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業務標準化とは?メリットや実現するための進め方を分かりやすく解説

公開日:2023.10.10

更新日:2024.01.29

企業の課題

業務標準化とは社員のスキルや経験値、知識などを問わず、誰でも同じように業務を遂行できる状態に整えることです。組織が大きくなるにつれて業務の属人化が進みやすくなり、作業標準化やルールの統一化が求められます。業務標準化を図ると属人化を回避できるだけでなく、生産性の向上やナレッジの蓄積など多くのメリットを得ることが可能です。

近年、さまざまな企業が業務標準化に取り組んでいますが、思うように実現できず悩んでいる方も少なくありません。そこで今回は、業務標準化の概要をご紹介すると共に、メリットや進め方を分かりやすく解説します。

業務の標準化とは

業務を遂行するための手順を整理し、定められたルールに則って作業することで、誰でも成果を発揮できる状態を業務標準化と言います。

近年、人材不足が懸念される中、社員一人ひとりの業務量が多くなり対応しきれないといった悩みを抱える企業も少なくありません。こうした状況が続くと社員同士で情報を共有する余裕がなくなり、業務の属人化が発生します。また、専門性の高い業務も、限られた社員に託されるケースが多いでしょう。

しかし、属人化が日常的になると、担当者が変わったときにクオリティが落ちたり、ノウハウの引き継ぎができず業務に支障が出たりする可能性があります。属人化の改善を目的として仕事の標準化を目指す企業が増えていますが、思うようにはかどらないケースが多いのが実情です。

業務効率化との違い

業務標準化と類似した言葉として「業務効率化」を思い浮かべる方も多いでしょう。業務効率化とは業務の流れを再確認した上で、「無理」「無駄」「ムラ」がある非効率な業務を洗い出し改善することです。改善策として、ITツールやアウトソーシングの活用など、効果的に業務を進めるための取り組みが挙げられます。

一方で業務標準化は手順やルールを再考し、スキルや勤務年数などを問わず、誰でも同じように作業ができる状態に整えることです。つまり、業務標準化は「手段」に重点をおいた取り組みであり、業務効率化は「結果」を重視しています。

業務標準化の種類

業務標準化は「業務フローの標準化」と「タスクの標準化」の2種類に分けられます。それぞれの取り組みを行うことで業務全体の標準化を図ることが可能です。業務標準化の種類について詳しく解説します。

業務フローの標準化

業務フローとは、業務を遂行するための流れを意味します。業務フローが標準化されていれば、担当者が変わって別の社員が担う状況になっても進め方を速やかに把握でき、滞ることなく業務の遂行が可能です。

業務フローを標準化するには誰もが理解できる業務の進め方を作成し、全社員に周知しなければなりません。作成したフローをもとに、業務を進めることが標準化につながります。

タスクの標準化

業務フローの標準化と合わせて、タスクの標準化も重要なポイントです。タスクを明確にしてマニュアル化すると、担当者が変更になった場合でも業務内容やクオリティを保てます。

タスクを標準化するには、すでに成果が出ている手段をベースにマニュアルを作成するとよいでしょう。また、標準化されたタスクは社員全体で共有・訓練する必要があります。

業務標準化による5つのメリット

業務標準化が成功すると、さまざまなメリットが得られます。主なメリットとして挙げられるのが以下の5つです。それぞれのメリットについて詳しく解説します。

生産性の向上

業務標準化に向けて取り組みを進めると、これまで属人化・ブラックボックス化していた業務が洗い出されます。例えば、作業効率の高いシステムを使っていても、一部の社員しか取り扱えない状況だと、担当者が退職・異動した際に保守や改修ができません。しかし、可視化された現状をもとに業務フローとタスクを見直せば、人材を選ばず業務の遂行が可能です。その結果、新入社員や異動してきた社員でも円滑に作業できるため、生産性を著しく下げることもありません。

また、業務標準化を成功させるには、より効率的な業務フローを組み立てる必要があります。そこで重要となるのが、これまで各社員が所有していたスキルや知識です。こうしたナレッジを共有することで社内全体の作業スピードが上がり、生産性が向上します。

属人化の防止

業務標準化の大きなメリットとして、属人化の防止が挙げられます。属人化とは限られた社員のみが業務を担うことにより、業務の進め方や進捗状況、ノウハウを抱え込んでしまうことです。こうした状態が進むと、担当者が不在になった途端に業務が進まなくなり、企業全体に影響を及ぼします。また、トラブルが発生した際も限られた社員が抱え込むことになるため、お客さまにも迷惑をかけてしまうでしょう。

業務標準化により、社員全体で業務の進め方やノウハウを把握できる環境が整うと属人化が解消されます。万が一、担当者が退職・異動した場合でも、円滑に対応することが可能です。別の社員に引き継ぎする際も作成したマニュアルが役に立ちます。

業務品質の均一化

業務標準化を行う際は現状の手順を明らかにした上で、より効率的で品質水準を保持できる業務フローやタスクを組み立てます。その上で、標準化したマニュアルを全社員で共有するため、誰が業務を担当しても同様の品質を保つことが可能です。

業務標準化が果たせていない状態では、各社員が自分のやりやすい方法で作業を進めてしまう可能性が高く、品質にばらつきが出かねません。作業時間にも差が出やすく、スキルや経験の有無によって極端に遅れが出る社員もいるでしょう。

一方で業務内容やフローを見直して標準化されれば、業務を行う上で最適な手段を共有することになり、業務品質の均一化が期待できます。

ナレッジの蓄積

業務標準化に向けて業務フローやタスクのマニュアル化を図るには、各社員が持っているナレッジを共有する必要があります。

業務が属人化してしまうと担当者がナレッジを抱えた状態になるため、全社員に共有できません。一方で業務標準化が実現すると有益な情報の可視化につながり、それまで個人のものとなっていたナレッジが社内に蓄積されやすくなります。

ナレッジの蓄積については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>社内ナレッジを蓄積する効果的な方法と活用するメリットを知ろう

コア業務への専念

業務フローやタスクが全社員に行きわたると、これまで時間をかけて対応していた業務が効率化され、時間に余裕が生まれます。その結果、より注力するべき業務に専念できる点も、業務標準化によるメリットの一つです。

テクノロジーの進化や社会情勢の変化により、企業が事業を続ける上で柔軟な対応力や改革の推進が求められています。しかし、従来の業務を遂行するだけで手一杯な状態だと、臨機応変に対応できません。業務標準化によって社員にゆとりが生まれると、あたらしいアイディアの創出や企業成長につながる業務への従事が可能になります。

業務標準化による2つの懸念点

業務標準化による2つの懸念点

業務標準化は属人化の防止や品質の均一化などにつながりますが、懸念点も押さえておくことが大切です。業務標準化による2つの懸念点を詳しく解説します。

マニュアル外の対応がしづらくなる

業務標準化では、社員を問わず作業ができるように業務フローやタスクをマニュアル化します。内容に沿って業務を遂行することで品質を保持できるメリットもありますが、マニュアル外の対応がしづらくなる点に注意しなければなりません。

毎回同じ状況下で業務を進められれば問題ありませんが、業務を進める中でイレギュラーな出来事が起こることも考えられます。例えば、思わぬミスやトラブルが発生した場合に定型通りの行動しかできなければ、対応が遅れてしまうでしょう。

臨機応変な対応が求められる業務をマニュアル化する場合は、内容を限定し過ぎず余白のあるまとめ方をすることが肝要です。また、イレギュラーな事態が発生した際の対応履歴を閲覧できる環境を整備しておくと、同様の事象が起きた際に役立ちます。

ルーティン業務によるモチベーションの低下につながりやすくなる

標準化された業務は、ルーティン化しやすい点も注意が必要です。毎日同じような業務ばかりしていると、社員のモチベーションが下がる恐れがあります。また、「誰でもできる業務」という認識が強くなり、特別感が得られないことに不満を抱く社員もいるでしょう。

その他、業務の標準化によって業務フローが変更されると、これまで長く勤めてきた社員は慣れ親しんだやり方を変える必要が出てきます。中には、従来の進め方を否定されているように感じ、業務標準化に反対の声を上げるベテラン社員もいるでしょう。誰もが気持ちよく業務標準化を受け入れられるようにメリットや必要性を丁寧に説明し、理解を得た上で進めることが肝要です。

業務標準化の進め方

業務標準化を効率的に進めるには、以下に挙げる5つのステップに沿うとよいでしょう。それぞれのステップについて詳しく解説します。

業務標準化の進め方

(1)現状を把握する

業務標準化を行う上で重要となるのが現状の把握です。「どのプロセスで業務が滞っているか」「属人化している業務はないか」など具体的に洗い出します。正しく現状を把握するためには、上層部だけで判断するのではなく、現場の声を聞くことが肝要です。各社員にヒアリングした上で、業務内容や手順を可視化します。

(2)標準化すべき業務の優先順位を付ける

ヒアリングによって現状を洗い出したら、標準化すべき業務の優先順位を付けます。多くの業務で標準化が求められるため、優先度の高い順から取り組まなければスムーズに整理できません。

また、属人化しやすい業務ばかりをピックアップするのではなく、社内全体の効率化を考慮することも大切です。高い効果を得られそうな業務も標準化するべき業務の一つと言えます。早い段階で効果が得られれば、他の業務を標準化する際の弾みになるでしょう。

(3)業務フローの最適化を図る

標準化すべき業務が明らかになったら、業務フローの最適化を図ります。より効率的な業務フローを組み立てるためには、社員から詳しくヒアリングして現状を可視化することが重要です。その上で作業工程や難易度、作業頻度などを数値化して問題点を洗い出すと、より最適な方法が見えてきます。

(4)マニュアル・業務フローを作成する

現状を洗い出し、業務フローの最適化を図ったら、改善点を踏まえながらあらたな業務フローを作成します。作成した業務フローをもとにマニュアル化を進める必要がありますが、その際に重要なポイントも明記したり詳細な作業まで落とし込んだりしておくと、より効果的です。

作成のコツとして、全体的な業務フローをまとめた後に、工程ごとに細かい点を作成していくことをおすすめします。いきなり細部からハウツーを盛り込もうとすると、途中で全体像を見失いかねません。また、マニュアル化した後に改善点を発見するケースもあるため、徐々に内容の精度を上げていくことが大切です。

なお、作成にはマインドマップやフローチャートも役立ちます。一から作り上げるよりも手軽に作成できるため、活用してみてもよいでしょう。

(5)定期的な見直し・改善を行う

業務フローやタスクのマニュアル化は、一度作成したら終わりではありません。実際にマニュアルが定着しているかどうかを確認するためにも、定期的な見直しが必要です。いざ、マニュアルを活用して業務に取り組んでみたけれど、思うように生産性が上がらなかったというケースも少なくありません。また、他にも属人化している業務が見つかることもあるでしょう。改善するべき点が見つかれば、速やかに対応する必要があります。

再検討する際も社員一人ひとりにヒアリングして、問題点や改善すべき点はないかを確認することが大切です。円滑に改善できるように、マニュアルを活用する社員がフィードバックしやすい環境を整えておくとよいでしょう。

このように、効果的に業務標準化をするためには、丁寧にステップを踏みながら進めることが肝要です。しかし、業務標準化には手間や時間がかかるため、本来の業務と並行して対応するには大きな負担となります。自社で対応しきれない場合は、外部の専門家の力を借りるアウトソーシングがおすすめです。アウトソーシングを通して専門家のサポートを受けると、よりスムーズに業務標準化に向けたステップを踏めます。

業務標準化のアウトソーシングならパーソルテンプスタッフへ

業務を標準化させることで、属人化の防止や生産性の向上が可能です。現状の課題解決を目指す場合はもちろん、企業規模が変わる際や社会情勢に合わせて体制を整える際にも必要な取り組みと言えるでしょう。しかし、業務標準化を効果的に行うには、現状の把握からあらたな業務フローの作成、マニュアル化までさまざまなステップを踏まなければなりません。定期的な見直しや改善も踏まえると、本来の業務を遂行しながらでは対応できないケースも考えられます。業務標準化のために社内でリソースを割けない場合は、アウトソーシングの活用がおすすめです。

パーソルテンプスタッフでは、アウトソーシング業務の一環として業務標準化のサポートを行っています。中でも、営業事務は社員のスキルや経験値が影響しやすい業務です。そのため属人化しやすいことから、標準化の進め方に関するお悩みも多く、パーソルテンプスタッフの営業事務アウトソーシングをご活用される企業さまも多くいらっしゃいます。

ご選択いただける理由として、お客さまの業務にかかる工数を把握した上で細かく分析し、本来必要な工数を提案する点が挙げられます。また、作業難易度に合わせて必要なスキルを分解し、担当者が変わっても業務品質を保持できる仕組みづくりが可能です。

業務範囲が広く煩雑な営業事務においても、パーソルテンプスタッフでは商材や商流を把握した上で、標準化するべき業務の棚卸しを行い、定型化できる業務はもちろん定型化が困難な業務においても適したリソースデザインを実現します。業務標準化に向けてアウトソーシングをご検討の方は、ぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。

業務標準化に関する事例もございます。詳しくは、以下のページをご覧ください。

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