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人事アウトソーシング・代行とは?失敗しない導入のポイントや相場をご紹介

公開日:2023.05.15

更新日:2024.01.29

人事ナレッジ

社員が本来の業務により専念できるよう、人事代行を活用して人事業務の一部を外部に代行依頼する企業が増えています。人事業務の代行が周知されつつある状況下で市場はどのように成長しているか、アウトソーシングを活用するメリット、アウトソーシング先を選ぶ際に意識したいポイントを解説します。

人事アウトソーシングとは人事関連の業務を外部委託すること

自社の業務を外部企業に依頼することをアウトソーシングと呼びます。特に人事部門の業務を依頼する場合は「人事アウトソーシング」と呼びます。

自社業務を外部に依頼すると、他社が有している専門的な知識やノウハウを活用できます。また、自社の負担を軽減できるため、今まで人事業務に費やしていた時間と社員のリソースを他の業務に集中させられるようになります。

アウトソーシングについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
>>【わかりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い

人事アウトソーシングの市場

出典:矢野経済研究所「人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査(2022年)」

出典:矢野経済研究所「人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査(2022年)」(2022年4月7日発表)

人事・総務アウトソーシングの市場規模は、拡大傾向にあります。2020年度における人事・総務アウトソーシングの市場規模(主要14部門計)※1は前年度比0.5%減の9兆9,037億円です。

※1<内訳>

・シェアードサービス市場((1)、(2)):5,020億円(前年度比4.7%減)

・人事業務アウトソーシング市場((3)、(4)、(5)、(6)、(7)):9,133億円(前年度比3.6%減)

・総務業務アウトソーシング市場((8)、(9)、(10)、(11)):2,659億円(前年度比2.8%減)

・人材関連業務アウトソーシング市場((12)、(13)、(14)):8兆2,225億円(前年度比0.3%増)

人材関連業務のアウトソーシング市場が、人事・総務関連業務のアウトソーシング市場の約80%を占める結果となりました。2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行が拡大したことが市場成長の阻害要因となったことに加えて、同年4月には緊急事態宣言による外出制限が加わり、経済活動の停滞が響きました。これにより、2020年度は主要14分野のうち9分野でマイナス成長、残り5分野も成長率が伸び悩む結果となりました。

かわって2021年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症流行による影響はあるものの、外出制限下における事業継続を目標とした体制の整備が進んだことと、ノウハウ蓄積など市場にプラスにはたらく要因が多いことを受けて、13分野プラス成長が見込まれています。


人事アウトソーシングで依頼できる業務

人事アウトソーシングで依頼できる業務

人事業務のうちアウトソーシングが可能な内容は以下の通りです。自社業務のアウトソーシング化を検討する際の参考にしてください。

面接、採用支援

社員を採用しようとすると、膨大な量の事務作業が発生します。応募者から送られる応募書類一式の受付からはじまり、面接日程の調整、内定者に対する入社に向けた案内などの対応が必要です。そのために面接自体よりも、面接前後のほうが時間と工数が必要になる場合があります。

このように、面接と採用支援業務は専門性を必要としない事務作業が多いことから、アウトソーシングを検討したほうがよいでしょう。


人材育成

社内研修の運営と人事評価制度の作成もアウトソーシングが可能です。人材育成をアウトソーシングすると、人材育成計画の策定や計画実施後の評価など人材育成でより重要な業務に担当者は専念できるようになるでしょう。なお、社内研修の代行は研修内容の計画や運営、実施後のフィードバックまで一括対応するパッケージもあり、ニーズに応じた使い分けも可能です。


給与・賞与計算、勤怠管理

人事業務のなかでも手間がかかる給与計算と勤怠管理も、アウトソーシングで依頼できます。給与計算を実施するには、各種社会保険や税金に関する知識が求められる一方で、給与計算そのものは企業の業績に価値を付加するものではありません。

勤怠管理は、出退勤時間管理をはじめ、労働時間や残業時間の確認、有給休暇や長期休暇などの管理を実施します。こちらも専門的な知識が求められる業務でありながら企業業績への付加価値を生まないため、企業からすればできるだけ低コストで運営したい業務です。


社会保険業務

入社や退職に伴う手続き、月額報酬額の改定、賞与支払届、育児休業給付金の申請などの業務も、アウトソーシング可能です。社会保険業務は、社労士事務所やハローワークなど外部組織とのやり取りも求められます。また、法改正などが実施された場合は改正内容を受けて適切な対応が必要になることから、専門知識とノウハウを有している外部企業へアウトソーシングするとより正確な処理が期待できます。


人事業務をアウトソーシングする5つのメリット

人事業務をアウトソーシングすることにより、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主な5つのメリットを詳しく解説します。

コア業務に集中できる

コア業務とは企業活動の根幹を成す、利益に直結する業務です。難易度が高く、専門的な判断を必要とすることが多いため、効率化が難しいという特徴があります。

対してノンコア業務とは、直接的には利益を生み出さないものの、コア業務遂行をサポートするために必要な業務全般を指します。難易度が低く、専門的な判断を必要としないことが多いため、比較的容易に効率化を図ることができます。

ノンコア業務をアウトソーシングすることで社員の手が空くため、コア業務に取り組む時間をより多く捻出できます。自社以外に任せられる業務を判断すれば、生産性を向上させることが可能です。たとえば、人事制度の改正、社員のマネジメントなど人事部門のコア業務に専念しやすくなるでしょう。


法令改正に対応できる

人事業務を受託会社などにアウトソーシングすると、専門家による対応がなされるため、法令改正による変更点の見落としや違反による罰則回避などが期待できます。

人事業務では、法令改正への対応が求められることが多いです。特に国を挙げて働き方改革が進められている近年は、社会保険関連法や労働基準法など関連法令の改正が頻繁に行われていることもあり、法令改正への適切な対応は企業としても意識したいところです。


属人化を防止する

より高い専門性が求められることから、人事業務は特定の社員への依存度が高まりやすい傾向があります。業務の属人化が進むと、業務の全容を把握しているのは担当者のみということになりかねません。万が一、担当者が病気などで急遽休暇に入ると、人事業務が滞る恐れもあります。

アウトソーシングを活用して人事業務を外部に委託すると、専門性の高い業務であっても属人化を予防できるでしょう。また、人事アウトソーシングすることで業務プロセスが整理され、マニュアル化が行われるため、業務の属人化を防止できます。


人手不足への対策ができる

人事業務のなかから定型業務を外部に委託すると、人手不足の負担軽減にも貢献できるでしょう。今まで定型業務に従事していた社員が、コア業務など、より重要度の高い業務に専念できるためです。

少子高齢化の進行による労働人口減少は、社会的な課題として認識されています。多くの企業が求める人材は大企業に集中する傾向も相まって、即戦力の獲得は難しいといえます。アウトソーシングを活用して社員に余裕ができれば、入社した社員に対して新人教育を実施するだけの時間的・人材的余裕を確保しやすくなるでしょう。


採用や教育のコストを削減できる

採用活動と入社後に実施する新人教育などを、まるごとアウトソーシングすることも可能です。 就職活動期間が長期化し、採用手法が多くなりました。そのため、全工程を社員のみで対応するのは難しいです。こうした事情から、アウトソーシングが認知され、採用活動や教育にかかるコストを考慮した上で実際に導入に踏み切る企業も増えてきました。


人事業務をアウトソーシングする際の3つの注意点

人事業務のアウトソーシング化には多くのメリットがありますが、同時に事前に把握しておきたい注意点も存在します。

社内にノウハウが蓄積されづらい

人事業務をアウトソーシングすると、その業務に携わる機会が減るので、自社にノウハウが蓄積されにくくなります。自社が保有するノウハウが古いままで止まってしまうため、定期的に受託会社にノウハウをフィードバックしてもらい、状況を正しく把握しておくことが大切です。


受託会社と情報管理の取り決めが必要になる

アウトソーシングは受託会社に給与計算、年末調整、勤怠管理など人事業務に関連した情報を提供するので、情報漏えいのリスクが生まれます。ひとたび発生すると悪影響は回避できないことから、事前に情報管理に関する取り決めや検証などを受託会社と確認しましょう。

また、受託会社を選定する際は、セキュリティ対策の姿勢やプライバシーマークの取得について確認し、慎重に検討する必要があります。


追加のコストが発生する可能性がある

業務委託を導入すると、効果を実感するとともに「依頼当初は考えていなかったが、あらたに頼みたい業務」が出てくるかもしれません。アウトソーシングしたい業務内容や業務量次第では、コストが増加することがあります。また有資格者による対応を依頼したい場合は、成果報酬型プランやアップグレード料が別途必要になる場合があります。

アウトソーシングを検討する際は、発生したコストに見合ったメリットを見込めるかどうか事前に確認しましょう。アウトソーシングしたい業務内容と業務量は企業によって異なりますので、事前に外部企業と依頼内容などについて細かく相談することがおすすめです。


人事業務をアウトソーシングする料金相場

アウトソーシングの料金体系は、月単位と業務単位があります。概要と大体の相場を解説します。

月単位

定額制や月額制とも呼ばれる、毎月の料金が明確なプランです。毎月かかる金額が固定化しているため、費用を計算しやすいです。依頼内容次第では、次に解説する業務単位よりも使いやすい金額設定です。

注意点としては、アウトソーシングしたい業務量などが増加すると、利用料も高額になりやすいです。依頼する業務量が月ごとに変動する場合、業務量が少ない月は利用料が割高に感じるでしょう。


相場(採用代行の例:新卒採用:5万~70万円、中途採用:10万~70万円、アルバイト・パート採用:1万~30万円


業務単位

従量制とも呼ばれる、特定の業務を指定してアウトソーシングするプランです。業務単位での依頼になることから、利用料は依頼内容と実際に作業した時間や件数に見合った金額になります。業務単位でアウトソーシングをする場合の注意点は、初期費用が発生する可能性があることです。初期費用の有無と額面など詳細は、事前に契約内容とプランをしっかり確認しましょう。

相場(採用代行の例):選考日程調整:5万円~、応募者への合否連絡:2万円~、研修代行:10万~15万円

パーソルテンプスタッフはご依頼いただく業務内容によって都度お見積りさせていただきますので、お見積りご希望の方は別途お問い合わせください。


人事業務のアウトソーシング先を選ぶ際のポイント

アウトソーシングの導入は、自社に大きな影響を与えます。期待する効果を得られるよう、アウトソーシング先の選定は慎重に行いましょう。アウトソーシング先を選ぶときに意識したいポイントは以下の通りです。

料金体系

アウトソーシングは、提供可能なサービス内容も料金体系も企業ごとに異なります。自社の人事業務の全体像とボトルネックとなっている業務を明確にしてから、外部企業を選定してください。

アウトソーシング先選びで大切なのは、営業担当者といかに綿密な打ち合わせができるか否かです。外部企業は、アウトソースを実施するにあたって業務への要望やヒアリングを実施しプランを提案します。気になる企業があれば、問い合わせをして打ち合わせの機会を設けましょう。


実績の豊富さ

受託会社を選ぶ際は、実績についても調べましょう。実際にサービスを利用した企業の口コミや導入事例を探して内容を確認すると、自社で導入したイメージをつかみやすくなります。アウトソーシングを実施する企業は増加傾向にあり、市場も拡大中です。自社と相性のよいアウトソーシング先と出会えるよう、実績には目を通しておく必要があります。


セキュリティ体制

セキュリティ体制の確認項目として、以下があります。

  1. ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証
  2. プライバシーマークの取得
  3. ISAE3402保証報告書の取得
  4. 情報セキュリティの指針と方針内容
  5. 情報の取り扱いに関する教育
  6. クラウドを使用する場合、データセンターの安全性

アウトソーシングには、情報漏えいのリスクがつきまといます。自社の取引先との信頼関係にも関わってきますので、アウトソーシング先を選定する際はどのようなセキュリティ体制をとっているか確認しましょう。


人事アウトソーシングで失敗しないための取り組み

人事業務のアウトソーシングを失敗しないようにするための取り組みをご紹介します。

目的に沿ったサービスを提供している委託先を選定する

アウトソーシングしたい業務内容および業務量と、受託会社とのミスマッチを起こさないようにしましょう。提供するサービスと料金体系は、受託会社によって異なります。受託会社によっては対応していない業務もあるため、目的にマッチした企業を選びます。


アウトソースする業務の領域を明確にする

何でもアウトソーシングするのではなく、アウトソーシングしたい業務を洗い出し明らかにします。アウトソーシングが望ましいとされる業務を判断する際は、以下を軸に判断するようにしましょう。

  1. コア業務をひっ迫している要因か
  2. 業務に必要とされる人件費 など

アウトソース実施後には、結果の振り返りを行う

アウトソーシング導入前に設定していた目的はクリアできているか、振り返り検証は欠かさず実施します。振り返りは、今後のアウトソーシング活用を考える上で重要です。あらかじめ振り返る時期を決めておき、以下の流れで実施するとよいでしょう。

  1. アウトソーシング前に設定していた目的を再確認する
  2. アウトソーシングは、費用に対してどの程度の効果が得られたか検証する
  3. アウトソーシングを利用して気づいた問題点を確認し対策を講じる
  4. 今後どのようにアウトソーシングを活用すれば効果的かを考える

人事業務をアウトソーシングする際は自社にあった外注先を選ぶ

人事業務のアウトソーシングについて解説しました。今回の内容をまとめると、以下の通りです。

  1. 人事アウトソーシングの市場は拡大が見込まれている
  2. 人事アウトソーシングでは、人材採用活動、人材育成、給与や賞与の計算、社会保険業務を依頼できる
  3. 社員の負担を減らせるためコア業務に専念できるようになる、法令改正にも適切な対応がとれるなどメリットが多い。しかし同時に、社内にノウハウを蓄積しにくい、情報漏えいへのリスク管理が求められるなどの注意点もある。
  4. アウトソーシングする際は、料金体系、実績内容、セキュリティ体制などの要因を考慮しながら、自社に適したプランを選ぶ。
  5. ミスマッチを防ぐにはアウトソーシング先の選定も重要だが、アウトソーシングしたい業務を明確にすることと、一定期間経過後に振り返り検証の実施も欠かせない。

パーソルテンプスタッフでは人事・労務部門へアウトソーシングサービスを提供しています。組織運営の属人化の解消や、社員がよりコア業務へ集中できる環境を作りたいとお考えの方は、ぜひお気軽にお声掛けください。


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