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役職定年とは?導入の実態や制度のメリット、留意点について解説

公開日:2024.07.29

更新日:2026.03.26

企業の課題

役職定年という言葉を耳にしたことがあっても、定年退職との違いや導入のメリットが分からないという方も多いのではないでしょうか。

役職定年は、一定の年齢に到達したら管理職のポストから離れる制度で、部長や課長など管理職のポジションが対象です。この記事では、若手人材を登用しやすくなるなど役職定年のメリットに加え、導入を検討している企業向けに留意点もご紹介します。適切に活用して組織の活性化につなげるために、ぜひ参考にしてください。

役職定年とは

役職定年とは、会社が定めた年齢に達したタイミングで社員が役職から退く制度のことです。一般的な定年制度とは異なり、社員全体に関わるものではなく、課長や部長などの管理職に就いている社員が対象です。会社に定年制度があるように、管理職に定年があると考えると分かりやすいでしょう。

役職定年の年齢について

役職定年の年齢設定は企業によってさまざまですが、55歳から60歳までの間で設定している企業が9割以上です。

役職定年が導入されるようになったのは、60歳定年が一般的だった時代です。その頃から労働環境は大きく変わり、法制度の変化も相まって、定年を65歳まで延ばす企業も増えはじめています。役職定年を今後も同じ形態で継続すると、今の時代と実情が合わない部分も出てくるでしょう。

※出典:人事院「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要

ポストオフ制度との違い

ポストオフ制度とは、ポスト交代を検討する際、年齢だけでなく、能力や企業への貢献度なども加味する人事制度です。役職定年が特定の役職や管理職に適用されるのに対して、ポストオフ制度は年齢に関わらず、能力や適性に応じて役職の交代を判断する制度です。評価・能力などに関係なく、その人物を総合評価した上で退任するか否かを判断します。ポストオフされる年齢は、一般的に50代後半〜60代とされています。

役職定年は、役職から外れた後に給与や待遇が一般職の水準に低下する傾向があります。そのため、役職定年後に転職を選ぶ社員もいます。一方、ポストオフ制度は役職から退いた後も給与や待遇があまり変わらないことが多く、退任後も社内に残る人が少なくありません。

つまり、ポストオフ制度は、定年後も社内で優れたパフォーマンスを発揮することが期待される制度です。一方、役職定年は、課長や部長など管理職のポストを空けることで、役職の定期的な入れ替えを図る制度です。組織内の人事の新陳代謝を促すことで、組織の活性化や若手の育成を図ることを目的にしています。

定年退職や役職解任との違い

定年退職とは、就業規則など会社のルールにより、会社が定めた年齢で雇用契約が終了することです。法律では60歳未満の定年が禁じられており、企業には65歳までの雇用確保義務、70歳までの就業機会確保の努力義務があります。

定年制を導入している企業の中では60歳が最も一般的で、7割以上を占めます。一方、企業の規模が小さくなると65歳定年を導入している企業が増えます。企業によっては、60歳定年は維持しつつ、改めて雇用契約を結ぶ再雇用で65歳まで1年毎に雇用契約を結んだり、定年の延長、あるいは定年制そのものを廃止したりする企業もあります。

※出典:人事院「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」

役職解任とは、与えられたポストにおける能力や素行が不適格だと判断された場合に行われます。業績不振や法令違反など、その部門の長としての業務執行能力が不十分である、経費の使い込みやハラスメントなど個人の資質に著しく欠けている部分がある、などと判断された場合に、就業規則の該当事由に基づいて行われます。懲罰的要素が強い点が定年退職や役職定年とは異なります。

役職定年は、就業規則の定めにより、ある一定の年齢に達した時点で、能力や資質に関わらず役職から外れることを言います。年齢で役職を外れるのは定年退職と共通していますが、役職定年の場合は雇用契約を維持したまま役職のみが外れます。

定年後の再雇用については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>【企業向け】定年後再雇用とは?メリットや課題、ポイントについて徹底解説

役職定年が導入された背景

役職定年が導入された背景には、定年の延長が挙げられます。高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が改正された1994年以降は60歳未満の定年が禁止され、2025年4月からは高年齢者雇用安定法の経過措置が終了し、希望者全員の65歳までの雇用確保が完全義務化されました。

これらの改正により定年の年齢が引き上げられると、勤続年数で昇給を行う企業にとって、人件費は大きな負担となります。一度役職に就けば降格しない仕組みの企業は多く、従来の人件費よりも支払い額が高くなるため、人件費を抑制する必要が生じました。この課題に対処する施策として役職定年は広がったのです。

また、近年は年功序列や終身雇用が崩壊しつつあり、成果主義を採用する企業が増えています。年功序列によって課長や部長などの管理職に就いている社員が管理職ポストを役職定年でリセットし、空いた管理職ポストに優秀な若い人材を登用する成果主義へ移行しやすくなることも、役職定年が導入された背景の一つです。

高年齢者雇用安定法については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>高年齢者雇用安定法とは?概要や改正内容について分かりやすく解説

役職定年制度の導入率と現状について

人事院が2023年に行った調査によると、民間企業において役職定年制度を導入しているのは16.7%で、企業の規模が小さくなるほど導入数も減ります。近年は役職定年制度を廃止する企業も増えてきました。従業員500人以上の企業は27.6%が制度を設けていますが、2017年調査の30.7%から3ポイント近く減少しました。

役職定年

※引用:人事院「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」

役職定年の廃止が進んでいる背景には、ジョブ型雇用の導入・定着があります。能力のある若手や中堅が登用されづらい旧来の人事制度を変革する要素も役職定年制にはありましたが、ジョブ型雇用へ移行が進むと、年齢に関わらず、若手でも能力にふさわしいポストで登用できるようになり、役職定年制を維持する必要がなくなってきたのです。

また、シニア人材のモチベーションやエンゲージメントを高める狙いもあります。能力が優れていても、年齢が理由でポストを離れなければならないのでは、意欲の低下は避けられません。役職定年から定年退職までの数年間をこれまでと同じモチベーションで活躍するのは難しいでしょう。

このように、若手でも能力に応じたポストへの登用ができる人事制度への移行、シニア人材に意欲を持って能力を発揮し続けてもらう環境の整備、という観点から、役職定年制は廃止の流れが進んでいます。

ただし、役職定年制を導入している企業のうち95.3%は今後も継続する意思を示しています。メリットの大きい制度でもあり、会社ごとの特性に合わせて課題を解消しながら、制度は今後も存続すると考えられます。

ジョブ型雇用については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いやメリット、導入時の注意点を紹介

役職定年後の仕事内容

人事院の「民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」によると、部長クラス・課長クラスの役職定年後の仕事内容は「同格のスタッフ職」とする企業の割合が最も高く、部長クラスで42.1%、課長クラスで40.6%となっています。一方、役職定年前に比べて格下となるケースは、30%台(部長クラス34.4%、課長クラス36.0%)となっています。

役職定年

※引用:人事院「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」

役職定年後もモチベーションを維持しながらはたらいてもらうためには、担当部長、担当課長のようなポストを新設し、これまでの経験を活かした専門性の高い業務に取り組んでもらうなどの工夫が必要です。部下を持たず、決裁ルートからも外れますが、ポストを用意して体面を整えることで、意欲の維持に一定の効果が期待できます。

また、後進の育成を主な業務にしてもよいでしょう。高いスキルを持った人材は、人事や教育部門で、若手社員に対して技術を伝承したり、元の部署で若手から中堅層までの良き相談相手となったりするはずです。

地域社会からのニーズが大きい分野の人材であれば、自治体や仕入れ先、子会社などに出向して活躍してもらうという選択肢もあります。企業と自治体のハブとなり人材交流を促進している自治体もあるので、ぜひ検討してみてください。

役職定年制度のメリット

役職定年を導入することで、企業には複数のメリットがあります。それぞれのメリットや具体例について解説します。

組織の活性化

役職定年によって同じ社員が長期間にわたり役職に就く状況がなくなると、定期的な人員の入れ替えが行われます。若い人材が役職に昇進するチャンスが増えれば、組織の新陳代謝につながるでしょう。その結果、新しいアイデアや切り口が生まれやすくなり、組織は活性化します。

また、昇進の可能性が高まることで若手社員のモチベーションが向上し、優秀な人材の離職を防ぐ効果も期待できます。

若手社員の育成

企業内の管理職のポストは限られており、ポストが空くまでには長い年月を必要とします。しかし、役職定年の導入でポジションが定期的にリセットされれば、優秀な若手社員の昇格のチャンスは増加するでしょう。

早い段階で役職に就けば、若いうちから経験を積むことができます。また、早期から役職に就く機会が増加するほどキャリア形成につながるため、若手社員のモチベーション向上も期待できます。

若手採用については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>若手採用を成功させるポイントとは?採用方法や若手採用のメリットを解説

人件費削減

年功序列制度を採用している多くの企業では、年齢を重ねた社員ほど給与が上がり、役職も上がります。また、65歳までの雇用確保が義務化されたことにより、課長や部長などの管理職に就いている社員たちの人件費はさらに上がる傾向にあります。しかし、加齢に伴って給与・役職と能力が見合わなくなるケースも少なくありません。

役職定年の導入で持続的な昇給を抑制すれば、人件費の高騰を抑えると同時に、現状の能力に見合った給与への見直しをしながら、社員の雇用を継続できます。

人件費削減については、こちらでさらに詳しくご説明しています。
>>人件費削減とは?メリット・留意点や具体的な方法を解説!

役職定年制度の課題や対策

役職定年制度の導入にあたっては、いくつかの課題もあります。ここでは課題とその対策についてご紹介します。

引継ぎなどの工数がかかる

役職定年を導入した場合は、役職に就いている社員が一定の年齢になるまでに後任者を見つけておく必要があります。定期的なミーティングやトレーニングを行い、知識の共有を促進して、役職定年までに後任者のスキルを高めておかなければなりません。

役職の引継ぎにはどうしても工数がかかります。引継ぎのプロセスを事前に計画・文書化し、工数を最小限に抑えておきましょう。

知識やノウハウが失われる可能性がある

役職定年は、組織の状況に関係なく一定の年齢に達することで役職が入れ替わる制度です。高いノウハウを持つ人材が役職を離れる際、うまく引継ぎができていないと、そのノウハウが失われてしまう恐れがあります。

対策としては、ノウハウなどの情報を書類に記録し、データベースに保存することが重要です。役職定年者の経験や知識をまとめ、組織の中で共有可能な形で整理しておきましょう。

社員のモチベーションが低下する可能性がある

役職定年は、どれだけ成果を上げていても、一定の年齢になると役職から退かなければならない制度です。そのため、業務へのモチベーション、会社へのエンゲージメントが低下してしまう恐れがあります。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、役職から退いた後に仕事に対する意欲が「下がった」と回答した人の割合は59.2%(「大幅に下がった」20.9%、「ある程度下がった」38.3%)に達しています。一方、「変わらない」と答えた人は35.4%、「上がった」という回答はわずか5.4%(「ある程度上がった」3.5%、「大幅に上がった」1.9%)でした。

また、会社に尽くそうとする意欲が「下がった」と回答した人は59.2%(「大幅に下がった」22.2%、「ある程度下がった」37.0%)にのぼります。役職定年後の社員のモチベーションの維持は、企業にとって大きな課題となっています。

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※引用:独立行政法人「65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援」

社員のモチベーション低下は組織にとって大きな問題であり、会社が対象社員から得る成果は少なくなることが考えられます。しかし、役職ほどの額ではないとしても、一定の報酬は給与として払い続けなければなりません。給与と成果が見合っていないローパフォーマーであると他の社員から見られてしまうと、意欲やスキルのある若手社員の流出にもつながります。

一方、はたらき盛りなのに業績と関係なくポストと報酬を失ったベテラン社員が活躍の場を求めて転職する可能性もあります。求人を出している企業にとっては、スキルが高い人材を自社で育成するよりも、ポストや対価、活躍の場を提供して他社から経験豊富な人材を獲得する方がコストは低いため、外資系企業やスタートアップなどからヘッドハンティングをされることもあるでしょう。

役職定年を迎える社員には、そのスキルや能力で自社に引き続き貢献してもらえるような仕組みをつくらなければなりません。

重要なことは、対象者に、自分が会社に必要とされていると認識してもらうことです。ただポストを用意したり、処遇を見直したりするのではなく、会社や他の社員にとって必要不可欠な大切な人材であるというメッセージを伝えるにはどうしたらよいかを軸に考えましょう。

役職定年制度を導入・運用する際の留意点

最後に、役職定年制度を導入し運用する際の留意点をご紹介します。法律のルールを正しく認識し、社員の理解も得ながら導入しなければ、訴訟などに発展するリスクもあります。

制度について就業規則に明記する

役職定年制度は社員にとって、降格(降職)と減給を伴う労働条件の不利益変更にあたります。労働条件を変更する場合は、一定の年齢に達したら役職を離れること、ポストごとの対象年齢(例:部長は58歳、課長は55歳)、ポストを離れる日(例:誕生月の末日、一律で年度末)、役職を離れた後の身分(例:担当部長や専任課長、資格変更の有無)などを明示しなければなりません。減給を伴うのであれば、基本給における業績給や役職手当の取り扱い、賞与の算定方法など、賃金規程に具体的な内容を記載します。

不利益変更の場合は、他の労働条件の変更とは異なり、法律で厳しく手続きが定められています。その一つが、変更内容の同意(労働契約法9条)です。

この法律では、求職者の合意なく労働条件を不利益に変更することはできない、とされています。変更をする前に、労働組合や社員の代表者と交渉をして合意を得るようにしましょう。

交渉過程は議事録に残すだけでなく、広く社員と共有して手続きの透明化を図るなど、細心の注意が必要です。会社が強引に制度を変更しようとしていると受け取られると、就業規則変更の無効を求めて労働組合や社員から訴訟を起こされるリスクがあります。

賃金低下の合理性を明確にする

労働組合や社員の代表から同意が得られなかったとしても、その変更が合理的であれば、法律上の問題はありません(労働契約法10条)。訴訟に発展した場合、裁判所は、給与の低減幅など社員が受ける不利益の程度、役職定年制度導入の必要性、変更内容の妥当性、合意は得られなくても労働組合とどのような交渉を進めたのか、などの事情を総合的に判断します。

役職定年制度でトラブルになりやすいのは、役職手当の不支給による給与額の低下です。過去の裁判例では、役職定年への制度変更自体の有効性は認めつつも、給与の削減率が大き過ぎるとして無効と判断されたケースもあります。削減率の大きさに対して緩和措置が設けられていなかったことも問題視されました。

労働組合の同意さえ得られれば合理性が問われない訳ではありません。制度を考える際には、導入の目的を明確にし、社会の一般常識と照らし合わせて合理的かどうかを必ず考慮しましょう。給与の減額を伴う場合は、そもそも大幅な減額は認められない可能性が高いことも認識しておくことが大事です。

また、役職定年後は減額する給与に見合った業務に変更する必要があります。業務内容や期待する貢献度が同じなのに給与が減額された場合、合理的とは認められない場合もあります。役職定年後の業務内容を明確にし、内容や責任の程度が給与に見合った業務を用意する必要があります。

高年齢者雇用安定法の遵守を徹底する

前述の通り、役職定年と定年退職は別の制度であることに留意しましょう。どちらも年齢が基準になることは同じですが、役職定年は役職から離れても会社に残る制度で、定年退職は会社との雇用契約が終了する制度です。

役職定年の年齢を60歳未満とすることは問題ありませんが、定年退職を60歳未満とすることは、高年齢者雇用安定法で禁じられています。また、定年退職後も65歳までは再雇用などの形で雇用を継続する義務が企業には課せられています。2021年の改正では、70歳までの就業機会確保の努力義務も追加されました。

高年齢者雇用安定法のルールを正しく理解し、法改正の内容に応じて就業規則や社内の取り組みを変更していくことが重要です。

役職定年制度を導入して組織の活性化を図る

役職定年は一定の年齢に達すると会社の役職から離れる制度で、若くて優秀な人材を登用しやすくなります。若手社員のモチベーション向上や組織の活性化が期待できる他、人件費を削減できるのもメリットです。

一方、役職定年後も対象者のモチベーションと会社へのエンゲージメントを維持できる制度づくりは欠かせません。就業規則や賃金規程など制度面の整備も重要ですが、若手社員に技術伝承をしたり、良き相談相手になったりできるコミュニケーション環境をつくることも大切です。

近年は人件費の上昇が続き、企業の収益を圧迫しています。また、今後ますます労働人口が減少し、採用が難しくなる状況において、シニア人材を有効に活用することは会社を存続させる上で非常に重要です。役職定年制度の導入検討も含め、すべての従業員が意欲を持って業務に取り組める環境の構築を、企業は常に考え続ける必要があるでしょう。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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