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【人事ライン】
グロースエクスパートナーズ 新井氏
チャレンジの積み重ねとご縁

公開日:2025.08.07

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【人事ライン】チャレンジの積み重ねとご縁  ー点が線になるキャリアー

グロースエクスパートナーズ株式会社
コーポレート統括本部
執行役員 人事・総務部長
新井よし子 氏

「他の会社の人事ってどうやっているんだろう」「同じような悩みを抱えているのかな」さまざまな企業の人事パーソンインタビュー『人事ライン』。今回はグロースエクスパートナーズ株式会社 執行役員 人事・総務部長の新井よし子さんです。
キャリアのスタートは貿易事務。そこから紆余曲折を経て人事のキャリアへ。そこでも、日系、外資、さまざまな業界での人事を歩まれている新井さんのチャレンジとご縁の積み重ねをお話いただきました。

― 今までのキャリアを教えてください。

新卒で株式会社キーエンスに一般職で入社し、3年半ほど、海外事業部で貿易事務を担当していました。フラワーデザイナーになろうと退職し、ドイツにワーキングホリデーにいきましたが、夢を諦めて、1年ほどで帰国しました。この頃はずっと英語や海外に興味がありましたが現実は厳しく、帰国してから自分自身を見つめ直し、自分はどういう人生を歩んでいきたいのか模索していました。今後のキャリアをどう築いていきたいのかを考えながら、あえて会社や職種を限定せずに自分ができる範囲の中で仕事をしていました。

年齢的に30代になる前というタイミングで「チャレンジするなら最後かもしれない」と、事務職ではない仕事に就きたいと思うようになりました。仕事を選ぶ基準を「人との関わり」「海外とのつながり」というキーワードにしていたこともあり、グローバルに展開する転職支援会社である株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントに入社し、キャリアコンサルタントを3年ほど経験したのち、企業担当として営業も兼ねたコンサルタントとして転職支援を計5年半経験しました。さまざまな業種職種の方、特にメディカル、医療業界を一番長く担当し、看護師や薬剤師からMRの採用まで行っていたので、全く知らない専門業界の知識を一から勉強しました。自分でもあらたな知識を蓄えられる経験を積みたかったですし、幅広い分野で視野を広げることができ、たくさんの方との出会いや学びを得た経験でした。

その中で担当していたお客様の一社が、その後に入社することになるアマゾンジャパン(旧アマゾンジャパン・ロジスティクス)でした。アマゾンが日本法人を設立してまだ11年目のベンチャーの時期で、会社説明をしているリクルーターの方のワクワクするようなお話がとても魅力的で、その姿にインスパイアされたんですね。そんなきっかけから、「リクルーターの仕事をやってみたい」と思うようになり、自ら応募をし、採用となりました。アマゾンジャパンの物流拠点と言われるフルフィルメントセンター(FC)の採用担当から私の人事キャリアがスタートしました。物流現場の方に向き合うことや、メーカーの工場に説明会に行くことはこれまでのキャリアからは大きな環境の変化でした。ジェイ エイ シー リクルートメント在籍時に大阪から東京に転勤で上京し、そもそも35歳で関西を離れることが自分としては大きなチャレンジだったのですが、そこから転職して、初めての外資系企業で、初めての物流現場の環境で、入社当時は千葉の物流拠点の人事からスタートし、この間の出来事は本当に想像もしていない流れでした。

物流拠点の人事を2年くらい経験した後、本社に異動し、サプライチェーンや本社機能のポジションで消費材系を扱う人材の採用から、クラウドベースの音声サービスの立ち上げ、複数のメディア関連の新しいビジネスの採用にも関わり、国内外さまざまな拠点へ出張に行ったり、グローバルメンバーと一緒にプロジェクトを進めたりしました。その当時のアマゾンはまだいろいろなものを作り上げているフェーズだったので、マニュアルはなく、自分で試行錯誤しながらやり方を考えて前に進めないといけなかったことや、ビジネス側もさまざまな業界から来ている優秀なリーダーがたくさんいらっしゃったので、そこに自分は「一採用担当」として提案するプレッシャーなどもあり、自分の至らなさや未熟さに落ち込むこともたくさんありました。その後、ビジネスの拡大と共に採用チームも大きくなり、チームメンバーの半分が外国籍のメンバーというダイバーシティなチームのリクルーティングマネージャーも経験させていただきました。

次のチャレンジを考えていたときに出会ったのが、ジョーンズラングラサール株式会社というアメリカの総合不動産会社でした。そこで、日本の採用チームの責任者として日本と韓国を統括するというあらたなキャリアの広がりを経験させていただく機会をいただきました。そこで3年近く不動産の売買や管理、リーシング営業をはじめ、オフィスファシリティなどの採用戦略立案から実行に至るまで全体を担当しました。ここでは、直属の上司がシンガポールにいたのでコロナ禍の影響もありましたが、リアルで会えたのは入社前の1回位で、オンラインでずっと海外の方とやり取りをする難しさも学びました。

その後、前職の同僚から声をかけてもらったのがきっかけで、ジョンソン・エンド・ジョンソングループのヤンセンファーマに転職しました。大きな組織だったので業務内容も細分化されており、採用の中でも私のミッションはドクターやいわゆる医薬品に関する専門知識のある方、またエグゼクティブ層の方がメインで、今まで関わってなかった職種がある業界でしたが、以前の転職支援会社の時にメディカル業界を担当していたことが少し役に立ちました。また、手挙げ制で一定期間仕事を実体験できるプログラムがあるのですが、そこでHRビジネスパートナーを1年ほど担当させていただき、社員向けの能力開発を目的とした研修や人事評価、労務など、採用以外のところも学ばせてもらったことも自分のキャリアにとってとても貴重な経験でした。

― 現在のグロースエクスパートナーズには、どのようなきっかけで入社されたのでしょうか。

私は常に「自分が売れる人材になるには」ということを意識しているのですが、その当時「10年後を見据えた時に、このまま採用メインの経験だけでは売れなくなるかもしれない。採用プラスαでも、まだ経験が足りないのではないか」と思ったんですね。それで「もっと幅広い経験ができないだろうか」といろいろ考えていた頃、アマゾン時代の大先輩から紹介をいただきました。会社の成長と共に人事として貢献できる可能性を多く感じましたし、社員の方ともお会いしてぜひ働いてみたいと思い入社しました。そんなありがたいご縁もあり、現在は採用以外にも、人事制度や人事企画、労務、評価など人事全体の業務に携わり、人事・総務の統括を任せていただいております。

― 人事の体制や人事組織としてチャレンジしていることや施策、課題はどのようなことがありますか。

現在は少数精鋭の人事組織でありますが、これから増員予定もあり、大きく分けて採用、労務、人材開発などそれぞれのミッションを持っており、私は人事全体の組織を統括しています。人事としての優先課題はまず採用と教育です。新卒や入社2、3年目の若手層のキャリアをどう伸ばしていくか、管理職においては次世代候補となるべくメンバーの育成や教育ができる人財マネジメントスキルをどう強化していくか、外部の優秀な人財をどのように獲得していくかなどが、主に取り組むべき人事の課題と捉えています。
直近の施策としては、組織の成長やイノベーションを起こせるようなリーダーの輩出、また自発的に自らリーダーシップを発揮したいと思える人財を増やすため、サーベイや現場のヒアリング結果に基づいた評価制度や報酬制度の改定に取り組んでいます。
新年度を迎える2025年9月からはあらたな人事制度の導入を予定しており、社員の成長と組織の目標が連動できるような体制を目指し、人事としても共に成長していきたいと思っています。

― 一般職での貿易事務から、現在まで、転職を重ねるごとにチャレンジと経験を積まれ、ステップアップされています。

全てはチャンスをいただいて、今があると思っています。お声がけをいただいてきた一つひとつに、本当に感謝しかありません。もちろん、チャンスが舞い込んでくるように日々努力は重ねていたと思います。
若い頃は、海外に憧れがあったにも関わらず、最初は英語も話せなかったですし、自信もないから、英語を話しているのを人に聞かれるのも嫌でしたし、かかってくる電話も本当に取りたくなくて(笑)。でも、そこで諦めずに「いい結果を残したい、やり遂げたい」と、いつも思っていました。

転職して会社が変わると、環境に慣れるまではどの会社も最初の1年はしんどかったです。落ち込んだ時に意識していたことは「何を達成するためにこの選択をしたのか」という自分の軸をしっかり持つことでした。これまで築いてきた環境を離れてでも外に出ようと思った志や自分が掲げた目標に向かって前向きに進み続けることがステップアップにつながった気がします。

― 今まで、さまざまな企業規模や業種、そして日系も外資もご経験されていますが、影響を受けた会社はありますか。

楽しさもさまざまで、それぞれ違う楽しさややりがいがありましたが、自分のキャリアが大きく変わるきっかけになったのは、アマゾンジャパンですね。最初に物流拠点ではなく本社勤務だったら、全然違ったのではないかと思います。
きっと、「アマゾンが成長した背景は、物流やサプライチェーンの基盤があってこそ」というオペレーションの根幹の部分を理解できていなかったかもしれませんし、ずっとITやEコマースの業界だと思い続けていたと思います。もちろんウェブサイトのプラットフォームがあってこそのビジネスですが、商品を運ぶ流れや仕組み、そのシステムを動かすエンジニアの方や、現場を管理するオペレーションの仕事について共感できなかったかもしれません。最初に物流拠点を経験したことで、ビジネス全体を俯瞰ふかんしてみる力ができたと感じています。

物流拠点の時、途中で本社勤務の異動にチャレンジしたことがあったのですが、だめだったんです。同じ人事でも求められるものがすごく違う中で、私はスキルがまだ全然足りていないと思い知ったわけです。それから「あぁそうか。ここで私はまだまだ頑張らなくてはいけないんだ」と本腰を入れて自分を見つめ直しました。
現場の仕事をもっと深く理解しようという意識が高まって、自分から情報を得るために機会を作り、いろいろな方に話を聞く姿勢が、受け身から能動的に変わったと思います。なぜなら、成果を残すためには本当に自分がビジネスやその現場の仕事を理解しなければ、戦略どころか誰かに説明すらできないと思ったからです。人事は現場を支えて下さっている皆さんの立場になって、情報を正しく発信しなければならない。業務内容も課題も成功事例も知ってこそ、それを体現できると思います。技術的なことは実際にできなかったとしても、「分析して課題を見つけ出す力」が大事だと実感しています。

― 「人事の役割は何か」と聞かれたらどのように答えますか。また新井さんにとって「人事」とは何でしょうか。

人事とは、「組織の原動力」であると思っています。車に例えるとタイヤのような存在で、無くては走れない、エンジンはビジネスの機動力で、社員は運転するドライバーかなと思います。
より優れたドライバーを生み出すために人事は回転率を上げて仕組みづくりを整え、人のスキル向上に向けてサポートする役割を担うのではないかと。ただ走るだけではこれからの時代はAIのようなスピード感のあるイノベーションにも勝てなくなる、そのために常に磨き続け、メンテナンスしながらより優れたリーダーとなるドライバーを生み出すことがゴールへの道につながると思います。

私にとって人事は、とてもやり甲斐のある仕事です。人の成長、人のサポート、人をモチベートするいろいろなシーンを通じて感動することができる、そんな仕事だからです。これからもまだまだ感動する機会に出会える人生を過ごせるよう人事の仕事を極めていきたいと思います。

― これからのキャリアで、やってみたいことはどのようなことでしょうか。

先程と少し矛盾しますが、「選択するキャリアは必ずしも人事じゃなくてもいいのかな」とたまに思うこともあります。例えば、役員も一定の年齢になると次世代にバトンタッチする時がやってきますし、「その時に自分は次に何をしたいのか」と考えることもあります。現在は「自分が売れる人材になるには」という視点を意識していますが、それに加えて、これまで“人事”という立場から組織や人の成長を支えてきた経験をさらに広い領域で活かすにはどうすればよいか—そんなことを考えたとき、セールスやビジネスサイドにチャレンジするのも、一つの面白い選択肢なのではないかと感じています。
ただ、今までせっかく人を支える人事という仕事に携わってきたので、何か人に伝えられるような、人事コンサルのような感じといいますか。オープンでかつプロアクティブな人事を目指して、困ったり悩んでいる人達に向けてお役に立てるような情報を発信できたら面白いな、と思ったりしています。将来的には、人事という職種やさまざまな形態にも年齢にもこだわらず、キャリアへの挑戦ができればうれしいですね。

常に「自分が売れる人材になるには」と足りないものを考え、努力とチャレンジを積み重ねている新井さん。キャリアのスタートの20代の時には想像もできなかったと笑う現在に続くキャリアは、努力と共に素敵なご縁で結ばれた会社の数々でもありました。
日系、外資だけではなく、規模や業界もさまざまなフィールドでのご経験の裏にある、たくさんの積み重ねられた努力が今の新井さんを創り、輝かせているのだと思いました。

Profile

グロースエクスパートナーズ 新井よし子 氏

グロースエクスパートナーズ株式会社
コーポレート統括本部
執行役員 人事・総務部長
新井 よし子 氏

1998年株式会社キーエンス入社。2006年3月、株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントに入社し、候補者向けの転職支援コンサルティングおよび営業経験を経て、2011年11月、アマゾンジャパン合同会社に入社。中途採用の戦略立案、実行まで多数のプロジェクトに携わる。
2018年8月、ジョーンズ ラング ラサール株式会社入社、採用統括責任者に就任。
2021年5月、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループヤンセンファーマ株式会社に入社し、グローバル採用チームの一員として採用戦略に携わる。
2024年8月、当社執行役員に就任。人事・総務部長として人事全般の改革、人財採用戦略立案を推進。

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