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【セミナーレポート】
ウェルビーイング経営の実現と従業員体験
(EX)

公開日:2025.04.25

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法政大学大学院
政策創造研究科 教授
石山 恒貴 氏

近年、注目が集まりつつあるウェルビーイング経営。人的資本経営の実現には、ウェルビーイングの実現がカギとされる一方、その具体性はまだ曖昧に捉えられています。法政大学大学院 政策創造研究科 教授 石山 恒貴氏のウェルビーイング経営とEXに関して、またHRに向けた具体的な提案についての講演をご紹介いたします。

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ウェルビーイングのカギは人生の意義と目的の追求

株主資本主義において、企業は利益を増やすことが最大の社会的責任とされてきました。ところが近年では企業は株主だけでなく、地域社会や従業員、顧客などのために価値を提供すべきという考え方に変わりつつあります。
ウェルビーイングとは、心も体も生き生きとした状態や主観的幸福を指します。つまり個人が充実しているかどうかが軸になるのです。これはOECD(経済協力開発機構)の政策目標のひとつとされており、主観的幸福を測ることが国や企業が施策をする上で重要であると示唆しています。OECDはウェルビーイングを安定した仕事や収入などの「生活評価」、楽しさや快楽を示す「感情」、人生の意義や目的の追求や実現などを指す「エウダイモニア」の三要素に分類できると述べています。また、近年のウェルビーイング経営は「社員の主観的幸福の向上に取り組むことで、組織の業績向上につなげる」という考え方に変わりつつあります。

「個の尊重」がウェルビーイング経営の中核

昨今、ウェルビーイング経営ではエンゲージメントがカギであると示唆されてきました。エンゲージメントには、会社や職場への愛着を示す「従業員エンゲージメント」と仕事への心理状態を表す「ワーク・エンゲージメント」があります。過去にギャラップ社が行った従業員エンゲージメント調査では、日本は世界139カ国中132位と極めて低いことが明らかになりました。日本企業では上司が部下の強みに着目せず、むしろマイクロマネジメントをしてしまうことが主な原因であると考えられます。
ウェルビーイング経営では個を尊重することが中核と言えます。その中でも重視されるべきは従業員体験(EX)です。これは顧客体験(CX)を応用した考え方で、従業員の真のニーズへの理解が要となります。仕事や人間関係への従業員の本音を把握することが必須であり、人事部門はもちろん、あらゆる部門で取り組むことが理想的です。
また、ウェルビーイング経営には、従業員が主体的に仕事を再創造する「ジョブ・クラフティング」が深く関係しています。ここで重要となるのは上司と部下が真摯に話し合い、上司が部下個人の仕事の意義を尊重しつつも、それが組織の価値につながるような支援をしていくことです。結果、エウダイモニアが高まり、ウェルビーイングの向上に大きくつながると言えます。

まとめ

ウェルビーイングを仕事で実現する際に軸となるのがワーク・エンゲージメントです。上司が部下のニーズを把握するにあたっては、単に数値化するだけではなく、仕事や職場への想いをしっかり汲み取ることが不可欠となります。部下への深い洞察や共感力がないと表面的になりやすいため、十分な配慮が必要です。そして、部下と徹底した対話をすることが、個々の強みの理解とジョブ・クラフティングの促進につながります。対話において仕事上の情熱や動機に重きを置くことで、個々の強みをより理解することができるのです。

Profile

法政大学大学院 石山 恒貴 氏

法政大学大学院 政策創造研究科 教授
石山 恒貴 氏

一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境的学習、キャリア形成、人的資源管理、タレントマネジメント等が研究領域。日本労務学会副会長、人材育成学会常任理事、産業・組織心理学会理事、人事実践科学会議共同代表、一般社団法人シニアセカンドキャリア推進協会顧問、NPO法人二枚目の名刺共同研究パートナー、フリーランス協会アドバイザリーボード、専門社会調査士等。主な著書:『カゴメの人事改革』(共著)中央経済社、『越境学習入門』(共著)日本能率協会マネジメントセンター等多数。

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