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【人事ライン】
メルカリ 唐澤氏
相手の価値観を知り、人を巻き込む 

公開日:2023.05.29

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【人事ライン】 メルカリ 唐澤氏 相手の価値観を知り、人を巻き込む 

メルカリ株式会社 People and Culture HRBP 兼 社内コーチ
唐澤 圭 氏

「他の会社の人事ってどうやっているんだろう」「同じような悩みを抱えているのかな」
ちょっと知りたい、知っておきたいさまざまな企業の人事インタビュー『人事ライン』。
今回は、新卒で大手総合商社に入社後人事部門でキャリアを積み、現在はメルカリにて、これまでのご経験や社外でのさまざまな活動と学びを活かし活躍されている、株式会社メルカリ People and Culture HRBP 兼 社内コーチの唐澤圭さんです。伝統のある日系商社からベンチャー企業に場を移し「人事」に携わり続けている唐澤さん。組織や風土の違いや人事における共通点についても伺いました。

― 唐澤さんが新卒のときに自ら人事を志望されたきっかけや、実際に仕事に就かれてから感じたことなどを教えてください。

新卒で入社した大手総合商社で入社前に配属面談があり、この会社で何をやりたいかと考えたときに、いろいろなビジネスに関わる商社だからこそ、人事に興味を持ちました。商社の魅力の一つは「ラーメンからミサイルまで」といわれるようにあらゆるビジネスがある中で、人事であればコーポレート側として全社を見られるということも人事を志した理由です。

人事の仕事に携わり、特に面白かったところは、学生から見た人事は採用や研修くらいのものですが、実際は労務や組織開発など幅が広く、奥が深いのだなと感じました。もともと法律や知識を勉強して身につけることが好きだったので、最初に携わった労務という仕事も、労働基準法やガイドラインなどを自ら勉強して会社の役に立てるのでやりがいがあるな、と思っていました。

また、私が入社したときに、会社の経営戦略の一環としてワークライフバランスを取り入れていこうということが経営会議で決定され、ちょうど36協定やサービス残業が世間で話題になった時期でもありました。疲弊感をなくし健全なはたらき方でパフォーマンスを上げていこうという時代の潮流の中で、女性に限らずいろいろな人がはたらきやすい環境を作ることによりクリエイティブな仕事をしていこうという方針が採択されました。私もワークライフバランス推進委員会の事務局の一員になり、その一端を担うとともに、自分の想いを重ね合わせていたところもありました。

― 大手総合商社から転職し、以前との違いをどう感じていますか。また、環境や社風が異なる2社の人事を経験される中で、人事施策を実現するにあたり、感じたことやアドバイスはありますか。

総合商社もとても好きだったのですが「全く違う環境に飛び込んでチャレンジしてみたい」という気持ちが大きくなり、転職しました。メルカリに入社したときは、いい意味で「全く違うな」という違いや刺激を楽しんでいました。人事施策を実現するにあたり、自分の主張を伝えるときに大事だと思うことは前職から変わっていません。例えば役員の方々に話すのであれば「経営全体としてどういう方向に進みたいか」など、相手の関心事や価値観だったり、まずは伝えたい相手に刺さる情報を得ることが重要だと思っています。

そうして「周りを巻き込む」ことは、以前の会社も今の会社でも同じく大事なことだと思っています。

「周りを巻き込む」ということは、ある意味「根回し」という言葉に近しくネガティブに捉えられることも多い気がします。それについて、とある総合商社出身のアパレル会社の社長の「それは根回しではなく、プロジェクトマネジメントだと思ってください」という言葉があり、とても印象に残っています。自分のやりたいことを実現するためにキーパーソンを探し、その人を説得するためにはどういう材料が必要なのかということを考え、事前に説明し合意をとっていく…その過程は周りを巻き込みながら進むこと。程度の差こそあれど、どこの組織でも「周りを巻き込む」ということはとても重要なことだと思っています。

そういう意味では、メルカリでは文化として「1on1(ワンオンワン)」が根付いており、いつでも誰でもどの人に「1on1」を依頼してもいいですよ、という文化があります。それも後押ししてくれて、人事施策を進めていく際にはキーパーソンに自分から1on1をセッティングし、話をしていくことを心がけています。

― 唐澤さんはプロコーチを取得されるなど会社の外でも積極的に学ばれていますが、それが人事の仕事にどのような影響を与えていますか。

コーチングを学んだことで自分に自信が持てたり、コミュニケーションの重要性に気付きました。また社外での学びを通じて、多様な価値観を前提に幅広い視野から物事を考えるようになり、自分の力になったなと思っています。経営大学院に加えコーチングの学びや外部の人事勉強会への参加をする中で、所属している組織が言っていることは必ずしも正しいわけではなく、正解は一つではないのだということを感じたり、世間一般やこれからの時代はこうなんだ、こういう考え方もあるのだという感覚を身につけ、客観的、俯瞰的に、自社を見ることができるようになったと感じます。

自分が発言するにときにもいきなり反論から入るのではなく「この環境で、この組織で、この文脈の中ではこれが正しい」と思う人もいるという前提で「だけど外ではこういう考え方もあるのです」とフラットに言えるようになりました。前職のときの上司にも「以前とは変わったよね」と言ってもらえるようになりました。

― コーチとしてのご自身と人事としてのご自身は、重なる部分があると思います。今後どのようなことを目指していきたいですか。

この4月からはホールディングス部門のHRBP(HRビジネスパートナー)を担当することになりました。今まで タレントマネジメントチームで経営人材育成をやっていた流れで 、社員、コーチ、人事、三者の連携も今後はやっていきたいなと思っているところです。組織の中にいる人たちを元気づけ活性化する、特にシステムコーチングの関係性をよくすることで組織のパフォーマンスが上がるということを信じているので、所属している組織のために推進していけたらと思っています。

私のキャリアという意味では、将来的にどこかの会社のCHRO(最高人事責任者)もできたら素敵だと思いますし、IC(インディビジュアル・コントリビューター)として独立した組織開発の専門家として、エキスパートになるのもいいなと思っています。いずれにしても、これからも人と組織に関わっていけるようにさまざまなことにチャレンジし、学んでいきたいです。

※専門性で組織に貢献し、部下を持たない社員やフリーランスなどの個人メンバー

組織の中で与えられた場所で努力をすることと、ご自身がやりたいと思うことも周りを巻き込み進めていく、両面を併せ持つ唐澤さん。また積極的に組織の外でも学び活動し、さまざまな価値観に触れることで自組織をよりよくしながらも、一人ひとりに寄り添っていこうという姿勢が印象的でした。
人事だからこそポジティブに捉え、広い視点と一人ひとりに寄り添うことを大切に、常に笑顔な唐澤さんは「周りを巻き込む」だけでなく「周りを引き付ける」人事を体現されていました。

Profile

メルカリ唐澤 圭 氏

株式会社メルカリ
People and Culture HRBP 兼 社内コーチ
唐澤 圭 氏

大手総合商社で18年間労務・部門人事・人材開発・グローバル人事など一貫して人事業務に従事した後、2022年4月株式会社メルカリに入社。経営人材育成やグループミッション浸透を担当した後、2023年4月よりHRBP。
「誰もがイキイキと自分らしく輝ける社会を創る」ことをLife Purposeに掲げ、本業外でもキャリア教育系NPOで高校生向け公演や保護者向けセミナー等の登壇、コーチングセッションの提供などを継続している。

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