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インクルージョンとは?ダイバーシティとの関係やメリット、課題を解説

公開日:2026.02.13

企業の課題

グローバル化や人材不足が進む中、多様な人材が活き活きとはたらける職場づくりは、多くの企業にとって避けることのできないテーマの一つとなっています。そんな中で注目されるのが、インクルージョンという考え方です。

インクルージョンは、ダイバーシティ(多様性)によって性別や年齢、国籍などが異なる人を集めるだけではなく、一人ひとりの違いを尊重しながら、エクイティ(公平性)によって機会が与えられ、自分の力が発揮できる状態を目指す考え方です。

この記事では、インクルージョンの定義や混同されやすい言葉との違い、ダイバーシティやエクイティとの関係性について解説します。また、インクルージョンが企業にもたらすメリットや、推進する際の課題、具体的な施策例、成功させるためのポイントまで、順を追ってご紹介します。自社でのインクルージョン推進を考える際の参考にしてください。

インクルージョンとは

インクルージョンとは、多様な属性や価値観を持つ人々が組織の一員として公正に扱われ、尊重され、自分の力を発揮できる状態を指す考え方です。

インクルージョンはノーマライゼーションやインテグレーションと混同されやすい言葉でもありますが、これらは似ているように見えて異なる概念です。まずは、インクルージョンの定義と、他の関連する言葉との違いを整理してみましょう。

インクルージョンの定義

インクルージョンは、直訳すると包括、含有、一体性などを意味します。社会や組織は特定のマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)で構成されているのではなく、最初から多様な背景や価値観を持つ人々が集まって成り立っているという考え方です。

企業におけるインクルージョンとは、組織に属するすべての従業員が、自分の属性や価値観にかかわらず公正に扱われ、尊重され、自分の力を発揮できる状態を指します。つまり、単に多様な人材が存在するだけでなく、多様性を受け入れ、活かし、組織全体の力につなげることを目的とした考え方です。

混同されやすい言葉

インクルージョンと混同されやすい言葉として、「ノーマライゼーション」や「インテグレーション」があります。いずれも多様な人が暮らしやすい社会や組織を目指す点では共通していますが、前提とする考えが異なります。

ノーマライゼーションは、直訳すると正常化、標準化という意味です。障害のある人や、日常生活に何らかの支援が必要な人が、社会の主流・健常者(マジョリティ)と同じような生活を送れるよう、制度や環境を整えるべきだという考え方を指します。いわば社会の側がバリアを取り除き、誰もがあたり前に暮らせる状態を目指す思想です。

一方、インテグレーションは、直訳すると統合、融合という意味です。すでにあるマジョリティ(多数派)のグループや文化の中にマイノリティ(少数派)の人々を受け入れるためのアプローチを指します。マイノリティ(少数派)側が既存のルールや価値観に合わせていくことが前提になりやすく、受け入れる側と受け入れられる側が分かれがちな点が特徴です。

ダイバーシティやエクイティとの関係性

インクルージョンは、ダイバーシティやエクイティとセットで語られることが多くあります。ここでは、それぞれの意味とインクルージョンとの関係性を解説します。

ダイバーシティとは

ダイバーシティは、日本語で多様性を意味します。組織や集団の中に、性別や国籍、年齢、価値観、経験、障害の有無など、異なる背景を持つ人たちが共に存在している状態です。同じような人が集まる組織ではなく、違いを持つ人が集まる組織であることがポイントです。

ただし、ダイバーシティは、多様な人がいることだけで完結する考え方ではありません。多様な人材がいても、その人たちの意見が尊重されなかったり、旧来のやり方だけが優先されたりすると、一人ひとりが力を発揮しにくくなります。その結果、職場に居心地の悪さを感じ、優秀な人材が離職してしまう恐れもあります。

そこで重要になるのが、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という考え方です。ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を受け入れ、その違いを組織の中で活かしていく取り組み全体を指します。多様な人材が集まっているだけでなく、全員が公正に扱われ、尊重され、意思決定や日々の業務に参加できる状態を目指します。

一方、高いレベルでインクルージョンの考え方はあっても、そもそもダイバーシティが乏しい組織もあります。同質性の高い組織は居心地のよさを感じやすいものの、新しい視点や新しい発想が生まれにくく、イノベーションの面では不利になる恐れがあります。ダイバーシティとインクルージョンは、どちらか一方ではなく、二つを組み合わせて考えることが大切です。

以下の記事では、ダイバーシティについてさらに詳しく解説しています。
>>ダイバーシティとは?推進するメリットや重要性、取り組み事例をご紹介

エクイティとは

エクイティは、日本語で公平性を意味する言葉です。一人ひとりの状況やニーズの違いを考慮しながら、機会やリソースを公正に配分する考え方を指します。全員に平等に支援を提供する考え方とは異なり、その人が直面している環境やハードルを踏まえた上で、必要な支援を適切に提供する点が特徴です。

このエクイティを取り入れた考え方が、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)です。これまで広く知られてきたダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に公平性の視点を加え、多様な人たちが集まり(ダイバーシティ)、一人ひとりに公正な機会が用意され(エクイティ)、全員が尊重されながら活躍できる(インクルージョン)状態を目指す取り組みを指します。

昨今、このDE&Iは、企業が持続的に成長するために欠かせない考え方の一つとされており、採用、育成、評価、組織文化づくりなど、あらゆる領域で取り入れられはじめています。

インクルージョンの重要性と経営メリット

インクルージョンを取り入れると、多様な人材が活躍し、新しい発想が生まれやすい環境が整うなど、さまざまなメリットが得られます。ここからは、インクルージョンが企業にもたらす重要性と経営メリットについて解説します。

アイデアやサービスが生まれやすくなる

インクルージョンが進んだ組織では、性別や年齢、国籍、専門分野、価値観などの異なる人たちが安心して意見を出せるようになります。

その結果、既存の枠組みにとらわれないサービスや商品が生まれやすくなり、イノベーションの創出につながります。

人材の確保と定着率の向上につながる

インクルージョンに取り組むと、性別や年齢、ライフステージ、はたらき方の希望などが違う人たちも安心して応募しやすい環境を整えることができ、採用できる人材の幅も広がります。

また、一人ひとりの事情や価値観に配慮しながら公正な評価ができている職場では、はたらきやすさとはたらきがいの両方を実感しやすく、結果として従業員の定着率向上につながります。

生産性の向上につながる

インクルージョンが進んだ組織では、従業員一人ひとりが尊重され公正に扱われていると感じられるため、自分の能力を最大限に発揮しやすくなります。

その結果、従業員同士が活発に意見交換を行い、協力しながら業務を進められるようになり、業務効率が向上します。こうした積み重ねが、組織全体としての生産性向上へとつながります。

市場の開拓や顧客満足度の向上が期待できる

インクルージョンを取り入れることに成功し、多様な人材の意見が活かされている組織では、これまで見落としていた顧客層のニーズや市場の変化にも気付きやすくなります。

その結果、新しい市場の開拓や、顧客一人ひとりに合った商品・サービスの提供につながり、顧客満足度の向上も期待できます。

企業イメージとブランド価値の向上につながる

インクルージョンを積極的に推進することは、企業が社会的な責任を果たそうとする姿勢のあらわれでもあります。多様な人材を尊重し、公正な機会を提供している企業として認識されることは、信頼できる企業、社会に貢献している企業というイメージの形成につながり、結果として企業ブランドの価値向上にもつながります。

インクルージョン推進の課題

インクルージョンには多くのメリットがありますが、実際に組織で推進しようとすると、意識や制度、環境づくりなど、いくつかの課題にも直面します。ここでは、インクルージョンを進めていく上で代表的な課題について整理します。

意識改革が重要

インクルージョンを推進する際の大きな課題の一つが、意識改革です。

インクルージョンを正しく理解していないと、マイノリティ(少数派)を優遇する施策と受け止められ、マジョリティ(多数派)側が、自分たちには関係ない、あるいは不公平だ、などと感じてしまう場合があります。インクルージョンは一部の人のための取り組みではなく、組織全体の成果やはたらきやすさを高める考え方であることを、経営層の言葉で発信し、浸透させていくことが欠かせません。

加えて、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)にも注意が必要です。例えば、女性はリーダーシップよりサポート役が向いている、若手の意見は未熟だ、などといった、本人も気付いていないレベルでの思い込みが、採用や評価、日常のコミュニケーションの場面で公平性を欠いた判断につながる恐れがあります。こうした偏見に気付き、見直していくことが、インクルージョンを根付かせるための第一歩です。

仕組みづくり・環境の整備が必要

インクルージョンを推進するには、考え方を共有するだけでなく、制度やルール、職場環境そのものを見直すことが必要です。

従来の評価制度や昇進基準、はたらき方が無意識のうちに特定のマジョリティ(多数派)に最適化されていると、マイノリティ(少数派)の従業員が制度上不利になってしまう恐れがあります。どの従業員にとっても公正であるかを確認し、必要に応じて制度やルールを再設計しなければなりません。

さらに、インクルージョンを日々の現場で実現する上では、現場を率いる管理職の役割が大きくなります。多様な部下の意見を引き出し、議論を促し、公平に評価するインクルーシブ・リーダーシップのスキルは、一朝一夕に身に付くものではありません。管理職向けの研修やコーチング、相談できる仕組みなどを通じ、継続して実践できるよう支援していくことが求められます。

インクルージョンの測定が難しい

インクルージョンは、尊重されていると感じるかどうか、心理的安全性があるかどうかといった、組織文化の質的な状態を指す概念です。そのため、売上や離職率のような数字だけでストレートに測定することが難しい側面があります。

どの程度インクルージョンが進んでいるのか、従業員がどのように感じているのかを把握できない状況では、改善の方向性や優先順位も見えにくくなります。進捗をどの指標でとらえ、どのようなデータや声をもとにPDCA(業務の改善・品質向上させるための継続的な手法)を回していくのかを設計することが、インクルージョン推進には必要です。

インクルージョンを推進するための具体的な施策例

インクルージョンを実現するためには、考え方を共有するだけでなく、具体的な取り組みを社内で実践していくことが大切です。ここでは、意識改革や制度の整備、公平な機会の提供といった代表的な施策例についてご紹介します。

意識を変えるための取り組み

インクルージョンを根付かせるには、一人ひとりの受け止め方や価値観にはたらきかける意識改革が欠かせません。そのためには、無意識の思い込みに気付き、行動を見直すきっかけになる研修や学びの機会を継続的に用意する必要があります。

具体的な施策として、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)研修が挙げられます。男性はこうあるべき、女性はこうあるべきといった誰もが持ってしまいがちな思い込みに気付き、採用や評価、日常のコミュニケーションへの影響を見直す機会として、管理職だけでなく全従業員を対象に実施しましょう。

また、インクルーシブ・リーダーシップ研修を通じて、管理職が多様な部下の意見を傾聴し、それぞれの強みを引き出し、公平に評価するスキルを学ぶことも大切です。管理職がインクルーシブ・リーダーシップを身に付ければ、部下の心理的安全性が高まり、インクルージョンの土台づくりにつながります。

心理的安全性については、以下も参考にしてください。
>>【チェックリスト付】「心理的安全性」を高めて多様な人材を活かすコツ

はらたき方や制度の整備

インクルージョンを推進するためには、多様な人材が不利にならないような仕組みづくりが欠かせません。誰もが安心して力を発揮できるよう、はたらき方や制度そのものを見直し、公平な環境を整えることが重要です。

具体的には、コアタイムのないフレックス制度やはたらく場所を問わず勤務できるテレワーク制度を導入すること、育児や介護、自身の体調、居住地にかかわらずはたらき続けられるような環境づくりなどが挙げられます。

その他にも、介護休業制度や短時間勤務制度の適用期間の延長、ベビーシッター費用の補助など、育児・介護支援制度を拡充することも、多様な人材がキャリアを中断せず活躍し続けるための土台となります。

公平な機会の提供

インクルージョンを進めるためには、採用や評価のプロセスが公平であることも重要です。プロセスそのものに偏りがあると、結果として一部の人だけが選ばれやすくなり、インクルージョンの実現が難しくなります。

具体的な施策として、ブラインド選考(ブラインド・リクルーティング)が挙げられます。書類選考の段階で氏名や性別、年齢、顔写真、出身大学などの情報を伏せ、スキルや経験などの要素に絞って判断することで、無意識の偏見が入り込みにくい採用プロセスが実現します。

また、採用・昇進基準の明確化も欠かせません。リーダーシップがある、などといった曖昧な表現のままでは、評価者ごとに判断が分かれやすくなります。どのような行動や成果が評価対象になるのかを具体的に定義し、評価のブレを小さくすることが、公平な機会の提供につながります。

評価面談については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
>>評価面談の完全ガイド|進め方・対話技術・フィードバックまで徹底解説

インクルージョン推進を成功させるためのポイント

インクルージョンを一過性の取り組みで終わらせず、組織に根付かせるには、経営の姿勢や推進体制、取り組みの続け方など、押さえておきたいポイントがあります。ここからは、インクルージョン推進を成功に近づけるポイントをご紹介します。

経営戦略であると経営トップが定義する

インクルージョンを効率よく推進するためには、CSR(企業の社会的責任)の範囲や人事部だけの取り組みとして扱うのではなく、自社の経営戦略の一つであると経営トップが明確に位置付けることが重要です。

経営トップ自らが、なぜ自社の成長にインクルージョンが必要なのかをくり返し、一貫して発信し続けなければ、その意識は組織全体に共有されません。その上で、インクルージョンが一時的な取り組みではなく、企業の方向性そのものとして従業員に認識させることが成功のポイントです。

管理職を推進の当事者にすることが大事

インクルーシブな職場環境を実際の行動に落とし込むのは、経営陣ではなく、日々従業員とかかわる現場の管理職(マネージャー)です。そのため、インクルージョン推進の担い手として管理職を位置付け、当事者として巻き込むことが重要となります。

その際、管理職がインクルージョンの重要性を理解していなかったり、向き合うスキルを持っていなかったりすると、部下が意見を出しにくくなり、心理的安全性が低下する恐れがあります。

これを防ぐには、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)やインクルーシブ・リーダーシップに関する研修を管理職向けに提供し、インクルーシブなチーム運営を組み込むことが有効です。

定期的な意識調査と長期的な視点を持つ

インクルージョンを継続的に推進するためには、現状を客観的に可視化し、改善を続ける必要があります。そのためには、定期的に従業員サーベイ(意識調査)を行い、どのくらい尊重されていると感じているか、心理的安全性があると感じられるかなど、インクルージョンの度合いを数値化することが大切です。

こうして得られた数値(KPI)を経営陣と現場が共有し、どこに課題があるのか、どの施策が効果を発揮したかを分析しながらPDCAのサイクルを回し続ければ、取り組みの質は少しずつ高まります。

インクルージョン推進はすぐに結果が出るものではありません。だからこそ、長期的な視点を持ち粘り強く改善を重ねる必要があります。

企業の持続的成長にはインクルージョンの実現がカギ

インクルージョンは、多様な人材がいる組織で一人ひとりの違いを尊重し、公正に扱い、能力を最大限に発揮できるようにするための考え方です。ダイバーシティやエクイティと併せて取り組むことで、新しいアイデアやサービスが生まれやすくなり、人材の確保や定着、生産性の向上、市場の開拓や企業イメージの向上など、経営面でのメリットも期待できるでしょう。

ただし、意識改革や制度の見直し、管理職の育成、インクルージョンの測定方法の工夫など、乗り越えるべき課題も少なくありません。自社の現状をふり返りながら、意識改革、はたらき方や制度の整備、公平な機会の提供といった取り組みを少しずつ積み重ねていくことが、インクルージョンの実現につながり、企業に持続的な成長をもたらしてくれるでしょう。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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