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【セミナーレポート】
サイボウズ中根氏&ソフトバンク源田氏のHR談話室2023 Spring
公開日:2025.04.25
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サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長
中根 弓佳 氏
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 本部長 兼
総務本部 本部長 兼 Well-being推進室 室長
源田 泰之 氏
HRのさまざまな課題に取り組み、挑み続けているサイボウズ中根氏とソフトバンク源田氏のお二人が、参加者の疑問や課題を一緒に考えながらセッションを行った「HR談話室」。2023年度に向けたHRの課題、想いの共有やそれぞれの施策の紹介を含めて質問にお答えいただいた90分。その一部をご紹介いたします。
ソフトバンク 副業の一歩「社内副業」で大事なこと
コツは二つあり、一つは「やるべきことを明確にする」。その人に期待する仕事や内容をできるだけ明確にすることです。もう一つは「それに関わる時間をしっかり決める」。この二つにより自分の役割も明確になり、安心感につながっていると思います。
その他社内副業の推進にあたり大事なこととして、本業と副業双方の部署の上長と人事で話し合いをしています。副業の割合、週何日間、何曜日にどれくらい副業の業務に充てるかなどの取り決めを、最初にしっかり行う必要があります。また、お互いの取り組んでいる仕事について上長同士も理解し合い、予期せぬトラブルや繁忙などもシェアしながら進めていくことも重要です。(源田氏)
サイボウズ 多様なはたらき方の報酬設定
比較的以前から少ない日数や短時間ではたらいてきた方が多く、新卒採用よりもキャリア採用が多かったため、いろいろな職種ごとに市場感が違う中で、どう合意していくかという課題はありました。社内で一つのテーブルをつくり、そこに当てはめ報酬額を決めていくというやり方を昔行ったことがありますが、サイボウズには適していませんでした。職種によって給与の上がり方も違います。例えば、エンジニアは市場による影響が非常に大きい職種だったりします。
「はたらき方」と「市場性」。どんな仕事をし、どんなはたらき方で、どんな市場性があるのかの組み合わせはさまざまなので、一つのものに当てはめることはとても難しいのです。サイボウズでは「自分はどんな仕事でこのチーム・会社に貢献します」「どんなはたらき方ができます」「だからいくら欲しいです」ということを一人ひとりが提示し、それを会社、チームが出せる報酬とすり合わせていくという考え方を前提にしています。ある程度の業務、はたらき方による市場相場を把握し、評価する側もされる側もできるだけ同じような情報を持った上で、それを見ながら社員に希望を出してもらいます。
ただ、いきなり希望を出すということではなく「今年はこういうこと、来年はこういうことを期待している」というチームの目標を踏まえたコミュニケーションを上司と社員でするようにしています。(中根氏)
報酬設定や評価において大事なこと
全員が報酬について納得するのは難しいことです。他人と比べずに、また損得ではなく「自分のハッピーセット」をどうつくっていくのかということだと思うのです。どんな仕事をどんな割合で、どんなはたらき方をしていくらくらいもらえると自分はハッピーでいられるのか。それには、市場価値を意識し、今自分には何が足りていないかを考えることです。給与だけでもはたらき方だけでも成長機会だけでもない、自分なりのパッケージをマネージャーとつくっていけるかというのが報酬制度の一番大事なところであり、報酬は与えられるものではないと思っています。また人事は何でも見えていて、答えを持っているわけではないので、マネージャーと一緒に考えていくことです。報酬を考える機会ということは非常に大切です。この報酬額になっている理由、本人の希望とのギャップ、そのギャップとは何か、というのはまさにフィードバックであり本人の成長の機会です。(中根氏)
評価や報酬について、市場価値を踏まえるということは当然であるも、バランスがとても難しいと思っています。そして「フィードバック」がとても大切です。社員一人ひとりにきちんとマネージャーが向き合い、社員の良かったこと、改善すべきこと、今後の期待などをしっかり伝えることは大前提です。それに納得感を持つことで、本人の何がモチベーションにつながっていくのかを普段からしっかり話しながら、単純に「これを頑張ったからこの報酬額」ではなく、「未来のキャリアにどのようにつないでいくのか」なども含めて話すことが大事だと思います。(源田氏)
会社の業績が大きく変わったり、一人ひとりの市場価値が大きく変動したときに、どこまで報酬を変えられるかというのは大きな課題で、人事の皆さんも悩まれるところだと思います。社員の市場価値を下げることは会社としても望んでいない、本人としても価値の高い仕事をやり続けたいとすると、できるだけ市場を見ながらリスキリングしていく、必要とされるものに変化していくことは、個人にも会社にとても大事だと思います。
市場価値と社内での活躍も必ずしも比例しません。多面的な評価を入れていますが、正解がなく時間もかかるものです。どのような貢献をチームにしたのか、社外価値もありますが、それとは別に会社の中での価値もあるので、評価者同士が横や斜め含め多面的に見て、給与を最終的に決定することが必要なのではないでしょうか。(中根氏)
学びから生まれること、根付かせ風土にすること
やっぱり時間はかかるものです。ソフトバンクユニバーシティを始めて13,4年になります。年に一回アンケートをとっていて、社員がどんなことを学んでいきたい、どんなことをやっていきたい、どんなキャリアを目指しているかなどをヒアリングし、社員が学びたいと思っているものを取り入れていくというのを十数年ずっと回しているので、徐々に巻き込み型になっているのではないかと思います。
夏のセミナーでお話した「社員が社員を教える制度」は、文化や風土を変えていく重要な役割を担っていて、学び合いのような文化の醸成になっています。縦の関係性ではなく部門を跨った関係性につながっていくことは、地味でも風土醸成になっているのではないでしょうか。社員に講師がいることは、良い結果につながらなかったり失敗した際にも気軽に相談できるため、学びの連続性としてとても大切だと思います。社員同士なので「社外秘だから言えない」ということも無いので、より具体的に相談できるところも良いところの一つです。
また、堅い研修だけではなくヨガなどの講座や、社員が皆にシェアしたいことを人事が支援する場もつくっています。例えば書道を教えたり、自分が知っていて楽しいことをシェアする場です。一見仕事に関係無いように感じるかもしれませんが、学ぶ文化風土に寄与する部分はとても大きいと思っています。また社員同士のつながり、対話する関係性も醸成されます。グループ会社の社員も参加しているものもあり、そこでさまざまな人脈もできるのです。
直接的な学びにならなくても、そこでできた人とのつながりが中長期的に事業にプラスになり、連絡がスムーズにできるなど短期的な利点もあります。カジュアルな場で関係性をつくる場があることは、個人の学びや気付きとなり成長の場になります。(源田氏)
源田さんのお話を伺い「学び合いの文化」がつくれたらいいなと思っています。学びとは、ずっと進化させていかなければならない、最終形が無いものです。その会社、チームにとって「今、学ぶべきこと」というのもあって、そこをうまい具合にブームにしていくと、個人の知ではなく集団知となり、よりすごいパワーになっていくのではないかと思っています。「学び合える場づくり」というのが、目指すところだなと思っています。(中根氏)
まとめ
組織が目指す文化や環境など、達成したい目標を推進するのが人事の仕事です。事業には正解があることが通常ですが、人事の世界は正解が無いという面があります。だからこそ面白く、人事の仕事は飽きないのかもしれません。(中根氏)
社員が成長できる環境づくりが人事の大きな役割です。一方で、人事の仕事はゴールが見えにくいのも特徴といえます。「良い組織にしたい」「社員を幸せにしたい」という想いを社員にしっかり伝え続けることで、応援してくれる人も増え、自身のモチベーションにもつながるのではと思っています。(源田氏)
Profile

サイボウズ株式会社
執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長
中根 弓佳 氏
1999年、慶応義塾大学(法学部法律学科)卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社。2001年、サイボウズ株式会社に入社。知財法務部門にて著作権訴訟対応、契約、経営、M&A法務を行った後、人事においても制度策定や採用を中心とした業務に従事。法務部長、事業支援本部副本部長を歴任し、財務経理などを含め、これら全般を担当する事業支援本部長に就任。2014年 8月より執行役員、2019年1月より人事本部長 兼 法務統制本部長(現任)。

ソフトバンク株式会社
コーポレート統括 人事本部 本部長 兼
総務本部 本部長 兼 Well-being推進室 室長
源田 泰之 氏
1998年入社。営業を経験後、2008年より人事領域を担当。2019年HRアワード個人部門の最優秀賞、2018年プロリクルーターアワード最優秀賞などを受賞。ソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア、グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティを立ち上げ、新規事業提案制度であるソフトバンクイノベンチャーでは選出されたアイデアの事業化を推進し複数社の設立を支援。2021年より、エンジニアリングとオペレーションで変革を支えるSBエンジニアリングと、人事サービスを提供するSBアットワークの取締役も務める。また、高い志と異能を持つ若手人材支援を行う孫正義育英財団の事務局長も兼務。
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