照:厚生労働省|パンフレット(派遣先の皆さまへ)
人材派遣のクーリング期間における注意点
クーリング期間が発生することで、派遣先の企業はどのような点に注意が必要か詳しく解説します。
3ヶ月の空白期間が生まれる
人材派遣のクーリング期間における注意点は、派遣スタッフの受け入れに空白期間が生まれることです。
抵触日を迎えると、同一の派遣スタッフの受け入れができなくなり、少なくとも3ヶ月間はその業務を行っていた人材が不在となります。そのようなことが起こらないために、派遣可能期間を認識し、人材の配置や採用に関しての計画を早めに立てるようにしましょう。
派遣の期間制限が対象外となるパターン
人材派遣のクーリング期間は、どのような条件でも例外なく適用されるのではなく、そもそも期間制限がないものが存在します。この章では、派遣の期間制限が対象外となる5つのパターンについてご説明します。
60歳以上の派遣スタッフ
1つ目の対象外条件は、年齢です。60歳以上の派遣スタッフには、3年間という期間制限がありません。
60歳以上の派遣スタッフについては、キャリアアップよりも安定して雇用されることが重視されるため、期間制限の対象外となります。
派遣元企業に無期雇用されている派遣スタッフ
2つ目は、派遣スタッフが無期雇用の場合です。
派遣元と、期間の定めのない労働契約を結んでいる派遣スタッフには、期間制限は適用されません。
有期プロジェクト業務
3つ目は、終了期間が明確なプロジェクトで派遣スタッフを採用する場合です。
事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止のための業務であり、一定の期間内に完了することが予定されているプロジェクトであれば、期間制限の対象外となります。「一定の期間内」とは、特に年数を定めるものではありませんが、終期が明確でなければなりません。
日数限定業務
4つ目は、人材派遣の日数が限定されている業務に従事する場合です。
具体的には、派遣先で就業する労働者の月の所定労働日数が半数以下であり、なおかつ10日以下の日数で発生する業務がこの例外に当てはまります。
産前産後、育児休業・介護休業代替業務
最後の対象外となるパターンは、派遣先の企業で産休や育休、介護休業を取得している社員の代わりに、派遣スタッフを受け入れるケースです。
この場合、休業が終了するまでの延長が認められるため、それまではクーリング期間を設けずに就業を続けることができます。
なお、休業に入る労働者が、その前後に派遣労働者に引継ぎを行う場合も、その期間が必要最小限のものであれば、休業代替業務に含めて差し支えないとされています。
人材派遣のクーリング期間を正しく理解する
本記事では、人材派遣のクーリング期間について解説しました。
「事業所単位」と「個人単位」との派遣受入期間の制限に設けられたクーリング期間の考え方を正しく理解し、自社の人材活用の計画を立てていくことが必要です。また、派遣元企業、派遣先企業、派遣スタッフの三者でお互いにルールを確認し、はたらきやすい環境をつくると共に、信頼関係を築いていくことが重要です。
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