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【ナレッジコラム】
教えます!2023年度に向けた「人事と採用のセオリー」 vol.001
オンライン化がもたらした「全国採用」に備えよ

公開日:2022.11.18

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【ナレッジコラム】 教えます!2023年度に向けた「人事と採用のセオリー」 vol.001 オンライン化がもたらした「全国採用」に備えよ

株式会社人材研究所 代表取締役社長
曽和 利光 氏

オンライン化がもたらした「全国採用」に備えよ

さまざまなHRエキスパートによるナレッジをお伝えするコンテンツ『ナレッジコラム』。
株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和 利光氏による「2023年度の人事・採用」に向けたメッセージを4回連載でお届けします。

オンライン化で採用が変わった

コロナ禍によってもたらされた採用活動のオンライン化はさまざまな影響を与えています。例えば、対面での説明会は減り、録画やライブでの配信による会社情報の提供に変わりました。面接も多くの企業がオンライン会議システムなどを用いています。その結果、候補者の外向性や安定性などが重視されていたのが、話している言葉自体に集中して誠実性や知性が評価される変化などもありました。オンライン化で採用活動のハードルが下がったことによって候補者のエントリー企業数が増え、求人倍率は高止まりしているにもかかわらずエントリー者が増える珍しい現象も生じています。

どこの誰にでもアプローチできる世界

他にもオンライン化の影響はいろいろありますが、その中で最も大きなものは、採用・就職活動が「時空を超える」ことによって生じる「現在地を問わない採用・就職」ではないかと思います。どこに本社がある企業でも、候補者がどこにいようとも採用ができますし、どこにいる候補者でも、本社がどこの企業でも応募ができるという世界です。これまでなら、距離が一つの壁となって守られていたり攻められなかったりした対象へも、オンライン化によっていとも簡単にアプローチができるようになりました。採用・就職における世界のフラット化、グローバル化と言ってもよいかもしれません。

すべての企業が採用競合になる

フラット化が起こるとどうなるでしょうか。それまでの参入障壁がなくなれば、地方の企業も大都市の企業もワン・マーケットでの採用競争が起こることになります。地方のトップ企業でそれまで地元のトップ人材を楽々採用できていた企業も、大都市の企業からの攻勢に対処しなければいけなくなります。実際、私が全国各地の企業から話を伺う中で、地方トップ企業が「なぜか」人材が採用できなくなってきているという話がよくあります。しかし、それは「なぜか」ではなく、オンライン採用によって東京などの大都市企業が採用競合になり、そこに競り負けていることに気付いていないだけではないかと考えられます。

結果、東京一極集中につながっている

実際、東京一極集中は続いています。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)9月結果」では、東京都は約2.8万人の流入超過、一都三県では約6.7万人の流入超過でした。個別の会社を見ても、ある東京のIT企業では、オンライン採用前は東京以外の採用は2割程度だったのに対し、オンライン化後は5割を超えました。そして、それはもう珍しいことではありません。日系大手企業も徐々に重い腰を上げ、東京・大阪を中心に取り組んでいた採用活動の対象を全国に広げて、その地方ごとのトップ人材を採用しようという動きが出ています。東京の人口は多いのですが求人倍率も高いため、他の地域に人材を求めるこの動きは止まらないでしょう。

地方で働き「たい」人は増えている

さて、こんな話をすると「東京の企業は人気なのだから仕方ない」と絶望感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そんなことはありません。いろいろな調査を見ると、地方の人気が高まっているという結果がほとんどです。例えば、UIターン転職希望者はコロナ禍以前よりも大幅に増加して4割程度になっていますし、地元以外の地方で働いてみたいという学生も4割を超えるという調査もあります。住みたい地域も、大都市:地方だと4:6くらいで地方企業の優位が見て取れます。地方で働くことを希望している人材は増えているのですから、地方への移住が増えてもよいような状況なのです。

東京企業が上手に採用を行っているだけ

つまり、東京一極集中が続いているのは東京に人気があるからではなく、向かい風の中、オンライン化のメリットを使って東京の企業が「上手に」採用をしているだけなのではないでしょうか。私は、東京と地方のどちらの肩を持つわけではありませんが、結局わかることは、企業努力の一つである採用活動力によって、環境の逆風(ここで言えば地方志向の人材が増えていること)などは押し返せるということです。別の言い方をすれば、追い風の地方企業にとってはこれを利用して、オンライン採用を徹底的に活用することで、逆に東京から人材を採用することも大いに可能なのです。実際に、そのような地方企業もたくさんあります。

オンライン採用はやめてはいけない

まず、そのためには時代はwithコロナだからといってオンライン採用をやめてはいけません。全国から人材を募るためには、オンライン採用が前提です。対面でしか選考をしない企業はPCを開けて2分で面接を受けることができる企業には負けてしまいます。しかも、少子化を背景とした売り手市場はこれから長らく続くトレンドであり、採用活動の際にハードルを課すことは無謀な行為です。引く手あまたの優秀な人材に「来るな」と言っているようなものです。活動負荷の低いオンライン採用は、企業側だけでなく候補者側にとっても好評です。これを止めていては採用市場から自ら退場しようとしているようなものです。

自社にとって「良い市場」を見つける

オンライン採用を利用すれば、「どこの誰でも」採用対象にできるわけですから、次にすべきことは自社が求める人材がどこにいるのか、広く全国を見渡して狙いを定めることです。自社の地元出身の人材はどこに多いのか、どの地域の人材は地域圏外に出ず、どの地域の人材は圏外に出るのかなど国や人材会社の調査をネットで検索すれば知ることができます。もし地元出身者が多く存在し、就職・転職を圏外でする確率の高い地域などがあれば、そこは優良ターゲットかもしれません。そういう「良い市場」を見つけて狙い撃ちしていくことで、全国化した人材獲得競争に初めて勝つことができるのではないでしょうか。

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Profile

人材研究所 曽和 利光 氏

株式会社人材研究所
代表取締役社長
曽和 利光 氏

株式会社人材研究所代表取締役社長。日本採用力検定協会理事、日本ビジネス心理学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。リクルート時代に採用・育成・制度・組織開発・メンタルヘルスなど、様々な人事領域の業務を担当し、同社の採用責任者に。ライフネット生命、オープンハウスの人事責任者を経て、2011年人材研究所を創業。実務経験を活かした、リアルで実効性のある人事コンサルティングや研修、採用アウトソーシングなどをこれまで数百社に対して展開。著書に『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社)、『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)など多数

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