HRナレッジライン
カテゴリ一覧
【人事ライン】
プレイド 城氏
可変性が高い、最もおもしろい仕事
公開日:2024.12.06
- 記事をシェアする
株式会社プレイド
Talent Experience Team
マネージャー
城 夏織 氏
「他の会社の人事ってどうやっているんだろう」「同じような悩みを抱えているのかな」さまざまな企業の人事パーソンインタビュー『人事ライン』。今回は株式会社プレイドで採用を担う城 夏織さんです。
人事の仕事を、社員としてもフリーランスとしても経験をしたきっかけや、両方経験する中で感じたこと、共通点などをお話いただきました。
― 今までのキャリアと現在の仕事内容や役割を教えてください。
大学時代に知り合いの社会人の方が起業した会社でインターンとして勤務した経験から、「専門知識を持って経営者を支える仕事に就きたい」と思い、会計の勉強を始めたことをきっかけに、社会人1社目は監査法人で、監査アシスタント業務を経験しました。実際に業務に携わる中でやりたい仕事は変わらなかったものの、会計というアプローチが自分に合わないかもしれないと考え、転職活動を行いました。転職活動の中で人事未経験にもかかわらず、「新卒採用担当をやってみないか」と声をかけられたのがきっかけで、「人事として経営を支える」という選択もあると気付き、グリー株式会社に入社することを決めました。ちょうどソーシャルゲーム市場が立ち上がっていくタイミングで、グリーは急成長を遂げており、毎月何十人もの新しいメンバーが入社し、数ヶ月ペースで海外に続々と拠点を立ち上げるフェーズでした。入社直後に「新卒採用目標数は85人」と言われて「200人しかいない会社でそんなに新卒を採用するのか」と非常に驚いたことをよく覚えています。入社時は200人規模でしたが、在籍した3年間で2,000人規模に急拡大し、その中での非常にタフかつエキサイティングな経験は現在のキャリアにつながる大きな転換点でした。
グリーで3年ほど働いた後、結婚に伴い関西に住むことになったため退職しました。社会人になって初めて仕事から離れる経験をし、思っていた以上に自分は仕事に重要性を置いていることを再認識しました。グリーでのスタートアップのスピード感や、新しいものを生み出す面白さが忘れられず、改めてスタートアップに関わる仕事を探す中で、当時はまだ珍しかったフルリモート案件を見つけたことからフリーランスとしての活動をスタートしました。ご縁をいただいたのは東京のスタートアップ企業で、新しい事業の立ち上げに伴走する人が欲しいというニーズでした。代表のサポート業務から始め、事業が形になるにつれ人事業務にも着手しました。代表がフルリモート前提での会社をつくりたいという考えだったことから、それらに合わせた入社手続きや契約書のチェックプロセスなど、バックオフィスの仕組みづくりも担当しました。
フリーランスを始めて3年目で第1子を出産しました。出産直後に夫が起業し、東京に引っ越しましたが、子育てと仕事のバランスを考えつつ東京でも1年間ほどフリーランスを続けた後、縁があり株式会社プレイドに入社しました。現在は8年目になります。
プレイドでは、マネージャー2名体制でアシスタントも含めたメンバー8名の人事チームに所属しています。私は主に採用を担っているチームのマネージャーで、もう1人のマネージャーは人材開発、組織開発などを担い、連携しながら人事課題に向き合っています。
― 東京に戻られて、フリーランスを続けるのではなく、また会社員として組織に属したのはなぜでしょう。
東京に戻って1年間、フリーランスを続けながら今後のキャリアをどうするか考えました。会社員として組織に戻ることを選んだ理由の一つは、個人事業主として複数年働いた経験を通じ、「一体となってチームで戦う」ことのやりがいと面白さを再認識したからです。また、私は「新しいことに挑戦して成長したい」という思いが強くあります。業務委託は「できるからお願いする」仕事が中心ですが、社員は「できるかわからないけれど、任せてみよう」と期待されることが多く、そんな挑戦の機会を持てることがよりやりがいにつながると考えました。
「自分の身の丈をどう超えるか」という機会を追求したいと思っていましたし、「このまま新しい経験や挑戦をしていかないと、今後の天井がすぐ来てしまうのではないか」という焦りもあったと思います。フリーランスでも挑戦はあると思いますが、長期的に深く関わりたいと思えるような事業やミッションを持つ会社で、チームや組織をつくることに関わりたかったので、プレイドに入社しました。
― 人事は会社の制度や、経営戦略と密接に関わります。そこに外からフリーランスという形で関わることの、組織に所属する人事との違いはどのようなところでしたか。
フリーランスで人事業務をする場合は複数の企業に対して特定の業務を行うことが多いですが、私は一社に専念し、その会社に深く入り込むスタイルで業務を行いました。そのため、社員と同様に責任ある業務を任されることが多く、業務内容も大きく社員と異なることはありませんでした。
ただ、個人事業主として支援先企業と向き合う中で、信頼関係を築き、互いにメリットがある取り組みをどのように行うか、といった考え方やマインドセットはフリーランスならではだと思います。社員として会社に所属していた時は「企業のフェーズや課題に自分をどうアジャストさせていくか」を考えていましたが、フリーランスの場合は「今後も個として立ち続けるためにはどうするべきか」を重視しなければいけないと感じたため、より対等な視点で関係を築くことが大切だと考えていました。
ただ、チームメンバーや会社全体をどう導くべきかを考えるときには、会社に所属しているか否かにかかわらず、常に組織を俯瞰的に見る視点が重要であることは変わらないと改めて感じましたね。人事の役割を果たすうえでは、物事をフラットに見ることが非常に大切だと思っています。
― 人事の仕事は、成果が目に見えづらい、はかりづらい部分が多々あると思うのですが、フリーランスとしては、よりアウトプットをしっかり見せる、成果を示すことが必要になりますよね。
グリーに転職以降、フリーランス時代も含めて、共通しているのは「創業期、急成長期のフェーズにある会社での人事」であることです。その中では「基盤がない状態で、どのように仕組みを作り、運用にのせるか」や「採用で具体的な成果を出す」といった場面が非常に多く、比較的アウトプットが目に見えやすいフェーズだったと思います。
ただし、企業のフェーズや求められる役割によっては、たとえば壁打ち役など、成果がすぐに数字で見えるものではないケースもあります。そのような場合は、まず「どのように貢献するか」や「プロジェクトのゴールは何か」を明確にし、初期段階での認識合わせを大切にしています。目標を設定する際には、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の到達点をしっかりと確認し、共通の認識を持ちながら進めることが重要だと思います。
― 経営の考え方を理解して信頼し合っていないと、そういうお仕事は難しいですよね。かつフルリモートでのコミュニケーションでやっていくというのは、大変なことで、できる方ばかりではない気がします。
まず、どのような会社を目指し、それをどう実現しようとしているのかを理解することが重要です。経営者がすべての戦略を具体的に描き「この通りに実行してほしい」と明確にオーダーする場合もあれば、ビジョンはあるものの「“どのように実現するか”から支えてほしい」というケースもあり、さまざまです。この意図をいかに早くキャッチアップするかが、フリーランスだとより大事になります。
なぜ信頼を得られたのか、という点で私が意識していたことをお伝えすると、まずは「依頼されたことは満額回答しなくてはいけない」と思って取り組んでいました。「やってほしいと言われたことに最低でも100%、できれば依頼の意図まで推察し、プラスαを加えて120%で応え、信頼を得る」というところでしょうか。依頼されたことに対して100%以上のものを返していく。それがあって初めて、こちらからさらに踏み込む、ということが大事と思いながらやってきました。
― プレイドに入社され、会社が大きくなっていくフェーズで8年目。今後も1段階、2段階と変わっていくと思いますが、これからやってみたいことや、こうなりたいと思う姿はありますか。
人事の特定領域を極めていきたいという思いはあまりないですね。例えば採用や組織開発のスペシャリストになりたいというわけではないんです。一方で、人事の仕事はビジネスの中で最も「可変性が高い」と思っています。ビジネスにおいてさまざまなセオリーやケースはありますが、実際それをやろうとすると正しさだけでは人や組織は変わらなかったり、巻き込んで進めることが難しかったりします。そこに人事の面白さがあり、今後も人を通じてどのように成果をもたらすかに取り組み続けたいです。
また、私は決まったものをセオリー通りにやっていくよりも、先が見えないことにワクワクするタイプです。「未知の可能性を感じ、実現の先に新しい世界が広がっている」ような領域を追求していくことが面白いなと思っていて。未知のことに向き合い、好奇心を刺激される機会がどれだけあるかが、私にとっては一番重要ですね。これからもそういった仕事ができるといいなと思っています。
― 城さんが大事にしているチャレンジや、変わっていける、成長していけるというようなことを実感された場面は、今まででどのような時でしたか。
自分にとっての当たり前や思考の癖をアップデートしなければいけない時ですね。
たとえば、グリーに入社した頃は、マーケットがすでに顕在化し、急拡大しているフェーズで、その中でシェアを拡大することが最優先でした。そのため、組織づくりも「実行力を高める」「精度や確実性を向上させる」という方向性で、必要な人員数を決め、採用計画や具体的な施策を非常に明確かつスピーディに進めることが求められました。
一方、プレイドに入社した当初は、そもそもマーケット自体を模索しているフェーズで、探りながら進む必要がありました。グリーのように「一つの方向性を決めて、そこに全力で実行力を高める」戦略をとると、万が一その方向性が誤っていた際のリスクが大きい。そこでプレイドでは、「いかにメンバーが自律的・自発的に探索できるか」「会社が方向性を一方的に定めるのではなく、各個人がどれだけ目的意識をもって自律的に動けるか」を重視しています。
人事の施策一つをとっても、プレイドの場合はプロダクト開発のように、小さく素早くリリースし、メンバーの反応やフィードバックを得て改善するアジャイルなスタイルが求められます。人事施策は多くの人に影響を与えるものです。だからこそ人事内で固めきるのではなく、小さく出して早くフィードバックをもらいながら改善し、大きくしていくのだと。その方が結果的にアウトプットも質が高く早いと言われるんですね。グリーの時とは真逆でギャップがすごく大きかったです。
どのような事業を、どのフェーズの市場で展開するかによって、組織づくりや人事戦略も異なりますし、それに応じて考え方ややり方を変えなければならないというのは当たり前のことですが、実際にやってみると最初はなかなか体現できず、四苦八苦しました。
こうした思考や取り組み方の転換は大きな挑戦でしたが、その経験があったからこそ状況に応じて「計画をしっかり固めてから実行する」べきか、それとも「早めに試行して改善していく」べきか、緩急を使い分けることができるようになったと感じています。
― 人事は決めたらその通りにやり続けることが多いイメージがあるのですが、決めきらないで早くスタートして、やりながらブラッシュアップしていくことに戸惑いはなかったですか。
当初は非常にありましたね。「この段階で皆に告知したり、フィードバックをもらって本当によいのか」と思うことを乗り越える勇気が非常に必要でした。ただ、思い切ってリリースすると、皆たくさんのフィードバックをくれるんです。フィードバックを得られることで「やってよかった」という実感がついてくれば次からは怖くなくなるんですよね。こうした姿勢が受け入れられるカルチャーが会社にあることも、大きいかもしれません。
― フリーランスでも、社員としても、声がかかることが多かった城さんですが、ご自身の強み、求められる部分はどういうところだと思いますか。
客観性とフラットさ、そして「人」だけでなく目的や「事」を重視する姿勢が自分の特徴的なところかなと思います。
フリーランス時代もそうでしたが、たとえ社長などの経営陣であっても、違和感を持った点は率直に聞いたり、伝えたりしています。最初は依頼に応えることが優先ですが、信頼関係が築ければ、問題点にしっかり向き合い、なぜそう思うのかを明確にしながら踏み込むことが重要だと感じています。
私は、「経営は究極のジェネラリスト」だと考えています。「人事の視点から率直に指摘してほしい」と求められることも多く、それが人事への期待の一つでもあります。そうした要望に応えつつ、経営陣にも従業員にも絶妙なバランスで伝えることが求められます。先ほどお話しした自身の特徴がこのバランス感覚のようなものにもつながっているのかもしれません。
― これからのキャリアプラン、やってみたいことは何ですか。
今年40歳を迎えたこともあり、これからのキャリアや自分のやりたいことについて、棚卸しをして明確にしていきたいと考えているところですが、「価値をいかに継承していくか」は次に取り組みたい大きなテーマですね。
これまで、急成長フェーズのスタートアップで採用を中心にキャリアを積み、「新たな価値を生み出し、広げること」に全力を注いできました。しかし、世の中に生まれた新しい価値を良い形で引き継いでいかなければ、もったいないと感じており、大きなやりがいがありそうなテーマだと興味を持っています。
一方でプレイドは入社当時と変わらず、非常に面白い会社で、これまでで最も長く勤めているにもかかわらず、常に新しい刺激を与えてくれます。IPOを経て、組織は大きく変わり、事業も多様化した中で、人事が果たすべき役割をどのようにアップデートしていくかが、直近の私の大きな関心事でありチャレンジでもあります。
会社の大きな変化に対応するために、定型的な人事キャリアのステップを踏むだけではなく、より広い視点でアプローチを取れるよう、私自身も成長し必要なスキルを学び続けていきたいです。
どこにいても、どのような仕事やはたらき方をしても、求められることを理解し、そこに120%で応える城さん。お話を伺いながら、相手に対する的確で深い理解と信頼関係がないとできないことだなと心から感じました。
「成長したい。おもしろいと思うことに挑戦していきたい」という内から溢れる熱い想いと、「俯瞰的に冷静に見る、組み立てるロジカルさ」の両面を併せ持ちながら、これからも強く柔らかいいキャリアを積まれていかれるのでしょう。
Profile
株式会社プレイド
Talent Experience Team
マネージャー
城 夏織 氏
上智大学外国語学部イスパニア語学科を卒業後、監査法人での勤務を経て、2010年よりグリー株式会社で新卒採用を担当。その後、結婚を機に関西へ移住し、2013年から4年間フルリモートワークで複数の企業で秘書や人事業務を担当。2017年にプレイドに入社し、人事として採用やオンボーディングなどを通じて事業の加速に貢献する仕掛け作りに取り組む。
- 記事をシェアする