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育児介護休業法とは?概要や4つの制度についてわかりやすく解説
公開日:2023.10.10
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令和3年、厚生労働省の調査によると要介護・要支援認定を受けた「介護・支援を必要とする人」の数が過去最多の690万人に上りました。家族の介護に携わる人が増える一方、仕事との両立に悩むケースが増えています。また共働きが増加傾向にある中、夫婦での育児が不可欠であるのにも関わらず、男性の育児休暇取得率がまだまだ低いという現状もあります。
そんな介護・育児と、仕事との両立を目指すために制定されたのが、「育児介護休業法」です。この法律で定められている制度にはどのようなものがあるのか、2022年4月から2023年4月までの法改正の内容をまとめて確認したい企業の担当者に向けて、育児介護休業法に関して詳しく解説します。
- 育児介護休業法の概要
- 育児介護休業法で定められている4つの制度について
- 育児介護休業法改正について
育児介護休業法について正しい知識を身に着けて、取得希望者に対してどのようなができるのか考えてみましょう。
目次
育児介護休業法とは
育児介護休業法は、育児休業・介護休業に関する制度や、子どもの看護休暇・介護休暇に関する制度を定めた法律です。正式名称を「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、仕事と子育てや家族の介護の両立を図ることを目的としています。育児や介護のために退職せざるを得ないという状況を改善するために、さまざまな制度が規定されています。
育児介護休業法で定められている4つの制度について
育児介護休業法で定められている制度は4つあります。
- 育児休業:1歳未満の子どもの育児をするために取得可能
- 子の看護休暇:看護が必要な日に休暇が取得可能
- 介護休業:介護のために2週間以上の長期の休業が必要なときに利用可能
- 介護休暇:介護が必要な日に休暇が取得可能
以下では育児介護休業法で定められている4つの制度について詳しく説明します。
育児休業
1歳未満の子どもを持つ社員の育児支援を目的とした制度です。性別を問わず、原則として子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得可能な制度、いわゆる「育休」です。
また「パパ・ママ育休プラス」という制度も設けられており、父母ともに育児休業を取得する場合は、1歳2か月にまで延長可能で、最大1年間育児休業を取得することができます。
例外の場合もあり、日雇い労働者は対象外となります。また、雇用された期間が1年未満の社員については、締結する労使協定の内容により対象外となることがあります。有期雇用契約社員など、労働契約に期間の定めがある場合は、「1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない」場合に取得することが可能になります。
子の看護休暇
小学校就学前の子どもを持つ社員が、子どものけがや病気になった際の世話、健康診断や予防接種の付き添いが必要な場合などに休暇を取得できる制度です。1年度において取得可能な日数が決まっています。社員1人につき対象となる子どもが1人の場合は5日、2人以上で10日が上限となります。
育児休業制度と同じく、日雇い労働者は対象外となります。また、入社6ヶ月未満の社員、または1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、締結する労使協定の内容により対象外となることがあります。
介護休業
負傷や疾病、身体もしくは精神の障害などの理由により2週間以上の「常時介護」が必要な家族を介護する場合に休業できる制度です。対象家族1名につき3回まで取得でき、合計で93日まで休業できます。介護の対象者は、配偶者・父母・配偶者の父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫です。(「子」は養子を含む法律上の親子関係に限ります)
育児休業制度と同じく、日雇い労働者は対象外となります。また、有期契約社員については申出の時点で、取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかな場合は対象外となります。
介護休暇
介護休暇制度は、要介護状態となった家族を介護するために、社員が休暇を取得できる制度です。日雇い労働者は対象外となります。入社6ヶ月未満または1週間の所定労働日数が2日以下の社員は、締結する労使協定の内容により対象外となることがあります。取得可能な年間の日数が決まっており、要介護状態の対象家族1人につき5日、2人以上で10日を上限に、1日または時間単位で取得できます。
育児介護休業法改正について
育児介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されています。育児休業や介護休業をより一層取得しやすくするために、さまざまな視点から改正が行われています。どのような目的で、どのような点が変わったのでしょうか。まとめて解説します。
参考:厚生労働省|育児・介護休業法改正のポイント
法改正の目的
厚生労働省の「育児・介護休業法の改正について」によると、令和3年の男性の育児休業取得率は13.97%となっています。また、政府目標では令和7年には取得率30%を掲げているため、相当な差があります。育児休業を取得しなかった理由の上位は、「収入を減らしたくなかったから」、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」、「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」と続きます。収入の理由を除いては環境の改善により、取得ができるようになると推測されます。このことから、男性がより育児休業を取得しやすくすること、育児休業を取得しやすい環境整備をすること、育児休業取得率の向上のために法改正が行われています。
法改正による変更点
法改正によってどのようなことが変わったのでしょうか。時系列に沿って内容を確認しましょう。
施行日 | 施行内容 | 対象企業 |
---|---|---|
2022年4月~ |
|
全企業 |
2022年10月~ |
|
全企業 |
2023年4月~ |
|
従業員数1,000人超の企業 |
2022年4月からの変更点
育児休業を取得しやすい環境整備の義務付けと、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た社員に対して、企業は育児休業に関する制度の説明や周知、および休業の取得意向の確認を個別に行う義務が発生するようになりました。
2022年10月からの変更点
産後パパ育休(出生時育児休業)とは、子どもの出生後8週間以内に4週間(28日)まで休業できる制度です。2回に分割して取得することも可能です。また、従来1回の取得だった育児休業が今回の改正で2回に分割して取得することも可能になりました。
- 分割取得の例
引用:厚生労働省|育児・介護休業法改正のポイント
ただし、1歳到達後であっても父母での交代で育児休業を取得することはできます。また、育児休業は産後パパ育休と併せて取得することも可能で、組み合わせることによって、子どもが1歳になるまでに4回の分割取得ができるようになりました。
2023年4月からの変更点
社員数が1,000人を超える企業は、年に一度、男性の育児休業等の取得状況を公表することが義務付けられました。新たに制定された産後パパ育休等を世の中に定着させることが目的です。
法令に違反した際の注意点や罰則
育児介護休業法に違反した場合は、企業には罰則規定があります。違反した場合、企業は厚生労働大臣から違反に関する報告を求められます。また、必要な措置を取るように助言、指導または勧告を受ける場合もあります。
報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりすると、罰則として企業名の公表と最大20万円の過料が処されます。企業名の公表は、エンドユーザーや取引先からの信頼を失い、業績に多大なダメージを与える可能性があるかもしれません。また、今後の採用活動にも影響が出る可能性があります。企業は育児介護休業法の遵守が求められています。
育児介護休業法で企業の担当者が準備しておきたいこと
自社の社員に、スムーズかつ積極的に育児や介護のための休暇を取得してもらうために、企業の担当者が求められる準備にはどのようなことがあるでしょうか。誰もが一律に同じ期間休業の取得を希望しているわけではなく、一人ひとりの対象者が業務との両立の方法を検討しています。環境を整えながらそれぞれの希望に寄り添えるようにしましょう。
法律と改正の内容を理解する
法律の改正が行われると改正内容を正しく理解することが求められます。「知らなかった」とならないために、不明点は確認しながら業務にあたるようにしましょう。
就業規則を整備する
自社の就業規則の情報が古かったり、規定していない内容がある場合、トラブルが起こったり、休業の取得に対して社員のハードルが上がってしまう可能性があります。就業規則の内容をアップデートし、情報を漏れなく社員がアクセスできる場所へ格納します。
各種フォーマットを作成する
さまざまな制度の届け出のフォーマットを作成し、社員がアクセスできる場所へ格納します。フォーマットが手軽に手に入る環境だと、申請しやすくなり、取得率アップにもつながるでしょう。各フォーマットの例は厚生労働省も用意していますので、流用することも可能です。
※参考:厚生労働省|フォーマット
育児休業の取得意思を社員に確認しておく
育児休業の取得の有無や期間は、個々の事情により大きく異なります。育児休業の案内はする必要がありますが、取得するかどうか、どのくらいの期間取得するかは希望者に確認をするようにしましょう。それぞれの社員が充実した休業を取得できるようサポートが求められます。
育児介護休業法の概要について理解する
育児介護休業法では、はたらく誰もが育児や介護を理由として離職することがないよう、さまざまな制度が整備されています。また、より多くの人の仕事との両立を実現するために、改正が繰り返されています。近年の改正は、夫婦がより一層協力して仕事との両立ができることを目指しています。一方で、厚生労働省の「育児・介護休業法の改正について」によると、令和3年の男性の育児休業取得率は13.97%とまだまだ低く浸透していない現状もあります。育児休業の必要性を正しく理解し、男性・女性共に取得しやすい環境を整えましょう。
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