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労働者災害補償保険とは?企業における労災保険の重要性や補償内容を解説

公開日:2024.02.27

法律

通勤中や労働中に発生した事故(災害)のことを労働災害といいます。労働災害が発生してしまった場合、「労災保険(労働者災害補償保険)」という保険で補償されます。
労災保険は労働者が一人でもいる企業では加入が必須です。万が一に備えて、加入方法や、災害時に企業がすべき対応を知っておきましょう。

労働者災害補償保険とは

労働者災害補償保険(労災保険)とは、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病などに対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進などの事業を行う制度です。構成する大半は、事業主が負担する保険料によってまかなわれています。

原則として一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、労働者であればアルバイトやパートタイマーなど、雇用形態は関係ありません。

労災保険法は労働基準法に対する特別法という位置づけです。労災が発生すると、労災保険法に基づいて給付が行われます。労働基準法に基づいた補償がされるのは、労災保険法で給付されない範囲に限られます。

企業における労災保険の重要性

企業にとって、労災保険への加入は必須となりますが、加入することでさまざまな利点があります。どのような利点があり、なぜ重要なのかを解説します。企業の経営者や人事労務担当者として、労災保険の対象、補償内容、加入方法などの必要な知識を身に付け、労働者が安心してはたらける環境をつくりましょう。

労働者の安全確保

はじめに、労働者の安全確保が挙げられます。万が一業務中または通勤中の事故や災害が発生した場合でも、適切なサポートがあることから、労働者は安心して業務に従事することができます。

企業の信頼性向上

労災保険に加入することにより企業の信頼性が向上します。労災保険に加入することは、労働者の健康や福祉に真剣に向き合うという姿勢の表れと言えるでしょう。

リスク管理

労災保険に加入することにより、潜在的な労働災害に対するリスクを正確に評価し、最小化するためのリスクマネジメントが可能です。通勤や職場の環境の中に、どのような災害リスクがあるか、またそのリスクの可能性の高さを想定し、リスクを回避する方法を検討することにより、労働者も安心してはたらくことができるようになります。

法的責任とコンプライアンスの確保

労災保険に加入しない場合、どのような罰則が発生するのでしょうか。労災保険は基本的に強制であるため、適用事業では必ず加入することとなります。労災保険法の適用対象の事業主が加入手続きを行っていない場合には、行政指導や、悪質な場合には保険給付額の全額を徴収される制度があります。労災保険に加入し、法的責任を果たし、コンプライアンスを徹底する必要があります。

労災保険法の対象

前述の通り、労災保険法における労働者とは、「職業の種類を問わず、法の適用を受ける事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、労働者であればアルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係ありません。また、対象となる災害の内容はいわゆる労災です。業務中の事由または通勤によって負傷、疾病、障害、死亡した場合を指します。

発生した災害が、労災保険法の対象となるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件によって判断することになります。
「業務遂行性」とは、労働契約に基づいて労働者が使用者の支配下にあることで、「業務起因性」とは、業務と負傷などとの間に因果関係があることです。この2つの要件に当てはまるかどうかを個別の事案ごとに判断し、労働基準監督署長が認定します。

労働者災害補償保険の補償内容

労災と認定された場合にどのように補償されるかについて、詳しくは以下となっております。

※引用:厚生労働省|労働保険給付の概要 労災保険給付等一覧

労災保険の加入方法について

労災保険は基本的に強制加入となるため、適用事業では必ず加入することになります。自社の管轄の労働基準監督署に、「保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を提出することで加入できます。

特別加入制度

他者に雇用されていない自営業者や事業主はどのようになるのでしょうか。労災保険は被雇用者のための保険なので、本来は労災保険の適用対象外となります。
しかしながら労働者と同様の仕事をしているなど、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護がふさわしいと認められる人がいることは事実です。そのため保護がふさわしいと認められる一定の人を対象として、特別に任意での労災保険の加入を認める制度として労災保険の特別加入制度があります。特別加入制度の対象になるのは、中小事業主、一人親方および自営業者、特定作業従事者、海外派遣者のうち一定の要件を満たす人です。

労災時に企業が必要な対応

労災が起こったとき、企業で必要な対応は大きく分けて3つあります。1つずつ解説します。

現場対応・原因調査

まずは被災者が医療機関を受診します。できれば最寄りの労災指定病院などが望ましいですが、やむを得ない場合は労災指定病院以外で受診することも可能です。
労災により医療機関を受診する場合は健康保険を使用することができないため注意が必要です。健康保険は労働災害とは関係ない傷病を対象としているからです。労災によって負傷、または病気になった際に、健康保険を使って医療機関で治療を受けた場合、治療費の全額を一時的に自己負担することとなってしまいます。もし健康保険証を使用した場合は、別途の手続きが必要となります。
また、誰が、いつ、どこで、なぜ災害にあったか、事故を見ていた人は誰か、などをできるだけ詳しく確認し、労災の事実関係を整理します。

労災保険給付手続き

次に労働基準監督署への災害発生報告や、保険給付を受けるための手続きが必要です。

申請先は、被災労働者が所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署となります。労働基準監督署の所在地は、厚生労働省や各都道府県の労働局のホームページで確認できます。労災保険給付の申請書類は、厚生労働省の「労災保険給付関係主要様式」からダウンロードが可能です。

労働者死傷病報告の届出

労働者死傷病報告は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則)に規定されている報告書類で、労働者が労災などによって、死亡または休業した場合、この書類を労働基準監督署に提出する必要があります。

労働者死傷病報告を国に提出することで、労災の発生原因の分析や、再発防止策の検討、災害リスクの解消を図ることができ、労働安全衛生行政の推進に役立っています。

派遣スタッフの労災保険について

労災保険は派遣スタッフにも適用されます。また、適用される労災保険は派遣元(人材派遣会社)の労災保険となるため、これまで説明した労災発生時の対応とは少し異なります。

もし派遣先企業での業務中または通勤中に労災が発生したら、派遣スタッフから人材派遣会社に、いつ、どこで、どのような業務をしているときに、どのような災害が発生したか連絡することになります。人材派遣会社はその連絡をもとに療養の給付や療養の費用の請求書類を作成します。当該書類には派遣先企業が派遣先証明欄に記名・押印し、負傷日時と発生状況を証明する必要があるのが派遣スタッフの労災対応の特徴です。

派遣スタッフの労災発生時に具体的にすべきこと、留意点など詳しくはこちらをご参照ください。
>>派遣スタッフの労災について、派遣先企業の対応を解説

労災保険の概要や加入方法を理解する

労災保険は基本的に加入必須ですが、自動的に加入となるわけではなく、企業の加入手続きが必要です。労災保険に加入することは、コンプライアンスの確保はもちろん、労働者の安心につながります。災害の発生時にすべきことや気を付けるべきことを、日ごろから社員へ周知し、万が一のときでもスムーズに対応できるようにしておきましょう。

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