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【人事ライン】
日本電気 渡部氏
組織・人事コンサルタントからHRへ ー 人と組織の可能性を諦めず、発揮させる ー

公開日:2023.10.10

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【人事ライン】 日本電気 渡部氏 組織・人事コンサルタントからHRへ ー 人と組織の可能性を諦めず、発揮させる ー

日本電気株式会社 People & Culture 部門 人材組織開発統括部 Global HR CoEシニアプロフェッショナル
YW coaching & consulting(個人事業主)
ハクナマタタ書店
渡部 優一 氏

「他の会社の人事ってどうやっているんだろう」「同じような悩みを抱えているのかな」
ちょっと知りたい、知っておきたいさまざまな企業の人事インタビュー『人事ライン』。
今回は、コンサルティングファームでの組織・人事コンサルタントから、企業の人事部門にキャリアチェンジをされた日本電気株式会社 People & Culture部門 人材組織開発統括部 Global HR CoEシニアプロフェッショナル 渡部 優一さんです。
人と組織を外側と内側、異なる視点で見るご経験や、複業などの活動がもたらすものについて伺いました。

― 渡部さんの今までのキャリアと現在のお仕事を教えてください。

新卒で人材サービス会社の営業を経験した後、コンサルティングファームに転職し、組織・人事コンサルタントとして2社の経験を経て、現在に至ります。
人材サービス会社の営業では求人広告代理店の担当をしていたので社長と話をする機会が多かったのですが、広く経営の話をできるのが面白かったこともあり、コンサルティングの仕事に興味を持ち、転職しました。コンサルティングの領域も戦略やIT、総合などいろいろ考えました。転職するにあたって自分の心が動くことは何かを振り返ったときに、学生時代にチームスポーツに熱心に取り組み、目標に向かってメンバーの動機づけを行ったり、チーム作りをしていく過程がとても面白かったしやりがいを感じた記憶がよみがえり、社会人になってもそうしたやりがいを感じる仕事に従事できたらいいなと思い、組織・人事領域のコンサルティングファームを選択しました。
約15年間のコンサルタントとしての経験を経て、現在はNECで、グローバルのタレントデベロップメントをリードするという役割で主にタレントマネジメントとサクセッションプランの領域を担当しています。
今年4月の組織再編で人事は「CoE」「HRBP」「HRコンサルティング」の3つに分かれた組織になりました。CoE(センター・オブ・エクセレンス)は専門性を活かしてHRやビジネスを支援するというところ、HRBP(HRビジネスパートナー)はより戦略的な課題、事業課題を組織人事で解決していく役割を持っていて、HRコンサルティングはいろいろな人事施策をしっかり浸透させていく組織です。私はこの中のCoEに属していて、日本のタレントディベロプメントを担当する部門や、HRBP、HRコンサルティングそれぞれと連携しながらGlobal HRの仕事をしています。

― 組織・人事コンサルタントから、企業の人事部門にキャリアチェンジをされたのは、どのような想いがあったのでしょうか。

コンサルタントの仕事はすごくエキサイティングで面白かったのですが、約15年と経験も長くなり、コンフォートゾーンにいるような感覚があったこと、40歳という年齢の節目に近づいていたということもあり、キャリアチェンジを考えました。
企業の人事に転職したのは、コンサルタントとして外側から変革に関わるアドバイスをするだけではなくて、実際に企業の内側に入ってみて、手触り感があるような変革を、自分も手を動かしながら携わるという経験をしたいと思ったからです。

実際に内側に入って変革をする立場になれば外側から見ているものとは違う景色があるんだろうなと思い、中に入ってみようと。そこがポイントとして大きかったです。
また、コンサルタントの世界って、誤解を恐れずに言えば性別や年齢や国籍に限らず基本的に論理的思考をベースにしてマインドセットも同質の人が多い世界なんですよね。多様な人と働いてみたいという想いもありました。英語を使いながら違う国籍の人と触れ合って仕事をすることも、コンサルティングファームの時にも経験していましたが、しっかり腰を落ち着けてグローバルなエリアでより経験値を積みたい、多様な人材と働きたいとも思っていたときに、縁がありNECに入社しました。

NECは元々は新卒中心の企業でしたが、最近は急激に中途採用を増やしていて、直近の計画でも新卒と中途の採用計画が同数というところまで変わってきています。人事にも中途で入ってきている人が多く、中途と新卒が結構混ざっているという感じで双方のよいところを活かし合っている組織ですね。
違いを感じるところとしては、どこの会社でもそうだと思いますが、よい悪いは別として、暗黙知なところでは認識とか言葉ひとつの理解が違うことは、やはりあります。新卒、中途ということでもそうでしょうし、事業会社間でも、仕事の進め方やスピードなど、いろいろなところで違いはあるなというのは、前職のコンサルタントとしてクライアントに関わっていた時と比べても、より実感しています。

― 企業の人事になってみてよかったことや、やりがいはどのようなところに感じますか。

人事になってよかったのは、やはりビジネスが目の前にあるということです。ビジネスの成長や目標の実現に貢献するために、組織とか人事の軸で何をしたらいいのかを考える距離感がすごく近いということですね。コンサルタントとしてもクライアントのビジネスがうまくいくためにはもちろんありましたが、どこか第三者的にならざるを得ない部分があるわけです。
ビジネスがうまくいくと、うまくいっていないというところの肌感覚やそれこそ手触り感が、今ビジネスはこういう風に動いていて、そのために組織をどう動かすのかという観点がすごく重要だったり、そのために何をするかなど、今経験できているというのはすごくよかったなと思っています。
コンサルティングファームへの転職時のお話でも触れましたが、もともと、組織や人事への興味というのは、学生時代ずっとチームスポーツをやっていてキャプテンなどをしていたことも影響していると思います。チームのメンバーとどうやって目標を合意して浸透させていくのか、どうしたらモチベーションが高まっていくのか、どういう練習をしたらいいのか、どうしたら勝てるのかなどを考えることが、ずっと身近なところにあったんですよね。
組織として成長していくために人という不可欠な経営資源に焦点をあててどう働きかけたらいいのか、組織をどう変えていくべきかのかということを考えることができることは人事のやりがいです。

― 個と組織、そしてビジネスを広い視点で見てこられた渡部さんですが、「人事とは何か」と聞かれたら、どのように表現されるのでしょう。

私は、基本的な自分のポリシーとして「人の可能性を諦めない」というのがあるのですが、人事の仕事は、人と組織の可能性を解放し最大限に発揮させるというところだと思います。
そして、人以外の経営資源の調達が比較的しやすくなっている昨今からすると、「経営ニアリーイコール人事」なのではないかなとも思います。人が変わることでの組織へのインパクトは、同じ経営資源のお金などよりも、断然インパクトや触れ幅が大きいですから。

― そんな人事に一番必要なもの、人と組織に関わる人に持っていて欲しいことは何だと思いますか。

そうですね。思いつくことは2つあります。一つはやっぱり「人に対する感度」ですかね。「こういうことをやったら響くのかな」「こういうことをやったらやる気になるのかな」とか「こういうのはちょっとしらけるのかな」とか、人への感度がないとやっぱり外部でも内部でも関わり方に関係なく、人と組織を動かすというときにうまくいかないんじゃないかなと思うんです。
もう一つは、「インテグリティ」というか、「誠実」という言葉に収まる範囲でもないと思うんですけれど、「倫理観」とか「誠実さ」とかですかね。

非常にセンシティブな情報を取り扱いますし、もし間違っていることならば、相手の耳に痛いことでもちゃんと言うとか、そういったことも含めてのインテグリティみたいなものを持ち合わせている必要があるのではないかと思います。

― 渡部さんは複業でコーチングやワークショップ、ファシリテーションと、さまざまな活動をされていますよね。

会社、仕事以外の学びや人との出会いは、自分の器を拡げてくれたり、価値観や大事にしていることを再確認させてくれたり、自分の仕事も人生もカラフルにしてくれるものだなと思っています。
1社目の時は会社と大学の友達ぐらいしか交流範囲がなかったのですが、2社目に転職したときに、フリーランスの方も含めて…フリーランスのはたらき方も知らなかったのですが、仕事をきっかけに知り合いが増えたことがありました。それこそ、年間200日はたらいて、残りは趣味のワインを買いに行ったり、いろいろなところに旅行していたりする方もいて。そんな生活があるんだ、と。さまざまなはたらき方をしている人に、20代後半の時期に会ったというのは、自分の価値観やこれまで経験してきたものとは異なる世界の人を知ることの価値や意義ということにおいて、結構大きかったなと思います。
また、コンサルタント時代はずっと忙しい状況だったのですが、プロジェクトがうまくいかなくて日々イライラしているときがあったんです。その状況を脱したくてマインドフルネス(意図をもって、今の瞬間に、評価や判断を手放して、注意を払うことから、わき上がる気付きの状態)に足を踏み入れたことも、大きなきっかけでした。前職のとき、当時の社長に「マインドフルネスを受講してきたのだけれど、仕事にもよい影響があるので社内でやってみてもいいですか」ってお願いして、それから社内の人に向けてお昼休みにやり始めたりして。
それから、LEGO®SERIOUS PLAY®というレゴを使った、遊びと学びの融合の中に問題解決のプロセスをおり交ぜたワークショップがあるのですが、それに足を踏み入れたり、コーチングを学び始めたり、仕事以外のことを気軽にやってみようかなという風になりました。
仕事でやっていることの周辺領域で「こういうものがあったらもっといいかも」と思うものに行ってみて、知り合う人もすごく広がりましたし、そこからまた人を紹介してくれて輪がつながっていって、というようなこともありました。

時間の切れ目などで「これ面白そう」みたいなことに、半日や1時間ぐらいのものでもいいので行ってみるとか、それだけでも全然違うと思います。「リスキリング」とか「越境学習」とかいうと敷居が高く感じますよね。また、「英語ができなければこれからはだめだよ」とか、ずっと言われ続けていたり、いろいろなテーマで「次はこれもやらなきゃ」といったものが出てきて。そういったものを「やってみなければ!」と一歩踏み出すのは、結構辛いですよね。
そんな風に何かをやる、ということではなくて、あまり難しく考えずに、気になるコーヒーショップを見つけて行ってみるとかだけでも違ってくるのではないでしょうか。

― 人事の仕事、その他の仕事、活動は、一つの何かにつながっているのでしょうか。

私が作り出したい世界観なのですが、「一人ひとりが自分の持ち味を活かし、助け合いながら対話をして共に何かをつくっていくような世界」になればいいなと思っているんです。
競う争うという「競争」ではなく、共に創造する「共創」という言葉が好きなのですが、リスキリングとかいろいろ頑張らなきゃいけない、生きていくのも大変、でも生き残るためにはやれみたいな…そのような世界ではなくて、すでに持ち合わせている自分の持ち味を発見し、それを活かしてご機嫌にハッピーにはたらきながら、助け合って何かをつくり上げていくような優しい世界になっていくといいなと思っていて。
そのための役割というか手段として、これまでやってきたコンサルティングもそうですし、今の人事もそうですし、複業で行っているコーチングやワークショップのファシリテーションも含め、そういう世界が出来上がっていくといいなとそんなふうに思いながらやってきています。
NECの中でももっと対話が当たり前のような世界を作っていきたいです。自分もまだまだできていないので、もっといろんな人と対話をしながら共に作っていくとか、アイデア出しをするとか、もっともっとやっていきたいと思っています。グループ全体では12万人くらい社員がいるのですが、自分の顔の見えるところから対話をしていくと、その場が広がっていくんじゃないかなと思っています。

― 他の会社の人事の方に聞いてみたい、知りたいと思うことはありますか。

「社員の人たちは本当に幸せにはたらいていますか」っていうことが最近気になっているんです。ビジネス、事業としては「頑張ってこういう変革をしてます」のようなことがあふれています。でも、社員を置き去りにしていないといいなって。
幸せの価値観がバラバラな中で、個々の幸せ度みたいなものがある一定以上の状態に事業と両立させてというか並行させて、そこを一定以上にしていくためには、会社として、また人事という立場の中でどこまでできるのか、どこまでやることがよいのかが、難しいことだなと思います。ですので、社員の幸せややりがいとビジネスとしての成功を両立するために、どのような取り組みをやっているのか、人事の皆さんにお聞きしたいです。
幸せ度ってどうしたら測れるのか、客観的な指標はあまりないじゃないですか。すごく極論をいってしまうと「その組織で過ごしてる時間に笑顔があるかどうか」。それはすなわち「隣に座っている人を笑顔にさせられているかどうか」ということなのではないかと思うんです。

組織人事コンサルタントから人事へのキャリアチェンジをし、複業でも人と組織に目を向けた活動をされている渡部さんは、大きな「ビジネスや組織」と小さな「一人ひとり」の両面に対し真摯に考え、想いを持って向き合っていらっしゃいました。
また、ロジカルで現実的な一面と共に、こういう世の中や世界になってほしい…そのようなハートフルな部分を両方兼ね備えた人事パーソンの渡部さん。
「隣に座っている人を笑顔にさせられているか」「一人ひとりが幸せにはたらく、笑顔でいることと事業の成果の両立に向けて人事は何ができるのか」最後の投げかけに皆さんは何と答えますか。

Profile

日本電気渡部 優一 氏

日本電気株式会社
People & Culture 部門 人材組織開発統括部 Global HR CoEシニアプロフェッショナル
YW coaching & consulting(個人事業主)
ハクナマタタ書店
渡部 優一 氏

総合人材サービス企業にて求人広告の営業に従事した後、経営コンサルタントにキャリアを転じ、日系組織人事コンサルティングファーム、外資系組織人事コンサルティングファームにて約15年間にわたってコンサルティングプロジェクトをリード。 組織と人に関する多種多様なプロジェクトに携わり、包括的なコンサルティングを通じた企業変革に従事。2022年2月に日本電気株式会社に入社し、グローバルのサクセッションプラン、タレントマネジメント、人材育成等を推進中。
「誰もが持ち味を活かしてイキイキと活躍する世界」を願い、本業以外でもエグゼクティブ/ライフコーチング、レゴ®ブロックやアートを活用したリーダーシップ開発のワークショップなどを提供している。

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