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経理が人手不足になる原因とは?人手不足がもたらす影響について解説

公開日:2023.10.10

更新日:2024.01.29

企業の課題

「経理の慢性的な人手不足で業務が回らない」、このような悩みを抱える企業は多いです。その背景として、以下のような理由が挙げられます。

  • 簿記の習得など、専門性が高く深い知識が必要
  • 企業は営業やマーケティングといった売上に直結する部門への人材配置を優先し、経理の人材を補うことを後回しにしてしまうことがある

経理は企業の財務状況を把握し、適切な経営判断を下すために欠かせない業務です。経理の人材が不足すると経営に問題が起きてしまう可能性もあるため、早急な対処が必要です。

本記事では、経理が人手不足になってしまう背景と企業にもたらす影響、その解決方法について詳しく解説しています。

経理の人手不足の現状

経理とは経営を管理する業務です。財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すために欠かせない経理は、企業にとって重要な役割です。

経理には毎日行う入出金の管理から月単位で行う請求書の処理などが発生し、人手不足が続くと経営に問題が起きてしまう可能性もあるため、早急な対処が必要です。また、経理業務には専門的な知識が必要であることから、人材の確保が難しく慢性的な人手不足に陥りやすい傾向にあります。

経理の人手不足の背景

経理における人手不足の原因としては、労働人口の減少や業務の複雑化など、さまざまな理由が考えられます。ここでは、経理が人手不足に陥る背景を3つ解説します。

労働人口の減少

総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」によると、2022年の労働力人口は、前年と比較して5万人も減少しました。その原因は、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。

※引用:総務省統計局|労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約

内閣府が出した「令和4年版高齢社会白書」によると、令和3年10月1日時点の日本の総人口は1億2,550万人となっています。65歳以上人口は3,621万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)が30%近くを占めているのが現在の日本です。少子高齢化が進むことで、労働力人口の割合が減り続けている状態です。

経理も例外ではなく、今後は「経理業務のデジタル化」や「アウトソーシングの導入」による人手不足の解消に向けた対策が急務です。さらに、女性や高齢者がはたらきやすい環境を整備するなど、柔軟なはたらき方を推進する必要もあるでしょう。

間接部門のため採用が後回しになりやすい

「間接部門」である経理に対して、人材を補うことに消極的な企業もあります。間接部門よりも、営業やマーケティングといった売上に貢献する「直接部門」の人材配置に注力する傾向があるのです。そのため、企業全体で人手不足に直面している場合、経理への人材配置は後回しにされるケースが多いと考えられます。その結果として、経理の人手不足がなかなか解消されない事態に陥ってしまうのです。

経理人材を採用することが難しい

経理は簿記や会計の知識、税制に関する知識、法令に関する知識、労働基準法に関する知識が求められる専門性の高いポジションです。会社規模によってはグループ会社の関係性までを考慮した、より高度な知識が必要になります。

さらに会計法、システム、税法の複雑化など環境変化が定期的に起こるため、知識をアップデートし続けなければいけません。直近では、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の新設がありました。あらたなルールに適応した帳簿や請求書の管理が求められます。こうした外的要因も珍しくないことから、即戦力かつ継続的にスキルアップできる人材が必要です。しかし、即戦力となる人材の獲得は簡単ではなく、そういったことも人材不足の要因として考えられます。

日々の業務に追われるあまり、簿記知識のない人材を採用しても教育する時間が取れない企業もあるかもしれません。そのような背景から経理の採用や育成活動は滞り、慢性的な人手不足は解消できないのです。

経理の人手不足がもたらす影響

経理が人手不足に陥ると、企業の経営にさまざまな課題・問題が発生します。特に経理は経営に近しいポジションにあるため、企業に与えるダメージは決して小さくありません。ここでは、経理の人手不足がもたらす影響を4点解説します。

労働環境の悪化

経理の人手不足が慢性化すると、少ない人手で膨大な量の業務を対応し続けるため、労働環境の悪化を招きます。社員1人あたりの負担が増加し、長時間労働が横行すると、疲労やストレスが蓄積されます。それだけでなく、社員の注意力の低下を招き、ミスが発生するリスクを高めます。

加えて、残業や休憩が取れないと、健康への影響やモチベーションの低下を招きかねません。一人ひとりの帰属意識が薄れてしまい、離職率の上昇につながるほか、貴重な経理人材が退職するケースも出てくるでしょう。

誤った処理や不正行為のリスクが高まる

経理の人手不足が深刻化し、担当者の業務負荷が重くなると、経理上のミスが発生するリスクが高まります。経理業務でミスが起こり、大きなトラブルに発展すると、税務調査で厳しい指導が入る可能性もあります。例えば、税金の申告漏れが発生した場合、多額の追徴金を支払う必要があり、企業の社会的信頼が落ちてしまうケースもあるでしょう。また、顧客データの漏えい・流出が起こると、多額の損害賠償を求められ、企業の存続に大きな影響を与える可能性も出てきます。

加えて、経理の人手不足は担当者による不正行為の発生リスクも高めます。業務が大変すぎて起きたミスを隠蔽いんぺいする、ミスに気付かず処理をして無意識のうちに脱税をしてしまうなど、不正の原因にもなりえます。

人材育成や研修の機会が失われる

経理の人手不足が進むと、新しい人材を採用したとしても育成や教育などを行えなくなり、仕事のパフォーマンスが上がらず、負の連鎖に陥ってしまいます。

また、経理の人手不足が続くと、業務が属人化するリスクもあります。急な長期休暇や退職で担当者が不在になった場合には、引継ぎが難しくなることもあるでしょう。業務がブラックボックス化した状態では、マニュアルもなく進捗状況を確認できなくなるケースも想定できます。引継ぎがなければこれまで蓄積した貴重なナレッジが消失し、ゼロからの構築を余儀なくされるのです。

担当者が長年培ってきたノウハウが社内に蓄積されないので、別の社員がまたゼロから積み重ねていく必要があります。そうなるとコストがかかるだけでなく、その期間は経理業務を遂行できなくなってしまうケースもあるでしょう。

属人化は一見すると、スキルの高いベテラン社員が実力を発揮しているように見えるかもしれません。しかし、その社員がいなくなると業務停止の事態にも陥りかねないため、企業は属人化の解消に向けて取り組む必要があります。

企業パフォーマンスの低下

経理の人手不足が続くと労働環境の悪化を招き、企業全体のパフォーマンス低下につながります。例えば、月次決算など会社の業績にかかわる資料の作成が遅れてしまい、経営判断ができなくなるおそれがあります。また、場合によっては他部署の社員が経営業務を手伝うことになり、コア業務に時間を費やせなくなる可能性もあるでしょう。

経理の人手不足の解決方法

経理業務には簿記などの専門知識が必要で、適切な人材を採用することが難しいですが、処理すべき業務は放置できません。経理人材が見つからない場合は、既存の業務を見直したり、あらたなツールを導入したりするなどの方法が挙げられます。ここでは、経理の人手不足を防ぐ解決策を5つ解説します。

経理人材を育成する

経理の人手が不足しているのであれば、人材を育成することで問題が解決するケースがあります。あらたな人材を教育して経理スキルを持つ社員を増やすことはもちろん、スキルが十分ではない社員を育成して経理スキルの高度化を図る方法も有効です。

あらたな人材を育成する場合はOJTによる実践的なトレーニング、また既存の社員には外部研修やセミナーへの参加という手法が効果的です。

業務フローの見直し、マニュアルの作成をする

人手不足を解消するには、業務フローを改善して効率化を図る必要があります。そのためには、経理業務がどのように進められているかをすべて書き出し、削減可能な工数がないかを確認すると効果的です。

小口現金を例に挙げると、現金残高と出納帳に記載された金額が合わなければ、確認に手間がかかってしまいます。社員からの立替払い請求を月に一回にして給料でまとめて支払うようにすれば、小口現金を廃止できる可能性もあるでしょう。

また、二重作業を解消できないか確認することも重要です。具体的な例としては、預金通帳の金額を会計システムに入力すれば十分であるにもかかわらず、預金出納帳にも記入しているケースなどが挙げられるでしょう。預金出納帳への記入がなくとも十分管理が可能であれば、業務効率化につながります。

さらに、経理業務をマニュアル化しておけば、担当者が突然の退職で不在になっても業務を引継ぎやすくなります。ベテラン社員が長年にわたり担当した業務をマニュアル化しておけば、ノウハウを共有しやすくなるでしょう。マニュアルを一度作成したら、常に更新し続けることで誰が見ても理解できるマニュアルへと改善していくことが大切です。

ITツールを活用する

経理の人手不足対策として、もっとも費用対効果が高いのはITツールの導入です。ITツールを導入することで記帳や請求書発行などが自動化され、業務効率化につながります。加えて、ペーパーレスやオンライン化も推進できます。さらにデータの共有や管理が簡単になり、経理業務の正確性が向上します。ITツールを導入して業務効率や正確性が向上すれば、経理担当者は今まで費やしていた時間をコア業務に割り当てることができるでしょう。

人材派遣を活用する

人材派遣サービスを活用することも選択肢のひとつです。人材派遣サービスは、人材派遣会社が自社の要望に合った派遣スタッフを提案してくれるため、自社にとって必要なスキルを持つ人材を活用することが可能です。

「発生する業務量に合わせて活用期間を調整できる」というメリットもあります。決算業務などの繁忙期や突発的業務の発生時など、必要なタイミング・期間に合わせ、短期間だけ派遣スタッフを受け入れることが可能です。社内の状況に合わせて、柔軟に人員追加ができます。

「採用・教育のコストを削減できる」というメリットもあります。自社で社員を採用する場合、募集から書類選考、面接、採用などの採用業務や、採用した社員のスキルに合わせた教育業務が必要です。しかし、人材派遣サービスは人材派遣会社がスキルを持った派遣スタッフを提案するため、採用・教育のコストを削減できるでしょう。

人材派遣サービスの活用をご検討の方はぜひパーソルテンプスタッフにご相談ください。

アウトソーシングを活用する

経理の人手不足を防ぐ方法として、アウトソーシングの活用も有効です。アウトソーシングとは、経理業務の一部を外部に委託することです。社内で不足しているリソースをプロから調達できますので、人手不足の解消だけでなく品質向上など多くのメリットがあります。また、経理の採用や教育にかかるコストが削減でき、離職の心配もいりません。

経理アウトソーシングについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
>>経理アウトソーシングの委託可能な業務や費用相場をご紹介

アウトソーシングを活用した経理の人手不足の解決事例

経理の人手不足には、アウトソーシングの活用が有効です。メリットとしては、品質の向上だけでなく、採用や教育にかかるコストの削減などが挙げられます。実際に、パーソルテンプスタッフのサービスを活用した成功事例をご紹介します。

ノンコア業務にアウトソーシングを活用し、薬の開発に注力/株式会社中外製薬様

株式会社中外製薬様が経理のノンコア業務にアウトソーシングを活用することで、薬の開発に注力できるようになった事例です。

同社の経費処理は8人の派遣スタッフが担当していましたが、それぞれのスタッフで仕事の仕方が異なり、業務を標準化したいという思いがありました。また、製薬業界では取引先の病院や施設によって領収書や請求書の形式が異なるため大量のデータを一度に扱えず、経費処理の効率化も課題でした。加えて、派遣スタッフの入れ替わり時、新しいスタッフに仕事を覚えてもらうこともひと苦労でした。

そこで、中外製薬様はアウトソーシングを導入。半年の準備期間を設け、最初はパーソルテンプスタッフの派遣スタッフが指導を受け、業務を習得。同時に、パーソルテンプスタッフの「業務プロセスを構築する専門部署」と相談しながら業務プロセスも改善しました。

こうして経費処理の業務からアウトソーシングがはじまりましたが、コア業務である「薬の開発」にさらに注力できる環境をつくるべく、他の業務もコアとノンコアに仕分けしました。その結果「eラーニングのコンテンツ制作」や「システムアカウントの管理業務」などもアウトソーシングとしてお任せすることになったのです。

その後、経費処理の一部にRPAも導入して更なる効率化を実現。人とシステムの組み合わせで業務を進められる点に関してお客様から高い評価を得ています。

この事例では、アウトソーシング導入により業務量の軽減や業務プロセスの効率化を実現しました。詳細は以下の記事をご参照ください。

経理の人手不足の解決方法を理解する

経理業務は簿記などの専門知識が求められ、人材の確保が難しく、人手不足が生じやすい部門です。経理の人手不足が続くと人為的ミスや不正行為のリスクを高め、企業にさまざまな悪影響を与えるため、できるだけ早く解消しなければなりません。これらの問題を解消するためには、経理の採用・教育や業務フローの見直し、もしくはITツールや人材派遣・アウトソーシングの活用を視野に入れましょう。

本記事を参考に、経理の人手不足の解決にお役立てください。

経理の人材派遣、BPOならパーソルテンプスタッフへ

企業が人材派遣や業務委託を活用することは、「必要な時に必要なスキルをもった人材を活用できる」、業務委託は「人員配置のコストがかからず業務ごと任せられる」といったメリットがあります。

人材派遣とは、人材派遣会社が雇用契約を結んだ派遣スタッフを派遣先企業へ派遣する仕組みです。人材派遣を活用することで、繁忙期に一時的に増員したり、突発的にボリュームが増加する業務であっても、柔軟に対応することができます。また、自社の社員では対応できないような専門性の高い人材を派遣してもらうことも可能です。

パーソルテンプスタッフの人材派遣サービスでは、貴社のニーズに合わせた最適な人材派遣の活用方法をご提案いたします。

パーソルテンプスタッフでは、委託業務を対応しつつ業務の問題点を洗い出し、改善する「BPO」があります。BPOを利用すれば、人手不足の解消と業務の効率化を一気に解決可能です。2つの問題を一度に解決できれば、人手不足の影響も最小限に抑えられるようになります。

当社スタッフの豊富なノウハウを活かすことで、特性に応じた業務プロセスの再構築が可能です。さらに独自の自動化処理ツールの開発や、外部システムの導入支援にも対応しています。そのため、お客さまの課題解決につながるシステムのご提案が可能です。受発注管理業務の代行に関してお困りのことやご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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