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派遣社員を直接雇用できる?手続きの流れ・留意点について解説

公開日:2025.03.13

人事ナレッジ

採用ミスマッチによる早期退職や慢性的な人材不足にお悩みの企業にとって、派遣社員の直接雇用は有効な解決策となり得ます。

この記事では、派遣社員を自社の戦力として迎え入れるための具体的な手続きの流れ、法的な留意点を解説します。さらに、派遣社員の採用に活用できる助成金情報も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

派遣社員を直接雇用できる?

前提として、派遣社員の雇用主は人材派遣会社であるため、派遣先企業が派遣期間中に勝手に派遣社員を直接雇用することはできません。

しかし、派遣契約終了後は、派遣先企業は派遣社員を直接雇用することが法律上認められています(労働者派遣法第33条)。このとき、人材派遣会社は派遣社員の直接雇用を妨げることはできません。

なお、派遣期間中でも、派遣契約終了後の直接雇用を前提とした合意や、一定の経過期間を設けるなど、特定の条件を満たせば、派遣先企業は派遣社員を直接雇用できる場合があります。

条件を満たす派遣社員の直接雇用は推奨されている

国は、派遣社員の雇用の安定化を図るため、一定の条件を満たす場合、派遣先企業に対して派遣社員の直接雇用を推進しています。これは、派遣社員がより安定した立場で長期的に企業へ貢献できる環境を整備し、労働市場全体の健全な発展を目指すためです。

その具体的な内容として、以下の2つの義務が派遣先企業に課されています。

1.派遣先企業の雇用努力義務(労働者派遣法第40条の4)

派遣先企業は、以下の条件を満たす派遣社員に対し、直接雇用に向けた努力義務が生じます。

  • 同一の組織単位で1年以上継続して勤務している有期雇用の派遣社員
  • 派遣社員の受け入れ期間終了後に、引き続き同一の業務に雇用しようとする場合
  • 派遣社員が継続して就業を希望し、人材派遣会社から直接雇用の依頼があった場合

この努力義務は、派遣社員の雇用の安定を図るために設けられており、派遣先企業はこれらの条件を満たす派遣社員に対して、直接雇用のための努力をしなければなりません。

2.派遣先企業の募集情報提供義務(労働者派遣法第40条の5)

派遣先企業は、以下の条件を満たす派遣社員に対し、適切な募集情報を提供する義務があります。

  • 同一事業所で1年以上継続して勤務する派遣社員(無期・有期を問わず)
  • 同一組織で3年間の勤務が見込まれる有期雇用の派遣社員

これらの義務を適切に履行することで、派遣社員の雇用の安定とキャリア形成が図られるとともに、企業側にとっても優秀な人材の確保と長期的な人材育成が可能となります。

派遣社員を直接雇用する3つのパターン

派遣社員を直接雇用に切り替えるには、主に3つのパターンがあります。ここでは、それぞれの派遣形態の概要と、直接雇用への移行可否について詳しく解説します。

有期雇用派遣を直接雇用に切り替える

有期雇用派遣とは、派遣社員が人材派遣会社と有期雇用契約を結び、派遣先企業で一定期間はたらく形態のことです。

この場合、契約期間中に派遣先企業が一方的に直接雇用に切り替えることはできません。しかし、派遣契約が終了した後、派遣先企業が派遣社員を直接雇用することは、法律上認められています。

有期雇用派遣の詳細については、以下の記事をご参照ください。
>>有期雇用派遣とは?無期雇用派遣との違いを分かりやすく解説

無期雇用派遣を直接雇用に切り替える

無期雇用派遣とは、派遣社員が人材派遣会社と期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)を結び、派遣先企業ではたらく形態です。

派遣社員は派遣会社と雇用関係にあるため、派遣期間中に派遣先企業が直接雇用へ切り替えることは、派遣会社からの「引き抜き」とみなされ、トラブルに発展する可能性があります。そのため、直接雇用への切り替えは派遣契約終了後に行われるのが一般的です。

近年では、派遣社員のキャリア形成を支援する「育成型無期雇用派遣」サービスが注目されています。このサービスは、人材派遣会社が厳選採用した派遣社員を無期雇用派遣として受け入れ、派遣先企業で直接雇用に至るまでのスキル育成やサポートを提供するものです。

派遣社員はキャリアアップを目指し、派遣先企業は優秀な人材を採用できる仕組みとして注目されています。

育成型無期雇用派遣「funtable」の詳細については、以下をご覧ください。

紹介予定派遣を活用する

紹介予定派遣とは、派遣社員として最長6ヶ月間勤務した後、派遣社員と派遣先企業双方の合意に基づき、直接雇用へ切り替えることを前提とした派遣形態です。

派遣期間中に、派遣社員と派遣先企業がお互いの適性や相性を見極められるため、採用のミスマッチを減らせるというメリットがあります。

紹介予定派遣の詳細については、以下の記事をご覧ください。
>>紹介予定派遣とは?仕組みやメリット、通常の派遣との違いまで解説

派遣社員を直接雇用に切り替える手順

契約期間中に派遣社員を直接雇用に切り替える際の具体的な手順について解説します。

1.人材派遣会社に直接雇用の意向を伝える

契約期間中に派遣社員を直接雇用に切り替える場合、契約違反を避けるため、派遣社員を直接雇用に切り替える理由や背景を人材派遣会社に共有し、協議を行いましょう。

紹介予定派遣の場合は、派遣期間は法律で最長6ヶ月と定められています。この期間内に直接雇用への意向を明確にし、手続きを完了させなければなりません。

2.直接雇用時の条件や選考内容を明確化する

派遣社員を直接雇用する際の労働条件(給与・勤務地・勤務時間・休日休暇・福利厚生など)を明確に定めます。選考を実施する場合は、選考方法や評価基準についても具体的に決定することが重要です。

労働条件通知書(または雇用契約書)の草案を作成し、これらの条件を文書化することで、将来的なトラブルを未然に防げます。条件については人材派遣会社を通じて派遣社員に提示し、合意を得られた場合に次のステップへ進みましょう。

3.人材派遣会社が有料職業紹介契約を締結する

派遣社員を直接雇用する際には、人材派遣会社と有料職業紹介契約を締結する必要があります。この契約に基づき、派遣会社に一定の手数料を支払うことになります。

手数料の金額や支払い条件については、事前に派遣会社と十分に協議し、双方の合意を得ておくことが重要です。

4.選考通過後に内定を提示する

派遣先企業が選考を実施し、通過した派遣社員に対して内定を提示します。内定通知書には、雇用開始日・労働条件・入社手続きに関する詳細を明記しましょう。派遣社員が内定を受諾した後は、正式な雇用契約の締結に向けた準備を進めます。

5.契約締結と入社手続きの実施

派遣社員と正式な労働契約を締結し、スムーズな移行を実現します。業務開始に向けて、あらたな雇用形態に適応するためのオリエンテーションを実施するなど、派遣社員が安心して直接雇用に移行できる環境を整えましょう。

派遣社員を直接雇用に切り替えるメリット

派遣社員を直接雇用に切り替えるメリットは以下の通りです。

業務範囲の拡大

派遣社員の業務内容や配置場所は、「労働者派遣基本契約」および「労働者派遣契約(個別契約)」で厳密に定められています。そのため、契約書に記載のない業務を依頼したり、当初の部署以外での業務を指示したりすることはできません。

しかし、直接雇用への切り替えでこれらの制約がなくなり、より幅広い業務を柔軟に任せられます(有期労働契約に業務変更の条項が含まれている場合はその範囲内)。これにより、事業の効率化と業務内容の充実が期待できます。

適性を見極めた上での人材採用

派遣期間中に派遣社員のはたらきぶりを評価できるのは、直接雇用を検討する際の大きなメリットです。実際の業務を通じて、スキルや意欲、組織への適応力を見極めた上で採用を判断できるため、ミスマッチのリスクを軽減できます。

キャリアアップ助成金の活用

中小企業が派遣社員を直接雇用に切り替える際には、キャリアアップ助成金を活用できる場合があります。この制度は、直接雇用への転換を促進する目的で設けられており、有料職業紹介契約における手数料や職業訓練費用の一部を補填できます。

派遣社員を直接雇用に切り替える際の留意点

派遣社員を直接雇用へ切り替える際の重要なポイントは以下の通りです。

人材派遣会社への相談を欠かさない

派遣社員を直接雇用に切り替える際には、派遣元である人材派遣会社との適切な連携が不可欠です。

派遣契約期間中に直接雇用を打診する場合、契約内容や法的な制約を確認した上で、派遣会社と協議しなければなりません。契約途中での切り替えは、契約違反となる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

派遣社員の有給休暇や希望を考慮する

派遣社員の有給休暇の残日数や希望を考慮した上で、直接雇用への切り替えを進めましょう。また、労働条件や業務内容に変更が生じる場合は、派遣社員の意向を尊重し、スムーズな移行を実現するために十分なコミュニケーションを取ることが求められます。

特に、直接雇用後の待遇や業務内容については、派遣社員が納得できるよう、具体的かつ丁寧に説明を行うことが重要です。

派遣社員の有給休暇に関する詳細については以下の記事をご覧ください。
>>【企業向け】派遣スタッフの有給休暇の条件やルール、日数について

派遣社員を直接雇用に切り替えた事例を紹介

派遣先企業が派遣社員を直接雇用に切り替えた場合の、成功事例を紹介します。

【経理】パフォーマンスの高い派遣社員を直接雇用

あるITサービス企業では、経理を含むバックオフィス業務を1名の社員が担い、残業が常態化していました。

経理専任者を早急に確保する必要があり、人材派遣を活用。経験豊富な派遣社員を受け入れ、業務を任せました。

派遣社員が経理業務を専任で担当したことで、社員の負担が軽減し、業務量の適正化が実現。派遣期間中の安定した活躍と3年間の貢献が評価され、企業と派遣社員の双方の合意のもと、直接雇用に切り替えました。

【人事】業務負担軽減のため経験者を紹介予定派遣で採用

あるコンサルティング会社の人事部門では、採用業務の多様化により、新卒採用担当者の業務負担が増加していました。これらの負担を軽減するために行ったのが採用経験者の紹介予定派遣での受け入れです。

派遣社員は即戦力として派遣先企業で活躍し、業務負担を軽減するとともに、リファラル採用やスカウト採用などあらたな手法を提案・推進しました。その結果、採用活動の強化に成功し、派遣先企業は派遣社員の就業開始からわずか3ヶ月で直接雇用に切り替えました。

【営業事務】紹介予定派遣で業務適性を見極めてから直接雇用

ある電子部品メーカーでは、受発注業務を担当する社員が入社後わずか数ヶ月で退職。その後も後任者を採用しましたが、いずれも業務適性の見極めが難航し、欠員状態が続いていました。そこで、同社は紹介予定派遣の活用に踏み切ります。

その結果、紹介予定派遣の活用により、コミュニケーション能力に長けた派遣社員の受け入れに成功しました。さらに、派遣期間中に業務に必要なスキルを着実に習得し、企業側もその適性を十分に確認できたため、派遣期間終了後、双方合意の上で、直接雇用へ切り替えることができました。

派遣社員の直接雇用でよくある質問

派遣社員の直接雇用に関するよくある質問について、以下にまとめています。

Q1.派遣社員を直接雇用することは可能ですか?

A.はい、派遣契約が終了した後であれば、派遣社員を直接雇用に切り替えられます。ただし、派遣契約期間中に派遣先企業が一方的に直接雇用に切り替えることはできません。

紹介予定派遣や人材派遣会社との合意がある場合など、特定の条件を満たせば、派遣期間中でも直接雇用への切り替えが認められるケースがあります。

Q2.直接雇用に切り替える際の手続きはどのようになりますか?

A.派遣元である人材派遣会社に直接雇用の意向を伝え、協議を開始してください。その後、労働条件を明確に設定し、派遣社員に提示して合意を得られたら、労働契約を締結し、内定通知の発行や入社手続きなどを進めます。

Q3.直接雇用に切り替えるメリットは何ですか?

A.直接雇用に切り替えることで、派遣契約の制約がなくなり、幅広い業務を柔軟に任せられるようになります。また、派遣期間中に適性やスキルを確認できるため、採用のミスマッチを減らせます。

Q4.直接雇用に切り替える際の留意点は何ですか?

A.派遣社員の直接雇用に切り替える際は、人材派遣会社との適切な連携が欠かせません。契約期間中に切り替える場合は、契約違反とならないよう、人材派遣会社と事前に協議を行いましょう。

また、派遣社員の有給休暇の残日数や希望を考慮し、労働条件や待遇を丁寧に説明することで、円滑な移行を実現できます。

派遣社員の直接雇用を積極的に検討しよう

派遣社員の直接雇用は、派遣先企業にとっても派遣社員にとっても大きなメリットがあります。企業は即戦力となる人材を受け入れ、業務効率化や人材育成を推進できる一方、派遣社員は安定した雇用環境のもとでキャリアアップを実現できます。

直接雇用に切り替える際には、人材派遣会社との連携や労働条件の整備など、適切な手続きが欠かせません。今回ご紹介した手順や事例を参考に、派遣社員の直接雇用を積極的に検討してみませんか?

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