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【セミナーレポート】
HRが取り組むNEXT課題
ー 変化の中でも人を活かす・人が活きる組織へ ー
公開日:2025.03.13
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HRナレッジセミナー2021 Winterでは、変化が前提の環境におけるHRのNEXT課題として原点である“人”にフォーカスし、
「変化に対応できる人材活用を叶える組織に」「組織の力を発揮し多様な人材が活きる組織に」
2つの課題をテーマにお届けしました。
変化に柔軟な組織 ー 人事が進める組織のアンラーニング ー
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長
島田 由香 氏
合同会社YUGAKUDO 代表社員
田口 光 氏
環境変化に伴い、従来の体制や業務自体にも変化が迫られる中で「人的リソースをいかに見直すか」「変化に負けない『人を活かす』施策とは」という視点から、これからの人材活用と人事の役割について講演いただきました。
はじめに田口氏は、組織の環境変化には柔軟な対応が必要だが、変化への対応を邪魔する要因があることを指摘。要因として「慣れ親しんだ形態や方法を変えることへの抵抗」「決まったことを正しく実行する能力が高い」ことの2点を挙げ、まず「何が正しいのか」を見極める能力が必要だと話しました。
田口氏からの「コロナ禍においてユニリーバは変化にどのように対応したのか」という問いに対して島田氏は、まったく新しいコロナという変化で「何が正しいか」を考えるとき、企業が大事にしていた原理原則に立ち返ることが必要であると回答。平時に価値観の積み上げをしておいたことが、有事という変化へのスムーズな対応につながったと振り返りました。
次に田口氏は、現在の組織はこれだけ働く人も企業の事業も多様化しているにもかかわらず、「就業規則に準じる」という一律の扱いが変わっていないという問題点を挙げました。
施策においても、例えばジョブ型のように他社がやっているから自社でもやるといった、いわゆるファッション性に流されるのは問題であり、環境変化が起こったときに慣性に流されない人材の必要性に言及。こうした人材を育成するためには、環境変化に合わせ、人事が今までの考えをアンラーニングする必要があると話しました。
また島田氏は、人事は組織における「エネルギーセンター」の役割を担うと提示。ここが満たされている(良い状態である)ことで、組織全体のケアに力を注ぐことができると話しました。人事がエネルギーセンターとして機能するには、人事担当者が自分のやっていることに意義や意味を感じながらやるかどうか(ジョブクラフティング)が重要になると言及しました。田口氏も人事として何をするべきかではなく、まず人事で働く自分がどうありたいか、自分の仕事をどう見るのかが大切であり、ポジティブな視点をもって自分と、そして他者ともコミュニケーションをとる必要性に同意しました。
最後に島田氏は、人事が組織に変化を起こすためには、起きていることに興味関心をもち、情熱をもつことが変化の火種になると説明。そのために、モチベーションがなくなり、諦めている状態の人に対しては、諦めてしまった環境や状態について理解し、共感する必要があると結び、DAY1は終了しました。
環境変化に伴い、変化に対応できる人・組織をつくるためには、まず人事から既存の考えをアンラーニングし、人事で働く個人が自分の仕事の意義や意味を考え、情熱をもって活動する(認め合う・貢献し合う)ことが重要であると気づかされる内容となりました。
多様な人材が活きる組織へ ー 本気の女性活躍推進とダイバーシティの実現 ー
株式会社日立システムズ 人事総務本部 本部長
西 正 氏
スリール株式会社 代表取締役
堀江 敦子 氏
環境変化に対応できる組織になるためには、多様な人材を取り入れるとともに個々が力を発揮できる状態をつくることが大切です。
「人(個人)を活かす・活きる組織」への第一歩である「女性が活躍する組織」をつくるにはどうしたらよいか
事例をふまえながら推進のヒントについて講演いただきました。
講演は、堀江氏のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)についての解説からスタート。堀江氏は、ダイバーシティだけではなくイノベーションを起こすには多様な人材が集まり、相互に機能するインクルージョンまで考えていく必要があると話しました。
女性管理職パイプラインの導入については、管理職教育のタイミングや女性が管理職になる意識が低い問題を指摘し、「女性管理職30%」は意思決定において影響力を及ぼすことが可能な数値であり、企業の意思決定の選択肢に入れることの重要性に言及しました。
施策を実行する際には、コミュニティを構築して上司・経営層をも巻き込んでいくことが重要であると主張。またメンバーが成長した、あるいは組織がよくなったなど、女性が管理職の喜びを感じるポイントを理解しておく必要性を説きました。
次に、西氏が日立システムズでの取り組みについて説明しました。日立システムズでは、男性管理職比率が30%前後なのに対して女性管理職比率は10%にとどまっており、この差を埋めるための施策である「カウンシル活動」と「キャリアデザインプログラム」を紹介。カウンシル活動では、「女性活躍推進への社員の思い」「女性管理職の実態と本音」「育児・家事分担・男性育児休業取得についての考え」といった、個々人の意見を吸い上げる活動を実施。一方、キャリアデザインプログラムでは、管理職登用計画がある女性社員・上司向けの選抜研修やキャリア形成、上司・社内外メンターとの面談などを実施し、女性社員だけでなく、上司の意識改革も行っているなど、活動や施策を紹介しました。
講演後、堀江氏は女性管理職比率30%を目指す取り組みにおいて、グループ内での納得感や合意形成を醸成するポイントについて質問。これに対し西氏は、女性活躍推進という施策について、人事部門だけではなく、経営トップからの発信や幹部会議での伝達の繰り返しによって思いが共有されていくことが重要だと回答しました。さらに堀江氏が「なぜ日立グループでD&Iが必要なのか、意識的な対話はなされていたか」と問いかけると、西氏は経営陣のみならず、一般従業員も含めて、セミナーや講演会で定期的に行っていると説明。堀江氏も、現場でよい影響を与え合い波及していくには、同じ意識をもった仲間づくりが大切であると話しました。
また講演後、参加者からの「管理職を望んでいない女性に対してもキャリアアップの環境をつくっていくべきか」という質問に対して西氏は、「本人のもっているスキルをアウトプットするをつくり、気づかせてあげることが重要」と述べ、堀江氏は「あなたの素敵な部分・スキルがあるという部分を具体的に伝え、3回背中を押してあげること、そして管理職に昇進したあとのケアやサポートができる環境を整えることが重要」とアドバイスしました。
堀江氏と西氏は、D&Iにおける女性活躍を推進していくポイントとして、「機会が平等・公平であることを認識できるように対話する」「個人の背景を理解して対応・アドバイスをする」「プライベート面についてもヒアリングしていく」の3点を挙げました。画一的な対応ではなく、個人に焦点を当てた組織構築と意識改革が重要であると気づかされる内容となりました。
まとめ
環境変化により、従来の体制や業務自体にも大きな変化が迫られています。今後、変化に対応できる人・組織になるためには、新しい人材活用の取り組みが必要です。今回のセミナーでは、変化に対応しながら人材を最大限に活かしていくために、組織変化における「個」の重要性と人事の役割に焦点を当てた内容をお届けしました。今後の課題解決のヒントとしてお役に立てていただければ幸いです。
パーソルテンプスタッフのHRナレッジセミナーは、人事に関わるみなさまの課題解決に役立つ情報をこれからもお届けしてまいります。
Profile

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社
人事総務本部長
島田 由香 氏
Team WAA! 主宰、YeeY Inc. 代表、Delivering Happiness Japan チーフコーチサルタント、Japan Positive Psychology Institute 代表、一般社団法人dialogue 代表理事、 米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLP®トレーナー。ポジティブ心理学プラクティショナー。 1996年慶応義塾大学卒業 2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得。2014年より現職。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。高校三年生の息子を持つ一児の母親。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。

合同会社YUGAKUDO 代表社員
田口 光 氏
早稲田大学大学院(MBA)修了。大手人材サービス企業にて、新規事業開発・事業戦略・人事等の部門長と兼務でIPO準備室・M&Aプロジェクト等に従事。その後、承継外資会社にて人材開発部門長を担当。2013年に独立、組織人事支援・組織開発を事業とするLearning Strategy Partnersを設立。2019年法人化「合同会社YUGAKUDO」として活動。両社を通じて、多くの企業の組織・人事顧問を務める。2015年~2018年までChatwork株式会社に執行役員として参画。コーポレートサポート本部長、働き方経営研究所長を歴任。
近著:弁護士・社労士・人事担当者による労働条件不利益変更の判断と実務 ー新しい働き方への対応ー(新日本法規出版株式会社)共著

株式会社日立システムズ 人事総務本部 本部長
西 正 氏
1987年に株式会社日立製作所に入社。家電事業部門や産業機械事業部門において人事・労務・教育等を担当。また、本社において雇用制度立案、女性活躍支援、中高齢社員キャリア支援、人材採用等を担当。2008年、日立製作所より分社した映像機器事業子会社の総務部長として事業構造改革を担当。2014年、日立マクセル株式会社へ人事総務部長として異動し、同年再上場した同社の人事総務施策を立案・実行。2017年から日立製作所研究開発部門の人事総務担当の本部長を務めた後、2019年10月より、日立グループのシステムサービス事業部門の中核子会社である株式会社日立システムズの人事総務本部長となる。

スリール株式会社 代表取締役
堀江 敦子 氏
2010年スリール株式会社創業。女性活躍研修・ダイバーシティ・キャリア教育の分野で、企業/国・地方自治体/大学など多方面で人材育成事業を実施。
企業向けには、「女性活躍から始めるサスティナブル経営の支援」をテーマに、研修・コンサルティング事業を展開。国・地方自治体との取り組みでは、内閣府男女共同参画局 専門委員として第5次男女共同参画基本計画の策定に関わるなど、政策実現に向けて精力的に活動。独自開発した仕事と育児の体験型プログラムは、現在5つの自治体にて、地方創成・キャリア教育の事業として導入されている。
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