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健康診断は代行で負担を減らせる?メリットと注意点を解説

公開日:2023.06.26

更新日:2024.04.26

人事ナレッジ

企業では、社員の健康を保つために健康診断の実施が必要です。労働安全衛生法で定められたルールであり、怠れば罰則が科せられる可能性があります。

しかし、健康診断業務は多岐にわたるため、担当部署や担当者の負担は大きいでしょう。そこで活用できるのが健康診断業務のアウトソーシングです。健康診断の代行を依頼すると負担が軽減され、多くのメリットが得られます。

この記事では、健康診断の代行について詳しく解説します。アウトソーシングが可能な健康診断に関連する業務やメリット、注意点の他、代行先を選ぶポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

社内で行う健康診断業務は代行を依頼できる

企業では、企業規模にかかわらず健康診断を実施して、社員の健康を管理することが大切です。ただし、健康診断の実施に際して、医療機関と社員の日程調整や診断結果の管理など、さまざまな業務が発生します。健康診断に関連する業務は人事労務の一環ですが、非常に煩雑な業務であり通常業務に影響を及ぼすことも少なくありません。

こうした課題をクリアする上で役立つのが、健康診断の業務委託です。業務委託会社に依頼すれば、法律に沿った適切な健康診断業務を任せられ、大幅な負担軽減につながります。

健康診断の代行を依頼する前に、企業における健康診断とはどのような業務であるかを、あらためて把握しておくことが大切です。まずは、健康診断の概要と流れを解説します。

健康診断の実施は企業の義務である

企業の健康診断は、労働安全衛生法第66条で定められたルールです。厚生労働省の「パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!」によると正社員だけでなくパートタイム労働者であっても、「正社員の週所定労働時間の3/4以上」勤務する場合、健康診断を実施する義務があります。

健康診断を適切に実施しなかった場合、労働基準監督署から指導が入る他、悪質な場合は罰則が科せられるでしょう。社員の健康を管理することはもちろん、法律違反となってしまわないためにも、十分に留意して健康診断を実施することが大切です。

一方、健康診断業務は多岐にわたるため、全容が把握しづらい方も多いでしょう。また、健康診断業務に注力するあまり、通常業務がおろそかになることも考えられます。安心かつ円滑に健康診断を実施するためにも、業務委託が最適です。


健康診断を実施する流れ

健康診断を実施する流れは以下の7ステップです。


1.対象者を取りまとめる

健康診断は、正社員だけでなくパートやアルバイトでも対象となる可能性があります。そのため、はじめに対象者を取りまとめておくことが大切です。


2.医療機関に予約を入れる

健康診断は指定の医療機関に出向いて受ける場合と、健診車に出張を依頼する場合の2パターンがあります。職種や対象者の人数、業務内容に沿って適した方法を選択するとよいでしょう。その上で、指定する医療機関に予約を入れます。


3.対象者に健診日を通知する

医療機関の予約完了後、対象者に健診日を通知します。メールや書面で通知するケースが一般的です。


4.対象者は指定日時に健診を受ける

対象者は企業から指示された日時に、病院もしくは健診車に出向いて健診を受けます。検査項目は労働安全衛生法によって定められており、定期健康診断の場合は以下の11項目です。

  1. 既往歴および業務歴の調査
  2. 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査

※引用:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~


5.医療機関から健診結果が企業に届く

健診後、医療機関から企業宛に健診結果が届きます。社員が多い場合は、数回に分けて届くケースが多いです。


6.対象者に健診結果を通知する

医療機関から届いた健診結果を、対象者に通知します。万が一異常が見られれば、勤務時間の短縮や夜間業務の削減など、業務上の措置を取ることもあるでしょう。


7.健診結果を企業内で保存する

健診結果は対象者に通知するだけでなく、厚生労働省により企業内で5年間保存するように定められています。また、じん肺健康診断や石綿健康診断などの特殊な健康診断については、さらに長期間保存しなければなりません。なお定期健康診断の場合、50人以上の社員を抱える大規模な企業では、結果報告書を労働基準監督署に提出する必要があります。



代行できる健康診断関連業務

アウトソーシングできる健康診断関連業務は、主に以下の6つです。それぞれについて詳しく解説します。

アウトソーシングについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
>>【わかりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い

1.日程調整業務

健康診断をスムーズに行うためには、社員や医療機関との日程調整が必要です。日程調整業務は業務委託会社に依頼できます。


受診者の日程調整

受診者の日程調整は、人数が多くなるほど煩雑になります。特に勤務地が複数あったり、雇用形態が多様化していたりすると、調整ミスが起こることも少なくありません。

健康診断のアウトソーシングを依頼すると、受診者の日程調整を任せられます。キャンセルや日程変更があった場合の対応も代行してもらえるため、ミスや漏れを防ぐことが可能です。


医療機関の日程調整

健康診断を実施する際は、医療機関との日程調整も必要です。自社の希望日と医療機関の予定を照合しながら調整します。

また、社内で実施する際や健診車を依頼する場合は、待機場所や動線の調整も重要です。こうした医療機関とのすり合わせも業務委託会社に依頼できます。


2.アナウンス業務

健康診断の日程調整が完了したら、社員にアナウンスを行います。アナウンス業務も、委託先に依頼できる業務の一つです。


受診者全員へのアナウンス

健康診断の日程が決まったら、社員に対して健康診断を受診するように促す必要があります。一般的には、メールや書面で通知しますが、社員の人数が多くなるとスムーズに周知できないケースも少なくありません。

また、健康診断を実施する期間に休暇を取っている社員がいれば、日程を調整する必要もあるでしょう。こうした受診者に対するアナウンスも、委託先に任せられるため安心です。


未受診者へのアナウンス

受診者の中には健康診断実施日に急な予定が入ったり、体調を崩したりして受診できなかった方が出てくることもあります。社員が多いと未受診者を見落としてしまうこともあるでしょう。その結果、後になって未受診者が判明するケースも少なくありません。

こうした未受診者に対しては、速やかな連絡が求められます。健康診断の代行では、未受診者へのアナウンス業務も依頼可能です。


異常などが発見された社員へのアナウンス

健康診断によって異常が発見されるケースもあります。状態によっては、速やかに精密検査を受ける必要があるでしょう。異常が発見された際は、当該社員に対して再検査の受診を促す「受診推奨」が事業者の努力義務となっています。

業務に影響が出るほどの深刻な状態であるにもかかわらず、社員にアナウンスせずに放置してしまえば責任問題に発展しかねません。社員が健やかにはたらくためにも、再検査が必要だと判断した場合は通知する必要があります。異常があった場合のアナウンスも、業務委託会社に依頼できる業務です。


3.予約管理業務

多くの企業では、社員が医療機関に出向いて健康診断を受けます。この場合、健診車を依頼して集団で受ける健康診断とは異なり、社員によって予約日にばらつきが出ます。そのため、予約管理は非常に煩雑な業務となります。

また、社員が自分で予約を入れる場合、連絡ミスや漏れが起こる可能性がありますが、健康診断の代行を依頼すると予約管理業務も任せられ、正確な管理が可能です。


4.精算業務

健康診断は企業が行う必要があり、費用も企業が負担します。また、健康診断は自由診療に該当するため、保険が適用されません。医療機関によって費用が異なり、健康診断の実施後に請求書が発行されます。健康診断にかかる費用の精算も健康診断業務の一環であり、委託先に依頼可能です。


5.法定書類の作成業務

50人以上の社員を雇用している企業では、健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。厚生労働省により様式が定められており、Web上で書類の作成が可能です。

提出の際は漏れなく記入しますが、人数が多いとミスが発生することも考えられます。また、部署の異動があれば、前年度のデータが活用できないケースもあり、煩雑な業務でストレスを感じる担当者も多いでしょう。健康診断の代行を依頼すれば、法定書類の作成業務も任せられます。


6.健康診断結果のデータ化や集計

定期健康診断の場合、健康診断の結果を5年間保管するルールがあります。紙媒体での保管も可能ですが、社員の健康状態を把握して保健指導をしたり、労働環境を見直したりする上ではデータ化が最適です。また、集計する際にも健康診断結果のデータ化が役立ちます。

大勢の社員の情報をデータ化・集計するのは、非常に手間のかかる業務です。健康診断のアウトソーシングでは、手間のかかるデータ化や集計も依頼できます。


健康診断業務の代行を依頼する7つのメリット

健康診断業務の代行を依頼する7つのメリット

健康診断業務の代行で得られるメリットは主に7つです。それぞれのメリットを詳しくご紹介します。

1.健診結果の管理を一元化できる

社員が多い大規模な企業では、複数の医療機関を通して健康診断を受けるケースも少なくありません。特に事業所を各地に設けている場合は、事業所ごとに健康診断を実施する必要があります。医療機関によって健康診断結果のフォーマットが異なるため、健康診断の結果をまとめるのに苦労していらっしゃる担当者も多いでしょう。

健康診断業務をアウトソーシングすると、結果を一元管理することが可能です。また、情報はWeb上で管理されるようになるため、個々の情報を把握しやすくなります。


2.受診率の向上につながる

健康診断を実施しても、社員の状況によっては未受診者が出る可能性があります。受診率を上げるためには、適切な予約管理や社員へのアナウンスが重要です。

健康診断の代行を依頼すれば、委託先が日程調整や予約管理、未受診者に対するアナウンスを行います。また、社員の状況や環境に合わせて、受診しやすい医療機関を指定してくれるケースもあるため、受診率向上が期待できるでしょう。


3.健康経営を推進できる

従来は、社員自身が自分の健康を管理するという考えが一般的でした。一方、「健康経営」が注目されている昨今、社員の健康は企業の成長にもつながるとして、課題の改善に取り組むケースが増えています。

健康経営を推進するためには健康診断だけでなく、保健指導やワーク・ライフ・バランスの実現に向けた施策も重要です。健康診断の代行によって、予約管理や社員へのアナウンス、結果の分析など一連の業務を任せられれば、これまで健康診断業務に手を取られていた人的リソースにゆとりが生まれます。その分、健康経営推進に注力しやすくなるでしょう。


4.労働基準監督署への報告作業が簡単になる

50人以上の社員を雇用している企業では、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告します。一方、大勢のデータをまとめるのには時間がかかり、通常業務がおろそかになる可能性があるでしょう。

健康診断のアウトソーシングでは、労働基準監督署への報告作業に必要なデータ管理や分析業務を任せられます。そのため、報告にかかる手間や時間が大幅に削減され、より重要な業務に集中することが可能です。


5.人件費などのコストを削減できる

健康診断業務を社内で担えば、それだけ人件費が必要になります。また、あらたに担当者を採用する場合は採用コストも発生するでしょう。

一方、健康診断の代行を活用すると、社内でリソースを確保しなくても済むため、人件費や採用コストの削減につながります。


6.属人化を解消できる

企業内で健康診断業務を行う場合、総務や人事が担当するケースが一般的です。特定の担当者が業務を担っている場合、退職や異動、休職によって健康診断業務が円滑に進まなくなるケースが考えらえます。

こうした属人化を解消するためにも、健康診断のアウトソーシングが役立ちます。健康診断業務を委託すると、属人化していた業務を整理することが可能です。また、情報の一元化ができるため、担当者が変わったとしても速やかに引継ぎができます。


7.強化したい部門や業務に専念できる

自社で健康診断業務を担う場合、社員や医療機関の調整や当日の立会い、分析、管理などを一貫して行う必要があります。こうした手間のかかる業務を、通常業務と並行するのは非常に困難です。特に健康診断当日に立会い業務が発生すれば、注力する必要のある業務がおろそかになります。

健康診断代行の活用によって一連の業務を任せられるため、担当者の負担が軽減され、強化したい業務に専念しやすくなるでしょう。


健康診断業務の代行を依頼する際の2つの注意点

健康診断業務の代行を依頼する際の2つの注意点

健康診断業務の代行を依頼する際は、以下に挙げる2つの注意点を押さえることが大切です。それぞれの注意点について詳しく解説します。

社員に事前の説明をしっかり行う必要がある

健康診断では、個人情報や健康状態を第三者に知られてしまうため、社員の中には不安に感じる方も多いでしょう。説明が不十分なまま健康診断のアウトソーシングを進めると、ストレスを感じたり不満を抱いたりする社員が出てくる可能性があります。社員が安心して健康診断を受けられるように、しっかりと説明して不安を払拭することが大切です。


自社の課題を洗い出した上で複数社を比較する

健康診断のアウトソーシングは、サービスによって得意分野や費用などの特徴が異なります。そのため、依頼する際は自社の課題を洗い出した上で、課題解決につながる代行先を選ぶことが大切です。なお、はじめから一社だけに絞るのではなく、複数社を比較するとよいでしょう。


健康診断業務の代行先を選ぶ際のポイント

健康診断業務の代行先を選ぶ際は、以下に挙げる4つのポイントを押さえることが大切です。続いては、それぞれのポイントについて解説します。

カスタマイズの幅が広いか

健康診断業務に関する課題は企業によってさまざまです。事前に洗い出した課題を解決するためには、自社に適した代行先に業務を依頼する必要があります。

カスタマイズの幅が広い代行先であれば、柔軟に対応してもらえる可能性があります。代行先を選ぶ際は、委託業務をどの程度カスタマイズできるか確認しておくとよいでしょう。


最適な医療機関を選定してくれるか

健康診断をアウトソーシングする際は、医療機関の選定も任せたい企業も多いでしょう。提携先が少ないと、希望通りの健康診断が受けられない可能性があるため注意が必要です。

例えば、事業所が各地にある場合やリモートワークを活用している企業は、事業所や社員の居住地に合わせた医療機関を見つける必要があります。最適な医療機関を選定してもらうためにも、選択肢の多い代行先を活用することが大切です。


個人情報の管理体制がしっかりしているか

健康診断の結果は、社員にとって大切な個人情報です。性質上、非常にセンシティブな情報であり、悪用されると本人に重大な不利益を及ぼす可能性もあるでしょう。委託したことで、万が一個人情報が漏えいしてしまえば、影響は計り知れません。こうしたトラブルに見舞われないように、管理体制が整った代行先を選ぶ必要があります。

安心して代行を依頼するためにも、プライバシーマークを取得している企業や個人情報の取り扱いに関する対策を具体的に示している企業を選ぶとよいでしょう。


企業の課題に沿った提案をしてくれるか

健康診断は、健康経営を進める上でも重要な業務です。また、職種や企業の規模、はたらき方などによって、社員の健康管理に関する課題は異なります。

委託する際は予約管理や事務処理など、作業的な健康診断業務を任せるだけでなく、企業が持つ課題に沿った提案や解決につながるサポートを提供するパートナー企業を選ぶとよいでしょう。


健康診断のアウトソーシングはパーソルテンプスタッフへ

健康診断の実施は、社員が健やかにはたらくために欠かせない企業の取り組みです。しかしながら健康診断に関連する業務は煩雑なため、専属部門をお持ちでいない企業が通常業務に加えて対応することは難しくなっています。

手間がかかる健康診断業務を代行することで、大幅な負担軽減につながります。また、近年進められている健康経営にも役立つことから、アウトソーシングの活用を検討している企業も多いでしょう。

健康診断業務は大切な個人情報を扱う業務であり、管理体制が整った委託先を選ぶ必要があります。また、自社の課題に適したサービスを提供してくれる委託先に依頼することも大切です。より効率的に健康診断をアウトソーシングするためにも、事前に課題を洗い出してから委託先を探すとよいでしょう。

パーソルテンプスタッフでは、健康診断の実施支援を含む健康管理分野のアウトソーシングにも対応しており、多くのお客さまに選択いただいています。その理由として、トータルサポートだけでなくお客さまのニーズに合わせた部分的なサポートをご提供していることが挙げられます。

当社にて健診結果をデータ化するため、管理や分析の効率化が可能です。その他、受診料に関しては医療機関からの請求書の確認や立替支払いなど一貫して行っており、お客さまは当社からの一括請求にご対応いただくのみとなっています。健康診断の代行について、お困りのことやご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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