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【ナレッジインタビュー】
サイボウズ 中根氏
組織と個人のワクワク感を創り続けていくための工夫とは?!

公開日:2023.02.24

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【ナレッジインタビュー】 サイボウズ 中根氏 組織と個人のワクワク感を創り続けていくための工夫とは?!

サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長
中根 弓佳 氏

2022年12月に開催されたHRナレッジセミナー2022 Winter「HRナレッジラインーナレッジでつなぐ、つながるー」。
パーソルテンプスタッフは今までもこれからもさまざまな形でHRの皆さまと、線のようにつながりつづけたい、そんな想いを込めて「HRナレッジライン」といたしました。この「HRナレッジライン」をイベントタイトルとし、6名のエキスパートがそれぞれの「今、一番伝えたいHRナレッジ」を5日間に渡りお伝えいただきました。今回は、DAY5(2022年12月16日)に講演いただいた、サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏にお話を伺いました。

― 講演では多様な人材とマネジメント、また組織と人事の役割についてお話をいただきありがとうございました。先日、*人事部長の青野さんも「会社の規模が大きくなり、人事も変化していかなければ」というお話をされていました。だんだん会社が大きくなる中で、変わらないCultureと変わっていく何か…どんなサイボウズさんになるのか、ワクワクします。

組織には、100人の壁、300人の壁…と企業規模が大きくなり社員数が増加していく中で、乗り越えなければいけない壁があると言われます。振り返ってみると、やはりそうだなと思うんです。会社が大きくなっていく中、段階段階で壁のようなものはあるものだなと。今規模が大きくなり一人ひとりが相互に見えづらくなるという、1,000人の壁に当たっている最中です。加えて、今は会社規模だけでなく、オンラインでのコミュニケーションによる壁もあります。
そんな中でどうしたらワクワクできる大企業になれるのか、と考えています。べンチャー企業のような、サークルのような、「よーし、やるぞ!!」というような…。規模が大きな会社になっても、情熱を持ち続けたおもしろい組織でありたい、創っていきたいという想いがあります。

― そうありたいと思いながらワクワク感の気持ちを持ち続けるのは難しいというお話もよく伺います。まずはルールをつくらなくてはいけない、浸透させていかなければいけない、またどんな制度をつくればいいのかと精一杯になってしまう人事の方も多いように思います。

そうですね。やはり規模が大きくなってくると難しくなってくる部分はどうしてもあって、組織と個人のワクワク感を継続していくためには、工夫が必要です。ヒトはなぜ、どういうときにワクワクするのか、ということをよく考えます。例えば、自分で選択して主体的に「これをやりたい!」と思える…そこがワクワクしたり、あるいは誰かから「ありがとう」と言われることで、より頑張ろうと思ったり。そういう状態に一人ひとりがなっていることで、ワクワク感のある組織になるのではないかなと。そこを大切にしています。

誰かから言われたことをやらざるを得ないという状況になってしまうと決してワクワクしない。ですので、自分たちがやりたいという主体性が持てる組織や仕組み、運営のサイズがポイントになり、工夫が必要なところだと思っています。できるだけ自分たちが権限や意思決定ができる運営サイズにして、それを高速で回す仕組みを人事本部内でもつくっていかなければいけないと。

とはいえ、課題や仕事を分散させて「いろいろな人が決めていいです、私が決めるのはここだけです」としてしまうと、バラバラになって失敗したり、「これしかやらない」などの個別最適化に走ったりしてしまいます。すると、全体として大きな波をつくりにくくなったりして…。そんな試行錯誤を実はここ数年やっています。分散させたり、課題や業務の横軸を見てみんなで大きな流れをつくったり、でもまた分散してそれぞれ主体的に動いてみたり…そのようなことを繰り返しています。試行錯誤の繰り返し、その最中です。そして錯誤ばかりですよ!打率1割くらいです!ですから、その繰り返しです。

― 組織で決まったことを止めたり変えたりすることは、とても難しいことなのではないかと思います。それができる組織、風土をつくっていくにはどうしたらよいのでしょうか。

そうですね、決まっていることを変えることには大きな抵抗がない組織、許容される風土だと思います。サイボウズは、「言えない/言ってはいけない」ということはありません。
以前、パーソルホールディングス会長の水田さんも「共感が大事」と仰っていたのですが、本当にそうだと思います。
人事制度一つをとっても「会社、人事が決めたもの」ではなく、「自分も意見を言い、共感され、その意見が反映された」もしくは「ちゃんと聞いてもらえていて自分も主体的になり共

感した」そうしてこの制度をつくっていったと思えるという状況、まさに共感が大事だと思います。
そう思える人をいかにたくさん作るかが、人事制度を作るときにとても大事なんです。人事制度だけではなくオフィスづくりにも言えます。会社規模が大きくなると難しいことではありますが、そうなっても共感を大事にしていきたいです。
人事制度というのは「人事がつくるもの」ではなく「人事がオーガナイズ(編成する、体系づける)するもの」なんですよ。もちろん理想があって、そこに向かっていくぞ!ということは示します。でも「みんなどう思う?」と聞くと、みんなちゃんと自分事として一緒に考えるんです。
自分のエゴももちろんありますが、チームにとってどう思いますか?と対話をしていくと「他のメンバーの意見や立場を考えたら、確かにそういう制度がいいよね」となったりしますし。自分の意見だけでなく「多様な意見があるんだ」ということをオープンにして、そのなかで、「じゃぁ今回はこれをやってみよう!」という風にやってみる。人事制度は作るまでの過程で「いかにたくさんの人を巻き込みそれを自分たちのものとしていけるか」がとても大事だと思っています。

― 人事だけで決めてしまえばある意味早い部分もあると思いますし、現実難しいことがたくさんある中で、いろいろな人の意見が入れられる状態、意見が言える組織というのは、すごく魅力的な組織ですよね。

そういう組織の状態や風土をつくっていく過程にはやっぱりいろんなことがあって…今も試行錯誤、いろいろなことがある真っ只中ですよ。
そして、先程もお話しした「共感」というか「コンセプト」というか…そこが人事制度はもちろん、何をやるにしても本当に大事だなと思っています。「何のためにこれをやるのか」です。制度になったときに、その運用とか些末なところに行きがちなんですよね。そこをちゃんと運用することももちろんすごく大事です。でも、そのコンセプトというか、何のためにやるのか、何を実現したいからそういう制度なんだ、ということが最も大事です。

また、つくったら終わりではないですしね。つくるまでの過程でたくさんの人を巻き込んで制度ができて、その制度をみんながいろいろな形で活用するのでうまくいかないこともあるわけです。そんなときに、メンバーに対してどのようにマネージャーは説明するのか、なんと人事が言うのか。「この制度はこういうコンセプトで、あなたはそのコンセプトに合わないことをやろうとしているから、この制度の対象外です」ということをちゃんと伝えられるか。それは「ルールにないからだめです」ではなく、理想は何なのか、何のためのルールなのかそのことを丁寧に伝えていくというのが、現場のマネージャーも人事も大事だと思います。そのようなことがサイボウズのCultureをつくっていくのだと私は思います。その制度が一人ひとりの中で腹落ちしていくことが大事ですね。
「一つの問い合わせにこんなに深いことを返すんですね」と、他社から転職して入ってくれた人事のメンバーにはよく言われます。「ルールなので」とは返しません。ルールだったら変えればいい。「ルールだから」ではなく、なぜなのか、何のためなのか、というところなのです。そこを常に問うて、メンバーとコミュニケーションして変えていくんです。

― 人事に他部門のメンバーが問い合わせをしたときに「ルールだから」と言われないから聞けるというのもあるのでしょうね。問いに対しての一つひとつの答えに目的を伝えて、腹落ちさせていくこの積み重ねがこういう風土をつくっているように思います。

本当にそうです。4つのCultureをご紹介しましたが、言葉に書くだけではだめなんですよ。一つひとつの行動の積み重ねが風土になって…まさに漢方薬みたいに継続していくことでじわじわ浸透していくのです。
今のサイボウズの風土、Cultureは、初めからではなく試行錯誤を繰り返し続けた結果です。これからも打率1割でも試行錯誤をしながら、会社規模や時代の変化があっても、このCultureを大切にチャレンジしていきたいです。

HRナレッジセミナー2022 Winterでは、サイボウズでの取り組みやこれからに向けての課題をお話しいただきました。インタビューではさらに深く、中根さんのHR、そして会社とメンバーに対する言葉と、目指していく形にチャレンジを重ね続ける強さを伺うことができました。「打率一割」とまっすぐな瞳でお話しされる中根さんの想いは、こうして組織に「共感」を生んでいくのだなと感じた時間でした。

Profile

サイボウズ中根 弓佳 氏

サイボウズ株式会社
執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長
中根 弓佳 氏

1999年、慶応義塾大学(法学部法律学科)卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社。2001年、サイボウズ株式会社に入社。知財法務部門にて著作権訴訟対応、契約、経営、M&A法務を行った後、人事においても制度策定や採用を中心とした業務に従事。法務部長、事業支援本部副本部長を歴任し、財務経理などを含め、これら全般を担当する事業支援本部長に就任。2014年 8月より執行役員、2019年1月より人事本部長 兼 法務統制本部長(現任)。

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