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アルバイトと人材派遣の違いとは?それぞれのメリットと留意点を解説
公開日:2023.04.12
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アルバイトと派遣スタッフは、自社のニーズに合わせて柔軟に採用することのできる雇用形態です。だからこそ、人材を活用する際はどちらを選べばよいか迷う企業も多いでしょう。
両者の違いについては、大きく5つの観点から確認できます。
- 雇用主
- 雇用期間
- 勤務時間
- 給与
- 福利厚生
本記事では、アルバイトと人材派遣サービスについてそれぞれ解説しています。両者の特徴を把握し、人材活用の参考にしてみてください。
アルバイトと人材派遣の違いについて
厚生労働省のサイトに記載された「さまざまな雇用形態」によると、雇用形態の定義が、それぞれ下記の通りに記載されています。
【アルバイト】
アルバイトとは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者を指します※(パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます)。「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります。
※本記事では「パートタイム労働者」のことを「アルバイト」と表現します
【派遣スタッフ】
派遣スタッフとは、人材派遣会社(派遣元)との間で雇用契約を結び、派遣先の指揮命令のもと業務に従事する労働者を指します。
アルバイトと人材派遣の違いには、主に以下の5つの観点があります。
- 雇用主
- 雇用期間
- 勤務時間
- 給与
- 福利厚生
それぞれの違いについて解説していきます。
雇用主
アルバイトの場合は、業務の指示を出す企業と直接雇用契約を結びます。
一方で、人材派遣サービスは、企業が人材派遣会社との間で労働者派遣契約を結びます。派遣スタッフは「派遣先」の指示のもとはたらきます。この場合、「雇用主」は派遣先ではなく、登録している人材派遣会社ということになります。
雇用期間
アルバイトの場合は、契約期間の更新が続く限り同じ事業所ではたらき続けることができます。
一方で、派遣スタッフは、労働者派遣法の定めにより派遣先の同一の事業所において、継続して3年を超えて就業することはできません。ただし、下記に該当する場合は、期間制限の対象外となります。
- 派遣元で無期雇用されている派遣スタッフ
- 60歳以上の派遣スタッフ
- 有期プロジェクト業務
(事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定期間内に完了するもの) - 日数限定業務
(1ヶ月間に行われる日数が通常の労働者に比べ相当程度少なく、かつ、月10日以下であるもの) - 産前産後/育児休業・介護休業代替業務
勤務時間
労働基準法によって労働時間は制限されています。1日8時間を超えない、1週間で40時間を超えてはいけないというのが決まりです。この労働時間のルールは、アルバイトにも派遣スタッフにも適用されます。
給与
アルバイト、派遣スタッフの平均賃金は派遣スタッフの方が高い傾向にあります。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によるとアルバイトの平均時給は1,384円です。それに対して厚生労働省の「派遣労働者の賃金(時間給)の推移」によると、令和2年度の派遣スタッフの平均時給は1,949円です。
福利厚生
社会保険や健康診断、有給休暇は正規雇用ではたらく場合のメリットと思われることがありますが、派遣スタッフも社会保険の加入条件を満たす場合には加入できます。また、人材派遣会社には雇用契約を締結している派遣スタッフに健康診断を受けさせる法的義務がある他、有給休暇も付与します。
さらに、人材派遣会社によっては産前産後休業や育児休業、介護休業といった制度や、「ビジネスマナー講座」「OA講座」といったスキルアップのためのセミナーが用意されているケースもあります。資格取得支援制度、クッキングスクールや海外旅行などの特典を用意する人材派遣会社もあります。
一般的にアルバイトは人材派遣に比べ福利厚生が充実していないといわれます。しかし、アルバイトであっても、所定の勤続期間や労働時間などの条件を満たせば有給休暇付与、健康診断も対象になります。
アルバイトを活用するメリットと留意点
人手不足で労働力の確保が必要になったとき、アルバイトが活躍する場面は多くあります。
アルバイトを活用するメリットと留意点について解説していきます。
メリット
アルバイトを活用するメリットには、以下の3つがあります。
- 直接雇用なので仲介を必要としない
- 長期的な雇用が可能
- はたらく時間を選ぶことができる
それぞれのメリットについて解説します。
直接雇用なので仲介を必要としない
人材派遣会社と派遣先が労働者派遣契約を締結して派遣される派遣スタッフに対し、アルバイトは企業と直接雇用契約を締結します。仲介する人材派遣会社とのやり取りがなく、条件等について本人と直接話すことができるので、雇用手続きをスピーディーに進めることができます。
また、直接雇用では派遣スタッフを活用する際に比べ、長期で雇用することが多いため、自社に愛着や安心感を抱きやすくなります。
長期的な雇用が可能
アルバイトは、派遣スタッフのように就労期間の制限がないため、企業と労働者の間で合意があれば、採用当初と同じ条件・形態で3年以上の長期的な雇用が可能です。
はたらく時間を調整できる
企業にとってアルバイトを活用する大きなメリットは、業績や繁忙期・閑散期などに合わせてはたらく時間を調整できることです。
留意点
アルバイトを活用する留意点として、以下の2つがあります。
- シフトを調整する必要がある
- 人員の入れ替わりが激しくなる場合もある
それぞれの留意点について解説します。
シフトを調整する必要がある
アルバイトには学生や主婦(主夫)が多く、仕事より優先する用事を抱えているケースが少なくないため、シフトの調整などに時間や手間を取られてしまうことがあります。
学生の場合、テスト期間中はシフトに入ることができず、この時期は学生全体の休みが集中するので、一時的な人員不足に陥る可能性があります。また、長期休暇時の帰省やサークル活動によって、欠勤が発生することもあります。
子育てをする主婦(主夫)の場合、子どもや家族の怪我や病気によって突然欠勤するケースもあります。
アルバイトの休みの被りによる一時的な人員不足に陥らないためにも、企業はシフトの調整を工夫する必要があります。他のアルバイトにシフトインをお願いしたり、もしくは、正社員が代わりにはたらいたりする必要も出てくるでしょう。
人員の入れ替わりが激しくなる場合もある
学生は学校の卒業に伴って退職するので、人員の入れ替わりは定期的に発生します。また、アルバイトの入れ替わりのたびに求人を出すので、その都度、あらたな人員をはじめから教育する必要があります。
人材派遣サービスを活用するメリットと留意点
人材派遣サービスを活用すると、人手不足の解消、採用にかかる時間やコストの削減といった効果が期待できます。しかし、人材派遣サービスの詳細についてよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
人材派遣サービスを活用し、その効果を十分に得るために、人材派遣サービスのメリットと留意点について解説します。
メリット
人材派遣サービスを活用するメリットには、以下の3つがあります。
- 即戦力として受け入れられる
- 育成にかかる費用をおさえられる
- 労務管理負担が軽減できる
それぞれのメリットについて解説します。
即戦力として受け入れられる
人材派遣会社には、さまざまな職種の経験を持つ人材が数多く登録しています。また、人材派遣会社自らが派遣スタッフに事前研修を行うケースもあります。
そのため、自社が必要とするスキルを持った即戦力人材を受け入れることが可能です。
育成にかかる費用をおさえられる
未経験の人材を一から育てる新卒の正社員とは違い、依頼した業務に必要なスキルを持った人材を派遣するのが人材派遣サービスです。
つまり、人材育成にかかる費用、ならびに育成に携わる社員の負担もおさえられるのです。
各種保険・労務対応の必要がない
派遣先は各種保険・労務の対応をする必要がありません。給与支払いに関する所得税や住民税は人材派遣会社が納付し、社会保険料や福利厚生(交通費や健康診断など)の提供も同様です。そのため、コスト管理を行う上ではメリットであると言えます。
ただし、例外として派遣先は、以下については責任を持つことになります。
「派遣先が責任を持つこと:労働時間管理、危険防止措置(機械による危険、爆発性の物による危険等の防止)、健康障害防止措置(原材料、ガスなどによる健康障害、高温、低温等による健康障害などの防止)等」
※引用:厚生労働省|「派遣先の皆様へ」(平成22年2月版)
留意点
人材派遣サービスを活用する際の留意点として、以下の2つがあります。
- 受け入れ期間に制限がある
- マージン率が存在する
それぞれの留意点について解説します。
受け入れ期間に制限がある
2015年の労働者派遣法改正により、期間制限の対象外に該当する場合を除き、派遣先が派遣スタッフを受け入れることができる期間に制限が設けられました。派遣先事業所単位の期間制限と、派遣スタッフ個人単位の期間制限の2つの適用を受けます。継続して派遣スタッフを受け入れることができる期間(派遣可能期間)は原則3年までです。
マージン率が存在する
人材派遣サービスの料金のうち、派遣スタッフに支払う賃金部分を除いた額の合計を「マージン」、マージンが人材派遣サービスの料金全体に占める割合を「マージン率」といいます。
マージン率の平均額は、厚生労働省職業安定局「人材サービス総合サイト」の「許可・届出事業所の検索」機能から確認できます。また、各人材派遣会社のホームページやパンフレットなどで、誰でも確認できるようにマージン率の公開は推奨されています。
マージン率が公開されるようになった理由は、派遣スタッフとしてはたらく方が教育訓練に関する取り組み状況や適切な福利厚生の実施を確認し、より適切な人材派遣会社を選択できるようにするためです。
有給休暇の適切な取得や社会保険料、資格取得推奨などの教育訓練、法令を遵守し、派遣スタッフが安心して業務に取り組める環境づくりのための費用が、マージンには含まれています。
そのため、「マージン率は低いほどよい」「〇%以上であればよい」と言えるものではありません。マージンが何に使われているかという情報と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
アルバイトと人材派遣の違いを理解し、適切に活用する
本記事では、アルバイトと人材派遣の違いについて解説しました。両者の違いには、主に以下の5つの観点があります。
- 雇用主
- 雇用期間
- 勤務時間
- 給与
- 福利厚生
また、アルバイトと人材派遣サービスを活用するメリットと留意点もそれぞれ異なります。アルバイトを活用すると人材育成に時間はかかるものの、長期間はたらいてもらうことが期待できます。一方で、人材派遣サービスを活用する場合、コストは増えるものの、即戦力人材の活用が可能です。
アルバイトと人材派遣の特徴を把握し、目的に合わせて活用してみてください。
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