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ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いやメリット、導入時の注意点を紹介
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近年、注目を集めているジョブ型雇用ですが、従来の日本的な雇用慣行との違いや特徴について理解できていない方も多いのではないでしょうか。
日本の多くの企業はメンバーシップ型雇用を導入していますが、時代の変化に対応できない部分も出てきました。その不足部分を補完する雇用制度としてジョブ型雇用を取り入れる企業が増えつつあります。この記事ではジョブ型雇用について、仕組みや導入のメリット・流れについて解説します。
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ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)を基準に人を採用したり評価したりする雇用形態です。仕事内容や責任範囲を明確に指定し、その仕事を問題なく遂行できるだけの専門性を持つ前提で雇用されます。また、職務内容を基準として報酬が支払われます。スキルや経験のある社員をスムーズに雇用でき、成果に応じて社員を評価できる仕組みです。
メンバーシップ型雇用との違い
メンバーシップ型雇用は日本において一般的といえるはたらき方です。労働時間や勤務地、職務内容を限定せず、転勤・異動することもあります。一方、ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義し、職務や役割で評価する雇用システムです。
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ジョブ型雇用が注目されている背景
なぜ近年、ジョブ型雇用が注目されるのでしょうか。その背景を5つのポイントから見ていきましょう。
経団連の提言
2020年、日本経済団体連合会(経団連)は、経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)にて、「Society 5.0時代にふさわしいはたらき方を目指して、日本型雇用システムを見直すべき」と記載しました。欧米型企業で一般的なジョブ型雇用に対し、メンバーシップ型の雇用では社員の固定化が進み、人材の柔軟な調整が難しく、市場変化に迅速に対応することが困難となるため、生き残りが難しくなっていると述べられています。
また、同じく経団連が発表した2022年度の「経営労働政策特別委員会報告」では、ジョブ型雇用の導入・活用の検討が必要との報告もありました。これまでの雇用で一般的である年功型賃金について、「転職などの労働移動を抑制」「若年社員の早期離職の要因の一つ」と指摘しています。
これらのことから、近年、日本型雇用の見直しをする流れが社会的に広まりつつあるといえるでしょう。
はたらき方の多様化
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、はたらき方の多様化が加速しました。テレワークの普及によって効率化が実現した反面、勤務態度や意欲など、成果面以外での評価が難しくなる課題も発生しました。そのため、従来の評価方法を見直し、成果に応じて評価するジョブ型雇用を導入するケースも増えていると考えられます。
大企業のジョブ型雇用導入
パーソル総合研究所が2021年に行ったジョブ型人事制度の実態に関する調査結果によると、従業員規模300人以上の日本企業においてジョブ型人事制度をすでに導入している企業の割合は18.0%でした。さらに、導入を検討している企業の割合は39.6%で、導入している企業との合計は57.6%に上ります。一方、導入しない方針としている企業の割合は28.5%となっています。
<ジョブ型雇用の導入状況>
※引用:パーソル総合研究所|ジョブ型人事制度の実態に関する調査結果
中途採用(即戦力)市場の活性化
近年では、専門スキルを持った人材がキャリアアップを目的に転職することが一般的となっています。厚生労働省の調査によると、正規雇用労働者(正社員)の転職者数は、2013年の98万人に対し、2024年は135万人と、37万人増加し、その転職理由は、労働条件や仕事内容に対する不満が上位を占めています。
※出典:厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」
ジョブ型雇用は、どの仕事(ジョブ)に対していくらの報酬を支払うかが明確です。そのため、転職希望者に対して仕事内容や労働条件を具体的に明示でき、双方のニーズがマッチしやすく、外部から即戦力の専門人材を採用するのに適しています。
同一労働同一賃金の導入
従来は正規雇用か非正規雇用かで賃金やその他の待遇に格差を設けている会社も存在しましたが、現在は同一労働同一賃金が法制化され、雇用形態のみを理由とした不合理な格差を設けることは禁じられています。
一方、雇用形態ではなく職務内容で待遇に差をつけることは可能です。これはジョブ型雇用の考え方と直結しており、ジョブ型雇用の導入を促進する一つのきっかけにもなりました。
企業側から見たジョブ型雇用のメリット
社会環境や個人の価値観の変化を背景に注目を集めるジョブ型雇用ですが、導入にどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
スキルや経験を持つ人材を採用できる
企業がジョブ型雇用を導入する一番のメリットは、高い専門性を持つ人材を採用できることです。特定の仕事(ジョブ)に対する報酬額が明確なため、ITエンジニアやデータサイエンティスト、法務部門経験者などに対して仕事に見合った報酬を提示することで、高度なスキルを持つ人材が獲得しやすくなります。
また、「自分のスキルを活かしたい」「専門性で正当に評価されたい」と考える優秀な人材にとって、職務内容や責任範囲が曖昧なメンバーシップ型雇用よりも、ジョブ型雇用の方が魅力的に映りやすく、結果として、採用市場における自社の競争力を高めることにつながります。
業務内容に合わせた人材を採用できる
ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)によって、従業員一人ひとりに対し、何をするべきか(職務)と、どこまで責任を持つか(責任範囲)を明確に定めます。これにより、誰の仕事か分からない宙に浮いた作業、他部署との業務の重複といったムダが解消され、会社の業務プロセスが改善されます。
従業員も、自分のミッションが明確になるため、成果(アウトプット)に集中しやすくなり、組織全体の生産性向上が期待できます。
合理的・公平な人事評価と報酬体系の構築ができる
メンバーシップ型雇用の場合、職務遂行能力で人事評価を行うのが一般的です。職務内容に関わらず、能力は基本的に下がらないという前提の制度であり、勤続年数や年齢による評価とイコールになりがちです。
ジョブ型雇用では、その仕事(ジョブ)の難易度や成果が生み出す価値に基づいて人事評価をし、報酬を決定します。雇用形態や勤続年数が考慮されないため、同一労働同一賃金を実現する制度ともいえるでしょう。
頑張った人がより報われる制度であり、年齢や勤続年数を問わず高いインセンティブを支払うことができるため、優秀な若手の社外流出を防ぐことができます。自律的なスキルアップ(リスキリング)の促進も期待できるでしょう。
経営戦略と連動した組織の機動性向上につながる
外部環境が従来にないスピードで変化する今、経営者が重大な経営判断をする回数も増加しており、時機を捉えて的確な判断をすることが必要です。しかし、社内のリソースが追いつかなければ機会を損失してしまいます。
メンバーシップ型雇用の場合、給与がある幅の中でしか設定できないため、突出して高度なスキルを持った人材を外部から獲得することは困難です。内部でも、組織間の調整や個人の育成計画が柔軟な人材活用の妨げになりかねません。
ジョブ型雇用を導入することで、経営戦略の変更に合わせて必要な「職務(ポジション)」を即座に定義し、その役割を果たせるプロフェッショナルを適材適所で配置することが可能になります。
従来のように「人を採用してから配属先を決める」のではなく、「必要なポストに対して、最適な人を充てる」というアプローチをとることで、戦略実行のタイムラグを最小限に抑え、組織の機動力を高めることができます。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進につながる
ジョブ型雇用を採用すると、労働提供の前提が変わります。メンバーシップ型雇用の場合は所定労働時間の原則フルタイムで勤務できることが採用の前提となります。また会社に出社することが前提となっている企業もあります。ジョブ型雇用では、職務内容と求められる成果(アウトプット)を実現できるかどうかが前提となります。そのため、育児や介護などの理由で遠方に引っ越さなければならない、出社できる日が少ない、所定労働時間の勤務ができない、などの人材でも活躍できる場を提供しやすくなります。
社員はワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなり、ダイバーシティ(多様性)の推進と優秀な人材の離職防止(リテンション)に貢献します。
ダイバーシティ推進については以下の記事でより詳しく解説しています。
>>ダイバーシティとは?推進するメリットや重要性、取り組み事例をご紹介
>>対話からはじめる本気のDE&I推進
リテンションについては以下の記事も参考にしてください。
>>人的資本経営と従業員のリテンション(定着)のためのマネジメント
企業側から見たジョブ型雇用の課題や留意点
これまで述べてきたように、ジョブ型雇用は社会や事業環境の急激な変化に対応できる制度ですが、導入には課題や留意点もあります。
人材が流動的になる可能性がある
高い専門性を持つ人材がより流動的になるため、入社後に転職してしまう可能性もあります。はたらきやすさや賃金、環境などを見直しながら、適切な人材を維持するためのアプローチが求められます。
評価制度などの見直しが必要になる
これまでの職能による評価や賃金制度など、評価制度や給与体系の大きな見直しが必要となります。成果主義を導入したり、評価の透明性を向上させることが求められるでしょう。上司だけでなく、同僚や部下からのフィードバックをもとに、評価を行うことも重要です。
その他、定期的な面談やスキルアップのサポート、柔軟なキャリアパスのほか従業員参加型制度など、さまざまな仕組みや制度を構築します。社員一人ひとりの考えと向き合い、意見を尊重する機会も設けることを心がけましょう。
職務記述書の作成・更新に工数がかかる
ジョブ型雇用の土台は職務記述書(ジョブディスクリプション)です。その作成作業には、現場の業務を詳細に分析し言語化するという膨大な工数(時間とコスト)が発生します。そのため、この記述書を社内のあらゆる職務に対して作成できるかどうかが、ジョブ型雇用導入の成否を大きく左右します。
また、職務記述書は作成したら終わりではなく、常に見直しが必要です。ビジネス環境の変化(例:新しい技術の登場・普及、市場の変化)に合わせて更新したり、定期的にメンテナンスを行って実態と乖離しないようにしなければなりません。担当者の異動や退職に伴って形骸化する可能性もあるため、事前にメンテナンスコストと継続的な工数負担を想定する必要があります。
ゼネラリストの育成が難しくなる
ジョブ型雇用は、特定の分野を極めるスペシャリストの活用には最適ですが、会社全体の業務を幅広く理解するゼネラリストの育成には不向きです。
ゼネラリストはジョブローテーション(配置転換)を通じて育成されるため、従来の日本企業が採用してきたメンバーシップ型雇用と親和性があります。ゼネラリストが不在の場合、組織の全体最適を判断できる経営層が育たず、組織が縦割りになって硬直化する要因にもなります。ジョブ型雇用を導入する際には、組織全体を俯瞰して判断する将来の経営幹部の育成プログラムを別途設計する必要があります。
社員側から見たジョブ型雇用のメリット・留意点
社員側の視点からジョブ型雇用について解説します。社員にとっても、ジョブ型雇用にはメリットと留意点の両方が存在します。
社員側のメリット
ジョブ型雇用は社員にとってもメリットが大きい制度です。自分の職務の範囲と責任や、報酬が何に基づいて発生しているかが、明確になります。そのため、設定されたミッションに基づいて成果(アウトプット)を出すことに集中できます。
若手社員であっても高度な専門スキルを有していたり、難易度の高い職務を遂行したりすれば、高い評価を受けられます。年齢や勤続年数に関わらず高額な報酬を受け取ることも可能でしょう。
また、自分自身でキャリアプランを描けるようにもなります。ITスペシャリストやマーケター、経理の専門家として採用された場合、その専門分野のキャリアを追求し、スキルを高めていくことで、自分自身の市場価値も高められます。転職によってさらに高い報酬を得たり、自分の希望する場所や時間ではたらけたりするようにもなります。
社員側の留意点
ジョブ型雇用で採用されることは、メリットばかりではありません。仕事に人を割り当てるのがジョブ型雇用であるため、その仕事が会社から必要なくなったり、新しい技術の登場でそれまでの高度な専門スキルの有用性が下がれば、仕事を失うリスクがあります。そのため、会社に依存せずに、自ら学び続けて市場価値を高め続ける自律性が求められます。
また、職務範囲が明確になる反面、同じ部署やチーム内であっても、職務外の仕事やチーム内の助け合いへの関心が薄れる恐れもあります。組織の柔軟性やチームワークが損なわれると、職務の遂行に支障が生じ、結果的に求められたアウトプットができなくなる場合があります。
ジョブ型雇用を導入する流れ
ジョブ型雇用を導入するステップについて解説します。自社で導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。
ステップ1:導入目的と方針を明確にする
最初に、なぜジョブ型雇用を導入するのか、その目的を経営陣と人事で明確にすることから始めましょう。専門人材の獲得や成果主義の徹底、生産性の向上など、経営戦略上の課題と紐づけて定義します。この目的を実現することが制度設計のミッションであり、それを実現するためにジョブ型雇用の制度を設計し、導入を関係者間で合意します。
また、導入が目的になってはいけません。社員に導入の必要性を説明し納得を得られるようにしておく必要があります。
ステップ2: 適用範囲の決定と職務記述書を作成する
管理職、IT部門など、ジョブ型を適用する範囲を決定し、その範囲内にあるすべての職務(ポジション)について職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成します。
職務記述書には、職務内容や責任の範囲を明確にし、期待される成果を明記します。職務を遂行するために必要なスキルや資格などもまとめます。
ステップ3:評価と報酬制度を再設計する
作成した職務記述書に基づき、仕事の価値(職務価値)がどの等級(グレード)に該当するかを評価し、決定します。従来の人(年齢、勤続年数、能力)を基準とした評価制度・報酬体系から、仕事(ジョブ)基準の新しい評価制度・報酬体系を設計します。
ステップ4:既存社員への告知と移行プロセスを実施する
設計した新制度(職務記述書、新評価、新報酬)を既存の社員に周知します。なぜ制度を変える必要があるのか(目的)、自分はどのジョブに当てはまるのか、給与はどう変わるのか(変わらないのか)などの疑問に丁寧に回答して不安を解消し、ポジティブな気持ちで職務に取り組めるようにすることが重要です。
目的や制度の中身は理解できても、急激に変化させると社員の納得が得られません。移行後は給与を数年間据え置いたり徐々に減らしたりする激変緩和措置を取ったり、リスキリング(学び直し)の機会を確保するために休暇取得を後押ししたり、資格試験の受験費用を負担したりすることも検討しましょう。
ステップ5:運用開始と継続的な見直しを行う
制度を本格的にスタートさせた後は、制度を維持する仕組みを整えましょう。社員の意識調査を定期的に行って課題を特定し、制度のブラッシュアップを行うサイクルを回すことが重要です。新しい技術の登場に伴う仕事の発生など、ビジネス環境に変化があった場合は、職務記述書の定期的な更新(メンテナンス)も必要となります。
制度が形骸化しないよう継続的に更新・改善を続けましょう。
日本でジョブ型雇用を導入した事例
日本でも一部の企業でジョブ型雇用の導入が進んでいます。
ある製造系の企業では、期待する貢献や責任範囲を記載した職務記述書を作成し、職責のレベルに応じた報酬水準にすることで、社員のチャレンジを促す仕組みを導入しました。評価対象はスキルだけでなく、社会や顧客に与える影響、行動、成長も含まれています。
ある通信大手企業では、専門能力に加え、人間力の高さも評価に加えています。成果・挑戦・能力にダイレクトに報いる報酬体系で社員の自主的なキャリア形成を促進しつつ、周囲と協調できる人材が報われる仕組みになっています。
その他、ジョブ型雇用に極端に切り替えるのではなく、メンバーシップ型雇用の土台を維持しつつジョブ型雇用のエッセンスを取り入れて従業員の満足度を高めるハイブリッド型雇用という考え方も広まっています。
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ジョブ型雇用は自社の目的に合わせた導入を
ジョブ型雇用は、高度なスキルを持った人材を採用できる、社員の自律的なスキルアップを促せるなど、企業にとって導入のメリットが多い制度です。一方、メンバーシップ型雇用が得意としてきた将来の経営幹部候補(ゼネラリスト)の育成が難しくなるという留意点もあります。導入時には社員の反発を招かないよう丁寧に周知したり、徐々に移行したりする配慮が必要となるでしょう。
ジョブ型雇用を導入する際は、まずは自社の課題を踏まえ、目的を明確にすることが重要です。導入のメリットを十分に理解し、自社の目的を達成するために活用しましょう。
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監修者
HRナレッジライン編集部
HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。
編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。
法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。
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