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人手不足なのに人件費を削減する目的や人手不足の解消方法について

公開日:2023.12.25

企業の課題

人手不足が深刻化するなか、自社の業績を少しでもあげるための手段として、人件費削減が挙げられます。人件費を削減することは、人手不足を加速化させるように見えますが、長期的な視点で考えると人手不足の解消が期待できるメリットもあります。
人手不足の状況でも人件費を削減する理由、その際の留意点や、人手不足を解消するための方法などをご紹介します。

人手不足の際に人件費を削減する目的

少子高齢化などの影響により、人手不足の企業が増えています。人手不足の主な原因は以下の4つが考えられます。

  • 少子高齢化による生産年齢人口の減少
  • 雇用形態・はたらき方のニーズが多様化
  • 企業と求職者のニーズが合わずミスマッチが発生
  • 顧客ニーズの多様化に伴い業務が複雑化

このような人材不足の中でも、企業はさまざまなコストを削減することにより、利益を上げる必要があります。人材リソースを適切に配置できているか、その費用は人件費ではなく別の費用に投資すべきではないかということを検討します。

リソースの最適活用

人手不足の状況下では、限られた人材リソースを最大限に活用しなければなりません。人件費を削減することで、人材リソースの適切な配置や重要なプロジェクトへの投資を支援し、効率性を高めることにつながります。

他コストへの投資

企業の収益性を維持または向上させるために、人件費を含むさまざまなコストの削減を検討する必要があります。出費を見直すことで、利益の増加を実現し、競争力を維持できる場合もあります。企業の業績が赤字であった場合は、人件費を削減することで赤字を相殺することも手段の一つです。これにより金融機関からの評価を向上させ、融資を受けやすくなるなどのメリットも発生します。

人件費を削減する際の留意点

人手不足の中で人件費を削減することに対して抵抗感を持つ社員も少なからずいるでしょう。人件費を削減する際には、在籍している社員への影響について留意する必要があります。

社員のモチベーションが低下する可能性がある

人手不足のしわ寄せなどですでに業務が増加している社員にとって、さらに人件費を削減することは、モチベーション低下につながる恐れがあります。なぜ人手不足の今、人件費を削減する必要があるのか、きちんと説明をし、社員のモチベーションを保つためにフォローすることが大切です。

社員の残業が増える可能性がある

人件費を削減するために減員などを行うと、現状よりも一人ひとりの業務が増加し、残業が増える可能性があります。人件費の削減によって、必要な投資ができ、効率的に業務を進められた結果、自社全体にメリットが生まれることを伝え社員の理解を得ましょう。また、業務効率化のシステムを導入するなど、できるだけ残業時間を増加させないように工夫することが求められます。

人手不足がさらに深刻化する可能性がある

人手不足の状況から単純に人件費を削減することは、コスト削減にはつながりますが、単純に人材を減らしただけでは、社内の人手不足の問題をさらに深刻化させる可能性もあります。どの部分の人件費を削減するか、その影響としてどんなことが考えられるかをしっかりシミュレーションして、人件費の削減に取り組みましょう。

人件費を削減する際に重視すべきポイント

では、人件費を削減する場合はどのような考え方をもとに行うべきなのでしょうか。重視すべきポイントを3つご紹介します。

長期的な視点を持つ

短期的な状況による判断ではなく、長期的な視点を持つことが大切です。短期的に考えると一時的に社員の負担が増えてしまうことがほとんどでしょう。しかし、人件費を削減することは、人的リソースの最適化を行うきっかけになったり、システム化を進めるきっかけになったり、生産性の向上につながる可能性があります。長期的な視点で考え、今後自社にどのようなメリットが生まれるかということを意識するようにしましょう。

法的規制と法令の順守

人件費削減のために法令違反を行うことは許されません。担当者は労働法やそれに関連する法令に厳密に従い、人件費削減の過程で法的な問題が発生しないよう心がけることが重要です。

社員とのコミュニケーション

人件費削減は社員に影響を及ぼす重大な変更です。社員との適切なコミュニケーションを重視することは、信頼を築き、過度な不安を軽減するために不可欠と考えられます。

社員のモチベーションを維持するために、人事の担当者や該当部署のマネジメントにあたる社員は、意見を出し合う場を設けたり、面談を行ったりして、コミュニケーションを強化してください。社員の意見を尊重し、報酬や評価制度を見直すことで、離職率を抑えることも可能です。

人件費削減以外の4つのコスト削減方法

人手不足の中での人件費削減が困難と判断するケースもあるでしょう。その場合、人件費以外ではどのようなコストを削減できるでしょうか。この章では、コストの中でも大きな割合を占める4種類のコストについて、具体的な施策を交えて解説します。

  • 業務コスト
  • オフィスコスト
  • 採用・教育コスト
  • エネルギーコスト

それぞれのコストの概要と、具体的な施策を解説します。

業務コスト

業務コストには、社員の給与や残業代、出張にかかる費用などが挙げられます。業務コストの削減には、以下のような施策が考えられます。

  • 業務の無駄を省き効率化する
  • ツールやシステムの導入で出張(外出)の機会を削減する

業務の効率化は、業務の無駄を省き社員の負担が減るだけではなく、残業代の削減にもつながります。またWeb会議システムを活用することで、出張または外出の機会を抑えることができ、移動費用や宿泊費用などの出張費用も削減できます。

オフィスコスト

オフィスの賃料、複合機のリース代金、備品の購入代金などがオフィスコストとなります。オフィスコストの削減には、以下3つの施策が効果的です。

  • テレワークの導入
  • ペーパーレス化の推進
  • 通信費などの定期的な見直し

テレワークを導入することで出社人数を抑え、出社人数に見合ったオフィスへ変更すれば、オフィス賃料の削減が可能です。また、ペーパーレス化を導入できれば、複合機のリース代やトナー代金の削減、書類管理にかかわる業務コストも抑えられます。

通信費などの固定費は定期的に見直し、最適なプランに切り替えることで、費用を抑えられる場合もあります。

採用・教育コスト

社員を採用する場合、採用コストと教育コストの2つのコストが発生します。採用コストは、求人サイトへの掲載料、人材紹介会社への紹介料などがあります。教育コストは、採用した社員の研修費用などがあります。採用・教育コストの削減には、以下のような施策例が挙げられます。

  • 採用業務を効率化する
  • 採用する手法を見直す
  • 社員の定着率を上げる

採用代行などを活用し採用業務を効率化することで、採用にかかわる社員の負担を軽減しつつ、採用にかかっていた人件費の削減にもつながります。また、外部企業のノウハウを取り入れることができるため、コスト削減と併せて採用力を強化したい場合に適しています。

採用手法の見直しも採用コストの削減に効果的です。自社の採用コストに合った求人サイトへの掲載に切り替えたり、社員の紹介で人材を採用する「リファラル採用」を取り入れることで、採用コストの削減が可能です。

さらに、社員の定着率を上げることは、社員の退職に伴う新たな人材の採用・教育にかかる工数やコストが減り、教育機会の最適化につながります。人材の入れ替わりが激しい場合、中長期的なキャリアプランを見据えた研修や人材配置ができず、社員のパフォーマンス向上につなげることができません。定着率が上がることで、最適なタイミングで必要な研修や業務の割り振りが行えます。

定着率を上げるためには、社員がはたらきやすい制度や環境づくりをすることなども必要です。

エネルギーコスト

エネルギーコストとは、主にオフィスや工場などで発生する水道光熱費のことを指します。以下は、エネルギーコストの削減例です。

  • テレワークを推奨する
  • 企業全体で省エネ製品を導入する
  • エアコンの設定温度を変更する

テレワークを推奨することで、出社人数を減らせるためオフィスの水道光熱費の削減につながります。また、オフィスや工場の照明・機器などをエネルギー効率のよい省エネ製品に変更したり、エアコンの温度を調整したりすることも効果的です。エアコンの温度を管理する場合は、社員が体調不良や集中力の低下を招かないように配慮する必要があります。

人手不足の際に着手すべき対処法4選

人件費の削減、その他コストの削減について解説しましたが、人手不足解消のため人件費の削減以外に着手すべき対処法としてこちらの4つをご紹介します。

職場環境の改善

職場環境の改善で特に意識したい点は「誰もがはたらきやすい環境づくり」です。

「誰もがはたらきやすい環境」とは、はたらき方の選択肢が多い、福利厚生が充実している、社員のスキルアップを支援しているなどが考えられます。例えばフルタイムだけではなく、時短勤務やフレックスタイム制などの導入が考えられます。

DXで業務効率化

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで業務を効率化させることができます。DX化は導入にコストがかかったり、使いこなすまでに時間と労力がかかったりと、導入してすぐに効果が現れるわけではありません。しかし適切にDX化ができれば、将来的に業務効率化を実現し、労力や工数が削減できます。

求人像を再検討する

2018年10月23日に公表されたパーソル総合研究所と中央大学が共同研究した「労働市場の未来推計 2030」によると、25~29歳女性の労働力率88.0%が45~49歳まで維持された場合、102万人の労働力が確保できるとされています。

※引用:パーソル総合研究所×中央大学|労働市場の未来推計 2030

性別や労働時間で採用要件を設けず、本当に自社にとって必要な人材はどんなスキルを持った人なのかなど、採用要件を見直しましょう。

他にもネジ締めなど力が必要な業務に機械などの設備を導入することで女性や高齢者に任せられる仕事はないか検討したり、業務を細分化して時短勤務でも業務ができるようにしたりするなどの見直しが大切です。

再雇用を歓迎する

再雇用する社員は自社での業務経験があるため、即戦力としての活躍が期待できます。また企業風土や組織体制、制度、一緒にはたらく社員についても把握しているため、採用後にミスマッチが起こることは少ないでしょう。

退職した社員を再雇用するシステムは外資系企業では珍しくありません。再雇用受け入れは人手不足を補う解決策になります

人件費を削減する留意点や人手不足の解決方法を理解する

人手不足と人件費の削減は相いれない2つの事柄に見えますが、業務の効率化や業績の回復のために、人手不足なのに人件費の削減を行わなければならないケースが発生することもあるでしょう。

その際には、社員のモチベーションの低下や残業時間の増加に留意し、フォローを欠かさないよう心がけてください。また、人件費の削減以外では、どのようなコスト削減が可能なのか検討することも大切です。人件費削減のしわ寄せが社員に向くことなく、生産性の向上につながるよう、適切にコストの削減を行えるようにしましょう。

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