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BPRとは?DXとの違いや導入ステップ・メリットまで分かりやすく解説

公開日:2023.08.08

更新日:2026.01.30

人事ナレッジ

限られた人員と時間で業務の成果を最大化するためには、業務の流れそのものを見直すBPRが有効です。

この記事では、BPRの基本やDXとの違いを整理し、着手前の準備から可視化・設計・実行・評価まで、導入の流れについて具体的に解説します。はじめての方でも何からはじめるべきか一目で分かるようにまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは?

BPRとは、企業の業務プロセスを根本から見直し、再構築することで業務改革を進める手法です。部署やシステムの枠を越えてプロセス全体を整理し、不要な手順の削減や標準化、自動化を進めることで、生産性や品質、スピード、コスト、顧客価値の向上を目指します。小さな改善を積み重ねるのではなく、抜本的な再構築によって大きな成果を狙う点が特徴です。

日本では、1990年代にBPRが提唱されました。当時、日本企業はバブル崩壊後の苦境に立っており、大規模なリストラが行われるなど、多くの企業が変革を迫られていましたが、BPRはその危機を脱するための処方箋として、日本企業から期待をもって受け入れられました。

BPRと同様に生産性向上の目的で導入される手法としては業務改善やDXがありますが、BPRとの違いはどのような点にあるのでしょうか。

BPRの目的や意識するべき要素

BPRの目的は、生産性や品質、スピード、コスト、顧客価値を高めることです。属人化を減らし、標準化と自動化を進め、継続して成果が出る体制へ転換するために、次の4要素を意識しながら進めます。

意識するべき要素
根本的 前提や慣習を見直し、目的と必要性を再確認する
抜本的 不要や重複を廃止・統合し、役割や権限まで見直す
劇的 小さな改善ではなく大きな飛躍を達成する
プロセス 業務の始まりから終わりまでの流れを整える

業務改善との違い

特定の部署の業務フローで考えた際、業務改善の対象は業務フローの一部、BPRは業務フロー全体をとらえて対策を講じるという違いがあります。

業務改善は、点在する業務の中で目立って負荷がかかっている特定の業務を変更・改善するものです。一方、BPRは業務フローの属人的な運用を特定し、業務フローを簡略化・自動化することで抜本的な改善を図ります。

また、スピード感にも違いがあります。BPRは業務プロセスの根本的な変革を目指す手法です。従来の業務のあり方を見直し、効率性や革新性を向上させますが、その実施には時間がかかる傾向にあります。なぜなら、組織の構造変更や大規模なシステムの導入、従業員の教育・トレーニングなどが必要だからです。BPRには、長期におよぶ戦略的な計画と綿密な設計が求められます。

一方、業務改善は小規模な変化や改良を迅速に実施する手法です。既存の業務プロセスの改善や問題の修正に焦点を当て、短期間で成果を出します。現行の業務に対する効率化や品質向上を目指し、具体的な課題の特定や改善策の実施をスピーディに行います。小規模な変更や改良なので、導入までの時間が比較的短く済みます。

どちらの手法を選ぶかは、変革の目的や必要なスピードに応じて判断しましょう。

DXとの違い

BPRはプロセスの視点から業務を再構築するのに対し、DXは最新のデジタル技術の活用によりビジネスモデルや組織そのものの変革を目指す方法です。BPRとDXは改革する対象が異なりますが、DXを進める一環としてBPRが行われるとも考えられます。

BPR 業務改善 DX
目的 業務プロセスの改革 業務効率化 組織・業務プロセス・企業文化などの変革
対象範囲 企業活動全体 業務フロー、部門単位 企業全体
手法
  • BPO
  • ERP
  • RPA
  • シェアードサービス
  • アウトソーシングなど
  • マニュアル化
  • 手順の見直し
  • アウトソーシングなど
  • ペーパーレス化
  • AIの導入
  • データの活用
  • RPAなど

BPRが改めて注目されるようになった背景

近年、BPRが再び注目されるようになっていますが、その背景には、企業を取り巻く前提が大きく変わっていることが挙げられます。

具体的には、生産年齢人口の減少による人材不足や、働き方改革の促進に伴う労働時間や制度の見直し、そしてDXの促進による業務の見直しニーズです。限られた人員でも成果を出し、ムダや手戻りを減らすために、業務の流れを全体から組み替える取り組みが求められており、BPRがその有力な手段として改めて注目されているのです。

生産年齢人口の減少

BPRが改めて注目されている背景の一つとして、国内の生産年齢人口(おおよそ15〜64歳)の減少が挙げられます。内閣府のデータによると、今後も少子高齢化が進めば、2050年には国内の生産年齢人口が5,540万人に減少すると見込まれています。

※引用:内閣府「令和7年版高齢社会白書

また、近年、労働力人口そのものが将来的に不足することも懸念されています。例えば、パーソル総合研究所と中央大学の共同研究による 「労働市場の未来推計 2035」では、2035年時点で1日あたり約1,775万時間分、労働力で換算すると384万人の労働力が不足する可能性があると指摘されています。

※引用:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035

少子高齢化が加速し生産年齢人口が減少していく将来、これまでと同様のプロセスでビジネスを展開していては、業績縮小は避けられません。一方では、グローバル化の影響で今後もビジネス競争は激化していくと予想されており、組織構成や社内制度、業務プロセスの抜本的な改革が、企業にとって大きな課題となっています。そこで、BPRに再び注目が集まっているのです。

BPRは、少ない労働力を最大限に活用して労働者の負担を軽減するための戦略的なアプローチとなります。BPRを取り入れれば、効率的な業務フローの再設計や自動化を実現し、少子高齢化社会においても持続的な成長と競争力を確保できるでしょう。

働き方改革の促進

働き方改革は、社員のワーク・ライフ・バランスを安定させ、企業価値の向上をもたらします。一方、残業時間には上限が設けられ、有給休暇の消化が義務付けられるなど、以前よりも業務に従事する時間を削減する必要に迫られる企業も少なくありません。

生産性を確保したまま働き方改革のメリットを享受するためには、少ないコストでより多くの成果を生み出す必要があります。そのためにもBPRを推進し、全体的な業務プロセスを変革することが求められます。

DXの促進

経済産業省が2018年に「DX推進ガイドライン」(※1)を公開したことからも分かる通り、昨今の企業活動においてDXの推進は重要な課題となっています。

(※1)2022年9月に「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」は統合され、「デジタルガバナンス・コード2.0」に取りまとめられました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して製品やサービス、さらにビジネスモデル全体を変革することです。そこには、企業の生産性向上という側面と、企業がサービスを提供する市民やユーザーなどの顧客体験をよりよく改善していく側面とがあります。

生産年齢人口が今後減少していく中、企業にとっては生産性向上の必要性が増しています。また、顧客体験向上の面でもDXを推進していかなければなりません。その第一歩として、BPRにより業務効率化を進め、サービス品質の向上が可能となる環境を創り出す必要があります。

国も、生産性を向上させ持続的な成長を図るための働き方改革やDXを推進していますが、どちらの施策においても、BPRによる業務プロセスの改善は有効です。

BPRを実施する4つのメリット

続いて、BPRを行うことで得られる4つの大きなメリットをご紹介します。

業務の効率化や生産性の向上

BPRでは、現状の業務フローを可視化し、そもそも必要なことなのか、重複している業務はないかなど根本的に見直すため、効率化や生産性の向上といった効果が得られます。

業務効率によるコスト削減

さまざまなコスト削減の効果も期待できます。業務がスムーズに進むようになるため、人件費やシステム保守・管理費といった固定費の削減につながります。

顧客と社員の満足度向上

効率の悪い業務を見直したり不要なルールを排除したりすることで社員の満足度が高まることに加え、業務のスピードやクオリティが高まるため、顧客満足度の向上も期待できます。

リスクマネジメントの対応

業務プロセスが属人化していると、業務フローが不透明になり、作業効率が低下します。また、担当者の異動・退職時に業務が滞るリスクも考えられます。BPRによって業務プロセスの見直しやマニュアル化などを行い、誰でもできるような業務フローを構築できれば、こうしたリスクの回避につながります。

BPRを実施する上で把握しておくべきポイントや注意点

BPRは効果が大きい一方、実行には費用や時間などの負担が伴います。着手前に想定されるリスクと対策を整理し、途中で頓挫しない進め方を準備しておくことが重要です。

ここでは、BPRを実施する上でのポイントや注意点をまとめました。

多大なコストと時間がかかる

BPRは全社的な取り組みとなるため、初期費用と期間が大きくかかります。例えば、業務の見える化や分析、新しい業務の流れの設計に伴う外部コンサルティング費、ERP(統合基幹業務システム)の導入やAI・RPAツールの導入、データ移行、教育・研修、マニュアル整備、従来の運用との並行稼働に伴う負担などが発生します。

また、抜本的な見直しは数ヶ月〜数年におよぶこともあり、すぐに成果が表れるとは限りません。着手する前に効果をどう測るかを決め、投資判断の基準を明確にしておくことが大切です。

具体的には、目標指標(時間短縮、コスト削減、品質向上など)と測定方法、費用と効果の見通し、回収時期(損益分岐の目安)、段階的な実施計画と中間評価のルールを定め、優先度の高い領域から進めるとよいでしょう。

知識や経験のある人材が求められる

BPRを効率よく進めるためには、自社の問題点を正確に把握し、問題を課題として整理した上で、解決までの流れを設計できる人材が必要です。

具体的には、業務の見える化(手順・責任・情報の流れの整理)、問題点の特定と優先順位付け、目標と指標の設定、対策案の比較検討、実行計画(役割・期限・確認方法)の作成までを一貫して進められる知識と経験が求められます。

社内の実務に通じた担当者を中心に体制を組み、必要に応じて外部の知見も取り入れながら、計画と検証を繰り返す進め方が有効です。

自社リソースの確保も必要

BPRの施策がスタートする際には、そのプロジェクトのリーダーを自社の社員で担えるかを確認する必要があります。

例えば、外部コンサルタントが常駐するとしても、BPRが完了するまでずっとフォローしてもらえるかどうかは約束されていません。ツールを構築してもらった場合でも、そのシステムを構築した会社がアドバイスまで行うことは少ないでしょう。

そのため、結局は自社で真摯にBPRに取り組んでいく必要があり、それを取りまとめることができる人材を社内で探す必要が生じてきます。

社員との軋轢(あつれき)が生じる場合がある

BPRを実施すると、現状の業務や組織が大きく変わる可能性があります。変化を嫌がり、改革に反発を覚える社員もいることを忘れないようにしましょう。取り組みの開始前には社員に対してBPRの重要性や目的を説明し、理解と賛同を得ておくと、社員が変化を受け入れやすくなります。

BPRを進めるためのステップ

BPRを効果的に進めていくためには順序も大切です。大きく分けて以下の5つのステップがあります。

BPRを進めるたステップ

ステップ1:検討

まずは、本当にBPRを実施するかを検討します。実施の必要はあるのか、なぜ実施するのかをじっくりと検討しましょう。

目的・目標を設定する

さまざまな立場の社員から改善すべき点をヒアリングします。併せて、経営層からは企業戦略を見据えた改善点を聞き取ります。ヒアリング内容を取りまとめ、社内を代表した社員や役員と協議し、この改革の目的・目標を設定します。

対象とする業務範囲を設定する

対象とする業務の範囲と業務のキープロセスを明確にします。業務システムを導入する場合は、各業務により分かれて設計されるシステム区分を明確にします。

ステップ2:分析

既存の業務プロセスがもたらす課題を分析し、改善方法を検討します。

分析・課題を把握する

先ほどの「ステップ1:検討」で設定した範囲の業務についてのフローを可視化し、課題を確認します。

ステップ3:設計

現時点の状況・課題を把握後、具体的な実施の方針・スケジュールなどの実施計画を決めます。

戦略・方針の策定、実施方法を検討する

洗い出した現状や課題から、改善に向けた戦略や方針を策定します。

ビジネスプロセスを設計する

ビジネスプロセスの最適化を行います。不要なプロセスを省く、必要なプロセスのつながりを考える、適切なルールに変更するなどの対応が考えられます。

ステップ4:実施

実施計画が固まったら、必要な変更作業の実施に移ります。多くの関係者の業務にかかわる内容のため、社内での認識共有を随時行いましょう。ビジネスプロセスの変革は会社全体におよび、抜本的な見直し、既存のやり方の再構成など、効果が出るまでに時間を要します。目標が大きな場合は、一気に達成しようとするのではなく、中間目標を設定することも必要です。

ステップ5:モニタリング・評価

スムーズに実施できたか、実施の際に問題点はなかったかなどをチェックし、振り返ります。具体的には、ビジネスプロセスが機能しているか、定性面・定量面でどのような成果があったかを確認してください。さらに、問題が起こった場合はその原因究明や改善策の考案なども行います。

業務モニタリングを実施する

業務プロセスに問題はないか、問題があった場合どこにあるのかを把握するために、モニタリングを行いましょう。新たな問題や課題を発見し、早期に対応できるようになります。

モニタリングを実施する際は、データの正確性と客観性を確保することが重要です。適切な指標や評価基準を設定し、定期的かつ一貫した方法でデータを収集・分析することで、客観的な視点から業務の進捗とパフォーマンスを評価できます。

効果測定・達成度を評価する

BPRの効果測定と達成度の評価は、変革の成果を客観的に把握するために重要です。効果測定と評価には、事前に設定した評価基準を用いましょう。また、定量的なデータだけでなく、利害関係者の意見やフィードバックも考慮し、総合的な評価を行いましょう。もし達成度などに問題があれば修正を行います。修正にあたっては、最初の「1.検討」のステップへと戻し、作業を繰り返します。

BPRの設計で選ばれる主な手法

前章の「3.設計」のステップにおいては、どのような方法でBPRを設計していくべきなのでしょうか。選ばれる主な手法についてご紹介します。

業務仕分け

BPRでは、現在行っている業務をすべて洗い出し、業務仕分け(業務調査)を行います。これにより現状を可視化します。具体的な実施方法としては、業務の流れや部門間の連携などを図式化することなどがあります。

BPO

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、業務の一部を切り出し外部企業に発注することを指します。業務単体ではなく、対象業務の前後のプロセスや周辺業務も含めて、広範囲の業務をアウトソーシングします。定型的なルーティン業務を主体に行うノンコア業務に関してBPOを実施すると、自社スタッフが強化したいコア業務に集中できるようになり、業務効率アップが期待できます。

BPOについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>BPOとは?アウトソーシングとの違いや導入メリット、業務の例を紹介

ERP

ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)とは、企業の持つ資源を一つに集めて管理し活用する考え方を指します。ERPシステムを導入すると、各部署で行っていたシステムやデータの一元管理が可能となり、経営資源の効率化や意思決定のスピードアップが実現します。

シェアードサービス

複数のグループ会社からなる企業がバックオフィス業務(間接業務)を一箇所に集約させる手法を、シェアードサービスといいます。バックオフィス業務を集約させることで余分な業務を削減したり、人材配置やデータ活用を効率化したりできます。また、コーポレート・ガバナンス強化への貢献も期待できるでしょう。

SCM

SCM(サプライ・チェーン・マネジメント/Supply Chain Management)は、原材料の調達から製造、在庫管理、物流(配送)、販売を経て消費者に届くまでの一連の流れをまとめて管理し、全体を最適化する経営手法です。

部門や取引先ごとの個別最適ではなく、流れ全体のムダや滞りを減らし、在庫やリードタイム、コストを抑えながら、欠品や過剰在庫を防ぐことを目的とします。需要の見通しを揃える、在庫や進捗の見える化をする、発注や生産計画のルールを統一する、取引先と情報を共有する、などの取り組みを通じ、納期の安定や品質の維持につなげます。

シックスシグマ

シックスシグマは、データ(統計学)を使って品質を管理し業務を改善する手法です。目的は、製品やサービスの品質のばらつきをできる限り小さくし、欠陥やミスを減らすことです。これにより、顧客満足度と経営効率の向上を目指します。

進め方としては、現状を数値で把握した上で原因を特定して対策を実行し、効果を測定し標準化する流れを繰り返します。例えば、不良率や再作業件数、問い合わせの誤案内件数、処理時間のばらつきなどを指標として、要因を絞り込んで改善します。現場の経験に加え、根拠となるデータに基づいて意思決定を行う点が特徴です。

BPRを推進し業務改革を目指そう

BPRは、限られた人員や時間で成果を最大化するために、業務の流れを全体から組み替える取り組みです。業務改善やDXと役割を分けつつ連携させることで、生産性・品質・スピード・コスト・顧客価値を総合的に底上げできます。

着手する際は、目的と指標を明確にし、対象範囲を定め、可視化と分析を通じて課題を特定した上で、設計→実施→モニタリング・評価のサイクルを回すことが重要です。業務仕分けやBPO、ERP、シェアードサービスに加え、SCMやシックスシグマなどを状況に応じて組み合わせながら、優先度の高い領域から実行していきましょう。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

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