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従業員エンゲージメントを向上させる方法とは?メリットと測定指標

公開日:2023.09.14

更新日:2023.09.25

企業の課題

従業員が自ら会社に貢献したいと思うことや態度を、従業員エンゲージメントと言います。離職率の低下や業績向上を目指す上で、従業員エンゲージメントの向上が欠かせません。従業員の貢献意欲を高めるための施策を考えたいけれど、指標にすべきものや取り組み方が分からない方も多いでしょう。

そこで今回は、従業員エンゲージメントの概要や向上させる方法、メリットなどを解説します。従業員エンゲージメントの向上を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

従業員エンゲージメントとは自発的に会社に貢献したいと思う意欲のこと

従業員エンゲージメントは社員エンゲージメントとも言い、従業員が自ら企業に貢献したいと思う意欲や積極的に関与する態度のことを表す言葉です。企業に対する従業員の理解度や信頼度が大きく影響する概念であり、企業の利益にも直結します。

また、健康経営やワークライフバランスが重視される昨今、健康管理や評価制度、リスキリング、福利厚生の充実も従業員エンゲージメントに欠かせない要素です。従業員エンゲージメントを担う部署は人事労務のイメージが強い一方で、はたらきやすい職場環境を構築するという観点では総務が担う部分もあります。

日本の従業員エンゲージメントは低い傾向にある

経済産業省が2022年5月に発表した「未来人材ビジョン」では、国別で従業員エンゲージメントが比較されています。企業に対して熱意を持ってはたらく従業員の割合を見ると、アメリカが34%と高水準であるのに対し、日本は5%と非常に低いです。東アジアに限定して比較したデータではモンゴルが35%、次いで中国が17%となっており、世界各国の比較結果と同様に、東アジアでも日本の従業員エンゲージメントは最低水準となっています。

日本の従業員エンゲージメントが低い要因

かつての日本では、終身雇用や年功序列などの雇用システムが主流でした。また、新卒を一度に採用するケースが一般的であり、若年層の失業率は低い傾向にありました。

しかし、近年の日本では経済の伸びが落ちており、従来の雇用システムは通用しなくなっています。バブルが崩壊した1990年代に入ると、成果主義人事を取り入れる企業も出てきましたが、依然として古い雇用システムを採用しているケースも少なくありません。こうした状況が、日本の従業員エンゲージメントを低くしている要因の一つと言えます。

また、経済産業省の「未来人材ビジョン」によると、日本の生産年齢人口は2050年に約5,300万人になると予想されており、この数字は2020年の約3分の2です。加えて、日本の平均年収は先進国の中でも非常に低く、経済協力開発機構(OECD)による調査では、2022年のアメリカの平均年収が77,463USドルであるのに対し、日本は41,509USドルでした。

その他、2022年9月に国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、2011年の国内平均年収は409万円、2021年は443万円となっており10年間でほぼ横ばいです。その他、世界各国と比較した際の課長・部長クラスへの昇進の遅さや、役員・管理職に占める女性比率の低さ、現在の職場で働き続けたいと考える従業員の少なさが目立っており、日本は従業員エンゲージメントを向上させるための職場環境が整っているとは言えません。

このように将来的な人口減少や平均年収、職場環境の状況を踏まえても、従業員の生産性がおのずと上がるとは考えづらくなっています。今後、企業成長を望むためには従来の雇用システムを改善し、従業員から選ばれる企業づくりが急務と言えるでしょう。

従業員エンゲージメントを構成する3つの要素

従業員エンゲージメントを構成する一般的な要素は次の3つです。それぞれの要素について解説します。

理解度

従業員が企業のビジョンや方向性を正しく理解していることは、従業員エンゲージメントを構成する要素の一つです。理解度が深まると従業員と企業の間に共感が生まれ、向かうべき道が一致するため、従業員自身が当事者意識を持って業務を遂行できます。

なお従業員の理解を得るためには、企業側がビジョンや方針を明らかにし、丁寧に説明することが肝要です。

帰属意識

帰属意識とは、企業ではたらくメンバーの一員であることを自覚していることです。従業員の帰属意識が高まり共感度が強くなると、自ら企業に貢献したい気持ちが芽生えます。そのため、自発的にスキルアップを図ったり、他のメンバーを積極的にサポートしたりする機会が増え、従業員エンゲージメントの向上につながります。

帰属意識を高めるためには、評価制度の整備や経営層と従業員が交流できる機会を設けることが大切です。

行動意欲

従業員がやりがいを持って自主的に行動を起こそうとする意欲も、従業員エンゲージメントを構成する要素に含まれます。

行動意欲を高める上で大切なポイントは、従業員に対する適切な評価です。自分の行動が企業に貢献していることが理解できれば、自信を持って業務を遂行できるようになります。

従業員エンゲージメントと似た用語との違い

ビジネスシーンでは、従業員エンゲージメントに類似した言葉をよく耳にします。それぞれの用語と従業員エンゲージメントの違いを解説します。

従業員満足度との違い

従業員満足度とは職場環境や人間関係、業務内容などに対する満足度を意味します。従業員エンゲージメントとは異なり、企業への貢献度や業務に対する意欲とは関係ありません。

モチベーションとの違い

モチベーションとは行動を起こす動機であり、従業員自身の心理状態を指します。一方で従業員エンゲージメントは、従業員と企業が信頼関係を育み、自ら業務に取り組む姿勢や意欲のことです。

ワークエンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントとは、従業員が業務に対してポジティブなマインドを持っている状態を意味します。一方で従業員エンゲージメントは従業員が企業を信頼し、愛着を持って貢献する意欲を指す言葉です。

ロイヤリティとの違い

ロイヤリティとは、従業員の企業に対する忠誠心を意味する用語です。従業員エンゲージメントは自主的に企業に貢献したいと思う意欲を指します。

コミットメントとの違い

コミットメントとは企業が要求する結果に対して、従業員が責任を果たす状態を指します。従業員エンゲージメントでは自主的に行動して企業に貢献しますが、コミットメントは企業から与えられた業務を遂行することであり、そこに従業員の自主性は関係ありません。

従業員エンゲージメントが注目されている理由

従業員エンゲージメントは、企業の成長を促進する上で重要な概念です。近年、ますます注目を集めるようになりましたが、その理由として以下の3点が挙げられます。それぞれの理由について解説します。

はたらき方の多様化

はたらき方の多様化が進む中、終身雇用を重要視する考え方は薄れつつあります。副業や転職、再就職を選択する方が増える中で経験や実績が豊富な人材を採用するには、従業員エンゲージメントを向上させる取り組みが必要です。

ワークライフバランスが改善され、従業員のスキルを存分に発揮できる環境が整備されれば、企業に対する信頼度が高まり離職率低下にもつながります。

リモートワークの定着

リモートワークや時短勤務を採用する企業が増える中、従業員同士が対面でコミュニケーションを取る機会が減少しました。互いの状況を把握しにくい職場環境が定着したことで「正当な評価を受けられるのか」「企業から必要とされているのか」などの不安を抱える従業員も少なくありません。

こうした不安を解消するためにも、従業員エンゲージメントの向上を図る必要があります。

経験や実績が豊富な人材の確保

労働人口の減少による人材不足は、どの業界においても深刻な課題です。加えて、はたらき方の自由度が高まりつつある近年では、自分のスキルや特性に合う仕事を選ぶ機会が増えており、一時的に人材を確保できたとしても流出する可能性が高くなっています。

こうした中で経験や実績が豊富な人材を雇用するためには、誰もが自分のスキルを存分に発揮できる職場環境の整備が大切です。従業員エンゲージメントの向上も、人材確保・人材定着を目的とした取り組みとして注目されています。

従業員エンゲージメントを向上させる4つのメリット

従業員エンゲージメントを向上させると、さまざまなメリットが得られます。主なメリットとして、以下の4つをご紹介します。

離職率の低下

2019年2月に実施された経済産業省主催の「産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」によると、エンゲージメントスコアの高い企業は離職率が低い傾向にあるという結果が出ました。

多様なはたらき方が浸透し、キャリアアップに向けた転職が気軽にできるようになった昨今、経験豊富な人材の流出を回避するためには、従業員エンゲージメントの向上が鍵になります。企業のビジョンや目的を理解し、自分の業務にやりがいを見出せる従業員を増やすことで、離職率の低下を期待できるでしょう。

従業員のモチベーションアップ

従業員エンゲージメントが高まるということは、企業に対する理解度が深まり貢献意欲も増すということです。その結果、企業全体の成長に向けて従業員同士で活発な意見が交わされるケースが増えるでしょう。また、上司からの指示を待つのではなく、自らの仕事にプライドを持って自主的に遂行する従業員が増え、モチベーションアップが図れる点も従業員エンゲージメントを向上させるメリットの一つです。

顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントは、従業員だけに影響をもたらすものではありません。従業員が企業に愛着を持ち、進んで業務を遂行するようになると、商品やサービスの質が向上します。その結果、顧客満足度の向上や、お客さまからの信頼度をアップさせることにつながります。

生産性と業績の向上

経済産業省が2020年7月に発表した「参考資料集」によると、従業員エンゲージメントスコアと企業の営業利益率や生産性に相互関係があることが分かりました。この結果からも、企業が成長を続けるには従業員と企業が信頼関係を構築することの重要性が見て取れます。

従業員エンゲージメントを向上させる方法

従業員エンゲージメントを向上させるには、さまざまな施策を立てて実施することが肝要です。主な方法として、以下の7つを解説します。

企業理念・ビジョンを明確にして従業員に浸透させる

従業員が企業の方向性や目標を理解し、共感するようになると企業に対する貢献度が高まります。そのためには、企業理念やビジョンを明確にした上で、浸透させることが大切です。

ビジョンが曖昧なままでは、従業員もどのように動けばよいか分かりません。また、素晴らしいビジョンを掲げたとしても、従業員が理解していなければ従業員エンゲージメントの向上は図れないでしょう。

従業員全員が理解できるように、社内報やミーティングなど周知する機会を設け、丁寧に説明する必要があります。

労働環境を整備する

労働環境も従業員エンゲージメントに直結する要素の一つです。労働環境が整っていないと、従業員がスキルを存分に発揮できず、従業員エンゲージメントの向上を見込めません。こうした状況を回避するためにも、労働環境の整備が重要です。

例えば照明や空調を整えたり、清潔さを確保したりするだけでも快適度が高まります。また、上司や同僚とコミュニケーションが取りやすいレイアウトを検討したり、キャリアアップの機会を設けたりすることも大切です。

ワークライフバランスを確立する

柔軟なはたらき方が求められる昨今、従業員エンゲージメントを高めるためにはワークライフバランスを確立する必要があります。毎日のように残業を強いられたり、思うように休みが取れなかったりする環境では、従業員のモチベーションは上がりません。

多様なはたらき方のニーズを持つ従業員が活躍できるように、フレックスタイム制やノー残業デーなどを採用して、休日や勤務時間を見直すことが大切です。心身ともに健康な状態で業務を遂行できる環境が整えば、企業に対する従業員の信頼度も向上します。

従業員同士のコミュニケーションの活性化を図る

企業理念やビジョンを理解できたとしても、同僚や上司との交流が不足している状態では、従業員のモチベーションは上がりません。従業員エンゲージメントを向上させるためにも、従業員同士のコミュニケーションの活性化を図り、信頼関係を深めることが重要です。

例えば定期的にレクリエーションを設けたり、従業員同士で感謝を伝え合う「サンクスカード」を採用したりする方法もあります。また、リモートワークをメインにしている企業では、オンラインミーティングの時間を設けてコミュニケーションを図るように配慮する必要があるでしょう。その他、メールよりも気軽に連絡を取りやすいチャットツールを活用すると、コミュニケーションが活性化しやすくなります。

納得性の高い人事評価制度にする

従業員の信頼を得るには納得性の高い評価も大切です。従来の日本では出張や残業、転勤などに対応でき、業務の遂行に制限のない人材や、勤務年数の長い人材を評価する傾向にありました。しかし、はたらき方や人材の多様化が進む中、定量的な成果や年功序列を優先する評価制度だと、従業員から不満が出る可能性があります。

従業員エンゲージメントを高めるためには、誰もが納得できる人事評価制度へ改善することもポイントです。例えば従業員の実績に合わせて報酬や役職を与えることは、公平性を高める観点で重要になります。また、インセンティブ制度を採用することや従業員を表彰してモチベーションを高める施策を導入することも、従業員エンゲージメントの向上につながるでしょう。

上司と部下の信頼関係を強化する

上司と部下の信頼関係も、従業員エンゲージメントにかかわります。上司から正当な評価を受けられなければ、部下は不信感を抱くでしょう。信頼関係を強化するためにも、部下を抱える上司や従業員はフィードバック能力を向上させることが大切です。

例えば部下の言動のよい部分に着目して、前向きな言葉で評価する「ポジティブフィードバック」を心がけると、評価を受けた部下のモチベーション向上につながります。

現状の従業員エンゲージメントの把握・定期的なサーベイを実施する

従業員エンゲージメントは一時的に向上させるのではなく、高い状態を継続させることが大切です。そのためには定期的な調査を実施して、課題があれば改善する必要があります。こうした社内調査を「エンゲージメントサーベイ」と言い、従業員と企業のギャップや従業員のモチベーション低下をいち早く把握する上で効果的です。

従業員エンゲージメント調査で測定する指標

従業員エンゲージメントを調査する場合、従業員や企業の状態を可視化する方法が役立ちます。例えば、以下に挙げる3つの指標を活用すると、よりスムーズに従業員エンゲージメントの向上が図れるでしょう。それぞれの指標について解説します。

エンゲージメント総合指標

従業員の企業に対する評価を数値化した指標が「エンゲージメント総合指標」です。具体的な項目として、職場の推奨度を計測する「eNPS(Employee Net Promoter Score)」や、今後もはたらき続ける意思があるかを計る「継続勤務意向」などが挙げられます。

なお、エンゲージメント総合指標を計測する際に使われる質問例は以下の通りです。

  1. 『友人や家族に、自社ではたらくことをすすめたいと思いますか?』
  2. 『今の職場環境や仕事内容にどの程度満足していますか?』
  3. 『今後も今の会社ではたらき続けたいと思いますか?』

ワークエンゲージメント指標

業務に対する熱量や没頭する度合いを数値化した指標が「ワークエンゲージメント指標」です。代表的な手法として、ワークエンゲージメントを構成する「活力」「熱意」「没頭」の3要素を計測する「UWES(Utrecht Work Engagement Scale)」や、ストレスチェックに活用される「新職業性ストレス簡易調査票(New BJSQ)」が挙げられます。

中でも広く活用されているUWESは学術的な研究も進められており、厳密な定義が設けられている点が特徴です。UWESでは、「活力」「没頭」「熱意」の3要素を踏まえた17の質問項目をもとに計測し、スコアが高いほど仕事に誇りを持っているとされています。質問項目は以下の通りです。

活力 仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる
職場では、元気が出て精力的になるように感じる
朝に目がさめると、さあ仕事へ行こう、という気持ちになる
長時間休まずに、働き続けることができる
職場では、気持ちがはつらつとしている
ことがうまく運んでいないときでも、辛抱強く仕事をする
没頭 仕事をしていると、時間がたつのが速い
仕事をしていると、他のことはすべて忘れてしまう
仕事に没頭しているとき、幸せだと感じる
私は仕事にのめり込んでいる
仕事をしていると、つい夢中になってしまう
仕事から頭を切り離すのが難しい
熱意 自分の仕事に、意義や価値を大いに感じる
仕事に熱心である
仕事は、私に活力を与えてくれる
自分の仕事に誇りを感じる
私にとって仕事は、意欲をかきたてるものである

エンゲージメントドライバー指標

今後、従業員エンゲージメントを向上させると想定される要因を表す数値を「エンゲージメントドライバー指標」と言います。エンゲージメントドライバー指標を構成する要素は、以下の3つです。

  1. 組織ドライバー:職場環境や人間関係など、企業と従業員の関係を表す指標
  2. 職務ドライバー:自分の業務に対する満足度や難易度など、当事者意識を表す指標
  3. 個人ドライバー:従業員自身の資質が業務にどのような影響を及ぼすかを計る指標

エンゲージメントドライバー指標を計測する際に用いる質問例は、以下の通りです。

  1. 『上司や同僚との関係は良好ですか?』
  2. 『現在の給与は、仕事の成果に連動していますか?』
  3. 『自社の目標やビジョン、戦略を把握していますか?』

このように、従業員エンゲージメントを向上させるためには具体的な調査が必要ですが、目的に合った質問をしなければ本質を把握できません。また、第三者の視点を踏まえて検証することも大切です。

従業員エンゲージメントの向上につながるBPOならパーソルテンプスタッフへ

従業員エンゲージメントの向上は、経験や実績が豊富な人材の採用や従業員の離職率低下につながり、企業の生産力を上げる上でも重要なポイントです。しかし、はたらき方の多様化が浸透する中、従来の人事評価制度や職場環境が根強く残っている状況では、従業員からの信頼を得ることは難しいでしょう。従業員エンゲージメントを高めるには現状を把握し、抜本的な改善が必要です。

例えば、従業員の意識や満足度を調査するサーベイツールや、従業員エンゲージメント向上を目的とした短期の研修プログラム、従業員エンゲージメント向上を含む幅広いサポートが可能なアウトソーシングなどを採用するとよいでしょう。

パーソルテンプスタッフでは、総務のアウトソーシングを通して生産性や従業員エンゲージメント向上に貢献しています。施設・設備管理、従業員からの相談に対する一次対応など、従業員が迷うことなく利用できる「ワンストップ型のオフィス」を構築し、総務コンシェルジュとしての役割を果たすことが可能です。

また、人材業界最大級のビジネススケールと現場の品質を保つマネジメント体制により、煩雑になりがちな総務庶務業務のサポートや本来の業務に集中しやすい環境づくりを実現します。総務庶務事務アウトソーシングサービスの活用をご検討の方は、ぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。当社サービスのご案内や、実際にアウトソーシングサービスを導入された企業の事例は以下からご覧いただけます。

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