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【わかりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い
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人材不足の解消や企業の生産性アップのため、アウトソーシング(業務委託)は有効な手段の一つです。しかしながら、アウトソーシングを利用するにあたっては「初めて利用するため、導入イメージが湧いていない」「自社にアウトソーシングが最適なのか」といったお悩みを抱える企業もいらっしゃいます。
そこで本記事では、アウトソーシングの導入を検討中の企業向けに、アウトソーシングの内容や種類、導入のメリットと注意点について分かりやすく解説します。アウトソーシングが向いている業務の特徴も紹介しますので、ご参考ください。
アウトソーシングとは自社業務の一部を外部に委託すること
そもそもアウトソーシングとは、「外部(アウト)からの調達(ソーシング)」を意味しており、外部から購入するすべてがアウトソーシングとなります。しかし、一般的には自社の業務に必要な人的資源やサービスを契約によって調達し、生産性向上や競争力強化などを目指す経営手法を指します。
アウトソーシングは企業の慢性的な人材不足や業務量の繁閑差に対応するため、業務工数・コスト削減などを目的に、定型的な業務の一部を外部企業に発注する方法と、組織構築や業務標準化を目的とした業務プロセスごと外部企業に委託する方法があります(業務プロセスごと外部に委託する4つの「プロセスアウトソーシング」参照)。
また、近年の急速な社会変化に対して、人材育成や組織体制の構築が自社だけで対応が難しくなっています。マニュアル作業や定型業務の委託だけでなく、業務プロセスごとのアウトソーシングを選択することで、こうした変化に対応する企業が増えています。
アウトソーシングの契約形態は、業務委託契約となり、委託する業務内容によって請負・委任・準委任となります。
契約締結後は、受託会社に業務遂行を一任するため、自社が受託会社の労働者に直接指示を行ったり、雇用関係が発生したりすることはありません。上図のように労働者との雇用関係や指揮命令は受託会社との間で行います。
また委託する業務内容によって、自社内で業務を遂行する「オンサイト運用」、委託先の社内で業務をする「オフサイト運用」と呼ばれる運用方法があります。
業務プロセスごと外部に委託する4つの「プロセスアウトソーシング」
先述したように昨今のアウトソーシングでは、業務プロセスごと外部に委託する「プロセスアウトソーシング」が注目されています。プロセスごと業務を委託することで、業務上の課題を洗い出し、業務プロセスごと改善から運用までを実現できます。
プロセスアウトソーシングには業務ごとに名称や内容が異なります。代表される4つのプロセスアウトソーシングについてご紹介します。
BPO | ITO | KPO | SPO | |
---|---|---|---|---|
名称 | ビジネス・プロセス・アウトソーシング | インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング | ナレッジ・プロセス・アウトソーシング | セールス・プロセス・アウトソーシング |
契約形態 | 請負・準委任 | |||
導入部門 | 間接部門 (総務・人事・経理・法務など) |
IT部門 | 部門を問わない | 営業部門 |
アウトソーシングする業務 | 間接部門の業務から業務プロセスまで | IT部門の業務から業務プロセスまで | データ収集・分析・加工など知的処理を必要とする業務 | 営業部門の業務から業務プロセスまで |
導入のメリット |
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事務業務を委託する「BPO」
BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、業務の一部を切り出し外部企業に発注することを指します。業務単体のアウトソーシングだけでなく、対象業務の前後プロセスや周辺業務も含めて、広範囲の業務をアウトソーシングします。
BPOは総務や人事、経理などの間接部門への導入が一般的です。例えば経理業務では、仕訳処理・経費精算・給与計算などの一般的な業務のアウトソーシングや、処理や管理のプロセスを切り出してアウトソーシングできます。このようにBPOは、業務の遂行と合わせて、業務プロセスの課題の洗い出し・改善・運用までを外部企業が担います。
BPOについての詳細は、以下のページもご覧ください。
>>BPOとは?アウトソーシングとの違いやメリット、注意点をわかりやすく解説
情報システム業務を委託する「ITO」
ITOとは「Information Technology Outsourcing(インフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング)」の略で、IT分野に関わる業務を外部企業に発注することを指します。
ITOでは、PC管理やヘルプデスクなどの情報システム部門の委託から、サーバー管理やセキュリティ運用などのシステム運用業務まで、IT系に関する業務を幅広く委託可能です。IT技術の発展はめざましく、それらの専門的な知識や経験を自社内でまかなうのはコストも時間も必要です。そのためITOの導入は、ますます加速するでしょう。
知的処理業務を委託する「KPO」
KPOとは「Knowledge Process Outsourcing(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)」の略で、情報の収集や分析などの知的処理業務を、外部企業に発注します。
KPOは、マニュアル化することが難しい情報収集やデータ加工・分析などが主な業務です。具体的には、株式のリサーチや金融商品の取引手法・リスク管理手法の開発などがあります。
営業業務を委託する「SPO」
SPOとは「Sales Process Outsourcing(セールス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、営業プロセスを外部企業のリソースと分業・協業しながら業務を行うことです。
SPOは、営業業務の遂行と併せて、営業部門や営業プロセスの課題の洗い出し・提案・改善までを担います。営業成果を上げるだけではなく、営業プロセスの構築を検討している企業に活用されています。
アウトソーシングは人材不足の解消や働き方の変化に対応するため注目されている
アウトソーシング市場は拡大を続けており、今後も成長することが予想されています。アウトソーシング市場が拡大を続ける主な要因として「労働人口の減少」と「働き方改革・多様化」が挙げられます。以下では、2つの要因について解説します。
労働人口減少による人材不足が顕著
少子高齢化が進む日本では、15歳~64歳までの労働人口の減少が社会的な課題となっています。
※引用:パーソル総合研究所×中央大学|労働市場の未来推計 2030
労働人口が減少すると、人材の確保が難しくなるため、企業にとって大きなリスクとなります。「業務量は増えるが人材は減っていく」「リソース不足のため事業拡大や新規事業ができない」など、成長を続ける企業にとって課題が増えていくことが想定されます。
労働人口減少に伴う人材不足という課題解決のために、アウトソーシングは有効な手段の一つといえるでしょう。
働き方改革・テレワーク普及のための業務最適化・効率化が必要
働き方改革や新型コロナウイルス感染症の拡大などによるテレワークの普及など、多様な働き方を実現するために、企業では業務の最適化・効率化、時代背景に合わせた組織づくりが必要になります。
Googleが2020年4月28日~30日に行った「テレワークで「生産性が上がった」のはどんな人、企業?:3000 人に聞いた今・これからの働き方>テレワークで「生産性が上がった」のはどんな人、企業?:3000 人に聞いた今・これからの働き方」によると、働き方改革では「残業はできないが業務量は減らない」という現場の声や、テレワークを普及させるには「ペーパーレス化やセキュリティ対策など社内のツール・システム構築が必要」という課題もあります。このように人的リソースに対して仕事量が多いことや、体制を整えるためのツール導入やシステム構築が追いついていない企業も少なくないのはないでしょうか。
※引用: Think with Google |テレワークで「生産性が上がった」のはどんな人、企業?:3000 人に聞いた今・これからの働き方
このように働き方や時代に合わせた組織づくりや、自社内の業務量を軽減する目的でもアウトソーシングが注目されています
アウトソーシングの契約形態は「請負」「委任」「準委任」の3種類がある
アウトソーシングには、「請負」「委任」「準委任」の3種類の契約形態があり、委託する業務内容や納品物などによって契約形態がかわります。
契約種別 | アウトソーシング | ||
---|---|---|---|
請負契約 | 委任契約 | 準委任契約 | |
法律 | 民法632条 | 民法643条 | 民法656条 |
契約の目的 | 仕事の完成 瑕疵担保責任がある |
法律行為となる事務処理 | 法律行為以外の業務の遂行 |
料金の対象 | 成果物 | 業務の遂行 | 業務の遂行 |
請負契約と委任契約(準委任契約含む)は内容がよく似ており、間違えやすいためアウトソーシングを導入する際は、契約ごとの内容を理解しておきましょう。
仕事の成果物を対価とする「請負契約」
請負契約は、仕事の完成を目的としており、成果物の納品に対価が支払われる契約です(民法632条)。請負契約には「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」があるため、納品した成果物に瑕疵(欠陥)がある場合は、受託会社へ責任追求ができます。業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。 一般的に請負契約でアウトソーシングする業務には「システム設計」「デザイン」「ソフトウェア開発」「製品や部品の製造」などがあります。
法律業務を遂行する「委任契約」
委任契約は、法律業務、または法律行為となる事務処理の遂行を目的に対価が支払われる契約です(民法643条)。法律業務は多岐にわたりますが、定義としては法的な効果を生み出す行為を指します。身近なものであれば、物の売買が「売買契約」という法律業務にあたります。そのほかには、税理士事務所が行う「税務業務」、宅地建物取引士が行う「不動産契約」などがあります。
請負契約とは異なり、成果物の完成責任は問いません。業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。
一般的に委任契約でアウトソーシングする業務には「税務業務」「不動産契約」などがあります。委任契約は原則として、無償契約であるため、報酬が発生する場合は特約を定める必要があります(民法648条1項)
業務の遂行を対価とする「準委任契約」
準委任契約は、法律行為となる事務処理以外の業務の遂行を目的に対価が支払われる契約です(民法656条)。請負契約とは異なり、成果物の完成責任は問いません。準委任契約も業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。
一般的に準委任契約でアウトソーシングする業務は「給与計算」「事務業務」「カスタマーサポート」「社員研修やセミナー講師」「調査・研究」「商品の広告宣伝業務」など幅広くあります。
準委任契約についての詳細は、以下のページもご覧ください。
>>準委任契約とは?特徴や運用上の注意点、他の契約との違いをご紹介
アウトソーシングを利用すべき企業の特徴
ここまではアウトソーシングや契約形態の種類について解説してきました。アウトソーシングの概要については理解できたものの、貴社の業務改善にアウトソーシングが最適なのか、また導入後に上手く活用できるのかなど、より具体的に検討されたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本章では、抱えている人事課題や運営課題を軸に「どのような悩みを持った企業がアウトソーシングを利用すべきなのか」について、4つの特徴にまとめてご紹介します。
標準化や効率化などの改善、社内の体制の整備が必要な企業
1つ目の特徴は、標準化や効率化などの改善、社内の体制の整備が必要な企業です。
社内体制の整備が追いついていない企業の場合、人によってやり方が異なり、効率が悪い、ミスが発生しやすい、担当者に問い合わせが集中してしまう、担当者がいないと業務が回らないなどさまざまな課題があります。
このような状況に陥っている場合はアウトソーシングを活用し、課題の洗い出しや業務フロー、マニュアル化などで業務を標準化し、社内の体制整備を行うとよいでしょう。
採用、教育、管理の手間や工数を抑えたい企業
新たに社員を雇用する場合、募集から書類選考、面談、採用、教育を行う必要があり、採用から教育には手間や工数がかかるため、スムーズに業務を遂行できるまでには時間が必要です。また誰がそれを担当するのか、採用した社員が定着するかどうかなど、悩みが尽きません。
人材派遣や紹介予定派遣、人材紹介であっても教育と業務管理、マネジメントなどを行う必要があり、時間と労力がかかります。これらの採用、教育、管理などの手間や労力の負担を軽減したい場合はアウトソーシングを活用するとよいでしょう。
業務ごとに担当者の配置が難しい人材不足の企業
スタートアップ企業やベンチャー企業などの場合、少数精鋭でチームを動かしている場合が多く、総務や経理業務など1人の社員が複数の業務を行っていることが多いのではないでしょうか。
しかし、企業の規模が大きくなるにつれ1人の社員が複数の業務に対応することが難しくなってしまいます。かといって業務を専任する担当者を置くことが企業の経営フェーズとして難しいことも多く、このような場合は、社員の業務量を抑えるためにアウトソーシングの活用をおすすめします。
企業の成長過程でさまざまなリソースが不足している企業
事業の好調や新規事業展開などで成長過程にある企業は、多方面で課題が発生し、リソースが不足することが考えられます。このような多方面でのリソース不足を解消するためには、アウトソーシングの活用が効果的です。
自社採用や派遣ではなくアウトソーシングを活用すると、採用や教育にかかる手間や労力・コストを抑えられます。また人材派遣と比較しても、管理やマネジメントをする担当者の配置が不要というメリットがあります。
また、アウトソーシングを活用し「企業に利益をもたらす人材」、「事業を拡大するための資金」、「企業で保有するモノ」など、経営資源(ヒト・カネ・モノ)を最適化することで組織体制の構築や組織の強化につながります。
アウトソーシングを利用する4つのメリット
アウトソーシングはどのような企業に向いているかの特徴をおさえた上で、どのようなメリットがあるのか、具体的にご紹介します。
(1)強化したい部門や業務へのリソース集中
新規事業の立ち上げや強化部門や業務へリソースを集中し、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最適化できます。変化が激しいこの時代に対応するため、新規事業の立ち上げや新しい業務が発生することがあります。それらに対応するために一から社員の確保をしていては企業にとってリスクが大きく、また必要な人数を確保できるかわからず機会損失につながってしまう可能性もあります。
また定型業務は成果や利益への直接的な影響は低いものの、毎日・毎月など定期的に発生します。「雑務や処理業務などに追われて、企画提案を考える時間がなかった」など、強化したい業務に集中できないことがあるのではないでしょうか。
企業は常に事業成長に必要な判断や迅速かつ柔軟な対応が求められます。それらを実現するためにもアウトソーシングを活用することで、自社内で強化したい部門や業務にリソースを集中することが可能になります。
(2)外部企業の知見やノウハウを活用し品質の向上や安定的な運用につながる
アウトソーシングを利用するメリットの一つに、専門性に特化した外部企業の活用があります。
例えば顧客対応など、自社で対応することも可能ですが、その都度の対応になってしまい、顧客の満足度向上につなげることができるかはわかりません。自社で対応するよりもコールセンターやコンタクトセンターの運用を行っている専門の企業に委託することで、社内リソースの確保ができるとともに、質の高い顧客対応を実現、顧客満足度に向上つなげることができます。
また外部企業に委託することで必要な設備投資を自社で行う必要がない点も魅力の一つです。他にも繁忙期の業務を委託することで繁閑期の業務の差がなくなり、安定的な運用ができます。
このように専門性の高い外部企業に業務を委託することで、外部企業の知見やノウハウを活用し品質の向上や安定的な運用が行えます。
(3)採用や教育業務の手間やコストを軽減できる
アウトソーシングを活用することで、社員の採用・教育にかかる手間やコストを軽減できます。
例えば、自社で経理業務のできる社員を採用する場合、募集から書類選考、面接、採用までの採用業務や、採用した社員に対する教育業務が発生します。
一方で、アウトソーシングを利用する場合は、外部企業が最適な運用体制や業務フローで業務を遂行します。
そのため、自社で運用している採用業務や教育業務の手間や労力を抑えるために、アウトソーシングの活用は効果的です。
(4)業務フローやオペレーションを改善できる
社員が日々の業務に追われていると、業務内容のマニュアル化や、分かりづらい業務フローの改善、体制構築まで手が回らず後回しになってしまうことが想定されます。
アウトソーシングを導入する際、委託する外部企業によっては、業務調査から始まり、業務の可視化・マニュアル化まで行ってくれる場合があります。それにより煩雑だった業務フローやオペレーションが改善し、業務の標準化が実現できます。
アウトソーシングを活用する際の2つの注意点
多くのメリットがあるアウトソーシングですが、活用にあたって気を付けたい注意点もあります。あらかじめ注意点をおさえて、よりスムーズにアウトソーシングを活用しましょう。
(1)社内にノウハウが蓄積されづらい
アウトソーシングを導入することにより、自社の社員がその業務に携わる機会が減るため、ノウハウが蓄積されにくくなります。アウトソーシングを提供する外部企業の撤退や方針転換により、いざ自社で運用をしようと思った際に、対応が難しくなってしまう可能性もあります。
アウトソーシングは外部企業の高度な技術や長年培った知見などを吸収できる機会でもあるため、任せきりにするのではなく、定期的な運用報告を受けるなかでノウハウを共有してもらう必要があるでしょう。
(2)情報漏えいの恐れがある
企業は、社員の個人情報や営業先・顧客先の情報といった数多くの機密情報を持っています。アウトソーシングを委託する業務内容によっては、これらの情報を外部企業に提供するケースがあります。
万が一、これらの情報が流出し、顧客が損害を被った場合、自社に大きな責任が問われる恐れがあります。情報漏洩のリスクを払拭するためには、セキュリティに力を入れており、プライバシーマークやISOなどの認証を得た外部企業に依頼することが重要です。さらに、どういった情報をどのように扱うか、しっかりと取り決めておきましょう。
アウトソーシングできる業務内容例
「具体的にどんな業務を依頼すればよいか分からない」という方向けに、アウトソーシングできる業務例を部署別にまとめました。
依頼できる業務は多岐にわたるため、以下の表の業務内容はあくまでも一例となります。
部署 | アウトソーシングできる業務内容 |
---|---|
人事部 | 採用代行・人材教育・教育研修・入退社手続・勤怠管理・社会保険事務・給与計算 など |
経理部 | 仕訳・経理精算・振込・伝票管理・売掛金/買掛金管理・給与支払い業務・決算書作成・税務申告 など |
総務部 | 受付/秘書業務全般・郵便室業務全般・社内外広報・備品/資産管理・社内イベント運営・契約書締結・管理・オフィスデザイン など |
営業部 | 顧客リスト作成・情報収集・営業活動(テレアポ・メール・訪問)、資料・書類作成 など |
技術部 | 研究開発・実験/評価(機械/電気/電子/組み込みソフト)・品質管理・工場ライン・図面修正/管理などの補助業務 |
物流部 | 在庫管理・入出庫作業・棚卸・検品・梱包・伝票作成 など |
情報システム部 | システム開発・運用・社内ヘルプデスク運営・インフラ運用・保守・データセンター運用・クラウド/ツール導入支援 など |
アウトソーシング導入時の5つポイント
ここまで企業にとってアウトソーシングの導入はさまざまなメリットがあるとお伝えしましたが、導入する前に知っておくとよい注意点があります。ここからはアウトソーシングを導入する際に抑えておくべき5つのポイントをご紹介します。
導入前の費用比較や業務切り分けが重要
コスト軽減や業務効率化など、アウトソーシングによる効果を得るには、事前の「費用の比較」「適切な業務の切り分け」です。
費用の比較は、アウトソーシングする業務を自社で行った場合と、外部企業へ委託した場合のコストを比較することです。委託する規模や業務内容によっては、自社内での運用よりもコストがかかる可能性があります。
また、アウトソーシングする業務としない業務を適切に切り分けておかなければ、逆に業務が非効率になるなど、得られる効果が低くなってしまう場合があります。業務の切り分けは、重要ではあるものの自社だけで行うのは難しいため、外部企業と相談しながら進めるとよいでしょう。
導入までの準備期間が必要
業務負荷が高くなっている場合、少しでも早くアウトソーシングしたいと考えるのが一般的ですが、アウトソーシングの導入は、問い合わせをして明日から利用できる、というものではありません。
業務内容の確認や業務体制、業務フローの構築などに時間が必要です。委託する業務内容によってはすぐ運用開始できるものもあれば、半年~1年後に運用開始するケースもあります。長いな、と感じるかもしれませんが、自社で採用や教育を行うよりも労力やコストが軽減できる分、メリットが大きいと考えられます。
導入準備に業務が発生
業務をアウトソーシングする場合、まずはどんな業務を委託するのか、またこれまではどのように行っていたのかなど現状確認をする必要があります。それらを確認した上で委託したい業務内容を受託会社に引き継ぎするためにマニュアル作成や業務フローの作成などの業務が発生します。
これまでの業務でイレギュラーが発生しやすかったり、業務フローが煩雑になっている場合は、効率的に業務を行うために業務フローの変更が必要な場合もあります。そのため、これらの業務に対応するための工数確保が必要です。
信頼できる外部企業の選定が重要
アウトソーシングを成功させるためには、信頼できる外部企業の選定が重要です。セキュリティの脆弱性から機密情報の漏洩リスクが増大したり、品質の低下やスケジュールの遅延などにより製品やサービスの提供に問題が生じたりする可能性もあります。信頼できる外部企業を選定するためには、事前の調査や検討が不可欠です。
信頼できるパートナーを選ぶ際のポイントは以下の通りです。まず、信頼性を評価するために事前の調査を行いましょう。企業の実績や業界での評判を確認し、顧客の満足度や成功事例を調査します。次に過去にサービスを提供した顧客の意見やフィードバックを参照することで、パートナーの信頼性を判断できます。さらに、企業の安定性や経験も重要です。長期的なパートナーシップを築くために安定した経営基盤や専門知識を持つ企業を選んでください。また、契約条件や約款を詳細に検討し、サービス品質や保証について確認しましょう。信頼性の高いパートナーを選ぶことで、アウトソーシングの成功率と安心感の向上が期待できます。
受託会社と定期的な情報共有を行う仕組みが必要
例えば経理業務をアウトソーシングすると、自社で経理業務の経験を積む機会が失われ、社内での経験やノウハウの蓄積が難しくなります。アウトソーシング先の企業を選ぶ際には、受託会社との定期的な情報共有が重要です。定期的に受託会社との面談や確認を行い、「受託会社が何をやっているか分からない」という事態を防ぐことが重要です。以下に情報共有のポイントを説明します。
- 目標や要件の明確化:初めに双方の目標やプロジェクトの要件を明確に共有してください。期待する成果や納期、品質基準などを明確にすることで、意図の一致を図れるでしょう。
- 定期的な進捗報告:プロジェクトの進捗状況や成果物について、定期的に報告を受ける仕組みを作ります。進捗報告は定期的なミーティング、メール、チャットツールなどを通じて行うのがよいでしょう。進捗状況の共有により、問題や遅延があれば早期に対処することができます。
- コミュニケーションの活性化:定期的な情報共有のために、アウトソーシング先とのコミュニケーションの活性化が不可欠です。定期的なミーティングやビデオ会議、チャットツールの活用など、目的に合ったコミュニケーション手段を選んでください。意見交換や質問応答を通じて、円滑なコミュニケーションを確保しましょう。
- 問題の共有と解決:問題が発生した場合には、即座に受託会社と共有し、共同で解決策を見つけましょう。透明性と相互の信頼関係が重要です。問題を共有することで、改善策を検討し、プロジェクトの進行を円滑にすることができます。
- フィードバックの提供:受託会社に対して定期的なフィードバックを提供します。成果物の品質やパフォーマンスについて具体的な評価を行い、改善点や認められた点を共有してください。適切なフィードバックは双方の成長とパフォーマンス向上が期待できます。
以上のポイントを踏まえて、アウトソーシング先の企業との情報共有を行うことで、円滑なプロジェクト進行と効果的な業務委託を実現できるでしょう。
アウトソーシングと人材派遣の違い
アウトソーシングとよく比較されているのが、派遣スタッフを受け入れる人材派遣です。外部人材の活用を検討している場合、自社にとってアウトソーシングと人材派遣のどちらが最適なのか迷うことも多いのではないでしょうか。
アウトソーシングも人材派遣も外部企業から人的資源を調達する点で共通していますが、主に契約形態や利用目的、マネジメントが必要かなどの違いがあります。この章ではそれぞれの違いを解説します。
人材派遣は「労働者派遣契約」、アウトソーシングは「業務委託契約」
アウトソーシングと人材派遣の大きな違いは、契約形態です。人材派遣は自社と派遣会社(派遣元)で「労働派遣契約」を結びます。人材派遣会社と締結する「労働者派遣契約」は「派遣会社が雇用している派遣スタッフを自社で就業させる」という内容です。契約を締結することで、自社で派遣スタッフを受け入れできるようになります。
アウトソーシングの場合は、自社と受託会社で「業務委託契約(請負・委任・準委任)」を締結します。受託会社と締結する「業務委託契約」は「受託会社に納品物の制作または業務の遂行を一任する」という内容です。
人材派遣は「労働力の確保」、アウトソーシングは依頼した業務の「遂行・納品」
人材派遣の利用目的は「労働力の確保」です。人材派遣は主に、急に発生した業務への対応、繁忙期の限定的な活用、急な欠員による業務対応、産育休・介護休などの代替要員補充などのシーンで活用されることが多いです。
一方でアウトソーシングの利用目的は依頼した業務の「遂行・納品」です。自社にノウハウがなく、製品やサービスなどの提供が難しい場合や定型化された業務を一括で外部に委託したい場合などに適しています。また依頼したい業務などに精通している外部企業に委託することで、品質の向上にもつながります。
人材派遣は「自社」、アウトソーシングは「受託会社」が業務指示をする
人材派遣の場合、派遣スタッフは自社内で業務を行います(業務内容や人材派遣会社によってはテレワークを取り入れているため、その限りではありません)。その際の派遣スタッフへの業務指示は、自社が行います。そのため、頻繁なルール変更やイレギュラーが多い業務では、柔軟な対応がとれる人材派遣が適しています。
一方でアウトソーシングの場合は、受託会社へ納品物の制作または業務の遂行を委託します。契約内容により成果物の納品、または業務の遂行を受託会社が行うので、受託会社が労働者へ業務指示を行います。
目的に合わせてアウトソーシングまたは人材派遣を活用しよう
契約ごとに異なるアウトソーシングの違いと、人材派遣の特徴を以下の表にまとめました。適した利用方法と、自社の現状を照らし合わせながら、アウトソーシングと人材派遣どちらが適しているか、検討する一つの材料にしてください。
業務委託 | 人材派遣 | |||
---|---|---|---|---|
請負 | 準委任 | 委任 | ||
料金の対象 | 仕事を成果物とする | 業務の遂行を対価とする | 法律業務の遂行を対価とする | 派遣スタッフを受け入れ労働を対価とする |
適した利用方法 | サイト制作/システム制作など成果物を求める場合 ※成果物の内容によっては責任を問う |
マニュアル業務/定型業務を依頼したい場合 ※成果に対する責任を問わない |
法律業務を依頼したい場合 ※成果に対する責任を問わない |
自社に人員を追加したい場合 ※一時的な人材不足を補う(社員の休職や繁忙期など) |
アウトソーシングと人材派遣の違いについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。併せてご覧くださいませ。
>>アウトソーシングと人材派遣の違いとは?特徴やメリットを分かりやすく解説
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