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悩ましい新卒教育(1)
~新卒は何を考えているのか? 二年目が語る、今だから言えること

公開日:2026.05.15

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新卒社員が入社し、落ち着いてきた頃になりましたね。あと三ヶ月もすると、多くの企業で新卒社員は「守られる存在」から「成果を求められる存在」へと立場が切り替わるタイミングを迎えます。
その裏側で、新卒社員たちは何を感じ、どのような葛藤を抱えているのでしょうか。
また、「教育係」として奮闘している先輩社員や人事の皆さんにとっても、今は大変な時期ではないでしょうか。

そこで今回の編集部レポートでは、二回にわたり、当社の事例として「教育される側の新卒社員」「教育する側の先輩社員・人事」のそれぞれにインタビューを行い、その内容をお届けします。

第一回では、当社の新卒二年目として、それぞれ別部門で活躍する二名に、新卒一年目の経験や気持ちを振り返りながら、“今だから言える”研修や教育について話を聞きました。
彼らの言葉から浮かび上がってきたのは、「若手が弱くなった」といった単純な話ではなく、成長の手応えが見えにくくなっている構造的な課題でした。
一年目を経験した今だからこそ語れる「新卒教育のリアル」には、多くの示唆が含まれていると感じます。

理屈はわかる。でも、やり方が知りたかった。

二人が口をそろえて振り返ったのは、入社直後の研修に対して感じた“ある種のギャップ”でした。

「理念や目的を学ぶ研修は大事だと思います。ただ正直に言うと、『では、どうすれば成果が出るのか』という具体的な話を、もう少し聞きたかったです」。

営業研修では「顧客の課題を聞く」「価値提供を考える」といった考え方を学びます。しかし実際に現場へ出ると、評価されるのはアポイント数や受注数といった“数字”です。このギャップに直面し、多くの新卒社員が戸惑いを感じます。

「『顧客の課題を聞く』ことが大切なのは理解していましたが、『どうすれば成果につながるのか』という具体論は手探りでした。やって覚えろと言われても、失敗したときに何が良くなかったのか分からないことも多かったです。だからこそ、最初は“型”を教えてほしかったと思います」。

全体研修では抽象論を学び、配属後に個別フィードバックで具体論を知る。この分断は、新卒社員にとって遠回りに感じられることがあります。全体研修では語られにくい、個別具体のスキルや思考プロセス。若手が求めているのは正解そのものではなく、『最初に踏み出すための「型」』なのかもしれません。

誤解されがちですが、二人は「細かく指示してほしい」と訴えているわけではありません。

「自分で考えることが必要なのは分かっています。ただ、『どこを見て考えるのか』『最低限どこを押さえるべきか』といった視点は、もう少し早い段階で知りたかったです」。

全体研修は抽象的になりやすく、配属後のフィードバックは個別で断片的になりがちです。

「ロールプレイングでは『ここは、こうしたらいいよ』といったアドバイスはもらえましたが、『成果を出している人が何を考えているのか』を体系的に聞く機会は、あまりなかった気がします」。

若手が求めているのは「正解」ではなく、考えるための座標軸や指標でした。

本配属後に訪れる「静かな壁」

印象的だったのは、本配属後のモチベーションについての話でした。二人は営業現場を数ヶ月経験した後、企画やマーケティング、人事などの内勤部門へ配属されています。
営業現場では、成果が数字として可視化されるだけではなく、社内やお客様とのコミュニケーションの中から、今の自分の状態や日々の成長を感じやすい環境です。一方、内勤部門では成果が見えづらいだけではなく、コミュニケーションの面でも壁に直面します。「自分は前に進めているのか分からない」と感じる瞬間が訪れるのです。

「最初の数ヶ月はインプットが中心で、自分が成長しているのか分からなくなりました」。

内勤部門では、移動時間や雑談といった“余白”が少なく、コミュニケーションは意識的につくらなければ生まれません。この“静かな環境”は、慣れるまで大きなハードルになります。

「悪い意味のギャップではありませんが、最初は距離をどう縮めればいいのか分かりませんでした」。

結果として、「忙しいのに成長している実感がない」という状態に陥りやすくなります。業務量は増え、求められる水準も上がりますが、評価や成果が言語化されないと、仕事は次第に“こなすもの”になってしまいます。

この時期、本人たちは決して怠けているわけでも、やる気を失っているわけでもありません。ただ、「今の自分がどこにいるのか」が見えなくなっているだけなのです。

成長のスイッチは「具体的で率直なフィードバック」

それでも心が折れずに前に進めた理由として挙げられたのが、上司からの具体的で率直なフィードバックでした。

「1on1で『今のあなたを点数にするならば、まだ10点くらい』と言われたときは正直刺さりました。ただ同時に、『ここを変えれば15点になる』と言ってもらえたのも大きかったです」。

重要なのは評価そのものではありません。現在地を言語化し、次に何をすればよいかを示すことです。

「『前よりここが成長しているよ』と言われると、ちゃんと見てもらえていると感じて、もう一度頑張ろうと思えました」。

称賛だけでも、叱責だけでもありません。納得感のあるフィードバックこそが、新卒社員の成長スイッチになるのです。
若手は「厳しさ」を求めていないわけではありません。最近は「若手には厳しくできない」「怒ると辞めてしまう」といった声もよく聞かれます。しかし、二人の話から見えてきたのは、少し違う姿でした。

「理不尽でなければ、厳しい指摘もありがたいです。理由が分かれば、前向きに受け取れます」。

むしろ、何も言われないことの方が不安で、評価軸が分からないまま仕事を続けることは、若手にとっては不安な状態なのでしょう。

「辞めたいと言っている人の多くは、本当に限界というより、『どうしたらいいのか分からない』状態なのだと思います」。

必要なのは、感情的な叱責でも過剰な配慮でもありません。納得できる理由と、次の行動が見える指摘なのです。

新卒教育に必要なのは「正解」ではなく「支点」

二人が共通して挙げたのは、「一人で抱え込まなくていい環境」の重要性でした。教育担当が一人だけで、その人にしか相談できない状態は、新卒社員にとって大きな負担になります。

「教育担当とは相性もありますし、正直聞きづらいこともあります。『この人にはこれを聞ける』というルートが複数ある方が安心でした」。

また印象的だったのは、「どんな状態でも受け止めてもらえた経験」についてでした。

「仕事がつまらないと言ってしまった時期もありましたが、『じゃあ、どこなら力を発揮できそうか一緒に考えよう』と言ってもらえたのがありがたかったです」。

心理的安全性とは、常に前向きであることを求められない環境です。不安や迷いを言葉にしても大丈夫だと思えることが、新卒社員が折れずに前に進む前提になります。

あとがき

インタビューを終えて印象に残ったのは、二人の言葉に漂う静かな空気でした。決して強い不満感があったわけではありませんが、随所に戸惑いや違和感がにじんでいるようでした。

彼らは「甘やかしてほしい」と言っているわけではありません。むしろ繰り返し語っていたのは、「成長したい」という素朴でまっすぐな思いでした。
「やって覚えろ」という言葉は、かつては育成の定番だったかもしれません。しかし仕事が高度化・複雑化した今、その言葉は時に沈黙を生んでしまいます。

育成とは、才能を引き上げることだけではなく、迷ったときに立ち戻れる基準を共有し、「今どこにいるのか」を一緒に確かめる営みなのかもしれません。

今の若手が大きく変わったというよりも、物事に対する説明がより複雑化した時代になったのでしょうか。

彼らの声は、日本企業が長年当たり前としてきた育成の前提を、静かに問い直しているように感じられました。
その問いにどう応えるのか。答えは、現場一つひとつの対話の中から生まれていくのかもしれません。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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