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【ナレッジインタビュー】
core words 佐藤氏
採用ブランディングから読み解く人事の「原点」【前編】

公開日:2023.08.08

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【ナレッジインタビュー】 core words 佐藤氏 採用ブランディングから読み解く人事の「原点」【前編】

core words株式会社 CEO/Creative Director
佐藤 タカトシ 氏

ナレッジインタビューvol.005は、テンプスタッフ50周年記念 HRナレッジセミナーのDAY4で「これからの採用の肝!今さら聞けない採用ブランディング」をテーマに講演いただくcore words株式会社 CEOの佐藤タカトシ氏です。講演を前に【前編】【後編】の全2回に渡り、採用ブランディングの意味や採用に関わる人事や現場担当者に大切なことなどをお話いただきました。

― 「採用ブランディング」とは何か、明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。「ブランディングとは」というところから、「採用」と掛け合わせた時にどういう意味を成すのか。前提となる認識が人により異なっているように思います。

著書などでもお伝えしていますが「採用ブランディング」の目的は採用成功であり、採用した方が入社後活躍することです。「広く会社のことを知ってもらおう」ということではありません。「採用ができ、入社後活躍する人材」とはどのような人材なのかという観点は非常に大事です。採用ブランディングとは、自社が欲しい人材のターゲットやペルソナを明確にし、その人の心を動かす、少しでも自社のことを好きになってもらう、そのような活動だと定義しています。
CMやYouTubeなどの施策もよいですが、採用の際に面接官が話す内容や態度も、1枚の求人票の中の1行の表記も、ブランディングなのです。自社のよさとは、はたらき方、仕事内容、会社自体の成長、待遇なども含めたくさんの要素があります。あくまでも「自社で活躍できる人」を対象として、自社のよさを“ちゃんと”伝える、ということかなと思っています。

― 採用する方と向き合うときに発する一言や、やり取りするメールの一文もつながっていると感じます。ブランディングや使う言葉に対する意識というと広報部門のイメージがありますが、人事においても重要なことなのですね。

待っていても採用ができる時代、気の利いたことを言わなくても受けに来てくれる時代であれば、ここまでの意識はいらないのかもしれません。しかし、おそらくそういった状況になることはなく、人手不足は常態化していくでしょう。特に会社の事業運営を担う人材は、どの企業も取り合うような状況になっています。そのようなマーケットの中で求める人材を採用するためには、人事も採用ブランディングという観点での言葉の使い方などを意識しなければならない状態になっています。

社名など、いわゆる一般的な企業ブランドだけではなかなか戦えなくなってきていますし、これからは、自社について伝えるべきことを伝えていかなければならない時代だと思っています。

自社を就職先として選択してもらうことはもちろんですが、他社と何が違うのか、入社後何をするのかなど、ひとつひとつに意味を感じてもらうようにしなくてはなりません。かつ、入社後にギャップを感じさせないようにしなくてはなりません。

― 企業の規模や知名度などによって違った課題があると思いますが、採用ブランディングにおいて共通して言えるのはどのようなことでしょうか。

企業の規模や知名度が違っても、基本的にやることは変わりません。大事なのは「どういう人に来てほしいのかということを、きっちりイメージする。そして、その人たちに自社を好きになってもらう魅力を整理し、伝える」ということです。
例えば、企業規模や業界特性で、皆さんが知っている会社ってありますよね。そういう企業は有利なのかというとそうではなく、事業とかプロダクトのイメージと実際にその中ではたらくことのギャップが生じたり、憧れだけで受ける人もいる中で会社側が欲しい人材イメージと応募者とのギャップが生じるケースもあるのです。企業へのイメージが既にあるが故に、そこを埋めなければいけないという課題が出てくることもあります。

― どのような人に来てほしいかのイメージを具体的に明確化していくというのは、実は難しいですよね。佐藤さんはどのようなアドバイスをされるのでしょうか。

難しいですが、基本的には現場で活躍している人の話を聞くことが一番だと思っています。その人が何で活躍しているのか、スキル面もあるかもしれません。あとはマインドですよね。どういうところにモチベーションを感じている人が実際に活躍しやすいのか、定着しやすいのか。成果を出している方に凝縮されている何かがあるので、それを引き出す感じです。そのような人を1人ではなく10人20人と話を聞いて引き出していくと、「こういう人なのだ」と出てくるものがあります。
求人広告などでよく求める人物像を記載されていることも多いですが、本当にそうなのだろうかと疑問を持ってみることも必要です。求める人物像などは気の利いた言葉でなくてよいのです。それに対して人事も腹落ちしていればよいのですが、本当にそうなのかというところと、採用担当自身がそういう人を採用したいと思っているのかがすごく大事かなと思いますね。
また、自社が欲しい人材を定義するのは大事ですが、そういう人材が採用マーケットにいないとか、自社の価値観が世の中とズレているのではないかとか、自問自答しながら時代や環境の変化に合わせてアップデートすることも大切です。時代に追いつくのではなく、時代の先を行く企業には、おのずと人材が集まります。

― 時流に合わせる部分や、どのような人材が実際に活躍しているのかという視点は、社内から見たものと客観的に外部から見たものが違うこともありますよね。

人物像はあくまでもその会社がよければよいという見方もできますが、採用マーケットを意識する必要もあります。競合と無理に差別化する必要はありませんが、通り一辺倒な人物像の設定では目を惹きづらく動機付けも難しい。そのため、社内の視点だけでは限界があるかもしれません。「こういうターゲットにこう伝えたいです」「競合と比べても勝っています」という2つを両立させるのは、実は難しいことでもあります。また求職者側は時流に応じて傾向が変わってくることもあるので、変わる時代や社会、採用競合という外部に合わせた形で発信しないと受け入れられないところがあり、そこが難しいところであるかなと思います。

― 時代の変化を加味してアップデートしていくことは、情報のキャッチから社内での認識の統一などさまざまな課程で課題や乗り越えることが出てきますね。人事の中にいる個人としても、人事組織としても、周囲を巻き込む必要が出てきます。

採用担当が変化をしようとしても、それだけでアップデートしていくことは難しいですよね。経営もそうですし、はたらく現場の配属先も含めてアップデートしないといけない。会社規模が大きくなってくると、説明が必要な先も広範囲だったり、いかに根回しを含めてやれるかというところがあるかもしれません。
ただ、そういうことを早くに取り組んでいる企業があるんですよね。先進的な採用活動を行っている企業の情報をウォッチしたり、世の中の動きを見ながら考え取り組んでいくことです。また、事業上の競合の動きを見ることも大切です。アップデートしていくには周囲を巻き込んでいく必要がありますが、そのためにはファクトが重要になりますので、さまざまな情報を集めていくというのは大事なことなのです。

採用活動は、どの企業にも型があります。従来のやり方を踏襲するのはいいと思いますが、新しいことやりたい、面白いことやりたいというところを、まず自分の中に持つのが大事かなと思います。新しいことをやると跳ね返されてしまうことがありますが、そこを自分の意思として、事実を集めて説得していくことです。
人事の仕事を面白くやっていこうという意識を持っている方は、新しい情報を自分から取るようにしてされていますね。人事の中にいるだけではなく実際に現場に行き、状況やそこで活躍している人はどんな人なのだろうとかというファクトを集めていくことはとても大事で、そこにこそ課題が埋まっていることが多いのです。それは何人採用できましたとか、数字だけでは見えないですよね。また、採用したら終わりではなく、自分が採用した人は活躍しているのか、そういうところを見に行くことも大事なことです。そこから自身の使命感や想いがふつふつと湧いてくるケースも多いと思います。

どこの現場を見に行けばよいかは、自分が担当している中で一番採用人数が多いとか、もしくは事業上とても大事になるところにフォーカスを当てた上で入っていくのがよいと思います。現場に足を運びよく見ること、そして現場の採用責任者やそこで活躍している人に聞いてみてください。聞く中でその職場の魅力が何なのかを言語化し、外に発信することが大事です。

― そういった中で、現場の採用責任者の方など現場スタッフでありながら採用に関わる方に必要な視点もあるのかなと思います。人事としては、そのような方にどういったことを共有し伝えていったらよいのでしょうか。

現場の採用責任者は採用への意識が高いと思いますが、現場でスポット的に面接や面談にかかわる方にも、採用ブランディングを少し意識していただけたらと思っています。現場で人事に関わる方には、ぜひ現場で感じている仕事の誇りや意味、そして価値を伝えてほしいですね。その仕事をやっている人がいて、そこを束ねている人がいて、仕事における誇りとか意味を感じているものがあると思います。言葉にできないような。そういった部分を少しでも意識し、求職者とコミュニケーションしていただけたらと思います。現場にいない人事には、なかなかできないことですから。

あくまでも「自社で活躍できる人」を対象として、自社のよさを“ちゃんと”伝える。この“ちゃんと”のために必要なこと、時流にあわせた視点やアップデートの必要性、「採用」そのものの意味や活躍と定着につながるお話をいただきました。現場で情報を集めファクトを重ねていく重要性や採用に対するマインドなど、「採用ブランディング」からイメージする内容と違った!という方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。インタビューは【後編】に続きます。

Profile

core words 佐藤 タカトシ 氏

core words株式会社
CEO/Creative Director
佐藤 タカトシ 氏

2001年4月、リクルートコンピュータパブリシング(現リクルート)に入社。11年間に渡り、大手自動車メーカー、大手素材メーカー、インターネット関連企業、流通・小売企業などの採用ブランディング、採用コミュニケーションを支援。マネージャー、クリエイティブディレクターを務めたのち、2012年7月、DeNAに転職。採用チームに所属し、採用ブランディングとダイレクト・リクルーティングをメインミッションとして活動。 2015年7月、core wordsを設立。著書に『実践・採用ブランディング』『採用ブランディングのためのデザイン&コンテンツ』がある。
東京大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科修了。

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