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【セミナーレポート】
人と組織を強くする
ーコカ·コーラ ボトラーズジャパンの人事戦略ー

公開日:2025.05.28

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人と組織を強くする ーコカ·コーラ ボトラーズジャパンの人事戦略ー

コカ·コーラ ボトラーズジャパン株式会社
執行役員 CHRO
東 由紀 氏

コカ·コーラ ボトラーズジャパンでは、中期経営計画「Vision 2028」 の実現に向けて、2024年から持続的な利益成長の基盤となる人と組織を強化しています。また、人事戦略を育成施策として活用し、人事を真のビジネスパートナーへと強化する絶好の機会と捉え、推進しています。本セミナーでは、執行役員 CHRO 東 由紀氏が、人と組織のあるべき姿の実現に向けて、どのように経営戦略と紐づけた人事戦略を推進してきたか、どのように人事部門のケイパビリティを強化しているのかなど、具体的な実例を交えながら紹介します。

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年間売上収益は8,927億円、アジア最大級の売上高を誇る

コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、かつて日本の各地域にあった12のボトラー社が統合を経て、2017年4月に誕生しました。統合により社員数は1,000〜6,000人から約14,000人規模にまで増え、2024年末時点の年間売上収益は8,927億円でアジア最大級を誇ります。統合当時から当社 代表取締役社長 最高経営責任者のカリン・ドラガンは、「これまでのやり方は選択肢にない」というメッセージを発信しており、さまざまな変革プロジェクトを行なっています。

人的資本の強化で中期経営計画を実現に導く

2023年には中期経営計画「Vision 2028」を発表し、持続的な利益成長という目標を実現するため、営業エクセレンス、サプライチェーンの最適化、バックオフィスおよびIT機能の最適化という3つを柱としました。また、これらのベースにはESG、人的資本、財務基盤の強化が重要であることを明示しています。
中期経営計画「Vision 2028」の策定に伴い、人事戦略についても2024年度に刷新し、「人材と組織の強化」と「社員のウェルビーイングを促進するカルチャーの醸成」を両輪として進めることを示しました。

人事戦略の重点エリアにおける2024年度の取り組みとしては大きく4つあります。1つ目は「現場労働力不足の解消」です。日本全体で人材不足が深刻化しているように、当社の製造現場においても労働力が不足しています。そうした背景から、あるべき姿を達成するために、採用広報から入社に至るまですべての採用プロセスにおける課題を洗い出し、「求人広告の刷新」や「従業員紹介プログラムの導入」、「人材紹介エージェントへの説明会の実施」などの抜本的な取り組みを行いました。その結果、応募者数は昨年比2.3倍、書類選考通過・面接数は2.4倍、内定者数は2.0倍となり、採用数の大幅な増加につながりました。

2つ目は、「パフォーマンスカルチャーの浸透」です。組織が持続的に成長していくためには、社員一人ひとりが新たな挑戦と自身の成長を楽しむマインドセット・カルチャーが重要です。そこで、成果に基づいた公正な評価を行うための「評価者研修」や、上司の固定化した考え方により公正な評価が妨げられることを防ぐ「アンコンシャスバイアス研修」を導入しました。さらに、給与や賞与、福利厚生などのベネフィットを合わせて分かりやすく示す「総報酬ステートメント」を取り入れました。

3つ目は「人材育成」です。変革をリードする人材を育成するため、当社では2020年に次世代リーダー育成プログラム「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(CCUJ)」を設立しました。これは、約半年間のプログラムを通じ、イノベーション、戦略的思考、ピープルマネジメント、エフェクティブコミュニケーション、グロースマインドセットの5つのリーダーシップケイパビリティを強化するというものです。これまでに485名が卒業し、さまざまな分野の変革プロジェクトリーダーとして活躍しています。
さらに2024年度からは、持続的な組織成長を支える「サクセッサー」の育成計画達成度を役員目標に追加しました。トレーニングやコーチングの導入といった取り組みにより、サクセッサーの育成計画達成度は92%と高水準になっています。

4つ目は「多様な人材の活躍推進」です。当社では、「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します」というミッションを実現するため、すべての社員が能力を最大限発揮できるインクルーシブな環境づくりに注力しています。これまでに、女性管理職や女性管理職候補者へのスキル・マインドセット研修の実施や、配偶者出産休暇3日間の取得義務化*といったさまざまな取り組みを行いました。その結果、女性管理職比率9.2%(昨年比+1.8pts)、男性育児休業等取得率100%を達成しています。
さらに障害者雇用の新たな取り組みとして、チームで業務を行う「ゆにらぼ」を新設しました。PC業務を中心に各部門からチームに依頼された業務をメンバーの得意分野、経験、適正にあわせて協業するというものです。

* 2025年4月1日より5日間に拡充

人事部門のケイパビリティ強化の取り組み

中期経営計画「Vision 2028」の策定に伴い、人事戦略を推進するため人事部門メンバーのケイパビリティの底上げにも注力しており、主に4つの取り組みを行なっています。

1つ目は「戦略的課題解決の思考法」です。人事部門は、日々さまざまな課題に直面することから、アクションベースで物事を考えがちです。そのため、最終的に達成したい“あるべき姿”から、達成のためのアクションや効果、達成度を測るKPIをロジカルに分解した「人事戦略のロジックツリー」をベースに業務を推進しています。

これにより、アクションベースではなく、ミッションベースで物事を考えることができます。現在、施策の実行を進める際には、「どのような“あるべき姿”を実現したいのか」を結び付けるということを徹底しています。

2つ目は「多様性を最大限に活用する体制」です。人材育成プロジェクトや採用プロジェクトについては、人事部門だけでなく、他部門の若手メンバーが手上げ式でプロジェクトに参画しています。さらに育成を目的に、あえて若手メンバーをプロジェクトリーダーに選任するのも特徴です。

3つ目は「人材の可視化」です。プロジェクトリーダーを担う若手メンバーには、役員会などにおけるプレゼンテーション機会を提供しています。これにより人材を可視化できるだけでなく、社員のモチベーションアップにも大きく寄与するといえます。

4つ目は「貢献と成果の評価」です。プロジェクトへの貢献度と成果は、プロジェクトに関わった上司からのフィードバックをもとに、人事評価に組み込んでいます。ここでは成果が出た場合だけでなく、出なかった場合においても公正に評価しています。

人事は人的資本の強化を通じ、経営戦略を実現に導く

人事戦略・施策を確実に遂行するためには、経営層をはじめとしたステークホルダーからの強力なコミットメントが不可欠です。つまり、人事部門メンバーやCHROは会社全体を巻き込んで推進する「ファシリテーター」として、コミットメントを求めることが重要な役割といえます。
当社では、役員会議の約4分の1を人事戦略にあて、さらに重点施策のKPIを各部門のヘッド・執行役員の業績目標に設定するといった取り組みなどを推進しています。これにより経営層が人事戦略を確実に遂行することが可能となっています。

まとめ

経営戦略を実現するためには、人事戦略をしっかり立てて遂行することが重要です。ここではその人事戦略がビジネスにどのようなインパクトを与えるのか、ビジネスが抱える人的課題をどう解決するのかということを、“あるべき姿”に紐づけながら説明することがカギになります。また、変革を進める際には、新しい考え方や価値観、やり方をかけ合わせていくことも大きなポイントであると私は考えます。

Profile

コカ・コーラ ボトラーズジャパン 東 由紀 氏

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
執行役員 CHRO
東 由紀 氏

金融機関でセールスやマーケティングの業務に従事。2013年に人事へとキャリアチェンジ後、グローバル部門の人材開発、評価昇格制度、ダイバーシティ&インクルーションを統括。2020年にコカ・コーラ ボトラーズジャパン入社後、人材開発部長として人材育成と採用、評価制度を担当。その後、社長補佐を経て、2023年9月より現職。

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