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給与計算アウトソーシングのメリットや自社にあった選び方をご紹介

公開日:2023.05.26

更新日:2024.04.26

人事ナレッジ

給与計算アウトソーシングは、社員の給与計算などの事務作業を代行してくれるサービスです。従業員一人ひとりに支払う給与を算出する給与計算は、経理の中でも特に時間と手間のかかる業務で、担当者にかかる負担は大きく、企業はリソース不足に陥りがちです。しかし、給与計算アウトソーシングを導入すれば、ミスの防止に役立ち、業務効率化にもつながります。

本記事では、給与計算アウトソーシングのメリットやデメリット、自社にあった委託先の選び方などについて解説していきます。活用する際の参考にしてみてください。

目次

給与計算アウトソーシングとは、給与計算などの事務作業を代行してくれるサービス

給与計算アウトソーシングとは、社員の給与計算や年末調整などの事務作業を外部に委託することです。

給与計算は基本給や残業代、税金の計算など、作業内容は多岐にわたります。このため従業員数が多いほど、担当者の負担は大きくなりがちです。給与計算をアウトソーシングすることで、当該業務に精通したスタッフへ仕事を任せることができ、生産性UPや人的コストの削減が期待できます。

アウトソーシングについては、こちらの記事で詳しくご説明しています。
>>【わかりやすく解説】アウトソーシングとは?活用方法と派遣との違い


給与計算アウトソーシングで依頼できる業務

給与計算アウトソーシングで依頼できる業務は大きく6つあります。

  1. 給与計算の代行
  2. 振込や納税の代行
  3. 住民税更新の代行
  4. 賞与計算の代行
  5. 労働・社会保険業務の代行
  6. 年末調整の代行

それぞれについて解説します。

給与計算の代行

タイムカードなどの勤怠管理データをもとに、毎月の給与額・源泉徴収額・手取り額の計算を代行します。残業代や社会保険料、所得税、住民税の計算が含まれます。


振込や納税の代行

給与計算の結果から給与振込データを作成し、振込をします。また、税金の納付業務を代行します。


住民税更新の代行

住民税は前年の所得金額に基づいて決まります。毎年5~6月、従業員の居住地から送付される「特別徴収額通知書」に書かれた課税額をもとに、毎月控除する住民税額を更新します。


賞与計算の代行

法律で規定されていない賞与は、会社独自の基準で支給されます。金額や支給されるタイミングも決まっていないため、通常は「給与計算の代行」に含まれません。


労働・社会保険業務の代行

社会保険※も、年度更新が必要な業務です。年次更新や算定基礎届、月額変更届等の書類作成を代行します。

※社会保険とは、雇用保険、健康保険、厚生年金、介護保険、労災保険の総称です。


年末調整の代行

年末から年初にかけた繁忙期に行う年末調整は、担当者の負担が大きい作業です。源泉徴収票、支払報告書、法定調書合計表などの作成に加え、税務署・市区町村への書類提出を代行します。


給与計算アウトソーシングの5つのメリット

給与計算をアウトソーシングすることのメリットは5つ挙げられます。どの項目が自社の課題解決に最も貢献できそうか、見比べていきましょう。

コア業務に集中できる

「コア業務」とは、自社の利益に直結する業務です。企業活動の根幹を成すため対応の難易度が高く、専門的な判断を必要とします。よってコア業務自体は省力や効率化が難しいです。

対して「ノンコア業務」とは、コア業務の遂行をサポートするために必要な業務全般を指します。コア業務と比べて対応の難易度が低く、専門的な判断を必要としないことが多いため、効率化を図ることができます。

「煩雑な庶務に追われて業務の本分を全うしづらい…」と悩む企業は多いです。ノンコア業務をアウトソーシングすることで、自社のメンバーがコア業務に取り組む時間をより多く確保できます。自社以外に任せられる業務を判断すれば、生産性を向上させることが可能です。


法令改正に対応できる

法令改正がおこなわれた際、自社の社員が完璧に対応することは至難です。業界によっては国政の影響を大きく受ける場合があります。業界動向を追い続けることに加えて法令改正への適切な対応を即時判断・実行できるプロフェッショナルは、自社に一人でもいれば良い方でしょう。また一人だけ専門的な社員がいる場合においても、その人材が転退職した際のリスクヘッジに悩む企業は多いため、アウトソーシングを検討する企業が増えています。

給与計算の業務を受託会社などにアウトソーシングすると、専門家による対応がなされるため、法令改正による変更点の見落としや違反による罰則回避などが期待できます。


属人化を防止できる

組織運営が属人的になると、業務の全容を「担当者のみが把握している」という事態に陥りがちです。担当者が病気などで突発休暇に入ると、重要な給与計算の業務が滞ってしまいます。

アウトソーシングを活用して給与計算業務を外部に委託すると、専門性の高い業務であっても属人化を予防できるでしょう。また、給与計算アウトソーシングすることで業務プロセスが整理され、マニュアル化が行われるため、業務の属人化を防止できます。


繁忙期への対応もできる

繁忙期など「特定の時期」だけ、給与計算アウトソーシングを活用することが可能です。業務が集中する時期にだけ給与計算をアウトソーシングすれば、自社の人的リソースを確保する必要がなくなります。

毎年の繁忙期に絞って業務を委託することもできます。短期間のアウトソースにおいて「派遣スタッフの活用」をお考えの企業様もいらっしゃるでしょう。ただ派遣スタッフ利用の場合は「自社の社員が毎年教育する」という業務コストが発生します。教育専門の社員がいれば問題ありませんが、イレギュラーが起きやすい繁忙期は物理的・精神的な余裕を自社の社員が持ちづらいです。

特定の数か月を継続的に業務委託する選択は、生産性UPのみならず繁忙期に業務の本分へ集中しやすいと考えられます。


給与計算ソフトのメンテナンスコストが削減できる

自社で給与計算業務を行う場合は人的リソースのみならず、社会保険料の変更等による給与計算ソフトのメンテナンス費用も発生します。

給与計算をアウトソーシングすることでシステムを自社で持つ必要がなくなるため、メンテナンスコストを削減できます。


給与計算をアウトソーシングする際の注意点3つ

給与計算をアウトソーシングする際の注意点が3つあります。それぞれについて解説します。

社内にノウハウが蓄積されづらい

給与計算業務をアウトソーシングすると、その業務に携わる機会が減るので、自社にノウハウが蓄積されにくくなります。

自社が保有するノウハウが古いままで止まってしまうため、定期的に受託会社にノウハウをフィードバックしてもらい、状況を正しく把握しておくことが大切です。


受託会社と情報管理の取り決めが必要になる

アウトソーシングは受託会社に自社の給与情報や従業員の個人情報を提供するので、情報漏えいのリスクが生まれます。ひとたび事故が発生すると悪影響は回避できないことから、事前に情報管理に関する取り決めや検証などを受託会社と確認しましょう。

また、受託会社を選定する際は、セキュリティー対策の姿勢やプライバシーマークの取得について確認し、慎重に検討する必要があります。


一部業務負担が残る場合がある

給与計算アウトソーシングは受託会社によって対応範囲が異なるため、一部の業務については委託できず、自社で行うケースも出てきます。

一部分のみの給与計算をアウトソーシングした場合、代行会社と従業員のやり取りに手間がかかったり、利用しているシステムと連携できなかったり、かえって作業負担が増えてしまうケースもあります。

給与計算アウトソーシングを検討する際は、受託会社にどこまで業務を依頼できるのか、必ず把握しておきましょう。


給与計算アウトソーシングが向いている企業

給与計算アウトソーシングが向いている企業の特徴は3点あります。それぞれについて解説しますので、自社の状況と照らし合わせながらご覧ください。

担当者が1名しかいない企業

給与計算の担当者が1名しかいないと、給与計算担当者が退職した際に業務が滞る恐れがあります。このような状況にある企業は、給与計算アウトソーシングを行うことで課題を解決できます。

給与計算は毎月必ず行う業務です。給与計算アウトソーシングを活用し、常に安定した運用ができるようにしておきましょう。


専門知識を持つ担当者がいない企業

給与計算に関わる保険料率や社会保険料率などは、随時法改正が行われるため、担当者は常に最新情報に対応した専門知識が求められます。社内で給与計算業務を行う場合、専門知識を持った従業員を確保しなければ、誤った処理が行われる可能性があります。

自社で人材を育成するには、長い時間を要します。しかし、給与計算アウトソーシングを行うことで、人勢育成のコストや時間を削減し、適切な給与計算や税処理が行えるようになるのです。


担当者が他業務を兼任している企業

特に、給与計算を担当する従業員がコア業務を兼任している企業と、経営者自身が給与計算を行っている企業は、給与計算アウトソーシングがおすすめです。

給与計算アウトソーシングを導入することで、前者の場合は従業員がコア業務に注力できるようになり、後者の場合は経営者が事業の推進に専念できるようになります。


給与計算アウトソーシングの料金相場

給与計算アウトソーシングの料金相場を、2つのケースに分けて解説します。

給与計算のみ依頼する場合

給与計算代行では、従業員一人ひとりの出退勤データを精査し、残業時間や保険料等を計算する業務を依頼できます。

単純な給与計算のみを依頼する場合、従業員数ごとの料金相場は以下のとおりです。

従業員数 月額料金相場
従業員数10人 1.5万~2万円
従業員数50人 4万~6万円
従業員数100人 8万~10万円
従業員数500人(※) 年間300万円~
従業員数1,000人(※) 年間500万円~

※数百人規模になると対応できる代行業者が限られ、事前の相談が必須となります。

給与計算以外も依頼する場合

給与計算代行では、毎月の給与から源泉徴収した所得税を年末に精算する年末調整もオプションで依頼できるケースが多いです。

給与計算代行は従業員1人あたり1千?2千円、年末調整代行は500?2千円が相場となります。代行業者によって基本料金や初期設定費用がかかったり、オプションの範囲が異なったりするため、詳細をよく確かめるようにしましょう。

パーソルテンプスタッフでは、人事・労務の領域の中に給与計算アウトソーシングのサービスも包括的にサポートしています。ご依頼いただく業務範囲や従業員規模によって料金体系が変わってまいりますので、お見積りご希望の方は別途お問い合わせください。


給与計算をアウトソーシングする依頼先

給与計算をアウトソーシングする依頼先は、主に3つ挙げられます。それぞれの特徴について解説します。

税理士

税務の専門家である税理士は、年末調整の計算をはじめ、源泉徴収票の作成まで対応してくれます。ただ、人事労務に関しては社会保険労務士の範疇のため、社会保険に関する手続きなどを税理士が行うことはできません。

月額の顧問料内で給与計算アウトソーシングを行っているケースもあるので、契約している顧問税理士がすでにいる場合は、確認してみることをおすすめします。


社会保険労務士

社会保険労務士は、社会保険や雇用保険についての専門家です。そのため、基本的な給与計算の算出だけでなく、社会保険料や残業代の算出なども適切に対処してもらえます。また、給与計算に関する法改正情報等も専門家として把握しているため、法令違反の恐れもなくなります。

ただし、年末調整の代行は税理士の範疇なので、社会保険労務士が行うことはできません。


人材アウトソーシング会社

給与計算業務の代行はもちろん、システム構築から運用サポートなど、幅広い業務に対応してもらえるのが特徴です。給与計算業務以外のアウトソーシングを検討している場合は、候補先に入れてみるのもよいでしょう。

給与アウトソーシングを含めて包括的にサービスを提供しているパーソルテンプスタッフの人事・労務のアウトソーシングにぜひお任せください。


給与計算アウトソーシング会社の選び方

企業は従業員数の規模によって抱えている課題が異なるため、給与計算アウトソーシング会社の選び方も規模別に考えていくことが大切です。

小規模企業の場合(10人程度)

従業員が10人程度の小規模企業の場合、顧問契約している税理士や社会保険労務士へのアウトソーシングを検討しましょう。

従業員規模が小さくても、担当者は税務の専門的な知識が必要です。顧問税理士や社会保険労務士に委託すれば、自社にない専門知識を補ったきめ細やかなサービスが期待できます。


中規模企業の場合(50人以上)

従業員が50人以上の中規模企業が抱えている課題として、以下のようなものがあります。

  • 給与計算業務の担当者の負担が大きくなる。
  • 雇用形態が複数ある。
  • 入退社がたびたび発生する。

こうした業務負担を軽減するためには、中小企業を専門にしている給与計算代行会社を選ぶのがおすすめです。次いで、規模が大きめの税理士事務所や社会保険労務士事務所を検討するとよいでしょう。


大規模企業の場合(100人以上)

企業規模が大きくなってくると、給与計算の他にマイナンバーカードの管理など、給与計算と付随する業務のボリュームが増えてきます。人的資源と専門性を持つ規模の大きいアウトソーシング先を活用することで、コア事業への人的資源の注力やコスト削減などのメリットが生まれます。

大規模企業の場合、給与計算を完全にアウトソーシング先に委託しているケースが多いです。


給与計算アウトソーシングで起こり得るトラブル

給与計算アウトソーシングをする際は、自社にあった依頼先をしっかり選定しないとトラブルにつながることがあります。

給与計算アウトソーシングで起こり得るトラブルの例を以下で紹介しますので、お役立てください。

業務範囲が明確になっていない

アウトソーシング先がどのようなサービスができるのか細かく確認し、なおかつ、自社でアウトソーシングを導入する目的を明確にしておきましょう。想定外の業務により、追加費用が発生するケースがまれにあります。

また、せっかくアウトソーシングしたのに、最も委託したかった業務が社内に残ってしまったら本末転倒です。アウトソーシング先の業務範囲を明確にしておけば、トラブルの防止になります。


計算結果にミスがある可能性がある

正確さが要求される給与計算でミスが起こるケースがあります。アウトソーシング先とのオペレーションをきちんと決めていなかったり、導入時の設定をおろそかにしたりしていると、ミスが起こる可能性が高まります。


法律への対応ができていない

社会保険料や所得税控除など、給与に関する制度は頻繁に変わります。法令違反を未然に防げることは給与計算アウトソーシングのメリットですが、法律が変わった際にきちんと対応できる会社を選ばないとリスクが生まれてしまいます。

法律への対応がしっかりなされているか、アウトソーシング先を選定する際は、他社の導入実績なども参考にして検討しましょう。


給与計算をアウトソーシングする際は自社にあった外注先を選ぶ

ルールが複雑な給与計算業務にアウトソーシングを活用すると、コストの削減やミスの防止といったメリットが期待できます。担当者の負担削減やコア業務への集中など、大きな効果も見込まれます。今後、給与計算アウトソーシングの活用はますます進むのではないでしょうか。

一方で自社に給与計算のノウハウが蓄積されないなど、いくつかの注意点も存在します。また、給与計算業務を委託できるアウトソーシング先も数が多いです。

給与計算アウトソーシングの導入効果を高めるためには、自社の規模や抱えている課題や依頼したい内容などを整理することが大切でしょう。プロセスやステップの分解が難しい場合は、各サービスを比較・検討するなかで積極的に担当者へ尋ねることをおススメします。

パーソルテンプスタッフでは、人事・労務の領域の中に給与計算アウトソーシングのサービスも包括的に提供しています。属人的な業務を自動化しながらアウトソーシングできる余地を探すお手伝いができますので、業務委託をご検討の際はぜひ当社へお問合せください。


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