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【人事向け】有給5日義務化とは?対象者の条件やルール、取得率をアップさせる施策を解説

公開日:2020.02.10

更新日:2026.08.28

企業の課題

2019年、働き方改革の一環として年次有給休暇(以下、有給休暇)5日取得が法律で義務付けられました。有給休暇の取得率の上昇が続き、ワークライフバランスという言葉の浸透と共に日本人の価値観が変化しつつある中、法令遵守にとどまらず一歩先の取り組みを行う企業がより選ばれる時代になってきています。

また、近年はあらゆる業種で人材不足が叫ばれており、休む文化を社内に醸成することが大切です。この記事では、人事担当者向けに法制度を解説し、自社に休む文化を根付かせるための方策をご紹介します。

有給休暇の「年5日取得義務化」とは?

年次有給休暇(以下、有給休暇)とは、所定の休日以外で、賃金の支払いを受けて、仕事を休める日(就業が免除される日)のことです。労働基準法では、一定の条件をクリアすれば入社から6ヶ月後に10日の有給休暇が付与されると定められています。

有給休暇は労働者に認められた権利で、目的を問わずに取得でき、会社の承認を受ける必要はありません。(事前連絡は必要とすることは可能です。)企業には有給休暇を取得した労働者に対する不利益な取り扱いが禁止されており、有給休暇の日を変更させることにも厳しい条件が設けられています。

有給休暇を活用すれば、心身の疲労回復や仕事と生活の調和が進み、モチベーションや作業効率、創造力のアップ、メンタルヘルス不調の予防が期待できます。一方で、周囲の同僚への気遣いや上司に請求することへのためらいを理由とした取得率の低さが指摘されていました。

そこで、労働基準法が改正され、2019年4月からすべての企業で年5日の有給休暇取得が義務化されました。年5日の有給休暇を確実に取得させる義務を企業に課し、労働者が有給休暇を取得しやすくすること(休む文化の醸成)で、過労死の防止などにつながることが期待されています。

企業側は、業務の属人化解消や人員補充などで体制を整備すると共に、管理職教育による休みやすい企業風土づくりに取り組む必要があります。

「有給5日」義務化の対象となる労働者の条件

有給休暇を5日取得させなければならない労働者の条件について解説します。

年10日以上の有給休暇が付与される全労働者が対象

年5日の有給休暇取得の対象は、年10日以上の有給休暇が付与される労働者です。労働基準法では、入社から6ヶ月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者には、年10日の有給休暇が付与されることになっています。

企業は、10日以上の有給休暇が付与された労働者に対し、付与された日(基準日)から1年以内に最低5日の有給休暇を必ず取得させなければなりません。

パート・アルバイト・派遣社員も対象になる?

パートやアルバイト、派遣社員にも年5日の有給休暇取得のルールは適用されます。

パートやアルバイトであっても勤続年数が長く、週や年間の所定労働日数が条件を満たしていれば、年次有給休暇は付与され、その付与日数が10日以上になる場合は、基準日から1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。

一方で派遣社員には、派遣元である人材派遣会社に有給付与・取得の義務が発生します。派遣先企業に対しては、派遣社員であっても休みやすい職場環境の整備が求められます。

以下、パート・アルバイト・派遣社員に関して、週の所定労働日数や勤続年数によって有給休暇が何日付与されるのか(いつから年10日付与の対象になるのか)を表にまとめました。

週の所定労働日数 年間の所定労働日数(週日数がない場合) 半年
(0.5年)
1年半
(1.5年)
2年半
(2.5年)
3年半
(3.5年)
4年半
(4.5年)
5年半
(5.5年)
6年半
以上
通常の労働者(週5日以上 / 週30時間以上) 217日以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
週4日勤務 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
週3日勤務 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
週2日勤務 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
週1日勤務 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

有給5日を取得させるための3つの方法

では、企業はどのようにすれば業務に支障をきたすことなく従業員を5日休ませられるのか、実践的な手法を解説します。

労働者自らによる時季指定

最も基本的なパターンは、5日間すべて、従業員自身が休みたい日に取得させることです。休暇日数の取得に関する裁量を従業員にすべて委ねることで、仕事とプライベートの両立が図りやすくなります。

一方、取得義務違反にならないよう取得日数を管理する必要があり、上司や人事担当者の負担が大きくなります。

企業による時季指定

従業員に有給休暇5日を確実に取得させるため、基準日から半年経過後など一定のタイミングで従業員の意見を聞き、取得日を指定します。従業員の意思を反映しつつ確実に5日取得させることができ、法令違反のリスク回避につながる方法です。

従業員側も「会社や上司が決めた休みだ」と考え休みやすくなりますが、業務の都合だけで一方的に取得日を指定すると従業員の不満が高まる恐れもあります。

目的は有給休暇5日を確実に取得させることであり、指定するのはあくまでも未取得日数分のみにしましょう。また、管理職に対する教育やマニュアルの整備により労務トラブルを未然に防止する方策の検討も必要となります。

労使協定による計画年休(計画的付与制度)

事前に就業規則に明記をした上で、労働組合(または過半数代表者)と協定を結び計画的に有給休暇を取得させる方法もあります。例えば、製造業では全社一斉休業日を設ける、小売業などはグループをつくって交代で休ませる、などの仕組みづくりが考えられます。年間のカレンダーに有給休暇取得日を組み込むことで、事業活動への影響を抑えつつ確実な取得が可能になります。

ただし、計画年休は強制力があるため、有給休暇の付与日数のうち最低5日は従業員が自由に取得できるように残さなければならない点に注意が必要です。

企業が守るべきルールと管理義務

つづいて、従業員の有給休暇を管理する上で順守しなければならないルールをまとめました。罰則も設定されているため、正しい理解と運用が必要です。

1年以内に5日取得させる必要がある

有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日取得させなければならないというルールはお伝えした通りですが、法定ルール以上の労働条件を設けている場合の注意点をまとめます。

法定と同じ条件で有給休暇を付与する企業では、入社間もない労働者に対しては義務が発生しませんが、「入社日に10日を付与する」など法定以上の労働条件を設けている企業では、入社日が基準日となります。

法定以上の労働条件を整備し、全社一斉の付与日(例:4月1日)を設けている企業は、中途入社者の取り扱いに注意しましょう。

例えば、10月1日の入社日に10日を付与し、翌年4月1日に11日を付与すれば義務期間が重複します(10月1日~翌年9月末、翌年4月1日~翌々年3月末)。その場合、期間を合算(10月1日~翌々年3月末)して案分した日数(18ヶ月÷12×5日)が義務日数(7.5日)となります。

また、10日のうち一部を前倒しで付与する場合(例:入社日に5日、半年経過後に残りの5日を付与)は、付与日数が10日に到達した日が基準日となり、その日から1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。

ただし、入社から半年間に有給休暇を取得していれば、その取得日数を義務の5日から差し引いた日数が義務日数となります。つまり、入社から半年間に3日取っていれば、企業側は1年以内に2日取得させなければなりません。

年次有給休暇管理簿の作成・保存義務

企業には、従業員ごとに有給休暇の管理簿を作成して3年間保存しなければならないという義務があります。管理簿には、有給休暇を取得した日付、取得した日数の合計、有給休暇を付与した基準日を盛り込みます。

紙の台帳で管理しなければいけない、ということではなく、いつでも閲覧できるようになっていればシステムで管理しても問題ありません。

違反した場合の罰則規定

年5日の有給休暇取得は罰則付きの義務で、違反すると最大で30万円以下の罰金が科せられます。1人につき1違反としてそれぞれ罰則の対象となり得ます。

厚生労働省では「法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています」としており、その重大性を正しく認識し、厳密な管理をする必要があります。

※出典:厚生労働省労働基準局「改正労働基準法に関するQ&A(3-19)」

有給休暇の取得状況と課題

有給休暇の取得率は、5日取得の義務化以降、上昇が続いています。有給休暇を含む労働条件は転職を決める際の大きな要素の一つとなっており、義務化対策にとどまらない企業の対応が求められています。

取得率の現状と推移

厚生労働省による2025年の調査では、労働者1人あたりの平均取得率(取得日数÷付与日数)は過去最高の66.9%でした。政府は年次有給休暇の取得率を70%とする目標を掲げており、全体の数値は上昇傾向にあるものの、目標達成に向けたさらなる取り組みが求められています。

現状としては、企業内での法令順守を意識した取り組みが、従業員間の休む文化の醸成に少しずつ寄与していることを示しています。

【企業規模別にみた労働者1人平均有給休暇の取得状況(2024年調査計)】

※参考:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査の概況」をもとに作成

また、産業別では、電気・ガス・熱供給・水道業が75.2%と最も高く、宿泊業・飲食サービス業が50.7%で最も低くなっています。公共性が高く法令順守が強く求められる分野では全般的に取得率が高く、世間一般の休日や連休期間が繁忙期となる対人的な業務が多いサービス分野の取得率は低い傾向にあります。

有給取得が進まない理由

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施したアンケート調査結果によると、最も多い取得日数の回答は5日以上10日未満でした。希望どおりの日数を取得できたか尋ねたところ、「あまり希望どおりではない」または「希望どおりではない」と回答した人が全体の約1割いました。

希望どおりに有給休暇を取得できなかった理由については、「仕事の量が多すぎて休んでいる余裕がなかった」「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいなかった」「休むと職場の他の人に迷惑になると考えた」といった理由を挙げる人が多い結果となりました。

※参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「令和7年度 「仕事と生活の調和」の実現及び 特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」をもとに作成

これらの背景には、特定の人物に業務が集中したりブラックボックス化したりして、フォローし合える体制が職場に構築できていないハード面の課題と、休む文化が根付かずに周囲の顔色をうかがいあってしまうソフト面の課題の両方があると考えられます。

「休む文化」を定着させるための企業の施策例

休む文化の自社への定着は上司からの呼びかけだけでは効果が薄く、ハード面の整備を進めることが大切です。ここでは、有給休暇の取得推進に向けた企業の特徴的な施策をご紹介します。自社に存在する休みにくい雰囲気の要因を明らかにし、複数の施策を組み合わせて実践しましょう。

施策 内容
ワークライフバランスの設計を支援する役職を設置 社員と面談を行ったり研修を開いたりして、自分らしい生き方を実現するための手段として有給休暇の積極的な活用を促す
労使による時短委員会を設置 現状を踏まえた有給休暇の取得目標を設定し、目標達成を困難にすると考えられる人材不足や属人化、非効率な業務などの課題を共有して解消に取り組む
休み方に関する満足度や課題を聞くアンケートを実施 社員に休暇取得の満足度や取得の課題をヒアリングするアンケートを実施。自社の課題に対する意見をもとに要因を特定し施策に反映させる
有給休暇の活用事例を社内報で周知 休暇中の体験を自身の業務に活かした事例、趣味や家族との余暇を充実させた事例など、社員が休暇をどう活用しているかの事例を紹介する
上司が率先して休むよう呼びかけ、取得状況を社内に公開 人事部門が各部の部長や課長に対し率先垂範して有給休暇を取得するよう呼びかけを行う。役員や管理職の取得状況は社内に公開する
部下の取得状況を上司の評価に反映 部下および自身の有給休暇取得率100%を達成できなかった部門長は期末に行われる人事考課で査定を受け、賞与が減額になる
個人単位の有給休暇取得スケジュールを作成し、共有する 全員が状況を確認できる個人単位の有給休暇取得スケジュールを作成。有給休暇の取得日数と有効期限を一覧で確認できるようにする
全社での一斉休暇日を設定 所定休日以外に全社や部門ごとで一斉に有給休暇を取得する日を設定。年末年始やGWの連休と連続で設定し長期休暇をとりやすくする
一定期間の会議をなくし、連続休暇を取りやすくする 8月や年末の会議を原則ゼロにし、会議日程を気にせず連続休暇が取れるよう配慮する
地域ブロックごとに店舗要員の休暇取得状況を見える化し、ブロック全体でカバーする ブロック全体の休暇取得実績や今後の取得計画を管理し、取得状況を見える化。店舗ごとの業務手順を統一し、応援・受援がしやすい効率的な業務運営を行う
休暇取得者に連絡をしなくてもよい体制を整える 上司や同僚からの連絡を心配しなくてもよいように情報共有ミーティングをしたり引継ぎシートを作成したりするなどして業務の停滞を防ぐ

確実な有給取得と休む文化の醸成で従業員が定着する組織へ

有給休暇の取得状況は長年にわたり低い水準で推移してきましたが、有給休暇の5日取得が法律によって義務付けられてからは取得が進んでいます。

有給休暇の取得は労働者の権利です。適切に休暇を取得すれば、疲労を回復させて心身の健康を確保できたり、ワークライフバランスが実現できたりといった効果が期待できます。企業にとっても、従業員が意欲的にはたらくことで会社の成長が期待できます。

厚生労働省の調査によると、転職者が前職を辞めた個人的な理由のうち、労働時間や休日などの労働条件を挙げた人は男女共に約1割いました。「その他」を除けば、男性では収入、人間関係に次いで3番目で、女性では最も多い結果です。とりわけ若年層やはたらき盛りの世代で高くなっている傾向にあります。

※出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」

人材不足の昨今、採用と定着が経営の大きな課題になっている企業も多いでしょう。有給休暇を含む労働条件は、従業員の定着を大きく左右します。会社に休む文化を定着させ、有給休暇を取得しやすい環境が整えば、人材に関する課題の解消につながります。

休む文化を定着させるためには、社内にルールを設ける、ツールを用意するなど、ハード面の整備も重要です。管理職教育も重要で、時間や金銭的なコストの発生も見込まれますが、企業の存続という観点から大局的な判断が必要となります。こうした姿勢を企業のトップや経営層が率先して示し、実行に移すことが、休む文化づくりの第一歩となります。それにより社員からの信頼が生まれれば、はたらきやすい企業文化はきっと醸成されるはずです。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

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