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【企業向け】派遣社員の直接雇用で活用できる助成金とは?受給要件や申請の流れを解説

公開日:2026.09.29

人事ナレッジ

労働人口の減少が進む中、近年は多くの業界で人材の奪い合いが続いています。これらの課題に適切に対処しなかった場合、特定の社員に業務が集中して職場環境が悪化したり、モチベーションの低下による生産性の悪化や競争力の低下につながったりします。

そうした状況を回避する方法の一つが、派遣社員を自社の直接雇用に切り替える正社員転換制度の活用です。1人あたり数十万円を受給できる助成金制度もあり、上手に活用すれば企業の体質強化や業績向上が見込めます。

この記事では、派遣社員を直接雇用に切り替える際に活用できる助成金の仕組みや、活用するメリット、要件や手続きなどを解説します。実務上の留意点についてもまとめているので、人材の確保や定着に取り組む人事担当者の方はぜひ参考にしてください。

派遣社員の直接雇用で活用できる「キャリアアップ助成金」とは

派遣社員を自社の直接雇用に切り替える際、経済的な負担を軽減させる国の制度として、キャリアアップ助成金が用意されています。その概要や金額の目安を解説します。

キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期雇用労働者や派遣社員など)の企業内でのキャリアアップを促進することを目的として設けられた国の制度です。支援内容は大きく「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つに分かれており、目的に応じて複数のコースが設定されています。

なかでも、派遣社員を自社の正規雇用に転換した際に活用できるのが「正社員化コース」です。この助成金は、中小企業にとっては「採用・育成コストを抑えながら優秀な人材を確保する手段」として、大企業にとっては「多様な人材の定着率向上や労働環境改善の取り組み」として、経営戦略上非常に重要な位置づけとなります。

経験豊富で自社の風土を理解する派遣社員を直接雇用することは、労働者本人の生活基盤を安定させるだけでなく、企業側にとっても助成金を受給しながら即戦力を確保できるメリットがあります。

キャリアアップ助成金の受給金額の目安

派遣社員を自社の直接雇用(正社員)に切り替えた場合、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用することで、1人あたり最大80万円(中小企業の場合)を受給できます。

実際の支給額は、企業規模(中小企業・大企業)や、正社員化前の雇用形態(有期・無期)によって以下の通りベースとなる金額が異なります。

対象者・企業規模 正社員化前雇用形態
有期雇用労働者 無期雇用労働者
重点支援対象者 中小企業 80万円 40万円
大企業 60万円 30万円
上記以外 中小企業 40万円 20万円
大企業 30万円 15万円

重点支援対象者とは、人材開発支援助成金の対象となる訓練を受講した方などを指します。

さらに、派遣労働者を正規雇用として直接雇用した場合には、上記のベース金額に加えて「派遣労働者加算」という特例の加算措置が適用され、受給額が上乗せされます。

また、自社にこれまで正社員への転換実績がなく、新たに就業規則等に制度を設けて実際に雇用転換を行った場合は、初回の転換時に限り1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が加算されます。

※本記事に記載の助成金の受給要件や支給金額などは2026年(令和8年)7月時点の情報です。制度の内容は今後変更される可能性があるため、実際に活用を検討される際は、必ず厚生労働省のホームページや管轄の労働局等で最新の情報を確認してください。

※出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(パンフレット)」

キャリアアップ助成金の主な受給要件

助成金を受け取るためには厳格な受給要件をクリアしなければなりません。企業と派遣社員それぞれが対応・確認すべき要件と転換後の実施事項を解説します。

対象となる企業の要件

キャリアアップ助成金を活用するためには、企業側が制度を利用するための土台となる基本的な要件を満たしている必要があります。中小企業の経営者や人事担当者は、事前に以下の項目を必ずチェックし、未対応のものがあれば適切に整備しましょう。

  • 雇用保険の適用事業所であること
    派遣社員を受け入れる規模の企業であれば基本的には該当しますが、労働保険料の未納があると支給対象外となるため、最新の納付状況を確認してください。


  • キャリアアップ管理者の配置
    事業所ごとに、キャリアアップに関する取り組みを社内に周知し、計画のフォローアップを担う責任者(管理者)を選任する必要があります。


  • キャリアアップ計画書の作成と事前提出
    中長期的な正社員転換の目標人数や、教育訓練・試験などの取り組み内容を定めた計画書を作成し、正社員への転換前までに管轄の労働局へ提出しなければなりません。

対象となる派遣社員の要件

助成金の支給対象となる派遣社員自身の属性や期間についても、厳格なルールが設けられています。自社で受け入れている派遣社員が対象となるか、派遣元との契約書や就業記録などをもとに、以下の要件に合致しているかを事前に確認しましょう。

  • 継続就業期間: 同一の事業所(部署)で6ヶ月以上継続して派遣就業していること。
  • 事業主との関係性: 転換を行う事業主、または取締役の3親等以内の親族ではないこと。
  • 年齢・定年要件: 正社員への転換後、1年以内に定年を迎える年齢ではないこと。

直接雇用後の賃金アップなどの要件

助成金を受給するためには、正社員への転換時点で「賞与または退職金の制度」、および「昇給の制度」が規定・適用されている必要があります。

その上で最も注意すべきなのが賃金増額の要件です。直接雇用後の6ヶ月間の賃金総額を、直接雇用前の6ヶ月間と比較して一定割合以上増額させなければなりません。なお、具体的な増額率(3%以上など)は、利用する制度やコースによって異なる場合があるため、必ず最新の公募要領を確認してください。

また、実務担当者が計算時に陥りやすいポイントとして、対象となる賃金範囲の誤認が挙げられます。比較対象となる賃金は、毎月の基本給と定額で支給される諸手当の総額のみです。通勤手当や食事手当などの実費補填的な手当、残業代(時間外割増賃金)、および賞与は計算から除外して比較する必要があるため、計算時には十分に注意しましょう。

派遣社員を直接雇用するメリットと助成金活用の効果

派遣社員を直接雇用すると、本人にも自社にも大きなメリットがあります。

優秀な人材の確実な確保と定着率の向上

自社の業務内容や企業風土を理解し、活躍している派遣社員を直接雇用できれば、新規に人材を採用するよりもミスマッチのリスクを抑えられます。

また、はたらき方が安定することで、直接雇用した社員の会社に対するエンゲージメントが高まり、モチベーションも向上して、自社への長期定着と業績への貢献が期待できます。

採用・教育コストの削減と生産性アップ

派遣社員を直接雇用へ切り替える大きなメリットは、採用活動や教育にかかるコストの削減です。

新たに正社員を外部から採用する場合、求人広告費などの金銭的コストだけでなく、選考や面接にかかる人事担当者の工数が発生します。すでに自社で就業している派遣社員を正社員化すれば、こうした採用コストを削減することが可能です。

また、対象者はすでに自社の業務や社風を理解している即戦力であるため、ゼロからの新人研修や現場でのOJTにかかる育成期間を短縮できます。採用・教育にかかるコストと時間を抑えつつ、いち早く事業の生産性向上に直結させることができる点は、企業にとって強力な優位性となります。

助成金を申請する際の手続きと具体的な流れ

つづいて、助成金を申請するための手続きについて説明します。必要な手続きを怠ると受給できない恐れがありますので、しっかり確認してください。

ステップ1:キャリアアップ計画の作成と提出

正社員として直接雇用する前に必ず実施しなければならないことが、キャリアアップ計画書の作成と提出です。人事部の担当者など一定の知識や経験がある社員をキャリアアップ管理者に選任し、3~5年の計画を立てます。その上で、社内掲示板やメール、朝礼などを活用して計画を広く周知・説明して従業員の意見を集め、各都道府県の管轄労働局に提出します(ハローワークを通じて提出できる場合もあります)。

提出にあたって特に審査はありませんが、転換日の1ヶ月前など余裕を持って提出しましょう。社内の決裁や労働組合などとの折衝期間を踏まえると、3ヶ月程度前から準備をはじめることが望まれます。

ステップ2:就業規則の改定と直接雇用の実施

就業規則に正社員転換制度を明記します。所属長の推薦、人事評価などの要件、面接や筆記試験といった手続き、採用時期などを必ず規定する必要があります。

就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署に届け出たら、就業規則に明記した要件や手続きに基づいて派遣社員を正社員に転換させ、雇用契約を結びます。

ステップ3:賃金支払い実績の構築と支給申請

正社員に転換させたからといってすぐに助成金を申請できる訳ではありません。6ヶ月間の賃金支払い実績が必要です。3%の増額要件を満たせるよう雇用契約を締結する前に基本給の額を設定しましょう。

申請は、6回目の給与支給日以降、2ヶ月以内にする必要があります。期限を超えないようにスケジュールを管理し、転換日を一律で4月1日のみにするなどして事務負担を減らすことも検討しましょう。

派遣社員の直接雇用については、以下の記事でより詳しく解説しています。
>>派遣社員を直接雇用できる?手続きの流れ・留意点について解説

派遣から直接雇用へ切り替える際の注意点

最後に、派遣会社との調整など、円滑な切り替えを実現するために人事担当者が実務上注意すべき点を解説します。

派遣会社との事前の調整と合意形成

派遣社員を自社の直接雇用に切り替える際は、雇用元である派遣会社との円滑な連携が不可欠です。まずは派遣契約の内容を確認し、直接雇用への切り替えに伴う紹介手数料の有無や、契約上の制約がないかを事前にチェックしましょう。

実際の切り替え手続きや条件交渉にあたっては、企業から派遣社員に直接打診するのではなく、原則として派遣会社を通じて進めることが重要です。特に直接雇用後に労働条件や業務内容が変更になる場合は、派遣社員本人の意向を尊重しつつ、派遣会社と十分に連携して三者間で適切な合意形成を図らなければなりません。

また、切り替えのタイミングに向けて、派遣社員が現在保有している有給休暇の残日数や取得希望についても派遣会社を通じて事前に確認し、トラブルなく円滑に自社での雇用へ移行できるよう配慮しましょう。

社労士との連携と書類の不備への対策

キャリアアップ助成金の申請では、キャリアアップ計画書や就業規則、支給対象者の雇用契約書、出勤簿、賃金台帳など、多岐にわたる書類の提出が求められます。これらの添付書類間にわずかな不整合があるだけでも、審査において不支給と判断されるリスクがあります。

そのため、正社員転換を検討する初期段階から制度に精通した社会保険労務士と連携し、事前チェックから申請書類の整合性確認まで徹底したサポートを受けることをおすすめします。

また、助成金は原則として「後払い」です。要件を満たして転換を行った後、所定の期間を経てから申請・審査が行われるため、実際に受給できるまでに時間がかかります。資金繰りや手続きに漏れが生じないよう、精度の高いスケジュール管理を行うことも重要です。

派遣社員の直接雇用については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>派遣社員を直接雇用する方法|採用のミスマッチを防ぎ定着を促すには

派遣社員の直接雇用と助成金活用で強い組織づくりを実現しよう

優秀な派遣社員を自社の直接雇用に切り替える正社員転換制度を設けて適切に活用すれば、多くの企業が実現したいと考える優秀な人材の確保・定着に大きく貢献します。また派遣社員にとっても、直接雇用への転換により会社へのエンゲージメントが芽生え、モチベーションも向上します。一緒にはたらく社員にとっても、新しい社員に対して受け入れ準備やオンボーディングが不要となり、生産性の向上が見込めます。

助成金も活用しながら社員や設備への投資を加速させ、より強い組織づくりに取り組みましょう。

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監修者

HRナレッジライン編集部

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