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ジョブ型雇用の概要とメリット、導入するまでの流れをご紹介

公開日:2024.03.28

企業の課題

日本でも注目を集める「ジョブ型雇用」、これまでの雇用形態とどのような違いがあるのでしょうか?日本で一般的に導入されているのが「メンバーシップ雇用」です。メンバーシップ雇用は採用をしてから配属を決める、異動や転勤なども会社からの指示で行われるという雇用形態です。
一方のジョブ型雇用は、企業が職務内容を特定し、その職務を担うことができる人材を採用します。その業務の専門である人材を採用するため、メンバーシップ雇用のような異動や転勤はなくなります。また時間外労働が発生するとその時間分の賃金の変動はありますが、職務や役割で賃金が決まります。ジョブ型雇用の概要やメリットなどを理解し、自社で導入するか否かを慎重に検討しましょう。

ジョブ型雇用とは

「ジョブ型雇用」とは、企業にとって必要な職務に応じて、職務を実行するために必要となるスキルや経験、資格などを持つかを判断材料として、人材を採用する雇用方法です。採用する際に職務内容を明確に定義してから雇用契約を締結し、職務や役割によって評価を行います。
日本では従来、多くの企業が採用後に職務を割り当てる「メンバーシップ型雇用」を導入しています。しかし、専門性の高い職種が増えたこと、リモートワークが普及したことなどから、欧米型の企業では主流となっているジョブ型雇用の導入が進みつつあります。

メンバーシップ雇用との違い

メンバーシップ型雇用は日本において一般的と言えるはたらき方です。労働時間や勤務地、職務内容を限定せず、転勤、異動することもあります。一方、「ジョブ型雇用」とは、職務内容を明確に定義し、職務や役割で評価する雇用システムです。職務内容を基準として報酬が支払われます。スキルや経験のある社員をスムーズに雇用でき、社員の成果に応じて評価が可能です。

ジョブ型雇用が注目されている背景

なぜ、ジョブ型雇用が注目されているのでしょうか。その背景には、2020年の経団連の提言や、その前後の大手企業のジョブ型雇用の導入があります。これからの雇用のあり方を、企業が考えるきっかけとなりました。

経団連の提言

2020年に経団連が経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)にて「Society 5.0時代にふさわしいはたらき方を目指して、日本型雇用システムを見直すべき」と記載しました。欧米型企業では主体のジョブ型雇用に対し、メンバーシップ型の雇用では社員の固定化が進み、人材の柔軟な調整が難しく、市場変化に迅速に対応することが困難になるため、生き残りが難しくなっているということが述べられています。

また、2022年度の「経営労働政策特別委員会報告」において、ジョブ型雇用の「導入・活用の検討が必要」との報告がありました。これまでの雇用で一般的である年功型賃金について、「転職などの労働移動を抑制」「若年社員の早期離職の要因の一つ」と指摘されています。近年、社会的に日本型雇用の見直しをする流れになりつつあるといえるでしょう。

はたらき方の多様化

新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけにはたらき方の多様化が加速しました。テレワークの普及によって、効率化が実現した反面、勤務態度や意欲など、成果面以外での評価が難しくなるという課題も発生しました。そのため従来の評価方法を見直し、評価を成果に応じたジョブ型雇用の導入の検討のきっかけになるケースも影響を与えていると考えられます。

大企業のジョブ型雇用導入

パーソル総合研究所が2021年に行ったジョブ型人事制度の実態に関する調査結果によると、ジョブ型人事制度の実態に関する調査結果、従業員規模300人以上の日本企業において、ジョブ型人事制度をすでに導入している企業の割合は18.0%でした。
さらに導入を検討している企業の割合は39.6%で、導入しているまたは導入を検討している企業の合計が57.6%となりました。一方で、導入しない方針としている企業の割合は28.5%と約3割となっています。

<ジョブ型雇用の導入状況>

引用:パーソル総合研究所|ジョブ型人事制度の実態に関する調査結果

ジョブ型雇用のメリット

前述のようにジョブ型雇用は大きな注目を集めています。その理由はさまざまなメリットがあるためです。ジョブ型雇用のメリットの一例をご紹介します。

スキルや経験をもつ人材を採用できる

ジョブ型雇用は職務を実行するために必要となる条件に合うかどうかを判断材料として人材を採用します。そのため、スキルや経験を持つ人材の採用につながります。

業務内容に合わせた人材を採用できる

採用後に配属を決めるのではなく、業務内容に基づいて人材を募集するので、業務内容に合った人材を採用できます。

業務と評価の連動が強くなる

業務と評価の連動が強くなることによって、組織の柔軟性と効率性が高まります。社員のモチベーション向上や公平な評価制度の構築ができれば、年功序列の緩和につながるともいえるでしょう。

ジョブ型雇用の留意点

メリットの多いジョブ型雇用の導入ですが、導入時には留意点も理解する必要があります。ジョブ型雇用の留意点を知り、対策しておくことも重要です。

人材が流動的になる可能性がある

高い専門性を持つ人材がより流動的になるため、入社後に転職してしまう可能性もあります。
はたらきやすさや賃金、環境などを見直しながら、適切な人材を維持するためのアプローチが求められます。

評価制度などの見直しが必要になる

これまでの職能による評価や賃金制度など、評価制度や給与体系の大きな見直しが必要となります。成果主義を導入したり、評価の透明性を向上させることが求められるでしょう。上司だけでなく、同僚や部下からのフィードバックをもとに、評価を行うことも重要です。
そのほか、定期的な面談やスキルアップのサポート、柔軟なキャリアパスのほか従業員参加型制度など、さまざまな仕組みや制度を構築します。社員一人ひとりの考えと向き合い、意見を尊重する機会も設けることを心がけましょう。

ジョブ型雇用の導入の流れ

いざ導入したいというとき、どのようなことから始めればいいのでしょうか。ジョブ型雇用を導入するための一連の流れをご紹介します。

STEP1.ジョブ型雇用の適用範囲を決める

まずはジョブ型雇用の適用範囲を確定させます。在籍しているすべての社員に関して、ジョブ型雇用を適用することは大きな負担となるためです。例えば管理職はジョブ型、一般社員はメンバーシップ型、というように一部の社員に適用するのかなど、適用範囲をどこまでにするかを定める必要があります。

STEP2.職務記述書を作成する

次に、職務記述書を作成します。これまでの採用でも使用していた「募集要項」と似ているものです。募集要項と違い、採用後に行う職務内容や、その業務において求められる資質、スキルなどを詳細に記載します。職務記述書に記載する項目は、職種、役職、職務内容、目標、評価方法、求められる資質・スキル、給与、勤務体系などが挙げられます。

職務記述書は雇用契約を結ぶ際だけでなく、採用後の評価にも使用するものですので、関係各所に確認の上、誤りがないよう作成します。

STEP3.職務価値と等級を算出する

続いて、職務価値と等級を算出し、給与を確定します。給与は、職務価値や等級に見合ったものである必要があります。競合調査をし、他社と条件を比較したうえで市場の相場に合った報酬を設定しましょう。

STEP4.フィードバックと修正

STEP3までを行い、採用を進めながら、フィードバックと修正をします。持続的な改善を促進する重要なフェーズです。フィードバックの収集により、社員の意見を把握し、ジョブ型雇用導入の効果を評価します。必要に応じて制度やプロセスを修正して、コミュニケーションや教育を通じて社員への適切なサポートを確立することができます。

ジョブ型雇用は日本でも注目されている

企業にとって必要な職務に応じて、職務を実行するために必要となるスキルや有効となるスキルなどを持つかどうかを判断材料として人材を採用するジョブ型雇用は、これまで欧米型企業では一般的でしたが、日本でも導入されるケースがあります。大手企業が導入したことによって、ニュースなどで取り上げられる機会が増えたことや、はたらき方の多様化によって、より一層注目されるようになりました。

導入の際には多くの調整・検討事項がありますが、ジョブ型雇用に関して正しく理解することが大切です。

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