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【セミナーレポート】
「人的資本経営」を目指すカゴメの人事改革
ー戦略人事とサステナブル人事の連動による経営改革ー
公開日:2025.04.11
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カゴメ株式会社
常務執行役員CHO(最高人事責任者)
有沢 正人 氏
人材を「資本」として捉え、企業価値の向上につなげる「人的資本経営」がいま注目されています。人事はこの新しい経営のあり方を自社に落とし込んだとき、どのような視点をもち、取り組むべきなのでしょうか。カゴメ株式会社 常務執行役員CHO(最高人事責任者)として数々の人的資本経営施策を打ち出し、挑戦し続けている有沢正人氏の講演をご紹介します。
「ヒューマンリソース」から「ヒューマンキャピタル」への転換
人的資産から人的資本への転換にあたっては、10年先を見据えて取り組む必要があります。私はカゴメで人事戦略と経営戦略の連動を2つのステージに分けて考えました。
2013〜2015年度中期計画「Next 50」において、特に重視すべき事柄として5つの項目を設定し、「Symbolic 5」と呼称しました。その中のひとつが「グローバル職務等級人事制度」です。これはグローバルな職務等級を中心とした“ジョブ型人事制度”で、役員評価や報酬制度を採り入れた「人事評価」、採用の多角化やグローバルリーダーの育成といった「人材確保・育成」、女性役員・管理職のモデルケースづくりを目指す「ダイバーシティ」の3つの課題を掲げ、推進したものです。この「Next 50」はその第1ステージとなり、ジョブグレードや評価基準の統一といったヒューマンキャピタルを表明する基盤づくりとして、人事制度を役員や部長などのトップから変えたこと、また海外へも同時に導入したことに価値があったと言えます。また第2ステージでは人材を経営に活かすための新たな人材戦略の展開の場としました。
人的資本経営を支えるエンゲージメント向上への取り組み
当社では人事制度だけでなく、生き方改革の推進も行ってきました。会社に費やしすぎていた時間を、家族とのだんらんや趣味などに充て、QOL(Quality of life)向上につなげることが目的です。さらに多様化する個人の価値観に対応できるよう、はたらき方のオプションの拡充にも注力しています。社員一人ひとりがキャリアを自分で決めることは大きなメリットとなります。2017年からはスケジューラーに具体的な業務や時間などの記入ルールを設け、可視化することで、柔軟な勤務スタイルの中で生産性高く働くことを意識できるようにしました。
2019年からは全従業員(工場所属を除く)を対象にコアタイムを撤廃し「スーパーフレックス勤務制度」を導入。また同年に自己研鑽によるキャリア構築の一助とするため副業制度を採用しています。さらに2021年からは、スペシャリストを目標とする「専門職コース」を新設し、資格保持者や研究者としてキャリアアップの道を開くことが可能になりました。
人事制度改革が進むことで、社員それぞれが価値観に応じた多様なはたらき方を選択し、キャリアを自ら決めることができるため、会社と社員がフェアで対等な関係になるとも考えられます。言い換えれば、会社と社員が価値を生み出すパートナーになるとも言えるでしょう。
まとめ
さまざまな施策に挑戦し、カゴメは変化・進化し続けています。「挑戦」とは、他者に指示(強制)されるものではなく、自分で決めてコミットするものです。トップ(役員・部長等)の価値観・スピードが、組織の価値観・スピードになります。挑戦のコミットとスピード、また自らがどう変わり何を奨励するのかを明示することが重要です。その中で人事制度とは経営のメッセージであり、企業風土(はたらき方・生き方)を創るためのツールなのです。
Profile

カゴメ株式会社
常務執行役員CHO(最高人事責任者)
有沢 正人 氏
1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行し、主に人事、経営企画に携わる。2004年にHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のHOYAグループの人事を統括。2009年にAIU保険会社に人事担当執行役員として入社。ニューヨークの本社とともに日本独自のジョブグレーディング制度や評価体系を構築する。2012年1月にカゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメ株式会社の人事面でのグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2018年4月より現職となり、国内だけでなく全世界のカゴメの最高人事責任者となる。
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