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キャリアパスとは?制度の意味・導入ステップ・企業事例を分かりやすく解説

公開日:2025.08.28

企業の課題

キャリアパスとは、社員が企業内でどのように成長し、どの役職やスキルレベルを目指せるかを示した制度のことです。

社員の成長ルートを「見える化」することで、エンゲージメント向上や離職防止、採用力の強化にもつながります。

本記事では、「自社にキャリアパス制度が必要か」「どう設計すべきか」に悩んでいる方に向けて、キャリアパス制度の概要から導入ステップ、運用時の実務ポイントまで、段階的に分かりやすく解説します。

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目次

キャリアパスとは?意味・定義・関連用語の違い

キャリアパス制度は、社員が将来どのような姿を目指し、どのように成長していくのかをあらかじめ示すことで、不安や不満の蓄積を防ぐ仕組みとして注目されています。

社員が日々の業務に取り組む中で、何を目指し、どのように評価されるのかが不透明なままだと、モチベーションの低下や離職につながる可能性があります。キャリアパス制度を整備することで、社員が安心してはたらき続けられる環境を整えることが可能です。

特に若手社員や成長意欲の高い層にとって、「目指すべき姿が明確であること」は、モチベーションや定着率の向上に直結します。

キャリアプランとの違い|組織が示す道と個人が描く未来

キャリアプランは、社員が主体的に描く将来のキャリア設計を指します。一方でキャリアパスは、企業側が用意する社内での成長ルートです。

両者は対立するものではなく、キャリアパスがあることで社員はキャリアプランを現実的に描きやすくなります。つまり、キャリアパスはキャリアプランを支援するための土台として機能します。

キャリアデザインとの違い|人生全体を見据えるか、組織内に限定するか

キャリアデザインは、人生全体を見据えたはたらき方や生き方を自ら設計する概念です。これに対してキャリアパスは、企業内での職務経験や昇進ルートなど、より具体的で組織内に限定されたキャリアの構築を意味します。

キャリアラダーとの違い|職能ステップと横断的キャリアの広がり

キャリアラダーとは、キャリア(経歴)とラダー(はしご)を組み合わせた造語で、特定の職種におけるスキルや役割の熟達度に応じた段階的な昇格ステップのことです。

例えば、技術職における「初級技術者→中級技術者→上級技術者」といった明確な成長段階を示します。一方、キャリアパスは複数の職種やルートを横断する包括的な道筋であり、キャリアラダーよりも広い概念となります。

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変化する雇用環境とキャリアパス制度の重要性

雇用システムは大きく2つの形態に分かれ、それぞれに応じたキャリア支援のあり方が求められています。

ジョブ型 職務内容を明確に定義し、その職務に適した人材を配置・評価する雇用システム
メンバーシップ型 職務を限定せず人を採用し、異動や配置転換を通じて育成する、日本の伝統的な雇用システム

ジョブ型は、グローバル化やDXの進展を背景に、日本企業でも関心が高まっています。近年ではリモートワークの普及により、従来のようにプロセスや勤務態度を評価の中心とする方法が機能しにくくなり、職務単位での成果評価が一層重要視されるようになりました。

ジョブ型においては、各職務に必要なスキル要件や上位職への昇格ステップを明確に示すことで、専門性を段階的に高めていく支援が可能です。

一方、メンバーシップ型にはキャリアの見通しが立ちにくいという課題がありますが、管理職や専門職など複数のコースを設けてキャリアパスを可視化することで、社員が自らの志向や適性に応じたキャリアを主体的に選択しやすくなります。

このように、キャリアパス制度は社員の自律的なキャリア形成を促すだけでなく、企業が変化する経営環境に柔軟に対応しながら、人材を戦略的に育成・活用するための土台となります。その必要性と重要性は、今後ますます高まっていくでしょう。

ジョブ型雇用の概要やメリット、導入までの具体的な流れについては、以下の記事もあわせてご参照ください。
>>ジョブ型雇用の概要とメリット、導入するまでの流れをご紹介

企業がキャリアパス制度を導入するメリット

キャリアパスの整備には、主に以下の4つのメリットがあります。

社員のモチベーションとエンゲージメントが向上する

キャリアパスが明確であれば、社員は自身の成長や将来像を具体的に描きやすくなります。「どのスキルを身に付ければ、どの役職に進めるのか」がはっきりすることで、日々の業務に目的意識が生まれ、仕事への前向きな姿勢が促されます。

また、自身の努力がキャリアとどう結びつくかが見えることで、企業や組織への信頼や愛着も育ちやすくなるでしょう。

離職率の低下と人材の長期定着に寄与する

キャリアパスが整備されていると、社員は「この会社で長くはたらける」「ここでキャリアを築ける」と感じやすくなります。

将来の成長ルートが見えていることで不安が軽減され、組織への帰属意識が高まります。これらは早期離職の防止や中長期的な人材の定着を支える重要な要因です。

成長の道筋が明確になり、採用競争力が高まる

求職者の多くは「入社後にどのように成長できるか」を重視しています。キャリアパスが明示されている企業は、成長意欲の高い応募者から信頼を得やすく、企業の育成姿勢が評価されやすいです。

「信頼できる会社」「将来性がある会社」としての印象を与えることで、採用競争において優位性を持つことができます。

適材適所の配置と評価の透明性向上

キャリアパス制度の活用により、社員のスキルや志向が可視化され、最適なポジションへの配置が可能になります。また、評価基準が明確になることで、「なぜこの評価なのか」が理解されやすくなり、納得感と公平性が高まります。

キャリアパス制度の設計5ステップ

キャリアパス制度を形式的なものに終わらせず、社員の成長や組織の活性化に実質的につなげるためには、戦略的な設計と継続的な運用が欠かせません。

ここでは、制度の立ち上げから定着までに必要な5つの基本ステップを紹介します。

ステップ1.等級・職務体系の明確化と可視化

まず土台として、社内に存在する各職務(ポジション)や、その役割・責任、必要なスキルレベルや等級を明確にすることが必要です。

具体的には、職務記述書の整備や、職種・等級ごとに必要なスキルをまとめたスキルマップを作成し、業務内容と要件を「見える化」します。

ステップ2.人事評価・報酬制度との連動

キャリアパスが評価や処遇と結びついていなければ、制度は機能しづらくなります。昇格・昇給などの評価制度とキャリアパスを連動させ、「どのような成長や貢献が、どう評価されるのか」を明示することが重要です。

成果だけでなく、スキルや知識の習得度なども評価に反映させることで、社員の納得感とモチベーションを高められます。

ステップ3.多様なロールモデルの提示

社員が自分のキャリアを具体的に想像できるようにするためには、社内のロールモデル(目標とする人物のキャリアパス)を複数示すことが効果的です。

例えば、専門分野を深めるスペシャリスト型、広範な視野で組織を動かすゼネラリスト型(管理職含む)など、異なる進路の例を見せることで、個々の志向や価値観に合ったキャリア形成を後押しできます。

ステップ4.育成・研修体系の整備

キャリアパスを実現するには、言語化だけでは不十分であり、実際に成長を支える仕組みが必要です。

OJT(現場での教育)やOff-JT(研修)、自己啓発支援(資格取得など)を組み合わせ、段階に応じたスキルアップを計画的に支援する育成環境を整えることが重要です。

ステップ5.継続的なフォローアップと改善

制度は導入して終わりではなく、運用を通じた継続的な改善が欠かせません。1on1ミーティングやキャリア面談、スキルアセスメントなどを通じて、社員の進捗や課題を把握し、得られたフィードバックをもとに制度を柔軟に見直していく必要があります。

キャリアパス制度を動かす4つの運用ポイント

キャリアパス制度を形だけで終わらせないために、意識しておきたい4つのポイントをご紹介します。

ポイント1.社員の希望・適性をデータベースに反映させる

社員一人ひとりの希望や得意なことを、1on1やキャリア面談を通じて具体的に引き出し、それらの情報を人事データベースで一元的に管理しましょう。

半年に一度、現在の配置と社員の希望との間にずれがないかを確認し、必要に応じて異動や研修計画を見直して調整することが重要です。

ポイント2.職種や役職などの幅広い選択肢や柔軟なキャリアパス

キャリアパスは、専門職(スペシャリスト)・総合職(ゼネラリスト)・管理職(マネジメント)といったように、職種横断的な広がりと役職の昇進といった縦方向の成長の両方を示すことが大切です。

また、出産や介護といったライフイベントが発生した際には、面談を実施し、復帰後のキャリアパスを柔軟に再設計できるようにしましょう。

ポイント3.ロールモデルを見える化する

社員が自身の将来像を描きやすくなる環境を整えられるよう、さまざまな手段で多様なロールモデルを見える化しましょう。

若手リーダーから専門職まで、多様なロールモデルを、例えば社内ポータルに動画や記事で掲載したり、階層や職種別で検索できるようにするのもよいでしょう。

ポイント4.データドリブンで定期レビューを行う

スキルアセスメントの結果・異動実績・定着率といったデータを年度の決まったタイミングで集計し、昇格停滞率などの主要業績評価指標(KPI)を継続的にウォッチしていきましょう。

課題が明らかになった場合は、評価基準・研修内容・配置ルールなどを速やかに見直し、常に改善していくことが重要です。

業界・職種別キャリアパスモデル

キャリアパスの設計は、業界や職種の特性によって大きく異なります。ここでは、代表的な職種ごとに、キャリアパスの基本パターンと設計のポイントを紹介します。

営業職のキャリアパス|成果連動型のステップアップ例

営業職は、成果が可視化されやすく、キャリアの段階も比較的明確に設定しやすいです。

入社直後は個人目標の達成を主軸に経験を積み、その後はチームリーダーや管理職として、マネジメントスキルを磨いていく「新人営業→主担当→チームリーダー→営業課長→営業部長」といったキャリアパスが一般的です。

各段階に必要なスキルや成果基準を明確に設定し、可視化することが、モチベーションの維持や早期育成にもつながります。

ITエンジニア職のキャリアパス|スペシャリストとマネジメントの2軸

ITエンジニア職では、一定の経験を積んだ後、専門性を深める「スペシャリスト型」と、組織をけん引する「マネジメント型」の2つに分かれるケースが多く見られます。

前者では高度な技術スキルや資格取得が、後者ではチームビルディングやプロジェクト管理能力が重視されます。

スペシャリスト型では高度な技術スキルや資格取得が、マネジメント型ではチームビルディングやプロジェクト管理能力が重視され、下記のようなルートが想定されます。

  • スペシャリスト型:開発エンジニア→テックリード→アーキテクト→技術フェロー
  • マネジメント型:開発エンジニア→チームリーダー→プロジェクトマネージャー→部門マネージャー

各ステップで必要となるスキルセットを整理し、希望するルートに合わせた研修や評価制度を整備することで、多様なキャリア形成に対応できます。

管理部門(経理・総務・人事)のキャリアパス|業務特性に応じた柔軟な設計

管理部門のキャリアパスは、企業の規模や体制によって大きく異なります。

特定の業務に専門特化するケースもあれば、中小企業を中心に経理・総務・人事など複数業務を兼務する体制も少なくありません。

そのため、キャリア設計においては「この形が正解」と決めつけるのではなく、現場の実態に合わせた柔軟な考え方が重要です。

将来的に管理職や専門職を目指す社員に対しては、必要に応じて経理・総務・人事などの関連領域を段階的に経験してもらう設計(ジョブローテーション)も選択肢の1つです。

対して、特定分野に強みを持つ社員には、その専門性をさらに深めるキャリアパスも考えられます。

介護・医療職のキャリアパス|制度連動型の成長ルート

介護や医療の分野では、法制度との関係性を踏まえたキャリア設計が求められます。

例えば介護職では、「処遇改善加算」や「キャリア段位制度」といった制度と連動させたパス設計が有効で、「介護職員初任者研修→実務者研修→介護福祉士→リーダー職→管理者(サービス提供責任者・施設長)」といったルートが一般的です。

それぞれのステップで求められる研修・資格・実務経験を整理しておくことで、現場での育成と制度対応を同時に進められます。また、法制度に対応したキャリア設計を行うには、法制度を理解して、改正などの情報を常にキャッチしていくことも大事です。

キャリアパス制度を機能させるポイント

キャリアパス制度を組織の中で活かしていくには、設計に加えて、現場での運用や定着を支える仕組みが大切です。

また、関連する法制度の理解や改正への対応、制度まわりの情報整理・共有といった基盤づくりも重要となります。  

ここでは、制度を「生きた仕組み」として根づかせるための実務ポイントをご紹介します。

上司との対話環境を整える|1on1と心理的安全性

キャリアパス制度を機能させる上で上司と部下との定期的な対話が欠かせません。1on1ミーティングやキャリア面談の場を通じて、社員が自身の目標や不安を率直に話せる環境を整えることが重要です。

評価や昇進のステップに関する不透明感は、制度への不信感を生みやすくなります。上司が部下の成長を支援する姿勢を持ち、対話を重ねることで、心理的安全性が高まり、社員は自律的なキャリア形成に前向きに取り組めるようになります。

スキルデータの収集・活用で個別支援と戦略活用を両立

キャリアパスの実効性を高めるには、社員一人ひとりのスキルや経験のデータを把握しておくことが不可欠です。近年では、HRテック(人事領域のITツール)を活用し、スキルや資格、業務履歴などを一元管理する企業も増えています。

こうした情報は、個人のキャリア支援だけでなく、配置転換・人材育成・後継者計画といった経営レベルの人材戦略にも応用可能です。定期的なスキル棚卸しと、現場との情報連携を組み合わせることで、より実態に即したキャリア支援が実現できます。

制度の利用状況を可視化し、改善サイクルを回す

どれほど精緻に設計されたキャリアパス制度であっても、運用されていなければ意味がありません。制度が社内でどの程度活用されているかを確認するためには、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングすることが有効です。

「面談実施率」「昇格充足率」「育成プログラム受講率」などの数値をもとに、制度が現場に浸透しているかを客観的に把握できます。

こうした定点観測とフィードバックを繰り返し、必要に応じて制度内容を見直すことで、キャリアパス制度は形骸化せず、常に現場にフィットした状態を保つことができます。

制度を支える基盤を整える|法制度の理解と情報管理

キャリアパス制度を実効性あるものにするには、日々の運用だけでなく、それを支える基盤整備も重要です。  

特に、同一労働同一賃金や職務基準といった関連法制度の理解・遵守、法改正へのタイムリーな対応は、制度の信頼性を保つ上で欠かせません。

また、制度に関する情報や運用ルールを整理し、社内で共有できる体制を整えておくことで、現場の混乱や属人化を防ぎ、制度を安定的に運用しやすくなります。

人事・労務担当者が中心となり、情報のアップデート・ナレッジ蓄積・ガイドライン整備などを進めていくことが求められます。

同一労働同一賃金について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
>>同一労働同一賃金での中小企業への影響とは?ガイドラインなどをご紹介

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キャリアパス制度で組織と個人の成長をつなぐ

キャリアパス制度は、社員一人ひとりの成長を支援し、組織としての戦略的な人材活用を可能にする、極めて実用的な経営施策です。制度が明確に可視化され、現場で機能すれば、モチベーションや定着率の向上、採用力の強化といった効果が期待できます。

特に近年は、ジョブ型雇用やリスキリングの必要性が高まる中で、「成長の道筋が見える組織」であることが、求職者から選ばれるための重要な条件になってきています。

自社にあったキャリアパス制度を構築するには、完璧を目指すよりも、まずできる範囲から始めて、現場の声を取り入れながら柔軟に改善していく姿勢が求められます。

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監修者

HRナレッジライン編集部

HRナレッジライン編集部は、2022年に発足したパーソルテンプスタッフの編集チームです。人材派遣や労働関連の法律、企業の人事課題に関する記事の企画・執筆・監修を通じて、法人のお客さまに向け、現場目線で分かりやすく正確な情報を発信しています。

編集部には、法人のお客さまへ人材活用のご提案を行う営業や、派遣社員へお仕事をご紹介するコーディネーターなど経験した、人材ビジネスに精通したメンバーが在籍しています。また、キャリア支援の実務経験・専門資格を持つメンバーもおり、多様な視点から人と組織に関する課題に向き合っています。

法務監修や社内確認体制のもと、正確な情報を分かりやすくお伝えすることを大切にしながら、多くの読者に支持される存在を目指し発信を続けてまいります。

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