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人材派遣のマージン率と計算方法とは?

公開日:2023.05.15

人事ナレッジ

派遣スタッフへ支払う賃金の他に、派遣先の企業からはさまざまな費用が支払われており、「マージン」と言われています。マージン率はそれぞれの人材派遣会社により定められており、会社によって異なります。マージン率やその内訳は各社公表されていて、確認することが可能です。今回は、マージン率やその計算方法、マージンは一体どのようなことに使用されているかなどを詳しく解説します。

人材派遣のマージン率とは

派遣先が人材派遣会社に支払う派遣料金のうち、派遣スタッフへ支払う賃金部分を除いた額の合計を「マージン」、マージンが派遣料金全体に占める割合を「マージン率」と言います。マージンはすべて人材派遣会社の利益ではなく、さまざまな費用が含まれています。

以下のグラフは、全国の人材派遣会社約800社が加盟する「一般社団法人日本人材派遣協会」による調査データです。人材派遣会社や職種などによって違いはありますが、派遣料金の内訳は派遣スタッフに支払われる賃金が約70%、人材派遣会社が負担する派遣スタッフの社会保険料が約10.9%、派遣スタッフが有給休暇を取得した場合の賃金分が約4.2%となっています。

残り15%程度が人材派遣会社の運営経費と営業利益です。運営経費の中には、オフィスの賃料や社員の人件費、スタッフ登録促進のための宣伝広告費や派遣スタッフへの教育研修費に加え、派遣スタッフへの慶弔見舞金、健康診断の費用などの一時的な福利厚生費も含まれています。

派遣料金の構造

※参照:一般社団法人日本人材派遣協会|派遣料金の構造

人材派遣のマージン率の計算方法について

マージン率は以下の計算式で算出します。
(派遣料金の平均額 ― 派遣スタッフの賃金の平均額) ÷ 派遣料金の平均額 × 100

マージン率は人材派遣会社によって異なりますが、厚生労働省が発表した「マージン率等の情報提供について」によると、おおよそ30%前後の水準となっています。

派遣料金の平均額というのは派遣スタッフ1人1日(8時間)当たりの労働者派遣に関する料金の平均額、派遣スタッフの賃金の平均額は派遣スタッフ1人1日(8時間)当たりの労働者派遣に関する賃金の平均額を指します。

例えば1日当たりの派遣料金の平均額が15,000円、1日当たりの派遣スタッフの賃金の平均額が10,500円の場合、マージンは下記のように計算します。
(マージン)15,000円 - 10,500円 = 4,500円

そして、マージン率は下記のように計算します。
(マージン率)4,500円 ÷ 15,000円 × 100 = 30%

人材派遣のマージン率の相場について

※引用:厚生労働省|マージン率等の情報提供について

マージンはすべて人材派遣会社の利益になるのではなく、有給休暇の適切な取得や、社会保険料、資格取得推奨などの教育訓練、社員と同等の交通費支給など、法令を順守し、派遣スタッフが安心して業務に取り組める環境づくりのための費用が含まれています。

そのため一概に「マージン率は低いほどよい」とはいえません。人材派遣会社を選ぶ上で、マージンが何に使われているかという情報を知っておくことも重要です。

人材派遣のマージン率の確認方法

人材派遣会社のマージン率はどのように確認すればよいのでしょうか。すべての人材派遣会社は、2012年の労働者派遣法改正により、毎事業年度に1回、事業所ごとの派遣料金の平均額などの情報提供を行わなければならないと定められました(労働者派遣法第23条第5項)。

厚生労働省の「マージン率等の情報提供について」によると、情報提供が義務とされているのは、以下の7点です。

  1. 派遣労働者の数
  2. 派遣先の数
  3. 派遣料金の平均額
  4. 派遣労働者の賃金の平均額
  5. マージン率
  6. 労使協定を締結しているか否かの別等
  7. 派遣労働者のキャリア形成支援制度に関する事項

マージン率の確認方法は、「常時インターネットの利用により広く関係者、とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること」と厚生労働省の指針があり、インターネットやパンフレットなどで情報を得られることが多いです。

一般的な人材派遣のマージン率の内訳

派遣スタッフに支払われる給与を除いたマージンは、すべてが人材派遣会社の利益になるわけではなく、さまざまな費用になります。どのような内訳になるのか、詳しく解説します。

社会保険料

国によって設けられた保険制度である社会保険です。派遣スタッフの場合、健康保険、介護保険、厚生年金、労災保険、雇用保険という5種類の社会保険料(会社負担分)は、雇用主である人材派遣会社が負担します。その保険料も、マージンの中から支払われています。

有給休暇費用

派遣スタッフが有給休暇を取得する際、派遣先の企業ではなく人材派遣会社がその費用を支払う仕組みになっています。このような費用も、マージンから支払われるのです。

会社運営経費

人材派遣会社も、事業を運営するにはさまざまな経費がかかります。マージンは、人材派遣会社の運営のためにかかる経費にも充てられています。

教育訓練費

マージンは、派遣スタッフに対する研修など教育訓練のための費用としても使われています。派遣スタッフがスキルアップをし、活躍の場を増やすための経費です。

営業利益

最後に、営業利益です。これまで解説した経費を差し引いて、残ったものが営業利益になります。「一般社団法人日本人材派遣協会」の調査データによると、派遣料金の1.2%がこれにあたります。

人材派遣のマージン率について理解する

派遣先が人材派遣会社に支払う派遣料金のうち、派遣スタッフへ支払う賃金部分を除いた額の合計を「マージン」、マージンが派遣料金全体に占める割合を「マージン率」と言います。

計算方法は以下の通りです。
(派遣料金の平均額 ― 派遣スタッフの賃金の平均額) ÷ 派遣料金の平均額 × 100

マージンの内訳は社会保険料、有給休暇費用、会社運営経費、教育訓練費、営業利益です。派遣スタッフへの福利厚生や、派遣スタッフのスキルアップのために使用されることもあり、マージン率が低ければいいと一概に言えるものではありません。人材派遣会社を選ぶ際には、提供されている情報を確認し、自社に合った人材派遣会社を総合的に判断することが大切です。

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