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【分かりやすく解説】AI-OCRとは?メリットや導入時の選定ポイント

公開日:2023.11.27

更新日:2024.01.29

企業の課題

従来は、帳票や書類は紙媒体で作成・処理されるケースが一般的でした。しかし、近年ではデジタル技術を活用して社内改革を進めるDX(Digital Transformation)化が浸透しており、AI-OCRの活用が注目されています。AI-OCRは、手作業で紙媒体をデータ化している企業の業務負担を減らせる有効な手段です。

そこで今回はAI-OCRの概要を解説すると共に、活用メリットや懸念点、導入時の選定ポイントなどをご紹介します。

AI-OCRとはOCR技術とAI技術を組み合わせたシステム

AI-OCRとは

画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する技術を「OCR(Optical Character Recognition)」と呼び、日本語では「光学文字認識」と訳されます。このOCR技術に人工知能である「AI」を組み合わせた仕組みが「AI-OCR」です。

AI-OCRは精密な文字認識が可能であり、定型の帳票だけでなく非定型の書類や手書きされた文字などの読み取りもできます。帳票を手書きする企業の場合、情報を管理する際にどうしても手入力に頼らざるを得ませんが、AI-OCRは人工知能の学習能力により、どのような筆跡でもパターン化して認識することが可能です。

また、帳票のフォーマットを登録しておくと必要な情報だけを抽出・出力できるため、管理や検索の手間削減や情報共有にも役立ちます。

AI-OCRとOCRの違い

同じような機能を持つOCRとの違いは、文字認識における精度の高さです。

OCRも書類や帳票に書かれた文字の認識が可能ですが、基本的に印字された文字が対象になります。そのため手書きされた文字の認識率が低く、特に「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」「数字」などを使う日本語は正確に読み取ることが難しいです。

また、OCRで帳票を正しく読み取るには、項目ごとにレイアウトを設定する必要があります。しかし、企業によって帳票のレイアウトは異なるため、その都度設定しなければならない点が課題となっていました。

一方、AI-OCRは飛躍的に向上したAIの処理能力や、大容量化した記憶領域が活用されています。自動的に学習した情報をもとに適切なパターンを抽出し、より精密な文字認識が可能になった点が特徴です。

AI-OCRの導入が進んでいる背景

OCRは1920年代にアメリカで開発された技術であり、日本でも1960年代から製品化が行われていました。コンピューターが広く取り入れられるようになった1980年代には、大手企業や官公庁などでOCRが活用されるようになります。

2020年代に入り、AI技術の進化や新型コロナウイルス感染症の影響を受けてはたらき方が変化したことをきっかけに、AI-OCRを導入するケースが増えてきました。今後は大企業だけでなく、中小企業や個人事業でも活用されることが考えられます。

近年注目されているAI-OCRですが、導入が進んでいる背景として3つの理由が考えられます。

1.OCRと比較して文字の認識率が高い

AI-OCRは、OCRと比べて文字の認識率が高い点が大きな特徴です。一般的に、OCRの認識率は95%程度といわれています。以前と比べればOCRの認識率も上がりましたが、手書きの文字やあらたな言葉、設定していないフォントなどを誤認しやすいことが懸念点です。

一方でAI-OCRは約99.9%の認識率を誇り、認識間違いが飛躍的に軽減されています。さらに、手書きの文字はもちろん、前後の文脈を踏まえて文章を読み取ることも可能です。

デジタル化が進む昨今においても、手書きによる帳票や書類を活用する企業は少なくありません。OCRや手入力では細かなミスが発生しやすく、作業効率も下がるでしょう。その点、AI-OCRはミスを限りなく減らすことが可能であり、社員の負担軽減にもつながります。

2.複数のフォーマットにも対応している

OCRでは請求書や領収書などの帳票を読み取る際に、項目がどのようにレイアウトされているかを設定しなければなりません。企業によって帳票の仕様はさまざまなため、その度に設定し直す工数が発生します。

その点、AI-OCRの多くはフォーマットにかかわらず文字の認識が可能です。設定が不要でスキャンのみで正確に文字を認識するため、OCRよりも格段に作業効率が上がります。ただし、種類によっては手作業でフォーマットを定義するタイプもあるため、事前に確認してから採用することが大切です。

3.RPAとの連携で作業効率の向上につながる

AI-OCRの特徴として読み取った文字をデジタルデータに変換し、その後の処理も可能になる点が挙げられます。例えば、テキストデータから必要な情報を抽出したり、自社が指定するフォーマットに適用させて出力したりすることも可能

抽出した情報の意味を判断できるため、RPA(Robotic Process Automation)と連携させれば業務効率向上につながります。RPAとは、これまで手入力で行ってきたデータ登録・転記、システム管理、情報収集などの定型業務を自動化する仕組みです。AI-OCRとの連携によって、情報を入力する段階から業務工数の軽減が図れます。

RPAについては、こちらの記事でさらに詳しくご説明していますので、併せてご覧ください。
>>RPAとは?注目されている背景やメリットをご紹介

AI-OCRの種類

AI-OCRには、大きく分けると下記に挙げる3つの種類があります。自社に適したシステムを導入するためには、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。各種類について詳しく解説します。

汎用×定型フォーマット型

帳票の類型は限定せず、フォーマットのみが定義されたタイプのAI-OCRです。手作業でフォーマットを定義し、文字列を指定して情報を抽出する必要があるため工数がかかりますが、フォーマットが決まっている分、抽出精度は上がります。ただし、定型フォーマット以外は読み取れないため、異なる形式を使用する度に定義の作業が発生してしまいます。

汎用×非定型フォーマット型

あらかじめフォーマットを定める必要がなく、帳票の類型も限定しないタイプのAI-OCRです。AIの学習機能により、形式が異なる場合でも手作業で定義する必要がありません。

ただし、認識に必要な情報を収集したりAIに学ばせたりする際に、労力や時間を要します。また、未学習のあたらしい形式の帳票が紛れていた場合、精密さが失われる可能性があり、注意が必要です。

業務特化×非定型フォーマット型

帳票の類型は特定の業務に特化したもので、フォーマットは定義しないタイプのAI-OCRです。サービスを採用した時点ですでにAIが学んだ状態のため、手作業で学ばせる必要がありません。また、フォーマットが限定されないため、どの形式でもすぐに活用できます。

例えば、請求書や納品書など限られた帳票を読み込む際に活用しやすく、作業量が多い企業の効率化を図ることが可能です。また、仕訳データの抽出や作成にも対応しており、他の業務システムと連携させる際にも役立ちます。

AI-OCRを活用して効率化できる業務

AI-OCRはさまざまな業界で活用できます。活用することで効率化できる業務の一例は以下の通りです。

業界 対象業務
卸売 受注伝票のデータ入力・管理
小売 契約書のデータ入力・管理
不動産 顧客管理のシステム入力・管理
物流 納品書や配送票のデータ入力・管理
人材派遣 エントリーシートのデータ入力・管理
医療機関 カルテや問診票のデータ入力・管理
サービス業 社員やアルバイトの名簿入力・管理
縫製業 顧客ごとの採寸データ管理
自治体 各申請書やアンケートなどのデータ入職・管理

AI-OCRを活用する3つのメリット

普段の業務にAI-OCRを取り入れた際に得られるメリットは主に3つです。それぞれのメリットについて解説します。

入力作業の削減につながる

紙文書を人がデータ化する場合、入力作業に加えて目視による確認も欠かせません。AI-OCRを活用すれば、これらの手間を大幅に削減できます。また、手作業や目視では、いくら注意しても人為的ミスが発生するリスクがありますが、AI-OCRは手書き文字の読み取り精度も高いため、ミスが起こりにくく修正の手間を省くことも可能です。

紙資料を削減できる

紙媒体を使った情報管理は、人為的ミスが起こりやすいだけでなく紛失のリスクもあります。また、膨大に増えた紙資料を管理するには相応のスペースも必要です。

一方、AI-OCRによって情報をデジタル化すると、紙資料の大幅な削減につながります。大切な情報を安全に管理できる上、管理に使用していたスペースが空くため、職場の有効活用ができるでしょう。オフィスにおけるペーパレス化が進む中、AI-OCRは役立つサービスといえます。

データ検索や管理を容易に行えるようになる

AI-OCRのメリットの一つが、データ検索や管理が効率的になる点です。紙の資料を管理する場合、膨大なファイルの中から必要な情報を探し出す必要があります。その結果、資料探しに時間を費やしてしまい、本来注力するべき業務に影響が出ることも考えられるでしょう。

一方、AI-CORを活用すると情報のデータベース化が可能なため、速やかに検索できます。場所や時間を問わず作業でき、情報共有もしやすくなります。

AI-OCRを活用する際の2つの懸念点

帳票や書類を管理する際に役立つAI-OCRですが、メリットばかりではありません。懸念点もあることを理解しておくと、サービスを活用する際の参考になるでしょう。AI-OCRにおける懸念点を2つ解説します。

文字認識の精度が100%ではない

AI-OCRは従来のOCRと比べて、大幅に文字認識の精度が上がりました。しかし、いくら手書きの文字認識が可能でも、一切間違えないわけではありません。

AI-OCRを盲信してしまうと、思わぬミスにつながる可能性があります。ミスを回避するためには手書き文字を認識しやすく整えたり、誤認した文字を登録したりとサポートすることが大切です。

読み込みに時間がかかる

AI-OCRは一つの文書を読み込むのに、遅いものだと数十秒程度時間がかかります。以前と比べてパフォーマンスは上がっていますが、それでも一瞬で認識できるものではありません。

帳票や文書が多くなればなるほど、作業にかかる時間も比例して増える点に注意が必要です。状況によっては、すべての資料を読み取らせるのではなく対象を選ぶ必要も出てくるでしょう。

AI-OCRを選ぶ際の7つのポイント

AI-OCRを選ぶ際の7つのポイント

近年、AI-OCRはさまざまな製品がリリースされており、それぞれに特徴が異なります。自社に適した製品を見極めるには、ポイントを押さえることが重要です。AI-OCR を選ぶ際のポイントとして7つをご紹介します。

読み取れる文字の種類

AI-OCRは製品によって対応する文字が異なります。例えば、活字の識別に長けている製品の場合、手書きの認識率が低い傾向にあるため注意が必要です。また日本語に特化した製品は、多言語の読み取りができないケースがあります。

自社で取り扱う帳票がどのようなタイプに該当するかを踏まえて、文字の識別精度が高いAI-OCRを選ぶとよいでしょう。

対象帳票のフォーマット

読み取り対象となるフォーマットも確認する必要があります。例えば、多数のクライアントと取引している場合は受け取る帳票が同じとは限らないため、形式を問わず認識できる非定形タイプが適しているでしょう。

一方で、請求書のみを読み込むことを目的としている場合は、特定の帳票に特化した「業務特化×非定形フォーマット型」を使うと効率が上がります。

操作性

帳票や文書管理における業務効率向上に役立つAI-OCRですが、操作する社員が思うように使えなければ効率化は期待できません。AI-OCRを選ぶ際は、デジタル機器に慣れていない人でも操作できるかを確認することが大切です。専門知識がない社員でも直感的に操作しやすい製品を選べば、教育コストの削減にもつながります。

セキュリティ

AI-OCRで読み取る帳票や文書は機密性が高いものが多く、製品を選ぶ際はセキュリティの高さも重要です。特に情報を複数人で共有する場合やリモートワークでも活用する場合は、より強固なセキュリティが求められます。

万が一情報が漏えいすれば企業の信頼を失いかねないため、2段階認証やIPアドレス制限などを設定できる製品を選ぶとよいでしょう。また、個人情報保護を評価する「プライバシーマーク」や、情報セキュリティに関する要件を満たした製品に与えられる「ISMS認証」を取得したAI-OCRを選ぶこともポイントの一つです。

サポート体制

AI-OCRを提供する企業のサポート体制も押さえておきたいポイントです。システムを取り入れた後に不具合が生じることも考えられますが、サポート体制が充実している製品であれば、トラブルが起きたとしても速やかに対処できます。

スムーズにAI-OCRを活用するためにも、製品を選ぶ際は「24時間体制で対応できるか」「サポート窓口が設けられているか」などを確認するとよいでしょう。さらに、はじめて活用する企業のための説明会やサポートを受けられれば、ITに慣れていない社員でも安心して業務に取り入れられます。

他システムとの連携

AI-OCRをRPAや基幹システムと連携させると、さらなる業務効率の向上が期待できます。例えばRPAと連携すると、アップロードした帳票のデータ化や管理など業務の自動化が可能です。

ただし、製品によっては他システムとの互換性がない場合や、読み取り専用でアップロードに対応していないタイプもあります。事前に自社のシステムを確認し、互換性がありアップロード機能が備わっている製品を選ぶとよいでしょう。

実績

AI-OCRを活用するにあたって操作性や機能、セキュリティなどを確認する必要がありますが、実際に使ってはじめて気づく懸念点もあります。そこで、自社に適した製品を選ぶ際の判断材料となるのが実績です。

すでに多くの企業が活用している製品の場合、事例が公表されているケースがあります。事前に活用事例を把握できると、自社で採用した際の効果をイメージしやすいでしょう。

AI-OCRの活用事例

AI-OCR活用を検討している場合は、事例を参考にすることで自社での活用イメージが湧きやすいです。AI-OCRを活用した事例を2つご紹介します。

請求処理業務の自動化にAI-OCRを用いた事例

従来、手作業で入力・管理していた請求書処理業務にAI-OCRを取り入れた事例です。過去に使用した勘定科目をAIに学習させることで、読み取った請求書の分析や他システムへの転記が可能になった他、RPAを併用したことでこれまで社員が行ってきた処理作業の自動化が実現しています。

属人化しがちだった作業もAI-OCRとRPAの連携により、経験値の高い社員のノウハウやスキルを集約して自動化でき、安定した品質の担保につながっています。

国民健康保険や国民年金業務にAI-OCRを用いた事例

官庁や地方公共団体における国民健康保険や国民年金業務は、膨大な処理工数が必要です。特に転入・転出が頻繁に発生する異動シーズンや限度額認定の時期など、繁忙期は業務効率が下がりやすい点が課題となっていました。

AI-OCRの活用事例

AI-OCRの活用により、これまで手作業だった書類確認やシステム登録、登録内容の確認が自動化され、3割以上に及ぶ作業効率の改善につながっています。その結果、職員が窓口業務にリソースを割ける余裕が生まれました。

AI-OCRを活用して業務効率化を目指す

AI-OCRの活用により、これまで手作業で行うケースが一般的だった手書きの帳票や文書の入力・管理における効率化が図れるようになりました。従来のOCRは手書き文字の認識が困難でしたが、AI-OCRは学習機能があることから文字認識率が上がった他、非定型のフォーマットも読み取り可能です。特に膨大な帳票の管理が求められる業種では、大変役立つシステムといえます。

AI-OCRを提供している企業は多岐にわたり、性能もさまざまです。自社に合ったシステムを選ぶためには、機能や特性を理解する必要があります。しかし、AI-OCRに関する知識がなく、どのように選べばよいか分からないという企業も多いでしょう。そこで活用できるのがアウトソーシングです。

AI-OCRの活用を検討中の方は、ぜひパーソルテンプスタッフへご相談ください。

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