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エンジニアの離職率の現状とは?離職の原因と防ぐための対処法を解説

公開日:2024.02.27

企業の課題

IT市場が活況となっている昨今、エンジニアの離職は、企業にとって大きな痛手となる可能性があります。特にエンジニアは人材採用・教育のために時間やコストがかかるため、離職は早急に解決すべき課題です。

そのため、企業はエンジニアの不安や不満を理解し、離職防止のために対策をすることが重要です。そこで、本記事ではエンジニアの主な離職理由や離職率の高さが及ぼす影響を解説し、離職を防ぐための対応策についてご紹介します。

エンジニアの離職率の現状

エンジニアはどの企業にも在籍しており、社会全体にとって欠かせない職業となっています。

パーソル総合研究所は2019年に「労働市場の未来推計 2030」を発表しており、この中で2030年に労働市場はどのくらい人手不足になっているかを予測しています。同調査の「職業別に見た人手不足」によると、情報処理・通信技術者が含まれる「専門的・技術的 職業従事者」は212万人不足で、全11業種中1位でした。

エンジニアが「専門的・技術的 職業従事者」に該当すると考えると、人手不足になる可能性は際立っています。

※引用:パーソル総合研究所×中央大学|労働市場の未来推計 2030

また、2019年3月に経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によると、2018年を境にIT人材の人手不足は年々増加し、2030年には人材の不足数が最大約79万人になると予測されています。IT需要が拡大している中で、エンジニアの人手不足は深刻です。つまり、今以上に離職率が高くなるとエンジニアの人手不足は加速し、悪循環に陥る可能性があるといえます。

※引用:経済産業省|IT人材需給に関する調査

エンジニアの離職率が高くなることによる企業への影響

エンジニアの離職率が高くなると、企業にさまざまな影響を与えます。主に、以下のような影響を及ぼす可能性があると考えられます。

  • 企業の技術力が低下する
  • 売り上げが低下する
  • 人材採用のコストが増える
  • 人材教育のコストが増える
  • 一人ひとりの業務負荷が増える

それぞれについて解説していきます。

企業の技術力が低下する

エンジニアの離職率が高くなると、企業全体の技術力の低下につながる懸念があります。エンジニアが離職することで企業内の専門知識や技術スキルが失われ、ノウハウの蓄積が難しくなるためです。

また、エンジニアが不足するとあたらしいシステムの開発やバージョンアップすることが難しくなり、古いシステムを使い続ける“レガシー化”を引き起こします。その結果、エンジニアの負担増やセキュリティ面の脆弱性につながってしまいます。

さらに、後任のエンジニアを迅速に確保しないと、あらたな技術の導入や既存プロジェクトの継続が難しくなり、競争力の低下も懸念されます。

売り上げが低下する

エンジニアの離職によって進めていたプロジェクトの進捗が滞り、サービスの開発・改良が遅れる可能性があります。その結果、顧客との契約履行に影響を及ぼし、企業全体の評判や信頼度が低下しかねません。

また、人手不足によって現状の業務に手一杯となり、商品のクオリティやサービスで競合他社と差が生じることも考えられます。それが顧客満足度に反映され、売り上げで競合他社にリードを許してしまう恐れもあるでしょう。

人材採用のコストが増える

エンジニアが離職すると、代替として同等の高度なスキルを持つエンジニアを採用する必要が生じます。その結果、人材採用にかかるコストが増える可能性が出てくるでしょう。

また、エンジニアが定着しないとあらたな人材を採用するプロセスを繰り返さなくてはならず、やはり採用コストの増加につながります。さらに、企業によっては離職者のための退職金により貸借対照表上にキャッシュアウトが発生します。

人材教育のコストが増える

あらたに採用したエンジニアや既存のメンバーには、前任のエンジニアが担当していた業務とプロジェクトの情報、そしてスキルを教育・伝達する必要が出てきます。その際は、トレーニングを実施するためのコストが発生します。

人材が定着しない限りこのプロセスは繰り返されるため、育成コストの上昇につながり、企業にとってはダメージになります。

一人ひとりの業務負荷が増える

エンジニアの人手不足が進むと、既存のメンバーたちで業務の負担を分担しなければなりません。その結果、一人ひとりの業務負荷が増え、長時間労働が常態化するなど、エンジニアの労働環境は過酷になります。そうなると、業務の品質が低下したり、生産性が低下したりする恐れもあります。

さらに、そのような環境下では残ったエンジニアのストレスやモチベーションに影響が生じる可能性も考えられるでしょう。

エンジニアが離職してしまう主な原因

エンジニアが離職してしまうと、あらたな人材の確保に苦戦することも珍しくありません。離職の原因はさまざまですが、エンジニアがはたらきづらいと感じる点を洗い出した上で、離職を防ぐための対処法を実施していくことが大切です。

ここでは、エンジニアが離職する原因について解説していきます。

スキルアップの機会不足

「スキルアップのための環境がない」とエンジニアから判断されれば、離職の原因になることがあります。業務量が多すぎてスキルアップに費やす時間がない、業務内容が固定されて高度な課題に携わる機会がない、などが離職理由として挙げられます。

さまざまな業務に携わることでスキルを高め、自らの価値を高めたいと考えるエンジニアもいますので、企業はスキルアップの機会を提供することが重要といえます。

給与に対する不満

一般的な離職の原因となるのが「給与に対する不満」です。特に、エンジニアは他の職種に比べて高い給与を得られることが多い傾向にあります。経済産業省が2021年にまとめた「我が国におけるIT人材の動向」によると、デジタル人材の新卒・中途採用を行う際、通常よりも高い報酬水準を設定する例が見られるようになっているとも報告されています。つまり、現在の給与より高い条件でオファーを出してくる企業は少なくありません。

もちろん、今所属している企業の給与水準が相場より高い場合でも、不満を持って離職するエンジニアは数多く出てくるでしょう。

現状のプロジェクトに対する不満

エンジニアにとって希望するプロジェクトに携われない状況は歯がゆいものです。「こんなシステムを作りたい」という意向をかなえられない環境ではやりがいが感じられず、離職につながる恐れがあります。

また、携わったプロジェクトが予定通り進まず、長時間労働や休日出勤が強いられる状態に陥ると、そのプロジェクトに割く時間が増加します。その結果、スキルアップのための時間がなくなり、離職を考えるエンジニアが出てくる可能性もあります。

はたらく環境に対する不満

エンジニアは納期までに成果物を仕上げるために休日を返上したり、深夜まではたらいたりするケースも多いのが事実です。業務の拘束時間が長くなれば、プライベートや自己成長の機会が確保しづらくなります。また、負荷が高くなって疲弊すれば、体調不良につながってモチベーションも下がります。

これらの問題を抱えた職場は敬遠されがちで、長時間労働をきっかけに離職に至るエンジニアも多いといえるでしょう。

独立や起業志向

エンジニアの選択肢として、独立や起業があります。はたらく環境を変えて今まで培ったスキルを活かしてフリーランスとして活動するという志向です。自分の裁量で案件を選び、自由なはたらき方がかなう独立志向をもつエンジニアも少なくありません。

企業が社員を縛り付けるのではなく、社員の希望を叶え、キャリアパスをサポートできる環境にしないと、エンジニアの流出を防ぐことは困難になっていくかもしれません。

エンジニアの離職率を低くする方法

エンジニアの離職が与える影響は、企業にとって大きいものです。離職率を低くするためには、どのようなことをするべきでしょうか。企業が行うべき取り組みについて解説します。

新技術やツールに関するスキルアップの機会を設ける

あたらしい技術に関心があり、能動的に学ぼうとする意欲を持つエンジニアは少なくありません。本人がスキルアップできる案件・仕事を任せることでエンジニアのモチベーションは向上するでしょう。

その他にも、社内勉強会の定期的な開催、社外ワークショップを受けられるように認める、スキルアップのための休暇付与など、エンジニアの離職を防ぐためには企業の柔軟な対応が欠かせません。

プロジェクトの難易度や技術に応じ適正な評価と報酬を与える

エンジニアのスキルに見合った評価と報酬を提示することも大切です。自分のスキルを活かして会社に貢献しても、正当に評価されなければ仕事へのモチベーションは下がっていくものです。さらなる業務意欲向上のためにも、昇給制度について見直しましょう。

たとえば、年齢や勤続年数に関わらずスキルや成果が上がれば給与に反映されるよう、人事評価の基準を整えることが重要です。評価とは給与のアップだけでなく、昇格や表彰も含まれます。十分な実績を残したエンジニアを正当に評価する制度が求められます。

最適なツールや通信、リモート勤務などはたらく環境を整える

労働環境の改善も、エンジニアの離職率を低くするために欠かせない取り組みです。具体的にはプロジェクトに適した開発ツール、高速な通信環境などに加え、ノー残業デーの設定やリモート勤務の導入など、柔軟なはたらき方を重視した環境づくりが挙げられます。

エンジニアに業務を任せすぎて、業務過多になってしまっているケースもあります。長時間労働を是正するなど、全体のバランスを見て業務配分しなければなりません。残業や休日出勤が度々発生する職場環境のままでは、エンジニアの離職率は下がらないままです。

リーダーや専門家としての役割など明確なキャリアパスの提示

キャリアアップするための十分な環境がない場合、エンジニアの離職の原因となります。特にエンジニアは、自分がどういうキャリアを達成したいかを明確にしているケースが多いようです。希望する役職に就けず、理想のキャリアパスを描けなければ、目標を失って離職を考える可能性が出てきます。

企業としてはエンジニアと定期的な面談を行い、提供できるキャリアパスを伝えることで安心感を与えられるよう努めることも必要です。その結果、エンジニアの離職率低下が期待できます。

エンジニアの離職率の現状について知っておく

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」でわかるように、現在のエンジニアの離職率は決して高いとは言えません。しかし、IT需要が拡大している中でエンジニアの人材不足は将来、深刻化していくと想定されます。

エンジニアが離職する理由は、給与の低さや曖昧な評価基準、長時間労働、スキルアップの機会の有無などが挙げられます。エンジニアがすぐに辞めてしまう場合、原因をしっかりと把握し、対策を打つ必要があります。評価制度や労働環境の整備などを行い、エンジニアの不安や不満の解消を図り、離職を防ぐための対応策を講じましょう。

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