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オフィス移転で総務がやるべきタスク一覧と失敗しないためのポイント

公開日:2023.08.25

更新日:2024.01.29

企業の課題

オフィス移転では総務の対応業務が多く、膨大な業務に悩まされるケースも少なくありません。実際にオフィス移転が決まって、いざ準備を開始しようと思っていても、何から手を付けていいか分からないという場合もあるのではないでしょうか。

タスクを整理して早めの対応を心がければ、オフィス移転の業務もスムーズに進められます。やるべきことに気が付いた時にはタイムリミットを過ぎてしまっていた…という状況を避けるために、本記事では新旧オフィスで行うべきことや実行タイミングなどをまとめました。

また、オフィス移転の機会に企業のブランディングや従業員エンゲージメントを高める方法もあります。オフィス移転をより効率的に、より意義のあるものにする方法も併せてご紹介します。

オフィス移転での総務の役割と重要性

オフィス移転は総務で担う重要業務であるものの、業務の影響範囲が大きく「オフィス移転に伴って、どこから着手すればよいか」と悩む総務担当者も多いです。オフィスにある備品や書類や什器の引っ越し手配、関係省庁などへの届け出など、移転に関する手配の多くを総務が担います。頻繁に発生する事象ではないため、総務部に所属して初めてオフィス移転を経験する方も多いでしょう。

このようにオフィス移転には多くの苦労や苦悩が生まれますが、職場環境の整備やオフィスブランディングの良い機会にもなります。オフィス移転を経て、現在の自社ブランディングに合わせたレイアウトにすることや、老朽化したビル・フロアではなくなることで従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

近年は『ブランディング』『従業員エンゲージメント』を意識して、オフィス移転を計画するケースも増えています。来社いただく取引先や従業員の導線を考えた間取りにしたり、業務効率を高めるため「総務カウンター」を設置したりする企業も現れています。在宅ワークとオフィス出社、いずれも発生する『ハイブリッド勤務』では、従業員が毎日全員出社しない前提の席数設定や、従業員が「出社したくなるオフィスづくり」が求められています。オフィス移転を検討する際は、現在の時流に合わせたプランニングと設計が必要です。

本記事ではオフィス移転で発生する総務部の具体的なタスクをご紹介しています。オフィスブランディングについて詳しく解説した記事もございますので、併せてご覧ください。
>>オフィスブランディングを成功させるポイントと期待できる効果を解説

旧オフィスで対応するべきタスク

旧オフィスで対応するべきタスクについて、重要なものをピックアップしてご紹介します。まずは旧オフィスを退去するために行わなければならない業務について解説します。まずは以下の表にて旧オフィスでの主なタスクと対応時期を確認しましょう。

対応時期 旧オフィス
はたらく環境 書類手続き 社員関連 引っ越し
4ヶ月前 原状回復の見積
  1. 新オフィスの商業登記や営業許可など、必要な法的な手続きの確認と開始
  2. 賃貸契約の解約手続きの開始
- -
3ヶ月前
  1. 不要な物品や文書を整理(保存するか処分するか決定する)
  2. 旧オフィスの家具や機器の処分計画
  3. 重要な文書やデータのバックアップ
賃貸契約の解約手続きの完了 移転の予定を通知 -
2ヶ月前
  1. 不要な家具や機器を処分
  1. 設備やサービスの解約
個人のデスクやオフィススペースの整理を促す -
1ヶ月前
  1. 清掃の計画を立てる
- -
  1. 退去時の立会いや最終的な点検の計画を立てる
当日
  1. 旧オフィスの鍵やセキュリティシステムを確認し、返却
  2. 清掃を行い、最終的な整理をする
- - 引っ越し事業者と協力して残っている家具や機器を運び出す

旧オフィスで行うべきタスクの概要を踏まえた上で、それぞれの手続きについて解説します。

旧オフィスの解約手続き

まずは旧オフィスの賃貸契約を解約します。原状回復工事を行うことなども考え、早めの解約手続きを進めましょう。賃貸オフィスの場合、管理会社への解約予告の期限が定められており、おおよそ3~6ヶ月前に予告するのが一般的です。

重要な文書や資料のバックアップ

重要な文書や資料のバックアップは必ず行っておきましょう。通信関連もすべて刷新されるため、何かトラブルが発生してデータが失われてしまった場合でも、バックアップをとっておけば安心です。

荷造りと不要品の処分

膨大な荷物の荷造りを行うと同時に、不要品の処分も進めてください。あたらしいオフィスのスペースを有効活用するために、必要なもの、不要なものを見極めましょう。

旧オフィスの原状回復

解約手続きを進める際に、原状回復の実施も必要となります。旧オフィス内にて改修した部分などを元の形にして戻す作業です。原状回復しなければオフィスの契約を終了できません。原状回復の工事に思わぬ時間がかかることもあるので、早めに着手できるように進めてください。

新オフィス移転に向けて必要なタスク

あたらしいオフィスへ移転するためには、どのようなタスクが必要になってくるのでしょうか。家具や機器の準備の他、環境の整備や引っ越しを機に行うブランディングなど、この機会に開始するあらたな取り組みがあれば、このタイミングで併せて検討するようにしましょう。

対応時期 新オフィス
はたらく環境 書類手続き 社員関連 引っ越し
4ヶ月前
  1. レイアウト・内装計画
  2. 内装工事などの手配
  3. 電気・空調の工事などの手配
  1. 住所変更手続きに必要な書類の確認と準備
  2. 賃貸契約書の作成および署名
  3. 消防関連手続き
  4. 防火対象物使用開始届
-
  1. 防火・防災管理者選任(解任)届出
  2. 消防計画作成(変更)届出
  3. 引っ越し事業者への発注
3ヶ月前
  1. 内装工事
  2. 電気・空調の工事
  3. オフィス家具、OA機器の選定と発注
住所変更手続きの開始
  1. 社員証・名刺作成
  2. 封筒などの住所変更
  1. 引っ越しマニュアル作成
2ヶ月前
  1. 電話番号変更
  2. 駐車場契約・郵便受けの確認
電気やガス、水道、通信サービスの住所変更手続き
  1. HPなどの住所変更
  2. 通勤定期券変更
  1. 梱包材手配
1ヶ月前
  1. 内線番号準備
  2. 電気・空調・通信契約
  3. 通信設備の工事とセキュリティの設定やテスト
  1. 銀行口座の住所変更
  2. 保険会社の住所変更
  3. 本店移転登記:移転した日から2週間以内
  1. 移転挨拶状送付
  2. 新オフィスの社内ルール作成・通知
  1. 梱包材搬入
  2. 梱包状況確認
  3. 個人荷物状況確認
当日 - - -
  1. 入室状況確認
  2. 家具・什器レイアウト確認

新オフィスで対応すべきタスクを、労働環境づくり、従業員に関する手続き、引っ越し準備、各種手続きの4つに分類して、詳しく説明します。

オフィスブランディングを踏まえた労働環境づくり

新オフィスへの移転はオフィスブランディング、とりわけ自社の従業員に向けて行う「インナーブランディング」の絶好の機会です。自社へのエンゲージメントや満足度の向上につなげることができます。新オフィスでの労働環境づくりに必要なタスクの具体的な例を4点ご紹介します。

1.レイアウト作成や工事の手配

新オフィスに関してのタスクで最初に取りかかるのは、内装デザインやレイアウトなどのオフィス設計です。オフィス設計で重要なのはゾーニングです。ゾーニングとは、目的に応じて空間を区分けすることを意味します。

各部署に必要なスペースを把握し、適切な場所に配置しましょう。オフィス設計は自社で手掛けることも可能ですが、専門家に依頼し自社に適切なプランを提案してもらうことも可能です。オフィス設計の内容が決定したら、工事を手配します。従業員のはたらきやすさ向上のためのカギを握る大切なステップです。

2.オフィス家具やOA機器の選定~発注

移転後、業務を始めるにはOA機器やオフィス家具も必要です。現オフィスから流用できるものは事前に確認しておきましょう。あらたにOA機器やオフィス家具を入手する場合は、購入するかリースを活用するかを検討します。社内で決定次第、事業者に見積もりを依頼し、新オフィスへの移転に間に合うように発注しましょう。

オフィス家具を選定する際には、レイアウトプランやコンセプトに沿ったものを選ぶと空間全体に統一感を持たせることができます。従業員にどのようなはたらき方をしてほしいかを考え、コンセプトに沿って選定してください。また、現オフィスのものを処分する場合は、不用品回収事業者に見積もりを依頼し、手配しておきましょう。

3.電気・空調の工事

ビル管理会社が工事事業者を指定する場合と、任意の工事事業者で施工が可能な場合があります。工事を行う際には事前にビル管理会社への確認が必要です。

4.通信設備工事とセキュリティの設定

新オフィスの設備に合わせて、通信環境の構築の工事も必要です。事業者が指定されている可能性があるため、事前に管理会社に確認しておきましょう。工事は1日以上かかる可能性もあるため、移転までに余裕を持って完了しておくように手配します。

新オフィスのセキュリティの設定も事前に完了しておく必要があります。通信設備も、セキュリティも、設定するだけではなく、実際に使用することを想定したテストを移転前に行うようにしましょう。

新オフィスで従業員に関連する準備

続いて、新オフィスに移転するにあたって従業員の皆さんに対して準備するものをご紹介します。日頃使用するものの手配からルールの策定まで、さまざまなタスクがあります。新オフィスでスムーズに業務を開始するための重要なステップです。

入館IDや名刺などの手配

新オフィスを使用する従業員全員に対して発行する入館IDの準備や、住所変更にあたって名刺を作り直さなければなりません。移転初日から使用するので、移転前には配布を完了するようにします。

新オフィスの社内ルール作成・通知

あたらしいオフィスの使用方法を社内ルールとして整備しましょう。作成できたら、全従業員に通知します。旧オフィスと異なるルールになる部分は、特にしっかり確認してもらうように呼びかけましょう。

駐車場契約・郵便受けの確認

新オフィスの駐車場が借りられるのか、自社で何台分必要としているのか、空きがない場合は近隣のどこで借りられるかなどを確認し、必要な台数を契約します。その他、新オフィスの郵便受けの場所や鍵の施錠方法なども確認しておくとスムーズです。

引っ越し準備

いよいよ旧オフィスからの引っ越し準備を始めます。自社の梱包作業だけでなく、引っ越し事業者とのやり取りも頻繁に発生します。担当者や分担を決めておくと円滑に準備が進められます。

引っ越し事業者への発注

引っ越し事業者の見積もり依頼は、レイアウトやオフィス家具などが準備できたタイミングで行います。複数社に見積もりを依頼し、コストパフォーマンスや作業内容の得意不得意などを踏まえて、自社に合った事業者を選定しましょう。

引っ越しマニュアル作成

旧オフィスではたらいている従業員全員に対して、部署ごとの荷物の整理や個人の荷物の整理を依頼します。引っ越しのスケジュール、梱包資材の場所や梱包方法の説明など、スムーズに個々で引っ越しを進められるようにマニュアルを作成します。

引っ越し資材の手配

引っ越しのための梱包資材などを手配します。引っ越し事業者が準備してくれる場合もあるので相談しましょう。

処分するもの、移動させるものの確認

新オフィスに移転するにあたり、不要になって処分するもの、新オフィスに移動させるものを確認し整理します。処分するものの処分方法なども調べてください。

梱包作業

新オフィスに移動させるものは梱包します。段ボールなどに運び入れ先、物品名、管理者等を記載しておくと、引っ越しの際に取り違いを防げ、移転後もすぐ必要なものが取り出せます。部署や個人の梱包も滞りなく進むように、呼びかけてスケジュール通りに進めることを意識しましょう。

書類や手続き関連のタスク

外部機関に提出する書類や行わなければならない手続きも多くあります。提出書類や手続きなどは、時期に気を付けて進めましょう。

また、本社移転により定款の住所が変更となる場合は、株主総会を開催する必要があります。移転計画が具体化し、変更内容が決まった段階で、株主総会の準備も始めてください。

移転申請・住所の変更などの各種届け出

銀行や郵便局、証券会社などへの住所変更に際する届け出や、他にも法務局や税務署への移転登記申請、社会保険事務所や都道府県税事務所への申告、労働基準監督署・公共職業安定所への届け出など、さまざまな手続きが必要です。

なお、届け出の内容や種別によっては、移転元と移転先が同一管轄である場合とそうでない場合で手続き方法や処理内容が異なることもあります。また、取引先企業にも、移転が決定したタイミングで早めにお知らせしましょう。移転後にも旧住所へ郵便物や宅配などが送付されることを考慮し、転送手続も行う必要があります。

インフラ設備

オフィス移転をスムーズに遂行するには、インフラ設備の手続きも欠かせません。電気・通信・住所などの変更も確実に進めましょう。手続き時期の目安も参考にしてみてください。

手続き内容 手続き先 手続き時期の目安
電気 契約中の電力会社 移転が決まり次第
ガス 契約中のガス会社
水道 水道局
インターネット回線 契約中の通信会社
電話回線 契約中の電話会社
住所変更および転送届 郵便局 移転日まで
防火対象物使用開始届出書および防火対象物等工事等計画届出書 消防局
  1. 防火対象物使用開始届出書:使用開始の7日前まで
  2. 防火対象物等工事計画届出書:工事開始日の7日前まで

オフィス移転を滞りなく進めるためのポイント

オフィス移転を滞りなく進めるためのポイント

これまでご紹介したタスクだけでも膨大な量のタスクがあり、実施することは簡単ではありません。多くのタスクを進めるためにどのようなポイントがあるのかをまとめました。あらかじめ意識することでより円滑にオフィス移転を進められるでしょう。

各事業者の手配は早めに行う

事業者への手配はできる限り早めに行います。やり取りに時間がかかったり、想定外のことが起こったりその後のタスクがスケジュール通りに進まないこともあります。予定よりも前倒しで行うことでスケジュールにも余裕を持てるでしょう。

事業開始までにインフラを整備する

インフラが整わないと、事業の開始に大きく影響が出ます。事業開始までには必ず整備が完了すように手配を進めておきましょう。

チェックリストを活用しタスクを一覧管理する

やるべきことをすべてチェックリストに書き出して、タスクを一覧で管理してください。多くの業務を同時進行で実施するので、チェックリストを作成し一覧で管理すると抜け漏れを防いで進行できます。

オフィス移転サポート会社を活用する

自社ですべて行う必要はなく、プロに依頼するという手段を取る企業も多くあります。総務のスタッフが引っ越し業務にかかりきりになってしまうのであれば、オフィス移転に関してのノウハウを持つ企業を活用することも一つの手段となります。

オフィス移転後に従業員エンゲージメント向上のため行うこと

オフィス移転は従業員エンゲージメントを向上させる大きなチャンスです。社内で煩雑な業務を担っている部署の担当業務を整理し、従業員のはたらきやすさをアップさせるよいタイミングといえるでしょう。

総務コンシェルジュの活用

例えば、多岐にわたる業務を担う総務の業務を整理する手段として、移転時のオフィスブランディングに「総務コンシェルジュ」を活用する企業は少なくありません。総務コンシェルジュサービスを活用することで、従業員は庶務業務の依頼がスムーズにできるようになり、従業員エンゲージメントが向上します。

こうした総務コンシェルジュは、移転をきっかけに設置し、運用はアウトソーシングを行うというケースも多く見受けられます。

パーソルテンプスタッフでは、業務の整理から運用までお手伝いしています。さまざまな問題や要望に迅速にご対応いたします。庶務業務にお悩みの際にはぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。

オフィス移転をスムーズに行うためにBPOの活用も検討する

オフィス移転は総務の業務の中でも大がかりなプロジェクトです。繰り返しになりますが、余裕を持ったスケジュールと事前の準備が欠かせません。タスクを整理し、実施する順序を決めて確実に進めてください。よりはたらきやすい職場づくりを目指し、総務コンシェルジュの設置なども視野に入れ、有意義なオフィス移転を目指しましょう。実際にパーソルテンプスタッフの総務アウトソーシングを活用したお客様の事例は、以下のページをご覧ください。

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