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ギグワークを活用するメリットや留意点、主な仕事例について解説

公開日:2024.06.14

更新日:2024.08.09

企業の課題

ギグワークとは、雇用契約を結ばず単発・短時間でできる仕事です。はたらき方の多様化が浸透し、副業を許容する企業が増える中で、隙間時間で効率的に稼げるギグワークに注目する方が増えています。また、企業にとっても人件費削減や生産性向上といったメリットがあるため、活用を検討している方も多いでしょう。

今回は、ギグワークの概要や活用のメリット、留意点を解説します。併せて取り入れる際のポイントにも触れていますので、活用を検討中の方はぜひご一読ください。

ギグワークとは

ギグワークは、音楽用語として使われるスラング「Gig」と「Work」を組み合わせた造語です。「Gig」とは、一度限りのセッションや単発契約での演奏会を意味することから、雇用契約を結ばずに単発で仕事を請け負うはたらき方を指してギグワークといわれるようになりました。ギグワークで報酬を得る人を「ギグワーカー」といいます。

ギグワークは、基本的に1回で1~3時間程度の短い労働で、ノルマや納品義務も発生しません。また、雇用関係がないため、ギグワーカーを活用する企業は発注者という立場であり、業務委託の形態をとります。

ギグワーカーは、自分のタイミングではたらけるほか、企業が設けた就業規則の制約も受けません。毎日職場に出向く必要もないため、人間関係のストレスが少ない自由なはたらき方として、社会的に認知されつつあります。

短期アルバイトとの違い

短期アルバイトはギグワークと異なり、単発の仕事であっても就職先企業と雇用契約を結びます。

また、拘束時間も短期アルバイトとギグワークで異なるポイントです。ギグワークの拘束時間は1時間単位が一般的ですが、業務内容によっては遂行した仕事の件数で報酬が決まるケースもあります。例えば、配達の仕事であれば「1件につき○円」と設定されるため、報酬はギグワーカーの力量次第といえるでしょう。

一方で、短期アルバイトは企業側が1日単位で拘束時間を決定するケースが多いです。契約内容にも拘束時間や仕事に従事する時間帯が含まれます。

フリーランスとの違い

フリーランスは、ギグワークと同様に企業と雇用契約を結ばないはたらき方です。

しかし、ギグワークにおける仕事の発注は時間単位であり、基本的に長期契約はありません。一方のフリーランスは、案件やプロジェクトごとの仕事が多く、業務内容によっては長期間にわたり契約が続く可能性もあるでしょう。

また、ギグワークでは誰でも対応できる業務を発注するケースが一般的ですが、フリーランスは専門的なスキルを要する業務が多い点も異なるポイントです。

ギグワークが普及している背景

ギグワークが普及している理由の一つとして、テクノロジーの進化が挙げられます。ギグワークは、企業とギグワーカーがWEB上でコミュニケーションをとることが一般的です。そのため、テクノロジーが進化したことにより、企業とギグワーカーがつながりやすくなりました。

例えば、スマートフォンとWEB環境があれば、時間や場所にとらわれず連絡が取れるようになり、簡単にコミュニケーションを取れるようになりました。さらに求職者と求人とを結びつけるシステムの開発なども普及のきっかけとなりました。

また、企業にとっては慢性的な人材不足を解消する手段として、気軽に労働力を確保できるギグワークが重宝されています。そのほか、働き方改革の推進によりリモートワークが普及し、WEB上でのやり取りが一般化したこと、副業を容認する企業の増加に伴い、空き時間にギグワークで収入を得る人材が増えた点も普及の理由といえるでしょう。

ギグワークの代表的な仕事例

ギグワークの代表的な仕事として、以下の表にまとめた業種が挙げられます。

業種 代行業 運送業 単純作業 専門的なスキル・知識が必要な作業
主な仕事内容
  • 家事(掃除・料理など)
  • 送迎
  • ベビーシッター
  • 犬の散歩
  • 場所取り
  • フードデリバリー
  • 貨物配送
  • 個人タクシー
  • 長距離輸送
  • 引っ越し作業
  • ポスティング
  • データ入力
  • 組み立て作業
  • 農作業
  • イベントサポート
  • 各種モニター
  • システム設計・開発
  • 翻訳・通訳
  • WEBサイト制作
  • 写真・動画の撮影
  • カウンセリング
  • コンサルティング
  • 財務会計

続いては、ギグワークの仕事内容について業務ごとに解説します。

代行業

ギグワークの代表的な仕事の一つが代行業です。代行業の仕事内容としては、個人の暮らしや企業における庶務業務のサポートが挙げられます。例えば、掃除や料理などの家事代行や子どもの送迎、犬の散歩なども代行業の一つです。仕事や育児、介護などで忙しい家庭でギグワーカーが重宝されています。

代行業におけるギグワークの報酬はギグワーカー自身が設定し、依頼者は時間単位で発注するケースが一般的です。

運送業

運送業の中にもギグワークが取り入れられるケースが増えています。例えば、食事を配達するフードデリバリーやメール便、小包の配送などもギグワークが活用される仕事の一つです。

物流業界では、ドライバーの不足が大きな問題となっています。特に、年末年始やお盆といった物流量が増える繁忙期は既存の人員だけでは対応できないケースも少なくありません。ギグワークは、こうした課題を解決するのに役立ちます。

単純作業

データ入力やポスティング、引っ越し作業、モニター作業といった単純作業もギグワークに適した仕事です。その多くが時間や場所を問わず、隙間時間を活用して作業できる内容であり、特別なスキルを要さないため、ビジネスマンの副業のほか、家事の合間にできる仕事としても浸透しています。

利益に直接影響のない単純業務をギグワーカーに任せることで、本来注力すべき業務に集中しやすくなる点が、単純作業のギグワークにおける大きなメリットです。

専門的なスキル・知識が必要な作業

ギグワークの中には、専門的なスキルや知識を要する作業もあります。例えば、システム設計・開発や翻訳、WEBサイト制作などがその一つです。また、コンサルティングやカウンセリングのスキルを発揮するギグワーカーもいます。

一定期間のみ専門知識を必要とする場合に活用できるため、コストを抑えながら業務を進めることが可能です。

ギグワークを活用するメリット

ギグワークを活用する主なメリットは以下の3点です。

  • 必要なときに必要な人材を活用できる
  • 人件費を削減できる
  • 生産性が向上する

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

必要なときに必要な人材を活用できる

雇用契約を結ばないギグワークは、年末年始や月末、年度末といった繁忙期や突発的に人材が必要になった場合など、企業の状況に合わせて活用できます。特に、最低限の人員で業務している場合、一人欠員が出れば、業務に支障が出るケースも少なくありません。急なトラブルが発生すれば、当日になってから欠勤の連絡が入ることもあるでしょう。こうした場合も、ギグワークであれば、速やかに必要な人材を見つけられます。

人件費を削減できる

ギグワークを活用すれば、社員を雇用するよりも人件費を削減できます。ギグワークを活用した場合にかかる費用は、ギグワーカーに対する報酬と仲介サービスの利用料です。

一方、雇用契約を結ぶ場合、月々の給与に加えて社会保険や福利厚生、交通費なども負担する必要があります。これらは、雇用関係が継続する限り、閑散期であっても発生し続ける費用です。さらに、あらたな人材を雇用するには、採用や人材育成にも多くの費用がかかります。

ギグワークの活用により、人件費や雇用に関連する費用を削減できる点も大きなメリットです。

人件費削減については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>人件費削減とは?メリット・留意点や具体的な方法を解説!

生産性が向上する

事務や経理、財務といった間接的な業務の中には定型業務に人材が必要な業務も多いです。こうした業務をギグワーカーに任せられれば、自社の社員は企画や開発、マーケティング、取引先とのやり取りなど、より注力すべき業務に集中できます。

ギグワークの活用により、これまで煩雑な業務に工数がかかっていた社員のパフォーマンスが上がり、生産性の向上にもつながるでしょう。

生産性の向上については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。
>>生産性向上の重要性とは?目的や具体的な施策、助成金制度を徹底解説

ギグワークを活用する際の留意点

ギグワークは、人件費の削減や生産性の向上などさまざまなメリットがありますが、その一方で留意すべき点もあります。ここでは、ギグワークを活用する際の留意点について解説します。

人材のスキルに偏りが出る可能性がある

ギグワークは、WEBを介して募集するのが一般的です。そのため、ギグワーカーと対面しての選定が難しい場合があります。マッチングするギグワーカーは依頼したタイミングによってさまざまであり、場合によっては求めるスキルに達していないケースも考えられるでしょう。ミスマッチが発生すると、業務の質が下がり、企業の信頼を損ねる恐れもあります。

また、ギグワーカー向けのサービスは、首都圏や都市部を中心に普及しており、地方では登録会員数が少ない傾向にあります。募集をかけたからといってすぐに必要なスキルを持った人材が見つかるとは限らない点も注意が必要です。

マニュアルやフローなど事前に整理する必要がある

継続的な雇用契約を結ぶ場合、業務を進める前に業務研修を実施することが可能です。一方で、ギグワークは1~3時間程度の短い労働であり、教育にかける時間を確保できません。また、複数回ギグワークを活用する際も、前回依頼したギグワーカーが業務を受けるとは限らないため、誰が担当しても同じ質の仕事ができるように業務の標準化を徹底する必要があります。例えば、業務フローやタスクの最適化を図った上で、工程ごとに細かくまとめたマニュアルや作業動画などを作成することで、はじめて担当するギグワーカーでもスムーズにはたらきやすくなるでしょう。

また、一般的にギグワーカーとはWEBを介して業務のやり取りをします。気軽な方法として便利ではありますが、その一方で情報漏えいにつながるリスクも考えられるため留意しなければなりません。マニュアルと併せて、情報セキュリティ対策も厳重に行うべきです。

ギグワークを活用する際のポイント

ギグワークを効果的に活用するには、3つのポイントを押さえることが大切です。ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

プロジェクトの明確化

ギグワークを活用する前に、依頼したいプロジェクトを明確にすることが大切です。例えば、希望する品質や納期、プロジェクトを遂行する手順、報酬などを細かく定義しておくと、依頼する基準も明らかになります。反対に、プロジェクト内容や採用基準が不明瞭だとミスマッチにつながり、求める成果が期待できません。

明確な目的や業務フローがまとまっていれば、ギグワーカー側も自分のスキルや経験値に見合った仕事に応募しやすくなります。その結果、求めるスキルを兼ね揃えたギグワーカーとのマッチングが実現し、短時間の仕事でありながら高い成果を得やすくなるでしょう。

コミュニケーションの円滑化

自社の社員と比べて、ギグワーカーとは十分なコミュニケーションが取りづらいです。しかし、短時間の依頼だからといってコミュニケーションをおろそかにすると、予定通りにプロジェクトが進まなかったり、業務の品質に影響が出たりする可能性があります。

ギグワークを活用する際は、チャットシステムや進捗管理ツールなどを取り入れて、ギグワーカーと連絡を密に取れる環境を整えることが大切です。

フィードバック機会の設定

基本的に、ギグワークでは企業側がギグワーカーを選定することができません。依頼するごとに、違うギグワーカーが担当する可能性が高く、ノウハウを継承しづらい点も留意が必要です。

このような中で業務の質を保つには、ギグワーカーからのフィードバッグが欠かせません。例えば、アンケートや定期的な面談を実施するなど、フィードバックを得る機会を設けましょう。

ギグワーカーから得た情報やノウハウを次に依頼するギグワーカーに受け継ぐことで、より質の高い業務が期待できます。また、ギグワーカーから出た不満や課題などははたらきやすい環境作りに活かせるでしょう。ギグワーカーによっては、自社にないノウハウを持っているケースもあり、結果的に社員のスキルアップにつながるでしょう。

ギグワークを活用して人材不足を解消する

テクノロジーの進化や柔軟なはたらき方の浸透などを受けて、雇用契約を結ばず短時間の仕事を依頼するギグワークに注目する企業が増えています。必要なタイミングで必要な人材を活用できる上に、社員を雇用する場合と比べて人件費を抑えられるため、人材不足のなかでも有効的な手段といえるでしょう。また、間接的な業務をギグワーカーに任せることで、自社の社員はより注力すべき業務に集中でき、生産性向上にもつながります。

その一方で、スキルや業務の質に偏りが出やすく、ギグワーカーとコミュニケーションが取りづらいといった留意すべき点もあります。ギグワークを活用する際は、マニュアルの整備やコミュニケーションが取りやすい環境作り、フィードバック機会を設けることが必要です。

働き方改革の推進を踏まえて副業を容認する企業は増加傾向にあり、ギグワークもさらに認知されるでしょう。ギグワークを検討中の方は、メリットや留意点を把握した上で、効率的に活用していきましょう。

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