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【セミナーレポート】
人事パーソンの成長論・キャリア論ー「シン・人事の大研究」が明らかにしたことー

公開日:2025.04.11

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立教大学 経営学部 助教
田中 聡 氏

立教大学 経営学部 教授
中原 淳 氏

近年、増殖している人と組織の課題。立教大学 田中聡氏・中原淳氏と『日本の人事部』(編集長・長谷波慶彦氏)が2022年2月に行った「人事パーソン全国実態調査」での1,500名を超える人事パーソンからの回答をもとに、「人事部として」ではなく「人事パーソン自身がどうありたいか」をテーマにご講演いただきました。人事パーソンがより前向きに、より幸せにはたらくためのヒントをご紹介します。

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人事パーソンは人事の仕事をどう捉えているのか?

まず「人事パーソンは人事の仕事についてどう捉えているのか」を参加者の皆さまと一緒に考えました。大変だと思うことや他職種との比較を行う中で、「新しい課題への対処」は、⼈事職特有の難しさと⾔えます。例えば、「報酬の低さ」「やらされ感」「仕事の意義」などに不満を抱える⼈は相対的に少ない傾向にありますが、新しい課題に追われ、目の前の仕事に追われてしまう仕事のエンドレス性や、「やって当たり前」と思われてしまうような周囲の理解不足が、職務ストレスを高めています。
人事パーソンのハイパフォーマーの特徴として、職場での学びに積極的であり、フィードバックや仕事の意義を自ら動き・見立て・行動していることが挙げられますが、その成長実感は人事歴3年を境に下降傾向となり曲がり角を迎えます。その要因のひとつとしてフィードバック機会の減少が挙げられます。
また人事パーソンは週当たりの学習時間が60分以上という回答が約8割以上に及び、多くの時間を投資していることがわかります。常に課題に直面する人事パーソンにとって学びは切っても切り離せないものと言えるでしょう。また約4割がキャリアを不安に抱えている一方、将来的に人事を続けていきたいという回答は約8割に上り、人事を天職と捉える人が多いことがうかがえます。

仕事で高い成果を上げつつ、幸せを実感するために

人事を生涯の仕事として続けるには評価だけでなく、主観的に幸せを感じられるかどうかも鍵となります。人事パーソンの幸福活躍度は30代半ば(若手期)までは下り坂、35〜45歳(中堅期)は上り坂、45歳(ベテラン期)からは再び下り坂とキャリア段階ごとに変化することが判明しました。さらに見ていくと、若手期に「従業員の成長をサポートできる」、中堅期に「社員から感謝される」を実感できる人ほど幸福活躍度が高い傾向がありました。
各キャリア段階を乗り越えるために、若手期では「長期的なキャリアの基盤となる基礎知力づくり」、中堅期では「アウトプット重視の学習行動」、ベテラン期では「インプット・アウトプットのバランスの良い実践」が重要であると考察できます。ベテラン期になると、自分の強みを活かせない新たな役割を任される機会が増えるため、ジョブ・クラフティングや1on1など、他者のフィードバックを得ることも大切と言えるでしょう。

まとめ

事業と人の成長を支援できることは人事という仕事の魅力のひとつです。一方でエンドレス性と周囲の理解不足などにより、職務ストレスを高める要因がある仕事とも言えます。人事パーソンとして成長しキャリアを創っていくためには、直面する新たな課題にどう向き合っていくのかがポイントになるようです。また人事パーソンが幸福感を感じながらキャリアを重ねていくためには学習行動が大切であり、仕事を見つめ直す機会の確保が必要です。

Profile

立教大学 田中 聡 氏

立教大学
経営学部 教授
田中 聡 氏

立教大学 経営学部 助教。1983年 山口県周南市生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程 修了。博士(学際情報学)。慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。大手総合商社とのジョイントベンチャーに出向して事業部門を経験した後、人と組織に関する調査研究・コンサルティング事業を専門とする株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)の立ち上げに参画。同社リサーチ室長・主任研究員・フェローなどを務め、2018年より現職。専門は、経営学習論・人的資源開発論。働く人とチームの学習・成長について研究している。

立教大学 中原 淳 氏

立教大学
経営学部 教授
中原 淳 氏

立教大学 経営学部 教授。立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所 副所長などを兼任。博士(人間科学)。専門は人材開発論・組織開発論。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等をへて、2017年~2019年まで立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム主査、2018年より立教大学教授(現職就任)。

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