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【企業向け】人事戦略で活用すべきフレームワーク3選と導入のポイントを解説
公開日:2025.11.27
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人事戦略とは、組織の目標達成のために人材を確保・育成し、最大限に活用できるよう人事全般の仕組みや業務を最適化・整備する戦略です。そして、人事戦略を策定・実行する際、体系的に状況を分析するために役立つものが「フレームワーク」です。
本記事では、人事戦略の策定に有効なフレームワークを具体的に解説します。フレームワークを最大限に活用するためのメリットや、実践における重要なポイントもご紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。
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人事戦略とは
人事戦略とは、企業の経営戦略を実現するために必要な人材を確保・育成し、最大限に活用できるよう、人事制度や人事全般の仕組みを最適化・整備することです。
単に「人を雇う」「給与を支払う」といった日常的な人事業務に留まらず、企業の目指す方向性に合わせて、人事の側面からどのようなアプローチが必要かを考え、体系的に実行していくことを指します。人事戦略は、企業の進むべき道を示す経営戦略と密接に関わるものだといえます。
人事戦略について詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてお読みください。
経営戦略との違い
経営戦略が「企業がどのような事業で、どのように利益を出していくか」という目標を定めるのに対し、人事戦略は「その目標を達成するために、どのような人材が、どれだけ、いつまでに必要なのか」「その人材をいかに育成・配置し、活かしていくのか」という、「人」に関する具体的な道筋を立てるものです。
人事戦略は経営戦略を達成するための重要な手段であり、経営戦略なくして有効な人事戦略は成り立ちません。
「人材戦略」「戦略人事」といった言葉との違いや、経営戦略との関係性などについて詳しくは以下の記事で解説しています。あわせてお読みください。
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人事戦略に活用できるフレームワーク
人事戦略に活用できるフレームワークを3つ紹介します。
3C分析(Customer, Competitor, Company)
3C分析は、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つの視点から、自社の現状や市場における立ち位置を把握するための分析フレームワークです。人事戦略においては、例えば以下のように活用できます。
| Customer(顧客) | 自社がターゲットとする顧客は誰か、そのニーズは何かを明確にすることで、どのようなスキルや経験を持つ人材が必要かを定義できる。
例:顧客からDXのニーズが高まれば、デジタルスキルを持つ人材の採用・育成が重要。 |
|---|---|
| Competitor(競合) | 競合他社がどのような人材を獲得し、どのように育成しているか、どのような人事制度を導入しているかなどを調査する。
これにより、採用市場での自社の優位性や、競合との差別化ポイントを見つけられる。 |
| Company(自社) | 自社の強み・弱み、組織文化、現在の人材構成、既存の人事制度などを客観的に把握できる。
例:特定の技術力に強みがある一方で、マネジメント層の育成が課題といった内部状況を認識する。 |
これら3つの要素を分析することで、自社の経営戦略に合致する人材像や、採用・育成における具体的な方向性を見出すことが可能になります。
SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)
SWOT分析は、自社の強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)といった内部環境と、機会(Opportunities)・脅威(Threats)といった外部環境を分析するフレームワークです。人事戦略に落とし込むと、以下のようになります。
| Strengths(強み) | 自社の人材面における優位性。 例:高い技術力を持つベテラン従業員が多い、はたらきやすい組織文化がある、独自の研修プログラムが充実している、など。 |
|---|---|
| Weaknesses(弱み) | 自社の人材面における課題点。 例:若手リーダーの不足、特定のスキルを持った人材が枯渇している、離職率が高い、評価制度が形骸化している、など。 |
| Opportunities(機会) | 外部環境における、自社の人材戦略にとって追い風となる要素。 例:少子高齢化による採用難の状況下で働き方改革によりリモートワークが普及して遠隔地の人材も採用しやすくなった、リスキリングの補助金制度が充実した、など。 |
| Threats(脅威) | 外部環境における、自社の人材戦略にとって逆風となる要素。 例:労働人口の減少、競合他社による人材の引き抜き、DX化の進展によるスキルの陳腐化、など。 |
SWOT分析を行うことで、自社の内部状況と外部環境の相互作用を理解し、強みを最大限に活かしながら弱みを克服し、さらに機会を捉えながら脅威に対処するための人事戦略を具体的に立案できます。
PEST分析(Politics, Economy, Society, Technology)
PEST分析は、企業を取り巻くマクロな外部環境を政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から分析するフレームワークです。
人事戦略においては、長期的な視点で外部環境の変化が人材に与える影響を予測するために活用します。
| Politics(政治) | 法改正(例:働き方改革関連法、育児介護休業法改正)や政府の政策(例:リスキリング支援、最低賃金の引き上げ)、国際情勢などが人事制度や採用方針に与える影響を検討。 |
|---|---|
| Economy(経済) | 景気動向(景気拡大・後退)やインフレ・デフレ、株価の変動などが、採用計画・賃金水準・福利厚生・従業員のモチベーションに与える影響を分析。 |
| Society(社会) | 人口動態(少子高齢化、労働人口減少)や多様性への意識、ライフスタイルの変化(リモートワーク志向)、労働価値観の変化などが、採用ターゲット層やはたらき方、組織文化に与える影響を考慮。 |
| Technology(技術) | AI・IoT・クラウドなどの技術革新が、必要なスキルセットの変化や業務プロセスの変革、人材育成のあり方、採用チャネルに与える影響を予測。 |
PEST分析は、自社ではコントロールできない外部環境の変化を早期に察知し、それらに対応した人事戦略を策定するための重要な基盤となります。これにより、将来的なリスクを回避し、新たな機会を捉えるための準備を進めることができるでしょう。
人事戦略にフレームワークを活用するメリット
人事戦略の策定や実行においてフレームワークを取り入れることで、多くのメリットが得られます。
複雑な状況を整理して可視化できる
複雑な状況を体系的に整理し、可視化できます。漠然とした課題が明確になり、問題の本質を見極めやすくなるでしょう。
加えて、客観的な視点で自社の人材や組織の現状を分析できるため、属人的な判断や思い込みに頼らず、論理に基づいた戦略立案が可能になります。
関係者間での認識のズレを防げる
社内で共通のフレームワークを用いることで、関係者間での認識のズレを防ぎ、円滑な議論と合意形成を促進します。経営層や他部門への説明も、データや理論に基づいた明確な根拠を示せるため、説得力が増し、協力体制を築きやすくなるでしょう。
効果的に戦略立案できる
効率的に戦略を立案できる点も大きなメリットです。ゼロから考える手間が省け、限られた時間の中で質の高い人事戦略を構築できるでしょう。企業の経営目標達成につながる、より効果的で持続可能な人事戦略の実現を後押しします。
人事戦略にフレームワークを活用する際のポイント
フレームワークを効果的に活用するための重要なポイントを押さえましょう。
取り組む前に目的を明確に
最も大切なのは「何のために使うのか」という目的を明確にすることです。現状把握のためなのか、新しい施策を考えるためなのか、目的が曖昧だとフレームワークも形骸化してしまいかねません。
自社にあわせて柔軟にアレンジを
フレームワークはあくまで一般的な型であり、企業の規模、業種、組織文化、抱える課題はそれぞれ異なります。本記事の前半で紹介したフレームワークを必ずしもそのまま適用するのではなく、必要な要素を選び、自社にフィットするよう調整することも検討してみましょう。
他部門からの意見も取り入れる
多角的な視点を取り入れる意識を持ちましょう。人事部門だけで完結するのではなく、経営層や現場の従業員、他部門の意見も積極的に取り入れることで、より実効性の高い人事戦略が生まれます。
一度きりの取り組みで終わらせず、PDCAを実行する
一度きりの実施で終わらせないことも重要です。人事を取り巻く環境は常に変化していくため、定期的にフレームワークを使って分析し、戦略の見直しを行うことで、常に最適な人事戦略を維持できるでしょう。「計画→実行→評価→改善」というPDCAサイクルを回すことにもつながります。
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人事戦略にフレームワークを積極的に活用しましょう
人事戦略の重要性とその策定に役立つフレームワークについて解説しました。
フレームワークは、単なる分析ツールに留まりません。関係者間での認識のズレを防ぎ、円滑な議論と合意形成を促進する共通言語としても機能します。また、効率的に戦略を立案できるため、限られたリソースの中で質の高い人事戦略を構築できるでしょう。
フレームワークを最大限に活かすためには、「何のために使うのか」という目的を明確にし、自社の状況に合わせて柔軟にアレンジすることが重要です。さらに、他部門からの意見も取り入れ、一度きりの取り組みで終わらせず、PDCAサイクルを回すことで、常に変化する環境に対応し、最適な人事戦略を維持することができます。
ぜひ、今回ご紹介したフレームワークと活用のポイントを参考に、貴社の人事戦略をより強力なものへと進化させてください。
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監修者
HRナレッジライン編集部
HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。
編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。
法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。
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