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準委任契約とは?特徴や運用上の注意点、他の契約との違いをご紹介

公開日:2022.12.16

更新日:2024.01.29

法律

準委任契約とは、業務委託契約の一種で、法律行為以外の業務を外部に委託する契約を指します。業務委託契約には他にも、請負契約と委任契約があります。契約を締結する際、特に準委任契約と請負契約のすみわけが非常に難しく、「どのような場合に、準委任契約となるのかが分からない」という方も多いでしょう。

その他にも、
「準委任契約についてあまり理解できていない」
「他の契約形態との違いがわからない」
「準委任契約を締結する際に、気をつけなければならない点を知りたい」
など、疑問や悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、準委任契約への理解を深めたい方向けに、準委任契約とはどのような契約か、請負契約・委任契約・労働者派遣契約との違い、契約時に気をつけたいポイントや運用上の注意点について詳しく解説します。

準委任契約とは法律行為ではない業務を委託すること

準委任契約は、法律行為となる事務処理以外の業務の遂行を目的に対価が支払われる契約です(民法656条)。準委任契約は、成果物の完成責任は問いません。また業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。

準委任契約を締結した際の自社・受託会社・労働者の関係性は以下の通りです。

自社・受託会社・労働者の関係性(準委任契約)

準委任契約の種類

準委任契約には「履行割合型」と「成果完成型」の2種類があります。履行割合型は、業務時間や工数など業務の遂行に対価が発生するのが特徴です。成果完成型は、成果物の納品に対価が発生するものです。

準委任契約は契約不適合責任がないですが、業務の遂行や成果物に問題があった場合、善管注意義務に基づく責任を問うことはできます。

他の契約形態との違い

準委任契約と比較されやすい契約には、「請負契約」「委任契約」「労働者派遣契約」などがあります。それぞれの契約は準委任契約と比較して、目的や責任の所在、料金の対象に違いがあります。

以下表は、準委任契約と他の契約形態とを比較したものです。

業務委託契約 労働者派遣契約
準委任契約 請負契約 委任契約
目的 業務の遂行・納品 成果物 法律業務の遂行・納品 労働力の確保
スタッフの雇用元 受託会社 受託会社 受託会社 人材派遣会社
指揮命令権 受託会社 受託会社 受託会社 自社
料金の対象 業務の遂行または成果物 成果物 業務の遂行または成果物 労働力の提供

※契約によっては必要な費用を別途精算する場合があります。

請負契約との違い

請負契約とは、業務委託契約の一種で、仕事の完成を目的としており、成果物の納品に対価が支払われる契約です(民法632条)。請負契約には「契約不適合責任」があるため、納品した成果物が、その種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しない場合は、受託会社へ責任追及ができます。業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。

請負契約と準委任契約は、目的が異なります。請負契約の場合、成果物の納品が目的のため成果物の納品に対して料金が発生します。

請負契約と準委任契約は目的や責任の所在は違うものの、どのような業務が請負契約または準委任契約となるか明確に区別することが難しいのが実情です。そのため、受託会社との合意の上、料金の対象や委託したい業務によって、請負契約または準委任契約とするのかを決定します。

以下の業務が、請負契約または準委任契約となり得る業務の一例です。

【業務委託の例】

  • ソフトウェアの開発業務
  • 各種事務業務
  • コールセンター、ヘルプデスク業務

受託会社と料金の対象や委託したい業務などを細かくすり合わせした上で、最終的にどちらの契約が適しているのかを選ぶのがよいでしょう。

委任契約との違い

委任契約とは、業務委託契約の一種で、法律業務、または法律行為となる事務処理の遂行を目的に料金が支払われる契約です(民法643条)。法律業務は多岐にわたりますが、定義としては法的な効果を生み出す行為を指します。身近なものであれば、物の売買が「売買契約」という法律業務にあたります。その他には、税理士事務所が行う「税務業務」、宅地建物取引士が行う「不動産契約」などがあります。

委任契約は、成果物の完成責任は問いません。業務遂行は、受託会社に一任されるため、労働者への指揮命令は受託会社の管理者より行います。

委任契約と準委任契約の大きく異なる点は目的です。委任契約は「法律業務の遂行・成果物の納品」が目的であることに対し、準委任契約の目的は「法律以外の業務の遂行・成果物の納品」です。

労働者派遣契約との違い

労働者派遣契約とは、労働力を確保する目的で人材派遣会社と結ぶ契約です。労働者派遣契約を締結することで、派遣スタッフの受け入れが可能となります。準委任契約と労働者派遣契約との大きな違いは、指揮命令系統です。

準委任契約の場合は、受託会社が労働者に対して業務指示を行いますが、労働者派遣契約の場合は派遣先(自社)から派遣スタッフに対して業務指示を行います。

トラブルにならないために契約時に押さえておきたいポイント

トラブルにならないために契約時に押さえておきたいポイント

準委任契約は双方の認識をしっかりとすり合わせをしなければ、大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、契約を締結する際は以下の7つのポイントを押さえた上で、自社と受託会社の認識の違いをなくしておくことが重要です。

  • 業務内容
  • 報告義務
  • 料金発生の対象
  • 諸経費の精算方法
  • 知的財産権の所在
  • 損害賠償の有無
  • 契約解除時の条件

それぞれのポイントについて、以下で詳しくご紹介します。

業務内容

業務内容や範囲が明確ではない場合、自社では「想定している成果物を得られない」、受託会社側では「業務をどこまで対応すればよいのかわからない」などのトラブルが発生する可能性があります。

トラブルを防ぎ、業務を円滑に進めるために、業務内容や範囲、期待する成果物に関する細かいすり合わせなど、依頼内容を確実に受託者に伝えることが重要です。

報告義務

受託会社は、自社に対して業務の進捗や完了報告をするなどの報告義務があります。報告義務については「受任者は、委任者(自社)の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を報告しなければならない」と法律で定められています(民法第645条)。

契約締結時に、報告のタイミングや間隔、どのような方法で報告をするかを、あらかじめ決めておくとよいでしょう。定期的に報告会を開催する方法もありますが、報告会の準備や開催で工数がかかることも想定されます。そのため受託会社と自社の負担をなるべく抑えられる方法を話し合う必要があります。

料金発生の対象

成果物に対して料金が発生するのか、業務の遂行に対して料金が発生するのかを決める必要があります。料金の対象によっては、準委任契約ではなく請負契約の方が適している場合もあります。

料金発生の対象と合わせて、支払いサイトや振込手数料など、支払い条件に関する内容も契約書に明記しておくことで、支払い関連のトラブル抑制につながります。

諸経費の精算方法

業務の遂行にあたって、交通費や通信費が発生したり備品を購入したりすることも考えられます。少額の費用であっても、少しずつ重なると大きな金額になる可能性もあります。そのため、発生した費用は受託会社と自社、どちらが負担するのか、どのように精算するのかを明確にすることが必要です。

知的財産権の所在

知的財産権とは、特許権や著作権、商標権など業務によって生み出されたアイデアや創作物を保護するための権利を指します。すべての業務で知的財産権が発生するわけではありませんが、成果物によっては知的財産権が発生します。

知的財産権の所在を契約時に決めておかなければ、成果物を自社で使用できなくなってしまう、使用の範囲が限られてしまうなどのリスクがあります。このようなリスクを防ぐため、知的財産権は制作した受託会社側にあるのか、自社側にあるか、双方の制作物の使用可能範囲を明確にしておくことが重要です。

損害賠償の有無

基本的に準委任契約は、業務遂行や成果物の責任は負いません。ただし、受託会社に「善管注意義務」を問うことは可能です(民法644条)。善管注意義務とは、受託会社が業務を遂行するにあたって通常要求される範囲の注意義務を払うことを指します。例えば、「渡されたマニュアルを守る」「納期を守る」のようなことが挙げられます。

もし、受託会社が善管注意義務を果たさなかったために自社に損害が発生した場合には、損害賠償を請求できます。万が一のためにも、損害賠償が発生する条件や請求方法などを決めておくとよいでしょう。

契約解除時の条件

準委任契約では、受託会社と自社双方に、いつでも契約を解除できる権利があります。一方で、相手方に不利な時期に解除した場合には、相手方の損害を賠償しなければならないともされています(民法651条)。

契約の解除についてトラブルとなることのないよう「どのような通知方法で解約の申し出をするのか」「契約解除の◯日前までに申し出を行う」などの契約解除時の条件などを明記しておくとよいでしょう。

準委任契約は偽装請負に注意

偽装請負とは、契約形態が業務委託契約であるにもかかわらず、自社から労働者へ直接指示があるなど、実態が労働者派遣契約と同様の状態であることを指します。

この状態は「本来締結すべき労働者派遣契約を締結せずに労働者派遣を行っている状態」であり、違法行為にあたります(労働基準法第6条、職業安定法44条)。

偽装請負とみなされた場合は、受託会社だけでなく、依頼した自社もさまざまな法律違反による罰則を受けるリスクがあるため、注意が必要です。

準委任契約を正しく理解し適切に運用しよう

準委任契約は、法律行為以外の業務を委託する際に締結する契約で、業務委託などでよく使われる契約の一つです。契約締結時にはトラブルにならないように、受託会社と契約内容のすり合わせを行い、契約書に反映させる必要があります。さらに、正しく運用できるように偽装請負について理解し、運用することが重要です。

準委任契約と比較されやすい契約には、請負契約や委任契約、労働者派遣契約などがあります。それぞれの契約の特徴や違いを押さえた上で、自社に適した契約を締結するようにしましょう。以下に当社の業務委託サービスの紹介や、ご利用されたお客様の事例集を掲載していますので、併せてご参考くださいませ。

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