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派遣社員を直接雇用する方法|採用のミスマッチを防ぎ定着を促すには

公開日:2025.02.27

人事ナレッジ

近年、人材不足が深刻化する中で、採用ミスマッチによる早期退職は多くの企業にとって大きな課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、派遣社員の直接雇用です。

派遣社員として一定期間就業してもらうことで、スキルや社風との適合性を見極められるため、入社後のミスマッチを減らし、定着率の向上が期待できます。

また、派遣期間中に自社で経験を積み、スキルを磨いた人材を迎え入れることにより、即戦力として活躍してもらえる点も大きなメリットです。

ただし、派遣社員を直接雇用する際は、派遣元である人材派遣会社を介さずに直接交渉を行うことは契約違反に該当する可能性があります。そのため、必ず人材派遣会社へ相談し、契約内容を確認した上で、適切な手続きを進めることが重要です。

本記事では、派遣社員を直接雇用に切り替える具体的な方法やそのメリット、実際の事例などをわかりやすく解説します。

自己都合による退職理由で多いのは労働条件と仕事内容

厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、「自己都合」による離職理由(3つまでの複数回答)をみると、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%で最も高く、次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.0%でした。

この結果から、企業と社員の間で労働条件や仕事内容に対する認識にギャップがあり、それが離職の大きな要因となっていることが分かります。

雇用のミスマッチへの対策

労働条件や仕事内容に関するミスマッチを防ぐためには、以下の取り組みが効果的です。

  • 求人票に労働条件や仕事内容を具体的かつ明確に記載する
  • 面接時に企業の課題や現状について正直に伝える
  • 入社後は定期的に面談を実施して不安や課題を早期発見・解決する

これらの取り組みによって、離職率の低下と定着率の向上が期待できます。

さらに、ミスマッチを防ぐ有効な手段として、派遣社員の直接雇用があります。これは、一定期間派遣社員として受け入れた上で、実際のはたらきぶりや適性を見極めて直接雇用に切り替える手法です。

派遣社員の直接雇用とは

派遣社員の直接雇用とは、人材派遣会社から派遣されている人材を、派遣先企業が自社の正社員または契約社員として雇い入れることです。

この方法では、派遣社員の実際のはたらきぶりや適性を見極めた上で採用を決定できるため、入社後のギャップを最小限に抑えられます。

雇用安定を目的として国が推奨している

国は、派遣社員の雇用安定を促進するため、派遣先企業に対して派遣社員の直接雇用を推奨しています。特に、有期雇用の派遣社員に対しては、労働者派遣法に基づき、以下のような法的な枠組みを整備しています。

直接雇用の努力義務

派遣先企業には、以下の3つの条件をすべて満たす場合、派遣社員を直接雇用する努力義務があります。

【努力義務が適用される条件】

  1. 派遣社員が同一の組織単位で1年以上継続して就業していること
  2. 派遣の受け入れ期間が終了した後、同一業務に従事させる予定があること
  3. 派遣社員が引き続き就業を希望し、人材派遣会社を通じて直接雇用の依頼が行われた場合

なお、努力義務とは、法的に強制される義務ではないものの、派遣社員の雇用安定を図るために、派遣先企業が可能な限り取り組むことを求められる責任です。派遣社員の適性やスキルを踏まえた上で適切な判断を下すことが求められます。

参考:厚生労働省|令和6年度派遣労働者を受け入れるにあたって(第1部)

募集情報の提供義務

派遣先企業には、同一事業所で1年以上継続して就業している派遣社員に対して、募集情報を提供する義務があります。

  • 参考:厚生労働省|令和6年度派遣労働者を受け入れるにあたって(第1部)
  • 参考:厚生労働省|労働者派遣制度について

派遣社員の直接雇用は法的に認められている

派遣社員は人材派遣会社に雇用されていますが、適切なプロセスを経て、派遣先企業が直接雇用することも可能です。

労働者派遣法第33条では、人材派遣会社が派遣先企業による直接雇用を不当に妨げることを禁止しています。以下にその条文を抜粋します。

(派遣労働者に係る雇用制限の禁止)
第三十三条 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であった者を含む。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

この条文は、派遣社員にとって雇用安定の道を開き、企業にとっては派遣社員のスキルや適性を活かした柔軟な採用を可能にするものです。

派遣社員を直接雇用する4つのメリット

ここでは、派遣社員を直接雇用するメリットを4つ紹介します。

1.意欲的な人材の採用につながる

人材派遣会社には、成長意欲の高い人材が多く登録しています。こうした派遣社員は、研修やキャリアサポートを通じて専門スキルを磨き、あらたな業務に挑戦する意欲も旺盛です。

直接雇用によって、積極的な業務への取り組みが期待できるだけでなく、チームの活性化にもつながります。

2.採用のミスマッチを軽減できる

派遣社員を一定期間受け入れることによって、実際の業務遂行能力や仕事への姿勢を見極めた上で、直接雇用の判断ができます。

この期間中に、面接だけでは分からないスキルや適性、チームとの相性を双方が確認できるため、採用のミスマッチを軽減できます。

3.より責任のある仕事を任せられる

派遣社員が従事する業務内容や配置場所は、契約で明確に定められています。そのため、派遣社員には契約書に記載のない業務や、契約当初に定められた部署以外での業務を依頼することは認められません。

しかし、直接雇用に切り替えることによって、より幅広い業務や責任ある仕事を任せることが可能になります。また、本人の能力を最大限に活かすために、事業部をまたいだ配置転換やキャリアアップを図る柔軟な対応もできるようになります。

4.キャリアアップ助成金を活用できる

中小企業が派遣社員を直接雇用したり、待遇を改善したりする場合に、キャリアアップ助成金を申請できます(2025年1月時点)。

助成金は、人材紹介手数料や職業訓練費用、賃金規定の見直し費用などに充てられ、派遣社員のスキル向上やキャリア形成を支援します。

派遣社員を直接雇用に切り替える際の留意点

派遣社員を直接雇用に切り替える際には、以下の重要な留意点があります。

人材派遣会社を通さない直接雇用の申し入れは契約違反

派遣社員を直接雇用する際、人材派遣会社を介さずに直接交渉を行うことは契約違反に該当し、違約金などが発生する可能性があります。

そのため、まずは派遣社員の雇用元である派遣会社へ相談し、契約内容を確認した上で適切な手続きを進めることが重要です。

人材紹介手数料がかかる

派遣社員の直接雇用には、人材派遣から人材紹介への切り替えが必要となり、その際に人材紹介手数料が発生します。

人材紹介手数料の金額や支払い条件は派遣会社との契約内容によって異なります。予期せぬコストを避けるため、事前に詳細を確認しておきましょう。

労務管理の手間が増える

派遣社員の直接雇用後は、これまで人材派遣会社が担っていた給与計算・社会保険の手続き・労働条件の管理などが、自社の責任範囲となります。労務管理の手間が増加するため、事前に体制を整備しておきましょう。

派遣社員の雇用形態を直接雇用に切り替えるまでの流れ

派遣社員の雇用形態を直接雇用に切り替える際の流れは、派遣形態によって異なります。ここでは、紹介予定派遣・有期雇用派遣・無期雇用派遣の3つのパターンについて説明します。

紹介予定派遣の場合

紹介予定派遣とは、直接雇用を前提に、派遣社員を最長6ヶ月間派遣する仕組みです。派遣契約が満了するタイミングで、派遣社員と企業の双方が直接雇用に合意した場合、派遣契約を人材紹介に切り替えられます。

以下は、紹介予定派遣から直接雇用に切り替える際の6つのステップです。

  1. 募集要件の確認:派遣先企業が求める人材の条件を明確にします。
  2. 人材の選定:人材派遣会社が、派遣社員の中から募集要件に合致する人材を選びます。
  3. 面接・選考:派遣先企業は、派遣社員と面接して適性を評価します。
  4. 派遣決定・就業:面接を通過した派遣社員が、派遣契約に基づいて就業を開始します。
  5. 意思確認:派遣社員が直接雇用を希望するかどうかを確認します。
  6. 採用決定・入社:双方が合意した場合、正式に直接雇用契約を締結し、入社が決定します。

紹介予定派遣は直接雇用を前提としているため、有期雇用派遣や無期雇用派遣では禁止とされている面接・選考を実施できます。

紹介予定派遣についてはこちらで詳しく記載しています。ご参照ください。
>>紹介予定派遣とは?仕組みやメリット、通常の派遣との違いまで解説

有期雇用派遣の場合

有期雇用派遣は、経理人材が人材派遣会社に登録して雇用関係を結び、人材派遣会社から紹介された派遣先企業で業務を行う仕組みです。この雇用契約は有期契約であり、同一の組織単位で最長3年までと定められています。

通常、派遣契約が満了した後に直接雇用へ移行しますが、契約期間中でも派遣先企業・派遣社員・人材派遣会社の3者が合意すれば、派遣契約を終了し、有料職業紹介に切り替えられます。

以下は、有期雇用派遣から直接雇用へ移行する際の流れです。

  1. 直接雇用の意向を伝える:派遣先企業が、派遣社員を直接雇用したい旨を人材派遣会社に正式に伝えます。
  2. 合意の形成:派遣先企業・人材派遣会社・派遣社員の三者で、契約変更に向けた合意を確認します。
  3. 派遣契約の終了:合意に基づき、現行の派遣契約を終了させます。
  4. あらたな契約の締結:紹介予定派遣契約を締結し、一定期間の試用を経て直接雇用を目指します。

有期雇用派遣は、直接雇用を前提とした人材派遣サービスではないため、まず派遣先企業が直接雇用したい旨を人材派遣会社に伝える必要があります。

有期雇用派遣の直接雇用に関する疑問については、以下で解説しています。
>>契約途中で派遣スタッフを社員にすることはできますか?

無期雇用派遣の場合

無期雇用派遣は、人材派遣会社と派遣社員が雇用契約を結ぶ形態です。有期雇用派遣のように「3年ルール」は適用されず、同一の組織で長期間にわたり就業できます。

パーソルテンプスタッフは、事務職を目指すポテンシャルの高い無期雇用派遣社員を、直接雇用できる「funtable(ファンタブル)」というサービスを提供しています。

以下は、無期雇用派遣から直接雇用に切り替える際の5つのステップです。

  1. 人材派遣会社による人材採用:厳選した採用基準に基づき選考を実施します。
  2. 人材派遣会社による就業前研修:プロの講師によるビジネスマナー講座、OAスキル研修などを実施します。
  3. 派遣先企業へ就業:就業中も派遣社員の成長をサポートします。
  4. 人材派遣会社による育成支援:派遣社員の適性や目標に合わせた研修を継続的に実施します。
  5. 採用決定・入社:双方が合意した場合、正式に直接雇用契約を締結し、入社が決定します。

無期雇用派遣は、紹介予定派遣や有期契約派遣とは異なり、期間制限がないため、企業は契約期間にとらわれずに、人材のスキルやポテンシャルを見極めた上で採用を判断できるというメリットがあります。

※留意点:派遣契約そのものは派遣先企業との取り決めによるため、派遣先企業での勤務期間が無期限に続くわけではありません。

「入社後のミスマッチを減らしたい」「意欲的な人材を採用したい」そのような課題をお持ちの企業のご担当の方におすすめなのが、育成型無期雇用派遣のfuntable(ファンタブル)です。詳細はこちらをご覧ください。

育成型無期雇用派遣サービス「funtable(ファンタブル)」のメリット

funtableのメリットは以下の3つです。

1.高い成長意欲とポテンシャルを持つ人材の採用

funtableの派遣社員は、厳選された無期雇用の派遣社員であり、採用率は約5%です。すでに社会人基礎力を備えた事務職を目指すポテンシャルの高い人材を紹介できます。

また、新卒者においても、事務未経験者ながら高い成長意欲と柔軟性を持つ人材が採用されており、企業の多様なニーズに対応できます。

2.派遣期間中に人材をじっくりと見極められる

funtableでは、派遣社員としての就業期間中に、派遣先企業が派遣社員の適性やスキルをじっくりと評価できます。

また、派遣先企業と派遣社員が双方の条件や適性に納得したタイミングで、直接雇用に切り替えられます。これにより、採用ミスマッチを軽減し、よりよい雇用関係を構築できます。

3.研修プログラムの充実

funtableは入社前および継続的な研修が充実しており、ビジネスマナーやOAスキル(Excel、Wordなど)、業務専門知識(経理や貿易など)に特化した研修が用意されているのが特徴です。

また、キャリアサポートとして、就業期間中もキャリアコンサルタントが個々の成長を支援する体制が整っています。これにより、即戦力となるスキルを身に付けた人材を採用できます。

育成型無期雇用派遣サービス「funtable(ファンタブル)」の活用事例

ここでは、funtableの活用事例を紹介します。

導入前の課題

ある企業では、新卒採用や中途採用を積極的に行っていましたが、採用後の業務とのミスマッチが原因で早期退職が頻発していました。その結果、必要な人材を採用できず、業務運営にも支障をきたしていました。

こうした状況を打開するため、企業はパーソルテンプスタッフに相談しました。そこで提案されたのは、「豊富な経験」よりも「業務への意欲」を重視する採用方針を取り入れることです。

特に、将来的な直接雇用を視野に入れた育成型無期雇用派遣サービス「funtable(ファンタブル)」の活用が適しているとのアドバイスを受け、このサービスを導入することを決定しました。

具体的な施策

funtableの派遣社員は、派遣前研修を通じて必要なスキルや知識を習得。ビジネスマナーを学ぶ「マナー研修」、Officeソフトの基本操作を身に付ける「OA研修」、さらに経理や事務といった特定職種に応じたスキルを強化する「職種別実務研修」が実施されました。

即戦力としての準備を終えた派遣社員は、派遣先企業で受発注管理や納期調整・在庫管理・見積書や請求書の作成など、幅広い業務を担当しました。業務を通じて実務経験を積む中で、スキルと自信が徐々に向上していきます。

さらに、就業後も人材派遣会社による定期的な研修やキャリア面談が行われ、派遣社員自身が業務内容を振り返り、さらなる成長を目指す環境が整えられました。

導入後の成果

就業後も継続的に研修やキャリア面談が行われた結果、派遣社員の自発性が向上しました。早期離職が発生せず、安定した人材の定着が実現したことは企業にとって大きな成果でした。

また、派遣社員の中から社員登用に至った人材もおり、これにより企業全体の人材定着率が向上しました。

派遣社員の直接雇用で人材不足を解消し人材の定着につなげよう

近年、日本の労働市場では人材不足が深刻化しており、企業は即戦力となる人材を採用するためにさまざまな手法を模索しています。このような状況下で、派遣社員の直接雇用は効果的な解決策の一つとして注目されています。

特に、パーソルテンプスタッフが提供する育成型無期雇用派遣サービス「funtable(ファンタブル)」は、企業と求職者の双方に大きなメリットをもたらす施策です。funtableとは、事務職の無期雇用派遣社員を直接雇用に切り替えることができるあたらしい採用手法です。

人材不足の解消と人材の定着を目指す企業は、ぜひfuntableの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

人材に関するお困りごとはお気軽にご相談ください

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