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【簡単に解説】BPOとは?アウトソーシングとの違いやメリット・事例
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人材不足で業務が回らない、業務が煩雑化し、業務スピードが落ちているなどの悩みを抱え、BPOの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。BPOは、業務単位の委託だけではなく、業務の前後プロセスや周辺業務も含めた広範囲の業務を外部企業に委託できます。
そこで本記事では、BPOの概要やアウトソーシングとの違い、BPOのメリット、委託できる業務例、注意点などをご紹介します。
BPOとは事務業務を外部企業に委託すること
BPOは「Business Process
Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、業務の一部を切り出し外部企業に発注することを指します。業務単体のアウトソーシングだけでなく、対象業務の前後プロセスや周辺業務も含めて、広範囲の業務をアウトソーシングします。
BPOは総務や人事、経理など間接部門への導入が一般的です。例えば経理業務では、仕訳処理・経費精算・給与計算などの処理や管理まで、一連のプロセスを切り出してアウトソーシングできます。業務プロセスごと委託することで、業務の遂行と合わせて、課題の洗い出し・改善・運用までを外部企業が担います。
BPOとアウトソーシングの違い
BPOは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、アウトソーシングの一種です。
アウトソーシングは、「外部(アウト)からの調達(ソーシング)」を意味しており、自社の業務に必要な人的資源やサービスを調達し、生産性向上や競争力強化などを目指す経営手法です。
アウトソーシングについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
>>【わかりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い
一方でBPOは、業務の遂行に合わせて業務の前後プロセスや周辺業務も委託し、業務プロセスの効率化や業務改善を図ることを目的に取り入れられている経営手法です。このようにアウトソーシングの中にBPOがあり、BPOは業務の一つ一つではなく、業務プロセスを一連で委託できるのが特徴です。
2021年度のBPOサービス全体(IT系BPOと非IT系BPOの合算値)の市場規模は約4.6兆円と右肩上がりで成長しており、今後も引き続き拡大していくと予測されています。
BPOの市場
出典:矢野経済研究所 「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2022年)」(2022年11月8日発表)
BPOの市場規模は年々増加傾向にあり、バブル崩壊、デフレ期、リーマンショック以降でさえも、衰えることなく成長し続けています。
BPOの需要が高まっている背景には、深刻な人材不足があります。現在の日本では、人材不足のために経営改善までリソースが回らず、倒産するケースも増加しています。BPOを活用すれば高い専門性を持つ外部業者へ委託することができるため、業務の効率化を図ることができます。
BPOの2つの運用形態
BPOの運用形態は、業務を遂行する場所によって「オンサイト」と「オフサイト」の2種類に分けられます。
この章ではオンサイトとオフサイトの特徴を紹介します。
自社内で業務を遂行するオンサイト
オンサイトとは、委託した業務を外部企業のスタッフが自社内に常駐して行う運用形態のことです。オンサイトは、自社で業務の進捗が確認しやすい、外部企業とコミュニケーションが密に取れるなどのメリットがあります。
ただし、自社のオフィス内で業務を遂行するため、外部企業のスタッフの作業スペース確保やネットワーク整備が必要となります。
自社外で業務を遂行するオフサイト
オフサイトとは、委託した業務を外部企業内で行う運用形態のことです。
オフサイトは、業務を切り出して、国内や海外の別の拠点に移すことで人件費や運用コストを抑えられる可能性があります。また、自社から離れた場所に拠点を確保することで、仮に災害が起きたとしても業務を継続させられるというメリットもあります。コールセンターやヘルプデスクなどはオフサイトで運用されることが多いです。
ただし、拠点が離れており業務状況を直接確認できないため、自社と外部企業とのコミュニケーションの取り方を工夫する必要があります。
オンサイト、オフサイトについてご紹介しましたが、海外で業務を行う場合はオフショア、国内拠点で業務を行う場合はニアショアと呼ばれます。オンサイトとオフサイト、オフショアとニアショアは、自社や外部企業の拠点の場所や業務内容によって最適な方法が選択されます。
BPOの3つのメリット
BPOの特徴や運用形態を押さえた上で、この章では企業がBPOの導入で得られる具体的なメリットについて、以下の3つをご紹介します。
- 業務改善により生産性が向上する
- 業務を見極めて経営資源を集中
- コスト削減だけでなく付加価値も生む
1.業務改善により生産性が向上する
BPOの導入で業務プロセスが効率化されれば、自社の生産性向上につながります。
業務改善の必要があると感じながらも日々の業務に追われていると、なかなか対応できない場合も多いのではないでしょうか。BPOは業務改善を目的に、該当業務と前後の業務プロセスを含め委託できます。
導入の際には、これまでの業務プロセスを見直して、課題を抽出します。例えば、業務によってデジタル化する作業としない作業を選別し、人が行う業務とRPA・VBAなどデジタルで処理できる業務を最適に組み合わせ、運用体制を構築します。
このようにBPOの導入によって、業務が可視化・標準化・効率化されることによって、生産性を上げるとともに、属人化が解消され業務品質が安定します。
2.業務を見極めて経営資源を集中
企業は常に事業成長に必要な判断や迅速かつ柔軟な対応が求められます。それらを実現するために、自社内で強化したい部門や業務に、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を集中させることが重要です。
BPOの導入では、委託する業務を切り分けることで、経営資源の中でも特に人材活用に関する選択と集中ができます。例えば、新規事業の立ち上げや既存事業拡大などの強化したい業務は自社の社員が行い、直接的な影響は低いものの毎日・毎月発生する定型業務を外部企業に委託するという活用の仕方があります。
このように、業務の種類によってBPOを上手く活用すれば、強化したい部門や業務に経営資源を集中させることができるようになります。
3.コスト削減だけでなく付加価値も生む
BPOは、コストを削減できる他、コストの最適化、働き方改革への対応などさまざまな付加価値を生みます。
成長過程の企業の場合、業務増加に伴い社員を雇うことで人件費(固定費)が上がります。しかし、繁忙期に合わせて人材を採用すると、閑散期は人材が余ってしまう可能性があります。
そこで、増えた業務に対してBPOを導入できれば、業務量に合わせたコストの最適化が可能となります。例えば繁忙期と閑散期がある場合、必要な業務量にあわせて外部企業内で必要な体制を調整しています。それに伴い、料金は繁忙期に高くなり、閑散期には低くなるため、固定費であった人件費が業務量の変動に合わせて最適化されるようになります。
また、業務に関わるスタッフの採用や教育も外部企業が行います。それにより、社員の業務負荷が減り残業が抑制されるため、働き方改革への取り組みにもつながります。
このように、BPOの導入は、長期的な視点でコスト削減以上の付加価値を生み出してくれます。
依頼できる業務例
この章では「具体的にどんな業務を依頼すればよいか分からない」という方向けに、BPOで依頼できる業務をご紹介します。BPOは委託する外部企業によって業務領域は異なりますが、主に以下のような業務で多く導入されています。
- 総務
- 人事労務
- 経理
- 営業
- ヘルプデスク・コールセンター
- コンタクトセンター
- その他、上記以外のバックオフィス業務
各業務の領域で依頼できる具体的な業務例を、以下の表にまとめました。
職種 | 委託できる業務例 |
---|---|
総務 |
|
人事労務 |
|
経理 |
|
営業 |
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ヘルプデスク・コールセンター |
|
コンタクトセンター |
|
その他、上記以外のバックオフィス業務 |
|
総務
総務業務では、名刺発注や出張手配、備品発注・管理、受付など幅広い業務の委託が可能です。業務プロセスの改善で、煩雑化・分散化・属人化しやすいといわれている総務業務を標準化でき、働き方改革やテレワークの導入など自社が集中して取り組みたい業務へリソースを割けるようになります。
人事労務
人事労務業務では、採用関連業務、給与・賞与計算業務、社員の健康診断管理、教育研修などの委託が可能です。また、給与や賞与計算、健康診断管理など定期的に発生する業務を委託することで、強化したい業務にリソースを割くことが可能です。
経理
総務業務では、経費精算、請求書発行、入金処理など経理に関わる幅広い業務の委託が可能です。
経理業務のBPOでは、外部企業に所属するスタッフの中で専門的な知識を有するスタッフが業務遂行に携わり、繁閑によって対応するスタッフ数を調整してくれます。そのため、安定的な品質を保ち、変動する業務量に合わせてコストを最適化できます。
営業
営業業務のBPO導入では、見積書や契約書作成・発行や受発注業務の委託が可能です。
また営業事務や受発注業務では、自社の商流に合わせて業務を棚卸し、委託する作業を切り出してもらえます。そのため、煩雑で属人化しやすい営業事務業務の負担を軽減させられます。
ヘルプデスク・コールセンター
ヘルプデスクでは、ITヘルプデスクやコールセンターの運用、ヘルプデスク導入のコンサルティングなどの委託が可能です。
ITヘルプデスクやコールセンターは、自社内で業務を遂行するオンサイトと自社外で業務を遂行するオフサイトどちらでも運用可能です。また、すでに運営しているヘルプデスクに対しては、課題がないのか診断を行い、業務プロセスや応対品質の改善が目指せます。
このように、ヘルプデスクのBPOでは自社内の業務改善と合わせて、応対品質の改善で顧客満足を向上させる取り組みにもなります。
コンタクトセンター
コンタクトセンターとは、電話以外にメールやチャットなどさまざまなチャネルで顧客と接点を持つ拠点を指します。
コンタクトセンターのBPO導入では、さまざまなチャネルでの顧客対応業務から顧客データ収集、商談までを依頼可能です。顧客のデータやニーズを収集し社内に反映させる、問い合わせ内容に応じて顧客に提案を行うなど、利益を生み出す戦略的なコンタクトセンターを目指せます。
その他、上記以外のバックオフィス業務
BPOは、金融ローン審査処理やリース契約審査処理、奨学金申請処理、検定試験処理、購買・調達業務などの幅広い業務プロセスを委託できます。
ただし、どの業務まで対応可能かは、外部企業によって異なるので、注意が必要です。
BPOの委託先企業を選ぶ際の5つのポイント
BPOを初めて導入する場合、どのような外部企業に委託すればよいが分からないという方も多いと思います。
この章では、BPOを導入する場合の委託先企業を選ぶポイントを5つ解説します。
- 実績・経験が豊富か
- セキュリティ対策を行っているか
- 依頼したサービス内容と専門性を備えているか
- 業務範囲の拡大に対応できるか
- 導入コストが適切であるか
1.実績・経験が豊富か
自社が委託したい業務に関する業界や業務内容などの実績や経験が豊富なのかチェックしましょう。特定の業務を外部に委託する場合、外部企業のノウハウやレベルによって品質などが左右されてしまいます。
そのため委託を検討するときには「どのような実績があるのか」「経験が豊富にあるのか」など、外部企業を見極める際の基準にするとよいでしょう。具体的には、以下のような実績・経験についてチェックすることが重要です。
- 自社が委託しようとしている業務の類似案件を請け負った実績はあるか
- 今までBPOとして請け負った実績数は十分か
- 請け負った業務の規模感はどうか
- 過去の事例において品質と効率性の向上にどれだけ貢献してきたか
2.セキュリティ対策を行っているか
自社の業務を外部に委託する際、自社の情報や顧客情報も共有することになります。万が一、情報が漏れてしまった場合、自社の信用に大きな悪影響が出てしまいます。
そのため、外部企業のセキュリティ対策が非常に重要となります。セキュリティーポリシーを確認することはもちろん、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やPマーク(プライバシーマーク)の取得の有無も確認するとよいでしょう。
3.依頼したサービス内容と専門性を備えているか
自社の希望する委託業務に、委託先の外部企業が精通しているか、十分なノウハウを持っているか必ず事前に確認しましょう。外部企業が業務の特性に合わせた適切なサービスを提供できるか否かは、導入後の効果に大きく影響します。専門的な知識や経験を持つ委託先であれば、高品質かつ効率的なサービスが期待できます。これにより自社業務のアウトソーシングによる利益を最大化することができます。
また、依頼したサービス内容に精通している委託先であれば、特定の業界や規制に関する知識があり、法令遵守や業界基準への適合性が確保され、リスクや法的な問題を回避できるでしょう。委託したい業務について自社内であらかじめ精査しておく必要もあります。
4.業務範囲の拡大に対応できるか
BPOを導入して効果が実感できたら、委託する業務範囲を拡大するケースもあります。BPO導入時にあらかじめ、将来的な業務拡大へ対応できるか否か確認しておきましょう。
規模の大きい外部企業は、一般的に対応可能な業務範囲が広く、業務量が増えた場合でも一括して委託することができます。他の業務内容のBPOも想定している場合、企業規模が大きく、幅広い業務が委託できる外部企業を選ぶと安心でしょう。委託する業務範囲を拡大する度に新たな外部企業を探すといった手間を省くことができます。
5.導入コストが適切であるか
BPOはコスト削減を目的として導入することも多いですが、料金が安ければ良いということではありません。自社が求めている業務の品質を保つことができるか、想定外のリスクが発生したときの対応を見込んだ費用になっているか、見積りをとって費用と対応内容を確認しましょう。委託先を選ぶ際は、業務の質に適した料金になっているかバランスを確認することが重要です。
BPO導入時の5つの注意点
前章で外部企業を選ぶポイントについて解説しましたが、BPO導入にあたって企業が事前に理解しておきたい注意点が5つあります。
- 導入前の費用比較や業務切り分けが重要
- 導入までの準備期間が必要
- 導入準備が発生する
- 信頼できる委託会社の選定が重要
- 業務委託先の企業と定期的な情報共有を行う仕組みが必要
この章では、5つの注意点を一つずつ詳しく解説します。
1.導入前の費用比較や業務切り分けが重要
BPOを活用する際は、事前の「費用の比較」「適切な業務の切り分け」が重要です。
費用の比較は、委託する業務を自社で行った場合と、外部企業へ委託した場合のコストを比較することです。委託する規模や業務内容によっては、自社内での運用よりもコストがかかる可能性があります。
また、委託する業務としない業務を適切に切り分けておかなければ、逆に業務が非効率になる可能性もあります。業務の切り分けは、重要ではあるものの自社だけで行うのは難しいため、外部企業と相談しながら進めるとよいでしょう。
2.導入までの準備期間が必要
業務負荷が高くなっている場合、少しでも早くBPOを導入したいと考えるのが一般的ですが、BPOの導入は、問い合わせをして明日から利用できる、というものではありません。
業務内容の確認や業務体制、業務フローの構築などに時間が必要です。委託する業務内容によってはすぐ運用開始できるものもあれば、半年~1年後に運用開始するケースもあります。長いな、と感じるかもしれませんが、自社で採用や教育を行うよりも労力やコストが軽減できる分、メリットが大きいと考えられます。
3.導入準備が発生する
業務を委託する場合、まずはどんな業務を委託するのか、またこれまではどのように行っていたのかなど現状確認をする必要があります。それらを確認した上で委託したい業務内容を外部企業に引き継ぎするためにマニュアル作成や業務フローの作成などの業務が発生します。
これまでの業務でイレギュラーが発生しやすかったり、業務フローが煩雑になっている場合は、効率的に業務を行うために業務フローの変更が必要な場合もあります。そのため、これらの業務に対応するための工数確保が必要です。
4.信頼できる委託会社の選定が重要
BPOは、自社の業務を外部企業に依頼するため、自社の情報が漏えいしてしまわないか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。近年、個人情報に関する法律の規制や企業に求められるコンプライアンスが厳しくなっており、万が一情報が漏れてしまった場合、事業の継続に多大な影響を及ぼします。
情報漏えいリスクを抑える方法として、BPOを検討している企業の体制や対策を確認すること、また外部企業の社員が自社の社内で業務を行うオンサイト型もあります。どちらにしろ、信頼して任せられる企業の選定が重要です。
5.業務委託先の企業と定期的な情報共有を行う仕組みが必要
例えば経理業務を委託すると、自社で経理業務の経験を積む機会が失われ、社内での経験やノウハウの蓄積が難しくなります。今後、経理業務は自社では行わないという方針であればさほど問題ではありませんが、何らかの理由でアウトソーシングの利用ができない、または停止することになった場合、自社では対応できないというリスクがあります。
そのため、定期的に外部企業との面談や双方でマニュアル確認を行い、「外部企業が何をやっているか分からない」という事態を防ぐことが重要です。
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