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【わかりやすく解説】BPRとは?メリットやステップ、DXとの違い

公開日:2023.08.08

更新日:2023.12.11

人事ナレッジ

BPRをご存知ですか?BPRとはなにか、なぜ近年再注目されているのか、BPRによってどのようなメリットがあるのか、推進の仕方などをわかりやすく解説します。

目次

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは業務を行うためのプロセスを再構築し業務改革を行うこと

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、企業改革の代表的フレームワークであり、企業改革の技術の1 つです。業務を行うためのプロセスを根本的に考え直し再構築して、業務改革を行うことを指します。

BPRで意識すべき要素

BPRを実施するにあたって4つの意識すべき要素があります。それぞれの要素について解説します。


「根本的」に行う

BPRの対象を絞るにあたって、本当に大事な業務なのか、簡略化・省略できる内容かを意識する必要があります。今のプロセスに対して、当たりまえと思わず、疑問を持ち、根本的な確認・検証をします。


「抜本的」にゼロから見直す

今までの慣習にとらわれず、ゼロから見直しを行い、不必要な業務を認識することも重要です。表面的な変革を行ったり、既存のものに手を加えたりすることではなく、抜本的に不必要なものを捨てる意識が必要です。


「劇的」に大きく改革する

プロセスおいて小さな改善を行うのではなく、大きな飛躍を達成します。BPRを導入することで、組織の業務効率が大きく改善し、劇的な効果を実感できるようにしなければ意味がありません。


きちんと価値を生み出す「プロセス」にする

BPRにおける「プロセス」とは、組織内で行われる業務の手順の流れを指します。具体的には、タスクや活動の実行方法、情報の収集や共有、意思決定のプロセスなどが含まれます。BPRでは、従来の業務プロセスを見直し、効率化や品質向上を図るために再設計します。目的や付加価値を明確にし、ビジネスの目標や顧客価値を実現するためにプロセスを設計しましょう。


BPRの歴史と再注目されている背景

BPRは、社内の組織や個々の業務に焦点が絞られていた企業の改革においてあたらしい視点をもたらしました。社内組織を横断的なプロセス単位で捉え、情報技術を活用し、業務のやり方を根本的に再構築することが求められるようになったのです。

BPRが提唱された1990年代、日本企業はバブル崩壊後の苦境に立っていました。大規模なリストラも行われ、変革を迫られていた頃です。そのためBPR は、危機を脱するための処方箋として日本企業から期待をもって受け入れられたという背景があります。

また、近年少子高齢化などの原因により将来的な生産年齢人口の不足が懸念されています。2018年10月23日に公表されたパーソル総合研究所と中央大学の共同研究「労働市場の未来推計 2030」によると、日本の生産年齢人口は減り続けており、2017年から2030年にかけて767万人減少すると試算されています。

パーソル総合研究所・中央大学(労働市場の未来推計2030)

※引用:パーソル総合研究所・中央大学|労働市場の未来推計 2030

少子高齢化が加速して生産年齢人口が減少していく将来、これまでと同様のプロセスでビジネスを展開していては、業績縮小は避けられません。グローバル化の影響で、今後もビジネスの競争が激化していくことが予想されるため、組織構成や社内制度、業務プロセスの抜本的な改革が求められています。この課題に対処するため、働き方改革の促進とDX促進が注目されています。それぞれの意図や目的は、以下のように異なります。

  1. 働き方改革の促進:柔軟なはたらき方や労働環境の改善を通じて、はたらく人々の生産性とワークライフバランスを向上させる
  2. DX促進:デジタルテクノロジーの活用により、業務プロセスを効率化し、生産性を向上させる

BPRは少ない労働力を最大限に活用し、労働者の負担を軽減するための戦略的なアプローチとして再注目されています。BPRを取り入れることで、効率的な業務フローの再設計や自動化を実現し、少子高齢化社会においても持続的な成長と競争力を確保することができるでしょう。働き方改革・DXの促進について、以下で更に解説します。

働き方改革の促進

働き方改革は、社員のワークライフバランスを安定化し、企業価値の向上をもたらします。その一方で、残業時間の上限が設けられ、有給休暇の消化が義務付けられるなど、以前よりも業務に従事する時間を削減する必要に迫られる企業も少なくありません。生産性を確保したまま、働き方改革のメリットを享受するためには、少ないコストでより多くの成果を生み出す必要があります。そのためにもBPRを推進し、全体的な業務プロセスを変革することが求められます。


DXの促進

2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」(※1)を公開したように、昨今の企業活動において、DXの推進は重要な課題となっています。

(※1)2022年9月に「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」は統合され、「デジタルガバナンス・コード2.0」に取りまとめられた

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革することです。DXには企業の生産性向上の側面と、企業がサービスを提供する市民やユーザーなどの顧客体験をよりよく改善していくビジネスモデル変革の側面があります。

生産年齢人口が今後減少していく中で、企業にとっては生産性向上の必要性が増しているとともに、顧客体験向上の面でも、DXを推進していかなければなりません。DXを促進するための第一歩として、BPRによる業務効率化を進め、サービス品質の向上が可能となる環境を創り出す必要があります。

国や企業としても、生産性を向上させ、持続的な成長を図るための働き方改革やDX化を推進しています。2つのどちらの施策においてもBPRによる業務プロセスの改善が求められます。


BPRと業務改善、DXとの違い

BPRと同様に生産性を向上させる目的で導入されるものに「業務改善」と「DX」があります。BPRとの違いはどのような点なのでしょうか。

BPRと業務改善の違い

特定の部署の業務フローで考えた際、業務改善の対象は「業務フローの一部」、そしてBPRは「業務フロー全体」を捉えて対策を講じる違いがあります。

業務改善は点在する業務の中で、目立って負荷のかかっている特定の業務を変更・改善するものです。一方で、BPRは業務フローの属人的な運用を特定し、業務フローを簡略化・自動化することで、抜本的な改善を図ります。

また、スピード感にも違いがあります。BPRは業務プロセスの根本的な変革を目指す手法です。従来の業務のあり方を見直し、効率性や革新性を向上させますが、その実施には時間がかかる傾向があります。なぜなら、組織の構造変更や大規模なシステムの導入、従業員の教育・トレーニングなどが必要だからです。BPRは長期に及ぶ戦略的な計画と綿密な設計が求められます。

一方、業務改善は小規模な変化や改良を迅速に実施する手法です。既存の業務プロセスの改善や問題の修正に焦点を当て、短期間で成果を出すことができるでしょう。業務改善は現行の業務に対する効率化や品質向上を目指し、具体的な課題の特定や改善策の実施をスピーディに行います。小規模な変更や改良なので、導入までの時間が比較的短く済みます。

総括すると、BPRは長期的な視点と組織全体への影響を考慮し、業務プロセスの根本的な変革を目指します。一方、業務改善は短期的な視点で現行業務の効率化や品質向上を目指し、小規模な変更や改良を素早く実施します。どちらの手法を選ぶかは、変革の目的や必要なスピードに応じて判断しましょう。


BPRとDXの違い

BPRはプロセスの視点から業務を再構築するのに対し、DXは最新のデジタル技術の活用によりビジネスモデルや組織そのものの変革を目指す方法です。BPRとDXは改革する対象が異なりますが、DXを進める一環として、BPRが行われるとも考えられます。

BPR 業務改善 DX
目的 業務プロセスの改革 業務効率化 組織・業務プロセス・企業文化などの変革
対象範囲 企業活動全体 業務フロー、部門単位 企業全体
手法 BPO
ERP
RPA
シェアードサービス
アウトソーシングなど
マニュアル化
手順の見直し
アウトソーシングなど
ペーパーレス化
AIの導入
データの活用
RPAなど

BPRを実施する4つのメリット

BPRを行うとどのようなメリットがあるでしょうか。4つの大きなメリットをご紹介します。

業務の効率化や生産性の向上

現状の業務フローを可視化し、そもそも必要なことなのか、重複している業務はないかなど根本的に見直すため、効率化や生産性の向上の効果が得られるでしょう。


業務効率によるコスト削減

BPRによってさまざまなコスト削減の効果も期待できます。業務がスムーズに進むようになるため、人件費削減、システム保守や管理コストといった固定費の削減につながります。


顧客と社員の満足度向上

効率の悪い業務を見直したり、不要なルールを排除したりすることで、社員の満足度も高められ、さらに業務のスピードアップやクオリティが高まることで、顧客の満足度が向上することも期待できます。


リスクマネジメントの対応

業務プロセスが属人化していると、業務フローが不透明になり、作業効率が低下するだけではなく、担当者の異動・退職時に業務が滞るリスクが考えられます。業務プロセスの見直しやマニュアル化などを行い、誰でもできるような業務フローを構築することができ、リスク回避につながります。


BPRを実施する際の3つの注意点

BPRを実施する上では、いくつかの注意点があります。事前に押さえていただきたいポイントを3つご紹介しますので、自社の状況と照らし合わせながら確認していきましょう。

初期費用がかかる

フローの抜本的な見直しや、システムの変更などに初期費用がかかります。そのため自社の状況を鑑みた上で、優先度や有効性を検討しながら進めることが重要です。


工数・時間がかかる

BPRの対象は会社全体に及びます。そのため、実施するための工数・時間は大規模なものになるでしょう。基本的に、全社のプロセスすべてを再構築するまで、途中でやめることも難しくなります。


社員との軋轢(あつれき)が生じる場合がある

BPRを実施すると、現状の業務や組織が大きく変わる可能性があります。変化を嫌がり、改革に対して反発を覚える社員もいることを忘れないようにしましょう。取り組みの開始前に、社員に対してBPRの重要性や目的について説明し、理解と賛同を得ておくと変化を受け入れやすくなるでしょう。


BPRを進めるためのステップ

BPRを効果的に進めていくためには順序も大切です。大きく分けて以下の5つのステップがあります。

BPRを進めるたステップ

1.検討

まずは本当に実施をするかを検討します。実施の必要はあるのか、なぜ実施するのかをじっくりと検討する必要があります。


目的・目標を設定する

さまざまな立場の社員から改善すべき点をヒアリングします。併せて経営層からは企業戦略を見据えた改善点をヒアリングします。ヒアリング内容を取りまとめ、社内を代表した社員、役員と協議し、この改革の目的・目標を設定します。


対象とする業務範囲を設定する

対象とする業務の範囲と、業務のキープロセスを明確にします。業務システムを導入する場合は、各業務により分かれて設計されるシステム区分を明確にします。


2.分析

既存の業務プロセスがもたらす課題を分析し、改善方法を検討します。


分析・課題を把握する

「1.検討」で設定した範囲の業務についてのフローを可視化し、課題を確認します。


3.設計

現時点の状況・課題を把握後、具体的な実施の方針・スケジュールなどの実施計画を決めます。


戦略・方針の策定、実施方法を検討する

洗い出した現状や課題から、改善に向けた戦略や方針を策定します。


ビジネスプロセスを設計する

ビジネスプロセスの最適化を行います。不要なプロセスを省く、必要なプロセスのつながりを考える、適切なルールに変更する、などの対応が考えられます。


4.実施

実施計画が固まったら、必要な変更作業の実施に移ります。多くの関係者の業務に関わる内容のため、社内での認識共有を随時行いましょう。また、ビジネスプロセスの変革は会社全体に及び、抜本的な見直し、既存のやり方の再構成など、効果が出るまでに時間を要します。大きな目標の場合、一気に達成しようとするのではなく、中間目標を設定することも必要です。


5.モニタリング・評価

スムーズに実施できたか、実施の際に問題点はなかったかなどチェックし振り返ります。具体的にはビジネスプロセスが機能しているか、定性面・定量面でどのような成果があったかを確認してください。さらに、問題が起こった場合は、その原因究明や改善策の考案なども行います。


業務モニタリングを実施する

業務プロセスに問題はないか、問題があった場合どこにあるのかを把握するために、モニタリングを行いましょう。新たな問題や課題を発見し、早期に対応できます。また、モニタリングを実施する際は、データの正確性と客観性を確保することが重要です。適切な指標や評価基準を設定し、定期的かつ一貫した方法でデータを収集・分析することで、客観的な視点から業務の進捗とパフォーマンスを評価することができます。


効果測定・達成度を評価する

BPRの効果測定と達成度の評価は、変革の成果を客観的に把握するために重要です。注意点として、効果測定と評価には事前に設定した評価基準を用いることが重要です。また、定量的なデータだけでなく、利害関係者の意見やフィードバックも考慮し、総合的な評価を行うことが望ましいでしょう。もし達成度などに問題があれば修正を行います。修正にあたっては、最初の「検討」のステップへと戻し、作業を繰り返します。


BPRの設計で選ばれる主な手法

前章のBPRを実施する際の「設計」のステップにおいて、どのような方法でBPRを設計していくのでしょうか。設計のステップで選ばれる主な手法についてご紹介します。

業務仕分け

BPRでは、現在行っている業務をすべて洗い出し「業務仕訳(業務調査)」を行います。これにより現状を可視化します。具体的な実施方法としては、業務の流れや部門間の連携などを図式化するなどがあります。


BPO

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、業務の一部を切り出し外部企業に発注することを指します。業務単体ではなく、対象業務の前後プロセスや周辺業務も含めて、広範囲の業務をアウトソーシングします。定型的なルーティン業務を主体に行うノンコア業務に関してBPOを実施すると、自社スタッフが強化したいコア業務に集中できるようになり、業務効率アップが期待できます。

BPOについての詳細は、以下のページもご覧ください。

▼BPOとは?アウトソーシングとの違いやメリット、注意点をわかりやすく解説
https://www.tempstaff.co.jp/client/hr-knowledge/1812.html


ERP

ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)とは、企業の持つ資源を一つに集めて管理し、活用するという考え方を指します。ERPシステムを導入すると、各部署で行っていたシステムやデータの一元管理が可能になり、経営資源の効率化や意思決定のスピードアップを実現できます。


シェアードサービス

複数のグループ会社からなる企業が、バックオフィス業務(間接業務)を一ヶ所に集約させる手法をシェアードサービスといいます。バックオフィス業務を集約させることで、余分な業務を削減したり、人材配置やデータ活用を効率化したりできます。また、コーポレート・ガバナンス強化への貢献も期待できるでしょう。

シェアードサービスについての詳細は、以下のページもご覧ください。

▼シェアードサービスとは?メリットや注意点、対象業務をご紹介
https://www.tempstaff.co.jp/client/hr-knowledge/4756.html


知っておくべきBPRを推進する難しさやリスク

BPRのメリットや進め方をよく理解した上でも、実際に推進することは難易度が高く、リスクも大きいと感じる企業も多いのではないでしょうか。企業にとって大きなチャレンジであるBPRを推進する際には、以下のような点についても知っておき、対策を講じることで成功への道を切り拓けるでしょう。

自社が抱える問題を先に特定する必要がある

業務整理をうまく行うことができず、何がどのように問題なのか、解決すべきことの優先順位を特定できず、BPRを開始できないという企業も多くいらっしゃいます。自社が抱える問題を特定することは、真っ先に実施するポイントです。


問題を課題化して解決までのステップを導き出す必要がある

問題が特定できたとしても、それを解決することはまた別の手法が必要になってきます。解決に要する期間やステップを整理するためにも、経験や知識が求められるでしょう。


投資判断として損益分岐ラインを見極めなければならない

損益分岐ラインとは、BPRによる改革によって生じる費用と利益のバランスが傾き、プロジェクトが収益性を持つようになるポイントを指します。BPRはコストも大きく、実施期間も長くなります。そのため投資に見合った効果をどう測るかを決め、投資判断を行う必要があります。


BPRを推進するための自社リソースが必要になる

BPRの施策がスタートする際に、そのプロジェクトのリーダーを自社の社員で担えるかを確認する必要があります。

例えば、BPRを勧めてくれたコンサルタントの方が常駐する、BPRが完了するまでずっとフォローすることは約束されていません。ツールを構築してもらった場合でも、その後のシステムを構築した会社がアドバイスまで行うことは少ないです。そのため、結局は自社で真摯にBPRに取り組んでいく必要があり、それを取りまとめることができる人材を社内で探す必要が生じてきます。


BPRを着実に進めるにはプロセス整理と伴走パートナーが必須である

BPRは企業にとって素晴らしい手法ではありますが、自社内ですべて完結することは大変困難です。着手する前に、業務整理から一緒に伴走してくれるパートナーを見つけることがとても大切です。 パーソルテンプスタッフはお客さまの業務プロセスの整理からお手伝いいたします。


BPRのご相談ならパーソルテンプスタッフへ

BPRを実施したい、でも自社で実施するのは不安…そのように感じている企業さまはぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。パーソルテンプスタッフではお客さまの課題に対応するため、定常業務の効率化、限られたリソースでの生産性向上、繁忙期や閑散期への適応、人材不足の解消など多様なニーズに対応します。さらに人材の採用・教育から運用管理まで、一括で委託いただけます。さらに、BPRで行わなければならない業務プロセスの整理からお手伝い可能です。詳細は以下のリンクからご確認ください。

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