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人材派遣活用で気を付けるべき「人権リスク」とは?事例や防止の取り組みもご紹介

公開日:2026.01.30

企業の課題

近年、経済誌や報道などで「人権」や「人権デュー・ディリジェンス」という言葉を目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。数年前までビジネスの世界で「人権」という言葉が出てくることはほとんどありませんでしたが、近年では、「ビジネスと人権」が企業にとって非常に重要なテーマの一つになっています。

本記事では、企業はなぜ今「ビジネスと人権」に取り組む必要があるのかについて解説し、人材派遣活用における人権リスクの具体例や、パーソルグループでの考え方・取り組みをご紹介します。

最後に、パーソルグループのサービスをご利用いただく顧客企業の皆さまに向けて、ご理解・ご協力をいただきたいことについて記載していますので、最後までお読みいただけますと幸いです。

※パーソルグループ:パーソルホールディングス株式会社およびその連結子会社

企業が「ビジネスと人権」に取り組む必要性

「人権」とは、人間が尊厳をもって平等に生きる権利のことであり、すべての人が生まれながらにして持っているものです。

これまで、国際社会における人権の保護は、基本的に国家の義務とされていました。しかし、グローバル規模でビジネスを展開する企業が出てくる中、企業がその事業活動により人権を侵害してしまうことが増え、国家だけで全ての人の人権を守ることに困難が生じています。

このような背景の下で、企業にも自社の事業活動に関わる人々の人権に対する負の影響(以下「人権リスク」)を防ぐ責任があり、企業が人権の保護に向けて取り組んでいくことが必要だという議論がされるようになりました。

こうした議論から生まれたのが、最も重要な国際的枠組みの一つである国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」)です。指導原則では、「すべての企業には人権を尊重する責任がある」ことが初めて明言され、これを受けて世界の各国・各地域で企業に人権尊重を求める取り組みが加速しています。

日本でも、政府が2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定し、人権尊重の取り組みについての企業の理解を促進するとともに、「ビジネスと人権」に関する企業の取り組みを後押ししています。

「人権リスク」とは

人権リスクとは、企業や経営にとってのリスクではなく、企業活動により影響を受ける個人や集団の人権が侵害されるリスクのことを指します。

企業が留意すべき人権リスクは、その事業活動の性質や内容、関係しうるステークホルダーなどによって、多岐にわたります。


<国際基準に基づく主要な人権リスクの一部>

人権リスク 詳細
パワーハラスメント
(パワハラ)
  • 過大な要求・叱責、罵詈雑言、暴力・脅迫行為、無視や仲間外しなど
  • 飲酒の強要、飲み会への参加強要なども含む
セクシャルハラスメント
(セクハラ)
  • 性的内容の発言(性的内容の情報の流布、性的な事実関係を尋ねることなど)、性的な行動(強制わいせつ行為)
  • 個人の性指向・性自認に関する不適切な発言
マタニティハラスメント
(マタハラ)

パタニティハラスメント
(パタハラ)
  • 産休・育休制度などの利用や妊娠・出産等の体調に関する嫌がらせ
介護ハラスメント
  • 介護に伴う時短制度などの利用に関する嫌がらせ
差別的対応
  • 性別、性的指向、性自認、障害、疾病、年齢、国籍、出自、宗教、政治的意見などを基にした差別的な扱い
  • 採用・昇格における差別的評価や差別的な発言やコミュニケーション
  • 設備のバリアフリー化の遅れ
労働安全衛生
  • 労働に関係した負傷・疾病やその原因となる労働環境管理の不徹底(温度・換気など)
  • 危険な労働に際する保護具の不使用・防災用具・訓練の不備など
プライバシーの権利
  • 本人の承諾を得ない個人情報の取得、保管、公開
  • 従業員・取引先・消費者等の個人情報の漏洩
  • 私生活への過度な干渉
労働時間
  • 健康を損なうような長時間労働
  • 法律で定められた労働時間(日本の場合は、週40時間の労働と36協定で定める時間外労働の上限(月45時間・年360時間))を超えた労働
  • 適切な休憩の不足

人材派遣活用で起こりうる「人権リスク」

人権リスクは、人材派遣活用においても留意する必要があります。

例えば派遣スタッフに関しては、派遣先企業においてパワハラやセクハラなどのハラスメントを受けるケース、妊娠・子育てなどを理由とする不利益な取り扱いを受けるケース、派遣スタッフと正社員などの間での待遇格差が問題になるケースなどが見られます。

これらの人権リスクが想定される場合には、その防止・軽減のための取り組みを講じ、当該人権リスクが顕在化した場合には直ちに是正のための適切な措置をとる必要があることは言うまでもありません。

しかしながら、ビジネスの現場では、これらに該当すると言い切ることが難しい事案(いわゆる「グレーゾーン」の事案)も少なからず存在すると考えられます。このような事案についても潜在的な人権リスクの一端と捉え、その防止・軽減に向けて取り組んでいくことが重要です。

人権リスク例(ハラスメント・差別的対応)

人材派遣の活用をする中で、派遣スタッフの人権が問題となる3つの事例をご紹介します。

事例① パワーハラスメント

派遣先企業では、派遣スタッフの配属先部署のベテラン社員が派遣スタッフに日常業務の指導を行っていた。
当該社員は、派遣スタッフがミスをすると、他の社員がいる前で大きな声・強い口調で何度も指摘することがあった。チャットでは人格否定や威圧的な言葉遣いで繰り返し連絡を送っていた。
派遣スタッフは、そのような指導がパワーハラスメントに当たると人材派遣会社(派遣元)に訴えた。

業務上の指導については、客観的に見て業務上必要かつ相当の範囲を超えなければパワーハラスメントに該当しないとされていますが、その該当性はさまざまな要素を総合的に考慮して個別に判断されます。

派遣スタッフがパワーハラスメントの被害を訴えた場合、派遣先企業において、一見、パワーハラスメントに該当しないと考える場合でも、 早期に事実関係を適切に把握する必要があります。仮にパワーハラスメントに該当しないと判断する場合でも、例えば指示の仕方が強いなど相手がパワーハラスメントと感じる 業務上不適切な事案であれば、何らかの是正措置や再発防止策の検討が必要になります。


事例② マタニティハラスメント

派遣スタッフが妊娠した旨を人材派遣会社(派遣元)の担当者に伝えた。
派遣スタッフは、現在の派遣期間の終了後も派遣先企業で継続して就労したい旨を人材派遣会社(派遣元)の担当者に伝え、その担当者から派遣先企業に伝えていたが、派遣期間の満了後に派遣先企業が契約を更新することはなかった。
派遣スタッフは、派遣先企業から経営状況の悪化が理由であると伝えられたが、同じ部署にいた他の派遣スタッフは契約更新の上で就労しており、妊娠したことが不利に影響したのではないかと疑問を持っている。

派遣契約を更新するか否かは、派遣スタッフ・派遣先企業・人材派遣会社(派遣元)の三者間の合意に基づきますが、妊娠を理由として契約を更新しないなどの不利益な取り扱いをする場合は、マタニティハラスメントとして問題になります。

妊娠・出産・育休などの事由が発生している間および当該事由の終了後1年以内に、当該事由を契機(きっかけ)として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠などを理由として不利益取扱いを行ったと解釈され、法令違反となります。

例外として、経営状況の悪化が理由のケースや妊娠の発覚前から本人の能力不足などが問題とされていたケースなど、業務上の必要性が当該不利益の影響を上回るような場合にはマタニティハラスメントに該当しない可能性があります、ただしながら、不利益取扱いとなりうる措置を行うタイミングが妊娠や出産のタイミングと重なる場合は注意が必要です。


事例③ 差別的対応

派遣先企業が社内研修を導入することになった。派遣先企業は、正社員には研修受講を認めたが、来客対応とPCを用いた事務処理業務を行っている派遣スタッフ(複数名)には正社員ではないことを理由に研修の受講を認めなかった。
ある派遣スタッフは、雇用形態の違いを理由に研修を受講出来ないことは不適切であると派遣先企業に伝えたが、それでは業務上支障があるとして取り合わなかった。

派遣スタッフであることのみを理由として一律に研修を受講させないことは、派遣スタッフへの差別的対応として問題になります。

派遣スタッフの業務内容のスケジュール上、研修受講が難しいなどの合理的な理由がある場合には許容されうるものの、派遣スタッフと正社員などとの間で異なる取り扱いをする場合には、合理的な理由があるといえるか(派遣スタッフであることのみを理由としたものでないか)を慎重に検討する必要があります。

この事例のように、派遣スタッフという雇用形態のため研修を受講できないという理由が合理的なものといえない場合には、差別的対応として問題になります。

また、このような待遇面での問題のみならず、コミュニケーションにおける差別的な言動も、人権リスクの一端として捉えられるケースがあります。派遣スタッフにとって差別的と受け取られるような言動をしないことについても留意が必要です。


<コミュニケーションにおける差別的な言動例>

  • 正社員から名前ではなく「派遣さん」と呼ばれる
  • ランチや懇親会などの社内イベントに関して派遣スタッフに声をかけない

パーソルグループ「ビジネスと人権」の取り組み

このように、人材派遣活用においては、派遣スタッフの派遣元である人材派遣会社だけではなく、派遣先企業での対応が派遣スタッフの人権問題に発展するケースがあります。派遣先企業は、人材派遣会社と連携をしながら、人権リスクの防止に取り組むことが必要です。

パーソルグループでは、人権尊重の取り組みを推進しています。取り組み内容のご紹介と共に、派遣先企業の皆さまへのご協力のお願いについて記載させていただきます。

企業の「ビジネスと人権」に対する取り組み事例の一つとしてもぜひご参照ください。

パーソルグループの取り組み

パーソルグループは、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」を実感できる未来をつくることを使命とし、多様な価値観を持つあらゆる個人の「はたらく」をサポートしています。 すべての「はたらく」が笑顔につながる社会を目指して、2022年に「パーソルグループ人権方針」を定め、人権尊重の取り組みを推進しています。

パーソルグループ人権方針では、パーソルグループが事業活動に関係するすべての人々の人権を尊重することを掲げています。この「すべての人々」の中には、パーソルグループの従業員のほか、顧客企業に派遣されるスタッフも含まれています。

しかしながら、派遣スタッフは派遣先企業の下で業務に従事することから、派遣元である当社のみでは、派遣スタッフの人権リスクの防止・軽減のための措置を講じることが難しい場合があります。

このように、私たちのみでは事業活動に関係する「すべての人々」の人権尊重の取り組みを十分に行うことが難しい場合もあることから、パーソルグループ人権方針では、事業活動に関係するビジネスパートナー(顧客企業や業務委託先企業などを含む)の皆さまにも、私たちの人権方針をご理解いただいた上で遵守いただきたい旨を定めています。

<人権リスク防止・軽減に向けた5つの取り組み>

  1. 機会の平等と差別・ハラスメントの禁止
  2. プライバシー保護およびアルゴリズムの利用における配慮
  3. 健康と安全の確保
  4. 適正な賃金の支払と適切な労働時間管理
  5. 表現の自由、結社の自由、団体交渉権の尊重

※取り組みの詳細はこちら

特に派遣スタッフについては、適切な情報収集のための各種調査・アンケートの実施、顧客企業を担当する営業・派遣スタッフのフォロー担当者向けマニュアル・相談窓口の整備、当社の派遣スタッフとの間のステークホルダーダイアログによるリスクの実態把握などに取り組んでいます。

なお、これらの取り組みにあたっては、社内外のステークホルダーとの対話・協議を行いながら進めています。

また、従業員、派遣スタッフおよび求職者などを含むあらゆるステークホルダーが人権に関する相談・通報ができるよう、各種窓口を整備しています。相談があった場合には、必要に応じて事実確認を行い、問題解決および再発防止に向けた検討を行うとともに、人権侵害を受けた方の救済に向けて対応しています。

このように、パーソルグループでは、その事業活動に関係するすべての人々の人権尊重の取り組みを進めています。

顧客企業の皆さまへのお願い

顧客企業の皆さまにおかれましては、当社(パーソルテンプスタッフ)の派遣スタッフの人権リスクに関連して懸念や問題を認識された場合には、当社へ情報を共有いただき、必要に応じて調査へのご協力などをお願いしたいと考えております。

派遣スタッフの人権リスクに関連するご懸念や問題を把握された場合には、当社の派遣元責任者、または担当者にご連絡いただけると幸いです。

おわりに

企業が留意すべき人権侵害は多岐にわたりますが、人材派遣においても人権リスクの防止・軽減に向けた取り組みを行うことが必要です。

パーソルグループでは、顧客企業の皆さまが人権尊重の取り組みを進められることは、企業の社会的信用やビジネス・採用活動などにポジティブな影響をもたらすと考えています。人権を尊重するという企業としての責任を果たしていくためには、顧客企業の皆さまとの協働は欠かせないものと考えておりますため、人権尊重への取り組みへのご理解とご協力をお願いします。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。

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